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【●ルルイエさんのお見舞い 〜ハンナ・プラトーinイギリス編〜】
■蘇芳 防斗■

<ハンナ・プラトー/アシュラファンタジーオンライン(ea0606)>

 英国にて、眠りについている時のルルイエへのお見舞い

 此処はイギリス‥‥由緒に歴史ある英国にて貴族としてその名を連ねるフォレクシー家の邸宅を訪れたのはその地と縁を持つ赤毛の騎士がハンナ・プラトー。
 陽光降り注ぐ束の間の暖かき日、訪れた彼女のその目的は『魔本』との戦いにより深き眠りに着いたルルイエ・セルファードのお見舞いだった。
「どうぞ、お入り下さい」
「はーい、ありがとーう! それじゃ、お邪魔するねー」
 屋敷に通されて後、何時もの調子で笑顔を浮かべる彼女は侍女よりの許可を得れば眼前の扉を開け放つ‥‥数々の楽器を携えて。
「やっほー、ルルイエさん。元気してるー?」
 リュートベイルにクレッセントリュート、ウォードネの竪琴に神楽鈴や果ては三味線まで‥‥多種に渡る楽器を苦労して運び込みながら、しかしそれは表情へ出さずに明るい声音で部屋の主に挨拶を交わす。
 だが答えは返って来る筈もなく、ハンナの声だけが部屋の中に響き渡れば
「ま、相変わらずだよね。今頃はマリアちゃんと話しているのかな?」
 しかしそれには別段構わず、ルルイエが寝ているベッドの袂にまで歩み寄ればその表情を覗き込んで彼女。
「しっかし綺麗だねぇ、流石はルルイエさんかな。私じゃこうも綺麗に出来ないかなー」
「‥‥‥」
 微笑みながら、眠りに着いた『あの時』から変わらない彼女の面立ちに感心して溜息を漏らし‥‥そして相変わらずに続く沈黙を前にすれば
「やっぱり、寝ているよね。綺麗だなー、羨ましいなー、髪伸びてきているよー?」
 改めてその事実だけ確認すると一人頷き、あれから僅かずつではあるが伸びている髪の毛を触りながら指摘すると、彼女がその身を横たえているベッドの傍らにあった椅子へ漸く腰を落ち着けると
「私は相変わらず元気でーす。私から元気取ったって、何も残らないしね。皆もあれから色々あったりしたけど‥‥元気だよ。オーエンさんは今もノッテンガムのあちこちを復興させる事で忙しいみたいだけど、そのお陰で大分ノッテンガムも元通りに戻って来たかな」
 相変わらずの調子で自身の簡単な近況報告に、他の皆に対しては言葉を僅かに濁しつつもノッテンガムの事に付いてはやはり明るい声音で告げるが‥‥言葉を紡げば紡ぐ程に虚しく、悲しくなる自身の心。
「‥‥うん、返事を期待してる訳じゃないんだ。だけど少しでも、一方通行でも話を聞いて欲しかったから‥‥大事な友達だし、ね」
 その内をやがてルルイエへ静かに明かし、頭を垂れるハンナではあったが
「ちょっと湿っぽくなっちゃったかな、折角良い天気なのに」
 すぐにその顔を上げると苦笑を湛えたままに外を見つめ、窓の外に広がる晴れ間より元気を貰って再び笑顔を浮かべると
「よっし、それじゃあそろそろ本番に行きますか! 幾らでも弾いちゃうよー!」
 大量に携えて来た楽器が一つのリュートベイルの首を掴めば、その弦を一度だけ弾き言うと返事があろうとなかろうと普段より構わない弾きたがりな楽師。
「取りあえず一曲目、初めてルルイエさんに聞いて貰ったあの曲で行きますっ。因みにまだタイトルはないけど今回は歌付きだよ? あの時はまだ上手く歌詞が作れなかったからねー」
 やがて音を繋ぎ合せ曲を構築しながら先ずは披露する曲を紹介すれば、すぐにイントロダクションを奏で出すとその最中で喉の調子を確認すべく幾度か発声練習をした後‥‥いよいよ、声も高らかに告げるのだった。
「‥‥それでは、ミュージック、スタート!」

「ジャパンの曲って結構独特だよね、良い勉強になったなぁ‥‥うん、何時かジャパンに行ってみても良いかもね」
 それから暫しとは言えない位、十分な時間を掛けて数曲も、十曲‥‥いや、二十曲は弾き歌ったか沢山の曲を奏で終え、自身も満足しながら最後に神楽鈴を下ろして笑顔を絶やさずにハンナは最近、学ぶ様になったジャパンの曲に付いての感想を言うと
「私には待つ事しか出来ないけど‥‥ううん、だからこそ皆の想い、届けないとね」
 その中でも身動ぎ一つすらしなかった唯一人の観客であるルルイエを見つめボソリ、呟いた‥‥皆が今も様々に抱いているだろう想いを代わりに彼女へ伝えるべく、歌にして届けたかったと。
「これ位しかルルイエさんの心に想いを届ける方法、知らないからね‥‥それじゃ寂しいけど、そろそろ帰んなきゃ」
 自身が出来る事、自身にしか出来ない事だからこそ彼女は苦笑を湛えながらも胸を張って最後にそれだけ告げれば、何時の間にか落ちかけている陽光を見止めハンナはルルイエへ部屋を辞する旨を告げ、踵を返し
「また逢える日を何時までだって、待ってるから‥‥またね」
 最後に笑顔で、唯一つの約束を交わせば彼女の方へ手を振って部屋を後にすれば
「よーっし、明日からまた頑張るぞー!」
 玄関へ向け歩く中ですれ違う侍女達の一礼に礼を返しながらハンナはやがてフォレクシー家の屋敷を出ると、夕日に向かって叫んだ‥‥明確ではないその目的を。
 だからこそ、目の前にある全ての事へ臨むハンナはやがてジャパンへと至れば再び、英国にて知り合った様々な人達と邂逅を果たすのだったが‥‥それは未だ先の話である。

 〜Fin〜



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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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