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【波乱のホームパーティー】
■志摩■

<慧/Beast's Night Online(fa4790)>
<ラシア・エルミナール/Beast's Night Online(fa1376)>
<紗綾/Beast's Night Online(fa1851)>
<嶺雅/Beast's Night Online(fa1514)>

 ぴんぽーん、とチャイムの音。
 中からいらっしゃーい、の声が響き、その家の主は扉をあけて、笑顔を凍らせて、扉を閉めた。
 ぱたりと。
「ちょっ、蓮さんっ! なんで扉閉めるの〜!」
「その理由は……後の二人だろうねぇ」
 今日、料理作りすぎちゃったよー、食べにくるー? とお呼ばれしたのは紗綾とラシア・エルミナール、二人のはずだった。
 だがその話を聞きつけていくいくー! とついてきた嶺雅。そして慧君も一緒に行こうね、うん、とほやほやカップルはえへへと柔らかな笑みで、渋谷蓮の自宅マンションまでやってきたのだった。
 そう、たがいの恋人がついてきたことが、蓮が扉をさっと閉めた原因なのだった。
 だんだんだーん、と紗綾は扉を叩く。嶺雅も一緒になって。
 姉と弟、行動が同じ。
「だって、なんか、オーラがあれで! あれなオーラの人たちはおうちにはいれません! 怖いから!!」
「あーけーてー!」
「レイ」
 あれなオーラの原因である嶺雅に、ラシアは諭すように名前を呼ぶ。
「だって、でも俺の目の黒いうちは慧君は紗綾に近づいちゃ駄目ー!!」
「はいはい、それは何度も聞いたから」
 ずざっと二人の間に割り込み威嚇。ラシアは半ばあきれたような苦笑で嶺雅を宥める。
 慧は歌の大先輩と尊敬している嶺雅のこの様子にしゅーん、紗綾は嶺雅と慧の間で仲良くしようねと頑張っている。
「ラシア嬢、そろそろ終わったー?」
「もうちょっとかね、あと五分くらい」
 こそっと扉が少し開く。
 三人が頑張っているのを達観して見守るラシアは、壁に背を預けていた。
「先に中はいっちゃう?」
「そうだね。これお土産、酸素缶とか……」
「あ、なんか気遣わせてごめんねー、ささあがってあがってー」
 キィ、と扉の開く音。
 ラシアが邪魔するね、と上がるのをみて、三人の絆が一気に固まる。
「お邪魔しまーす!」
「君たち今まで騒いでたのに変なとこで意気投合だね!」
 それとこれとは別。




 玄関で終わったかに見えた一波乱はまだまだ続く。
「はい、慧君。から揚げ」
「ありがとうさ……」
「はい紗綾、サラダとってあげたヨ!」
 紗綾が慶に笑顔で差し出す。言葉にかぶせるように邪魔をする。
「レイ君てば!」
「蓮君お茶〜!」
 攻められればはぐらかす嶺雅。
 紗綾はどうしたら仲良くなれるかな、とまだ思案をする。
「いつもこーなの」
「そうらしいねぇ」
「止めないわけ?」
「必要があればね」
 まだ必要ないレベルなんだね、と蓮はラシアに苦笑する。
「もう仲よくしなよー、しないとデザートなしだよー」
 テーブルに並ぶ食べ物は減ってもすぐ増える。
「蓮さん何か手伝う?」
「んー、そだね。じゃあ慧君ちょっとこっちこっちー」
「僕?」
「うんうん」
 お手伝いしてね、と慧をキッチンへ。
 その間に、紗綾は嶺雅に慧と仲よくするように言うのだけれども、右から左へ言葉は嶺雅の耳を通り抜けていく。
 そんな姉と弟の姿をラシアは紅茶を飲みながら静かに見守る。
「レイ君、レイ君ー!!」
「ラシア! そっちのサンドイッチとってー!」
「はい」
「ありがとう!」
 と、そっちの騒ぎの音に苦笑しつつ、蓮は慧にこれ持ってねー、と料理を渡す。
「慧君幸せー?」
「えっと……はい」
「ノロけていいんだよ〜このこの〜」
「え、あ……ええと……」
 テレテレテレ。
 顔を赤くして、相手のことを思う。
 それだけで気持ちは十分に伝わる。
「2人ってねーほわんほわんのふにゃんふにゃんていうか、幸せえへへー! ってオーラがすごく出てるんだよ」
「オーラ、ですか?」
「優しい感じでね、それを嶺雅君は感じてわーってなってるんだよ。だから彼ごと包んじゃば、いつかまーるく収まるんじゃないかなーって、僕思ったわけだ」
 がんばりなよー、と励まされて、慧は表情を明るくする。
「ああ、本当に、ほわんほわんだー」
 若いっていいねぇ、などと言われながら再び居間へ。
 じろっと嶺雅の視線が威嚇する。
「嶺雅君、ほらうちのわんとにゃーが戯れてくれるらしいから、その顔をやめなさい」
 見ると嶺雅とラシアの間をハスキー犬とトンキ二ーズがお前覚えてるぜー! とくるくるふんふんしていた。
 去年の夏、出会ったことを思い出す。
「そういえば……海に一緒にいったんだっけね。ちっちゃかったのに今では大きくなって……」
 ラシアが頭を撫でると尻尾がぶんぶん。子犬サイズはいまや立派な成犬サイズだ。しかも大型犬。そして撫でられている手が離れると、今度は嶺雅に体当たり。
「わ、ちょっ……ラシア助けて!」
「ラシア嬢、助けると巻き込まれるよ、女の子は危険です、やめておきなさい」
「……がんばれ」
 ワンコに半強制的に戯れられる嶺雅。紗綾はいいなー、と呟く。
 と、猫が慧のもとにすり寄ってにゃあと無く。
 ふっと蓮と目が合うと、笑顔を返された。
「紗綾、猫さんこっちきてきてくれたよ」
「わー!! 」
 にゃぁと甘い声。
 紗綾はにこにこと、慧を二人で猫をはさんでいちゃこらする。
「!! こらそこっ、わっ」
 良いぞ、グッジョブと愛犬に蓮は視線を送る。
 この犬と猫、全部わかってやっているのだ。
「レイ、あんまり邪魔しちゃダメだよ」
「でも紗綾が……く、くすぐった……!」
 ラシアはされるがまま状態の嶺雅にふっと笑む。
「アタシといる時とか、邪魔されたら嫌な気分にならない?」
「なる」
「同じことだよ」
 言われて、嶺雅は黙る。
 恋人できて、幸せそうで、おめでとうって伝えたいような気がしないでもない。
 その反面、とられるような気がしてならない、その気持ちの方が強くてたまらない。
 板挟みの気持ち。
 ラシアもそれはなんとなくわかっている。もちろんすぐに切り替えのできる気持ちではないことも。
「ほら、二人幸せそうだろ」
「…………」
 無言は肯定。
「ま、ちょっとずつでいいからさ」
「うん、ちょっとずつならね。一ミリならね……だから」
 ぐっと、息をのむ。
「だからそれ以上くっついちゃダメー!!!」
 もう飛び付かれたままで実力行使。
 嶺雅は二人の邪魔を再び始める。
「……嶺雅君わかってるのか、わかってないのか」
「ま、いきなりは無理だしね……長い目で」
 あはは、と苦笑交じり。
「苦労しそうだね、慧君」
「今もしてるね」
 嶺雅の態度にしゅん。
 でも紗綾が好きなことには、変わりない。
 嶺雅が紗綾を好きなことも、紗綾が自分も、嶺雅も好きなことはわかっている。
 だからいつかは。
 時間はかかりそうだけれども。
「……でもいつまでもこの騒ぎだと僕も怒っちゃうよ」
 目の前のごはんの前で喧嘩、および騒ぎは許しません。
 そんな雰囲気で。
 ラシアは静かに、ご飯おいしいと料理に箸をつける。
「騒ぐ子はご飯食べなくてよろしいですっ!」
「「「!!!」」」
「全部包んでラシア嬢に持って帰ってもらおう、そうしよう」
「さすがに全部は無理」
 ささっと、自分の前から消えていく料理。
 何かしらのオカンスイッチがオンになった様子。
 このままでは、本当に何も食べれない! と三人は通じ合う。
「「「ごめんなさいっ」」」
「……仲良くする?」
「私はしてほしいの……」
「僕もしたい……」
 ほわんほわんの二人はしゅーん。
「嶺雅君は?」
「…………」
 じー。
「シマスッ!」
 このままじゃ俺悪者!
 嶺雅は一時休戦を約束する。
「よし、待て解除!」
 その言葉とともに再び前には料理が戻ってくる。
 扱いがワンコと一緒ー!? と思いつつも、おいしいからよし。
 最初はぎくしゃくしていた雰囲気も、次第に和らいでいく。




「お邪魔しましたー」
「蓮クンおみやげもありがとネ!」
 楽しい時間はあっという間。
 待て、以降もめることなく時間は過ぎる。
 余った料理はお持ち帰り。
 マンションの玄関まで一人と二匹がお見送り。
「喧嘩せずに帰るんだよー」
「帰ろうか、紗綾」
「うん!」
 ほわほわの二人は手をつないで、ちょっと照れつつ、歩いて行く。
 嶺雅は、ちょっとおもしろくない。
 でも、ラシアに名を呼ばれる。
「俺たちも、手繋ぐ?」
「繋ぐ?」
 問われて問い返す。
 嶺雅とラシアも手を繋ぐ。
 と、嶺雅は振り向いて。
「今日は許してあげるけど、泣かせたりしたら車で挽き飛ばしにいくからね!」
 そう聞こえるように言って、さくさくと紗綾と慧とは逆方向へ、向かっていく。
 ラシアはそんな嶺雅にふっと気がつかれないように笑みを送る。
 そして慧と紗綾は、なんとなく顔を見合せて、笑みあう。



 それぞれ、幸せはすぐお隣に、あるのです。



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この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。

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