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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


【Handle with Care】守護〜友の永遠〜

Period:0−【序章】

 真っ暗な部屋に、声が響く。
 顔は見えない。誰もが50代後半と思われるそんな声。
「まだ……まだ聖は捕まえられないのか。捕獲の計画を立てて何ヶ月経つと思っている」
「アイツの力は、私達にとって脅威。 一刻も早く捕まえ、我らの計画を邪魔するものには死を与えるのだ」
 NGO「テンペスト・アーク」の本部における、少女「聖・沙羅亜」の捕獲計画。
 何故、それほどまでに彼らは彼女を必要としているのか、それはまだ分からない。
「失礼します……コードネーム:タイム、参上しました」
 若い女性の声、彼女もNGO「テンペスト・アーク」の一人だ。
「……タイム。この少女を捕まえるのだ。 キミの力を信頼しての事だ、光栄に思え」
「……承知しました。必ず、この少女を連れてまいります」
 彼女の名前は分からない。しかし、ここにいる彼らに信頼される程に優秀な能力を持つエスパーという事は確実である。

Period:1−【ト・モ・ダ・チ】

 エスパーの少女、プティーラ・ホワイトは聖の下へと向かう。
 ぱっちりとした瞳で、肩を超えるくらいの長い髪を持つ少女だ。
 彼女は今、この裏路地に相応しい格好をしている。理由は聖に疑われないように、この裏路地にいる少女を演じる為である。
「聖ちゃん、どこにいるのかなぁ? 確かここら辺に居るっていう話だけど」
 聖の写真と周囲の人々を見比べながら、聖を探すプティーラ。人通りもまばらな裏路地だから、1,2時間探したところで聖とおぼしき少女とその友人を発見出来る。
 隣に居る友人も、聖と同じく10歳程度のように見えた。
「あ、あの子かな? 10歳程度だし、お友達と一緒にいるみたいだし……よーっし、始めの挨拶が重要だよね。いっくよ〜」
 と言って、プティーラは聖とおぼしき少女へと走っていく。もちろん普通にやってはと思ったプティーラは。
「こんばんわ〜〜っ! きゃっ!」
 聖の目の前で、石に躓いて倒れてみせるプティーラ。
『きゃっ! ……え、えっと……あの、大丈夫ですか?』
 目の前で倒れたプティーラを怯えるかのように、友達の後ろへと隠れて心配する。
「えへへ……ちょっと痛いけど、プー大丈夫だよっ」
 ちょっぴり目尻から涙を流しているが、必死に耐えるプティーラ。分かっていたとはいえやっぱり痛い。
「そ、そうですか……あの、私達に何か用でしょうか?」
 心を開かぬまま、友達の後ろで隠れている聖。
「うん、プーここに来てまだ日が浅くって、友達が居ないの。 だから同じ位の年齢のおねーちゃんたちに遊んで欲しいのっ」
 にっこり微笑むプティーラ。ここにいる子供を演じてるもののでもやはり聖は隠れたまま……どうやらかなりの対人恐怖症らしい。
『聖ちゃん、この子は悪い人じゃないと思うよ? それに僕達も遊び相手が欲しいなって話してたじゃん、プーちゃんと一緒に遊ぼうよ』
 友達が助け舟を出すと、聖はおずおずと出てくる。
『……う、うん……私は聖、聖・沙羅亜。 その……宜しく、ね?』
「うん、宜しくなの〜♪」
 ぶんぶんと手を振るプティーラに、聖は怯えながらも手を振る。
 最初の友達になると言う作戦は成功したようである。

 そして数日が経ち、ある程度プティーラと聖が仲良くなった頃。
 聖と四六時中一緒に居ながらも、プティーラは聖に迫りくる手は無いかと《天使の瞳》を見ていた。
 そのある日の夜、彼女は夢を見る。
 自分の目の前で浚われる聖と、自分の目の前に倒れる友の姿を。

『プティーラさん……大丈夫ですか?』
 うなされるプティーラを心配して、聖はプティーラの肩を叩いて起こす。
 既にプティーラは汗びっしょりになっていた。夢であるとはいえ自分の力が全く叶わない、そんな相手だった。
「だ、大丈夫……大丈夫だよっ」
 元気そうに振舞うプティーラ。
 しかし彼女の見たのは《天使の瞳》。確実に聖が狙われる、そう遠くない未来に彼女が浚われるのだ。
 プティーラは正直に打ち明け、聖をかくまう事を決める。もう、時間は無い。
「……あのね、聖ちゃん。私の言う事、これは嘘じゃない。 聖ちゃんは、組織に狙われているの。私、貴方を安全な所に連れて来るように言われたの。 ……プーと一緒に、友達と一緒に来て」
 珍しく真剣な声でプティーラが言うと、やはり聖も心当たりがあるようだ。
『それって……それって、私の記憶が無くなる事と……関係、あるの?』
「多分、ね。でも大丈夫、私達が必ず聖ちゃん達を護ってあげるからっ」
『絶対に……友達も、護ってくれる? ……私、もう一人になるのは嫌だよ』
「プーの所は、絶対に安全だからっ、だから、友達を連れて着いてきてっ」
 プーの言葉に聖は頷き、そして友達と一緒に外に出る。
 その時。
『……逃さない』
 聖を見つけたテンペスト・アークの者、コードネーム:タイムが三人の姿を見つける。
 彼女の持つ武器が、静かに三人をロックオンした。

Period:2−【脱出】

「こっちだよっ、早く早くっ」
 プティーラが二人の手を引いて走る。彼女たちの後ろからは、二人を追いかけてくる者が。
『逃さない……大人しくしろ、私達に逆らうな』
 その声は、まるで感情のこもっていない戦闘人形のような冷たい声。
 プティーラ達は裏路地を通り抜けて、表路地へと出ていく。
 裏路地よりは人が多いものの、夜の時間帯であるこの表路地は大して人が居なかった。
 着実に冷たい声を放つ者は、プティーラ達に近づいている。
 二人を連れて走っているプティーラのスピードが勝る訳がなかった。
「仕方ない……空を飛べば、きっと追って来れないはずっ」
『何を……するの?』
 プティーラは、二人を抱かかえ、能力を発動する。
「《天使の翼》よ、開けっ!」
 プティーラの背中に輝く翼が生じる。
「つかまってっ、飛ぶよっ!」
『……飛行能力所持者か……甘い』
 しかし慌てない声の主……姿がはっきりと見える。
 年齢20程度の、青髪の女性、整った顔立ち。
 とても暗殺集団の一人とは思えない美貌をもった女性である。
『お前たちを逃すわけには行かない……私の使命だから』
 天高く飛翔するプティーラ。さすがに二人を背負った状態では、飛行も安定しない。
 ふらつきながらもその少女の下から離れようとする三人に、その女性はサイコ能力を使用する。
『……《リメンブランス・オペレート》』
 女性が放つ能力は、記憶操作の能力であった。
 その能力は……空高く飛んでいた彼女たちの中の、聖の友人へと発動する。
『……!! や、嫌ぁぁぁっ!!!』
 自分の中の、記憶の部分を弄られる感覚は、即座にエスパー能力者でない者に発狂状態を生み出す。
 プティーラの腕の中で暴れる、聖の友。
 聖は驚きながら友へと話しかける、がその声は通じないまま腕の中で暴れている。
『ど、どうしたの……? 境さん』
『嫌、嫌っ! 助けてっ! やめてよぉぉっ!!』
 暴れる為に、更にバランスを崩すプティーラ。
 暴れる体にあがなう事は出来ず、仕方なくその場に降りた。

『……聖を渡せ。そうすれば、お前達は傷づけずに済む。 用の無い者を傷つけたくは無い』
 対峙する二人。
「どうして、どうして聖ちゃんを浚おうとするの?」
 プティーラの言葉に、その女性は静かに告げる。
『彼女の力は、この世界にとって脅威の力だ。 そのままのさばらせておけば、いずれは自滅、もしくは誰かの破滅を産み出す。我らNGO「テンペスト・アーク」はそれを危惧している。彼女は、滅ぼさなければならない』
「嘘っ! 彼女が危険なわけが無いよっ! こうして生きてても、何の被害も無いじゃない、それを一方的に殺すなんて酷すぎるよっ!」
 プティーラは、聖を後ろにして気丈に話す。
 聖は、今は落ち着いている境の様子を伺いながら二人の話を聞いている。 
『何かが起こってからでは遅いのだ。 だから……私に彼女を……聖を渡せ』
 にじりよる女、その時。
『私が……私がいけないの? ……私が居るから、皆苦しむの? 私……私、好きでこの力を手に入れたわけじゃないのに……なのに……』
 静かな声と共に、激しい力を感じる。
『発動が始まったか……仕方ない』
 女性は、聖の方へと駆け出す。
「聖ちゃん、大丈夫だよっ、私は苦しんでなんかいないよっ! いつまででも、プーが聖ちゃんを護ってあげるから、だから大丈夫……』
 その言葉は、聖の強大なる力の発動に掻き消される。
『伏せろっ!!!』
 女性は、プティーラを下にして抱かかえる。
 激しい力が、彼女たちを襲った。
『ぐ……っ!!』
 皮膚が焼ける匂い、そして服が焼け焦げる匂いが辺りを包む。
 プティーラの《天使の剣》と同じような力……聖のサイコ能力の一つ《プラネット・ブレイク・ダウン》が発動したのだ。
 プティーラは、女性に抱かれながら……激しい力に記憶を失った。

「……ぅ……ぅぅ……っ」
 プティーラは目を覚ます。
 目を覚ますと、そこには一面焼け野原となったさっきまでの場所と、激しくダメージを追っているさっきの女、そして聖が倒れていた。
『……気づいたか?』
 そう、女性は聖の能力の発動から自分の身を犠牲にして、プティーラを助けたのだ。
『……聖は、今回はお前たちに渡す。 ……お前達を助けた為に、体に傷を負ってしまったからな』
「……敵なのに、どうして助けてくれたの?」
『……さぁな。 目の前でサイコ能力に倒れるものは見たくない……それが理由さ』
 腕を抑えながら、その場を去る女。
「せめて……貴方の名前を教えてよ」
 プティーラの言葉に、女性は立ち止まる。
『……クリア・カンタート。NGO・「テンペスト・アーク」暗殺部隊、コードネーム:タイム、だ』
 と言って、クリアはプティーラの下を去っていった。

 その後、プティーラは聖を連れて帰る。
 聖は、全く心を開かなずに、与えられた部屋で一人塞ぎ込んでいた。
『……私、私……もう、力なんていらない……』
 泣き続ける声が、聖の部屋から響き渡った。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0026 / プティーラ・ホワイト / 女 / 6歳 / エスパー】

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■   ライター通信          ■
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どうも、始めまして、燕です。
サイコマスターズOMCの初作品、<【Handle with Care】守護〜友の永遠〜>
をお届けします。

この【Handle with Care】シリーズは、毎回シリアスな話で行く予定です。
インターミッションとして一息つける話も用意するつもりですが、予定は未定ですので……。
サイコマスターズの世界に一番合うのは、シリアスな話だと思うので。
尚、今回出てきたクリア・カンタートに関しては、どこかに情報がありますので探してみて下さいね。

>プティーラ様
 今回のミッションは、半分成功と言った所になります。
今後聖に対しての対応によっては、ちゃんと心を開くように聖はなりますので、ご安心ください。
ただ、今後も聖に対しての干渉は、テンペストアークは続けて行きます。
何しろエスパーが一杯いるNGOですので、エスパー能力を持つものは沢山いますので……。