トップページお問い合わせ(Mail)
BACK



Buddy 〜 side Tomomi 〜
  ――某日某所。
 サーバント退治の依頼を受けた智美と聖歌は、見晴らしのいい場所から市内の状態を確認する。
「逃げ遅れた連中は?」
 智美の問いに聖歌は二人の逢魔が避難させていると返す。
 状況から見て、逢魔たちの手を借りずとも魔皇二人で事足りる。
 人の避難が完了すれば、こちらにとって制限はない。
 ニッと笑い武器を掲げる智美に、聖歌もああ、と短く返し、二人はサーバントが待ち構える町へ向かう。
 二人の魔皇の存在に気づいたサーバント共はむき出しの殺気を二人に向け、有無を言わさず襲い掛かる。
 その状況に臆することなく、智美はにやりと笑い、愛刀を引き抜き、横一閃にサーバントをなぎ払った。
「飛ばしすぎんなよ」
「誰に言ってやがる!」
 智美がそう叫ぶと確かにと言わんばかりに聖歌が苦笑するのが視界に入る。
 長い腐れ縁だ。こちらの気性も癖も把握されている。
 無論、こちらとて同じことだが。
 性別は女と男。
 それでも友情は成立する。
 友情…というか戦友という方がしっくりするだろう。
 戦闘においてはこちらが前衛、聖歌が後衛で援護。それがいつものスタイル。
 背中を任せられる相手がいるのはいい。だからといって恋人などとそんな甘ったるい関係はいらないが。
 魔皇の性が、血腥いこの場において一気に高まっていく。
 高揚感と共に体が動く。
 襲い来るサーバント共をなぎ払う瞬間が、刀を通じて伝わる感覚が己の残忍さを更に引き出していく。
 だが、そうして次々とサーバント共をなぎ払っている中で聖歌との距離が僅かに開いてしまった。
 それを待っていたかのように、伏兵が聖歌に向かって襲い掛かるのが視界の隅に映る。
「チッ!」
 肉弾戦では智美が特化している為、この程度の雑魚相手にはどうということもないが、聖歌にとっては聊か苦戦を強いられそうな強さ。
 しかもそれが複数ともなれば彼には不利だ。
 拙いと思いつつも、智美はふと過去の事を思い出した。
「(…そういえば、昔もこんなことあったっけな)」
 思えば状況も、その時の装備と同じ刻印の組み合わせの武装。
 こんな状況なのに嫌に懐かしさを覚えてしまう。
「……」
 微かに、口元が弧を描いた。
 視線を聖歌に流すと、あちらもほぼ同時にこちらを見て同じ構えをとる。
「(アイツ同じこと考えてやがる)」
 クスッと笑った次の瞬間、伏兵に向かってダークフォースEX『真魔力弾』が放たれる。
 二十発の魔弾がサーバント共を牽制し、僅かに怯んだ。
そこにすかざす聖歌が真衝雷撃を繰り出す。
 自分を中心とした周囲に稲妻の攻撃が放たれ、更にそこから腕を振るう。すると竜巻と真空のかまいたちが起こり、周囲を取り囲むサーバントに深いダメージを与えた。
 しかしこれは自分以外、敵味方関係なく周囲にいるものに攻撃する技ゆえ、周囲を敵に取り囲まれている状況ならば有効なのだが、下手をすれば仲間まで傷つける。
 だが智美はこれを避けた。
 数多の真空刃をものともせず突き進んでくる。
「これで終わりだ!」
 真魔力弾と真衝雷撃によって大ダメージを受けていたサーバントに、智美が最後の一撃を放つ。

 一閃―――

 伏兵は一人残らず刃の露と消えた。
 
「打ち合わせもしないで使うか普通」
 愛刀の露を払い、鞘に収めて聖歌を振り返る。
 すると聖歌は快活に言った。
「お前なら避けれるだろ」
 よく言うよ、苦笑混じりに呟く智美。
「お」
「あん?」
 見てみろよと聖歌の示す先に視線を配る。
 黄金に輝く空の向こうに、赤と青のグラデーション。
「こりゃあいいや」
 死臭の中に立つ修羅の瞳に映るは黄金色の空。
 その向こうから静かに、静寂の黒が、夜が訪れる。
「魔弾みてぇな色だな」
 もっと情緒溢れる表現はないのかよ、と突っ込まれるが、あってたまるかと眉を寄せる智美。
「――まぁ、綺麗とは思うがな」
 黄金がやがて赤くなり、紫に、青に、そして闇に変化した。
 逢魔ヶ刻とはよく言ったものだ。
「さぁて、帰るとするか」

修羅の黄金と残酷の黒、二つの影は夜の闇に消えていく。

END



※この文章をホームページなどに掲載する際は、必ず以下の一文を表示してください。
この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。


BACK



このサイトはInternet Explorer5.5・MSN Explorer6.1・Netscape Communicator4.7以降での動作を確認しております。