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【KBCスペシャル〜サミアド砂漠に幻の温泉を見た!】
■姫宮 一奈■

<音無 響/アシュラファンタジーオンライン(eb4482)>
<ソフィア・ファーリーフ/アシュラファンタジーオンライン(ea3972)>
<トシナミ・ヨル/アシュラファンタジーオンライン(eb6729)>
<フィオレンティナ・ロンロン/アシュラファンタジーオンライン(eb8475)>
<リューグ・ランサー/アシュラファンタジーオンライン(ea0266)>

「つ‥‥遂に‥‥遂に来たよっ」
 サファリルックに身を包んだ音無響が思わず声を震わせた。下し立ての服はすでに解れ砂埃で汚れ切ってはいたが、彼はそれでも大満足だった。
「凄いよね、砂漠に幻の温泉だよっ! まさしくロマンだよー!」
「‥‥此処まで辛く長い旅ぢゃった」
「まさか途中でカオス兵の駐留区を突っ切る事になろうとは‥‥」
「ヴェロキに混じって、アロサウルスもいたな。確か」
「あの時は、『秘境の温泉』なんて絶対ガセネタだって思ったもんねっ!」
「まー、無事着いたんだから良かったじゃん」
「「「良くなあああああ――――――――――――――――いっっっ!!」」」

 砂漠の中にぽつんとある緑のオアシスに冒険者の雄叫びが木霊する。
 KBCの琢磨の要請(口車とも言う)を受けて召集された彼らは王都からサミアド砂漠に入り、途中ヴェロキラプトルを従えたカオス恐獣部隊の追撃に遭うも、辛くも砂漠の秘境の温泉へ到着したのであった。
「調査の仕事だというから付いて来てみれば、これって只の温泉じゃないか。なぜこの程度の依頼にわざわざ俺が‥‥」
 サミアド砂漠に蔓延る悪党を蹴散らす依頼だと思い込んでいたリューグ・ランサーにしてみれば、先の戦闘だけではやや物足りないようである。
「あー、でもこれってお偉い貴族様からの正式な依頼なんだぜ。秘境の下見をして来てくれってさ。大方、奥方に隠れて愛人2号とでも宜しくやるんじゃないのか?」
「えっ、その貴族様ってまさか‥‥」
「白い髭の御仁ではあるまいのう?」
「うっそー!! それって凄いゴシップ!」
 仲間たちの視線が一斉に琢磨に注がれたが、彼は企業秘密とだけ言って話を逸らした。
「その話はさておき‥‥危険な目に合わせたお詫びと言っちゃ何だけど、依頼主から酒と食糧はがっぽりせしめて来たから、後は温泉に浸かってゆっくりしようぜ」
 と、琢磨がバックパックの中からごそごそとワインやら濁酒やらを次々に取り出し始めた。
「休憩ついでか? まあ、このまま帰るのもな。まぁいい、付き合ってやる」
 面倒臭そうにリューグが答えると、皆の顔にもすっかりいつもの笑顔が戻った。
「おおっ! そうと決まれば早速ピチピチの水着姿に変身だー!」
「あうっ、フィオちゃん、ちょっと待っ‥‥」
 フィオレンティナ・ロンロンは矢庭にソフィア・ファーリーフの手を取ると湯気が立ち込める岩場の向こうにある木陰へすっ飛んで行き、その後姿を男たちが見守った。
(やっぱり、混浴だったりするのかなぁ‥‥温泉と言えば混浴。やっぱり混浴‥‥絶対混浴)
「お前、ヨダレ」
 琢磨は頬を真っ赤に染めてポワワ〜ンと妄想モードに入っていた響に注意したつもりだったのだが、慌てて涎を拭き拭きしたのはトシナミ・ヨルだった。男って‥‥。

  ***

「じゃ、俺たちも着替えましょう。俺、皆の分も水着縫ってきましたから♪」
「流石に響さん、気が利くのう」
 シフール用に誂えられた小さめのキュートな水着を手に取ると、トシナミは嬉しそうに微笑んだ。
「さ、リューグさんも遠慮無くどうぞ〜」
「水着なぞ要らぬ」
「え?」
「風呂に入るんだろ? 風呂に入るなら全裸が基本だ」
「え? 温泉でも?」
「当然」
「混浴でもか」
「風呂は風呂だっ! 混浴だろうが何だろうが俺は何も隠したりはせんぞっっ!!」
「‥‥」
 男たちが彼を説得するのを諦めたその瞬間――まさしく事は起きた。
 着替えを終えて浴場に出て来た女性たちの目に、リューグの逞しくも可愛らしいお○りがくっきりと映ったのである。
 刹那――絹を裂くような悲鳴が鼓膜に届いたかと思うと、リューグは抗う間もなく二人の女性によって温泉に頭から突き落とされた。南無‥‥。

  ***

「あー、昼間っからとんでもないもの見ちゃった‥‥早く飲んで忘れよ‥‥」
 乳白色の温かい湯に浸かりながらフィオはソフィアが注いでくれた濁酒をせっせと口に運んだ。
「目の前に山があれば登るのが登山家で、温泉があれば浸かるのがKBC特派員&冒険者ですね。湯浴は美肌に良いと聞きますし、ゆったりしましょ〜」
「おおっ、あいや待ちなされ、ソフィア殿。タオルは湯船につけるべからずなのぢゃっ」
「はい?」
 ほろ酔い加減でふわふわと宙を飛びながら、トシナミが彼女たちの傍に舞い降りた。
 
 ☆温泉取材心得の條〜
 この温泉我が物と思わず。
 取材の儀/あくまで陰にて己の器量伏し背中、いかにても流すべし。
 尚、タオルは湯船につけるべからず、タオルは湯船につけるべからず。

「以上ぢゃ。お分かりかのう? では早速皆さんのお背中を‥‥」
 そう言うと、トシナミは小さな体全体を使って一生懸命心を込めて彼女たちの背中を流し始めた。
「うひゃー! くすぐったいよぉ!」
「きゃはは〜〜〜トシナミぃ、その調子でフィオの背中をがんがん流せー!」
 この時点でソフィアはすでに酒に飲まれていた。
「ほんとにくすぐったいってばあ〜」
「ほんとに‥‥駄目だよ、それ以上はだめ‥‥っ」
「ちょっとくらい我慢しろよ、琢磨‥‥せっかく温泉で二人きりになれたんだ。俺の気持ち‥‥分ってるだろ」
「でもっ‥‥やだっ、響‥‥そこ‥‥あっ‥‥んんっ」
「焦らすなって、琢磨」
「やっ、ああんっ」
 ――ふと、ソフィアたちが浸かっている湯場の後方から、甘美な嬌声と共に艶っぽい会話が耳に届いた。
「‥‥。あいつら一体何しとるんぢゃ?」
「あーんな事やこーんな事。(ごにょごにょ)が一緒に来てればなァ、私だって! えへへへ〜いやーん(妄想中)」
「お前ら、不謹慎だぞっ!!」
「こういう時は突撃インタビューに決まってるんだわさー、ばひゅ〜〜ん」
((うあああっ、ソフィア!))
 仲間たちが止めるのも聞かず、ソフィアは妖しい男二人の前に酒を片手に颯爽と立ち向かった!
「そこの不埒なふらり、じゃなかったふたりっ! コソコソと何してるんですかー?」
「え?」
 すでに濁酒3本を飲み干しているソフィアに負けないくらいに酔っ払っていた響たちが仲睦まじく答えた。
「俺たち『うなじ擽りっこ』してたんですよ」
「参ったって言ったら負けなのさ」
「でも普通にやっても面白くないねーって」
「そうそう。せっかくだから攻めと受けを決めてだな‥‥」
((この変態お馬鹿共がっ!!))
 響と琢磨は直ちにその場で沈められた。南無‥‥。

  ***

「あれれ、ソフィアー、服が無いよお?」
「ん? そんなはずっ‥‥」
「そういえばわしのもぢゃ」
「俺のも無いぞ」
 リューグが仕方なく響が用意してくれた海パンを履いて辺りを探した所、夥しい足跡の上に皆の服が無残に破り捨てられてしまっていた。すると――。
「サ、サスカッチだ! やられた――全員水着で帰るしか無さそうだな」
 前方の木陰で見え隠れする白猿たちの姿を見つめながら、リューグが悔しそうに呟いた。だが、なぜ砂漠にサスカッチ――?
「温泉の周囲にはサスカッチが生息と‥‥」
「琢磨くん、真面目に仕事してるんだね」
「言ったろ? 正式な依頼だって。やっぱ俺一人で来なくて正解だったな」
「琢磨くん‥‥」
 同じ天界人としてどこまで彼を信頼していいのやら‥‥と頭を悩ます響であった。
 尚、破れた服の代償にとKBCから温泉発見記念の浴衣が全員に配られたとか配られなかったとか。
 教訓:温泉に入る時はお猿さんに注意しましょーね♪



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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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