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<px006> destroy my inner man
【0】
「……殺してあげますよ……、──……お望みのままに」
風道・朱理(ふどう・しゅり)はキリキリと傷む頭を片手で覆っていたが、やがて、ぽつり──とそう呟いた。
ゆっくりと手を下ろすと、包帯で右目から額にかけてを覆っているのが痛々しい。然し、赤く燃えるような左目と口許に残酷な程美しい笑みが浮かんでいた。
その傍らに在る黒い影は、サード・レオ(さーど・れお)。全身が黒い装甲で覆われたハーフ・サイバーである。彼には先程から朱理の頭を締め付けている痛みの原因は全く影響していないらしいが──。
「……、」
滅多に表情を崩すことのない朱理の額に、一筋の冷や汗が煌めきながら伝い落ちた。レオは、それをどう捕らえているかは分からないが、朱理のそれに同調するような同じ色をした目で彼を黙って見つめている。
ざくり、と鈍い音が響き、木の枝々がざわざわと騒ぎ立てた。木の葉がぱらぱらと降りそそぐ。朱理はナイフを木の枝に突き立て、それで身体を支える様に、ぎり、と音がする程その柄を強く握り締めている。
「……煩い、」
──……殺して、あたしを。
そんな叫ぶような声が、朱理の脳内に響き続けていた。
【1】
──少女の中に、残酷な微笑を浮かべながら人々の苦悩を眺めている『彼』がいる。『彼』に弄ばれた人々は、記憶に刻み込まれた、なんとか生きて潜り抜けた筈の戦火を目の前に見、或いは自ら記憶の奥底に仕舞い込んだ筈の「記憶の影」に覆われた。きらきら、と美しい透き通った音が響いている。それは精神が崩壊していく音色だ。壊れた心の欠片は、愛らしく虹色に光り輝きながら抜け殻となって無意味な笑顔を浮かべて横たわる人々の上に降り注ぐ。あたしがやったんじゃない、こんなのあたしじゃない、あたしがやったんじゃないの。少女はそれを自分の眼でまざまざと見つめながら叫び続ける。『彼』は少女の中から彼女にきれいだろう、と笑いかける。こんな残酷なものを永遠に見なければならないのなら、あたしがいるからこんなことになるのなら、あたしは、あたしは……。少女が掴んだ鋭利なナイフは次ぎの瞬間にはざくり、と地面に突き立てられている。どうしてそんな事をする? お前はきれいだ、そしてお前の手中にある世界もこんなにきれいなのに。あいつら、皆ただのクズさ、だからきれいに壊してやったのに。その中にいればきれいな夢色のかけらがお前に降り注ぐ。少女の目の前の世界は全て音を立てて砂時計のように砕けて行った。離れなきゃ。あたしの傍に居ちゃ駄目。
──あたしが死ねば全て終わるんじゃないの?
「……、」
自分の腰の高さまで追い繁った雑草を、ナイフの先で薙ぎ倒しながら朱理は駆ける。レオの黒い影も、それに続いていた。
ある地点で、朱理は立ち止まった。目標の気配が消えた。
「どっちです、レオ」
それに従って立ち止まった背後のレオに問い掛ける。
「……、」
やがてレオは率先して掛け出した。朱理は後を追うが、その気配が近づいて来るにつれ、また頭の中が鐘を打ったように反響し出した。
「……、」
その感覚を払い除ける様に草を斬り続けるが、やがてそれは朱理を再び立ち止まらせる程に次第に強くなってきた。
──あれ? もう草臥れちまったのかよ、きれいなお人形さん。
「──……、」
朱理は口唇を噛み締めた。こめかみを押さえた細い指先に力が篭る。
「……先に……追ってて下さい、レオ、すぐ追い付きます」
「……」
朱理の言葉を受け、返答はないものの了解した、とでも云うようにレオは駆け出した。
「……、」
後に残った朱理は深く息を吐いて呼吸を整えた。息切れした事よりも、揶揄かうように気侭な波長で朱理の頭を締め付けて来る『彼』の遠くからの声の方が少年を梃子摺らせている。
──しょうがないな、あのバケモンだけ先に来ても面白くないし……。……ま、この先の街で待ってるから早く追いつきなよ、……風道朱理。
どこまでも人を舐めた声だ。朱理はそうしてふっつりと消えた頭痛の余韻によろめいた身体を立て直しながら、ナイフを一旦納めて呟いた。
「……程々にして置いた方がいいですよ……、……聴こえているんでしょう、」
ざわ、と一度だけ叢が揺れた。──まあね。とでも云うように。
朱理とレオが走り去った後の叢に、一人の痩せ細った少女が倒れている。……最も、まともに形を残しているのは首から上だけで、その他の部分は一部白骨が露出していた。
──然し、その骸と化した少女のきれいなままの頭部は、安心しきったような、安らかな表情を浮かべていた。
【2】
──殺して、あたしを。
そもそも、その助けを求める声の主を探し出し、眠らせてやれば終わる筈だった。
あまりに強い思念を飛ばして来ては朱理の頭を締め付け、しかも殺してくれればそれで救われると云うならば朱理に迷いはない。ついでに、その死肉をレオに喰わせてやればいつも通り、完結する、その筈だった。
番狂わせが生じたのは、朱理がその声の主の少女と対面した直後の事だった。
「……あなたですね、私に助けを求めていたのは、」
朱理はその少女を、人里離れた離村と離村の間にある山道の途中で見つけた。
少女は目で衰弱振りが見て取れるほどに痩せ細り、恐怖に凍り付いたような黒い、虚ろな目でナイフの切先を向けた朱理を見上げていた。
「……どうしました? 殺してくれ、と云ったのはあなたでしょう」
朱理は一歩一歩鬱蒼とした雑草を踏み分けながら少女に歩み寄った。
「……ここまで苦労してわざわざ探す事もなかったんですが……、あなたの声は、非常に煩いんです。エスパーでしょう、テレパス能力を使用するのも結構ですが、もう少し使い方は考えて欲しいですね」
殺して、と頼んだ癖に、恐怖で目を見開いている少女を、朱理は醜いと思った。
……何故、こう誰も彼もが死の影に怯えるのだろう。
朱理に取って、そんなどうでもいい事に怯えて大騒ぎする人間の声は、不快な雑音だった。だから、排除する。それが取り除かれる度に視界に広がる赤い輝きだけを、朱理は美しいと思った。
「だから……消しに来てあげたんですよ、お望み通りに」
──……きれいだね、あんた。
「──……?」
一瞬、脳裏で弾けるように誰かの声が聴こえた。朱理は立ち止まり、視線だけを周囲に走らせた。
少なくとも、そこには朱理と、少女、そしてレオの影しか存在していないように見える。
レオも、その異変を感じ取ったように普段と違う沈黙を見せていた。
朱理は改めて少女を見やった。
「あなたですか、これも……」
「……、」
脳に強い電流が走った。朱理は思わず小さく呻いて目を閉じた。
……頭の中に、何かが侵入して来て、一瞬で通り過ぎて行った。
「……、」
次の瞬間、朱理はぞっとするような冷たい視線を少女に向け、駆け出していた。
──雑音が、一つ消えた。そして、美しい赤色が弾ける。
「……、何だ……呆気ないですね……、レオ、」
朱理が声を掛けると、レオは朱理の殺した身体に喰らい付く。元来、人間を殺す、という本能しか存在せず、その死肉を喰らって生きていたハーフサイバーがレオだ。
「……、」
朱理はそれを静かに見つめていた。……本当に、呆気無い。人間の命なんて、そんなものなのに……。
──へェ──……。カッコいいじゃん。
「……!」
朱理とレオは同時に背後を振り返った。
ちらりと横目で見やった少女の身体は既に形を残さない骸となっている。だが、先程、一瞬手理の脳裏に弾けたものと同じ声はまだ響く。
──風道朱理、か。お人形さんみたいな顔してるな。……あァ、別に片目が無くてもいいんじゃない? 欠けた美、ってヤツ。好きだよ、俺は。それでいてそんな物騒な物振り回してるのがカッコいいよ。そっちの黒いヤツも面白いねぇー、普通のハーフサイバーじゃないね、あんた。
「……人格だけで存在するエスパー、彼女はただの宿主、ということですか……」
──当たりー。
「レオ、」
朱理はレオにも気配の探知を求めた。自身もじっと感覚を研ぎすませ、それだけでは一体どの方向から聞こえるものか判断が付かない声に耳をすませた。
【3】
そうして、朱理とレオは駆け続けていた。
翻弄されている気がしないでもない。いや、そうして朱理で遊んでいるつもりなのは分かっていた。だが、追わなければいけない。少なくとも、この人を舐めたような声は、朱理には非常に不快だ。──消す。
追い詰めて、殺す。
「……、」
レオにやや遅れてその街の入口に辿り着いた朱理を待っていたのは、彼を見るとにやりと笑って「いらっしゃい」と囁いた女の姿だった。
いかにも素朴そうな、陽に焼けた肌に野暮ったい旧世代のままの形の衣装を着た中年女性だった。だが、彼女からは明らかにあの『声』の気配がする。
「……、」
朱理は駆け出しながら、一旦納めていたナイフを手に抜くと真直ぐ彼女の喉元を横一文字に切り裂いた。
「……あ、……え?」
狡猾な笑みを浮かべていた彼女は、鮮血を噴き出し、事切れる寸前に驚いたように目を見開き、朱理を映した目に最期の恐怖を浮かべて声もなく倒れた。
「キャァ──ッ!!」
耳を劈くような少女の悲鳴を境に、長閑で平和そうな街に恐怖と混乱が伝染した。
街角で林檎を並べて居た売り娘が取り落とした果実を、母親の手に引かれて逃げまどう子供が踏み潰して行く。広がった死臭に、甘酸っぱい匂いが混ざった。
「あー、こっちこっちー、」
遠くの方で朱理とレオに向って手を降っている少年がいる。──『彼』だ。
朱理はそのまま踵を返すと、物も云わずに今度はその少年を追う。彼方此方で悲鳴が上がっている。その少年の姉らしい少女が飛び出して来て、少年の手を引いた。僅かに狙いを外れた朱理の刃は、その少女の肩を縦に割った。その瞬間に、──『彼』が抜けた、──途端に顔色を失った少年がレオの姿を見て泣き叫んだ。……もともと、サイバーというのは平凡な、特に都市の中心部を離れた奥地の方の人々にとっては戦争の象徴である。人々はその対象に、元から負の感情しか抱いていない。──恐怖、嫉妬、軽蔑、畏怖。
「……鬼だ……」
誰が、ともなく朱理にそんな言葉が投げられた。──知ったことではない。
朱理は、ただ意識を『彼』の気配にだけ向けていた。『彼』が通過した、というだけで訳も分からない内に逝ってしまった人間の事も、自分を「鬼」と呼び畏れる声も、朱理にはただの風景でしかない。ただ、どうした訳か朱理が常より苛立っていたのは確かだ。……相手はエスパーだ。或いは思考を操作されているのかもしれない。
突如、朱理の足許の方でけたたましい笑い声が上がった。腰が抜けたものか、地面に座り込んだまま動けなくなっていた少女である。姿勢は座り込んだままだが、いかにも楽しそうにけたけたと笑いながら朱理を見上げている。
「……」
「いいじゃん、いいじゃん、カッコいいねェ──! それにしても、あんた、ほんっと容赦ないのな。もうちょっと躊躇うか、あるいは罪の無い一般市民の死体を見てショックでも受けるかと思ってたんだけど」
「生憎ですね、どれだけ繰り返そうと同じですよ」
「頭ん中、ちょっと見せて貰ったけどさ、知ってる? ……あんた、感情が壊れてるよ」
「……」
身体自体は少しも動かさず、腕を一本素早く振るっただけで少女の身体は縦二つに割れた。
もう周囲はがらりとしている。建物にでも篭ったか遠くへ逃げたか、元々大して数の多くなかった地元民達は姿を消していた。その横合いから、少女の名前らしいものを呟きながら呆然とした表情で青年がよろめきながら出てきて、額から胸にかけてを赤い線で分断された彼女の肩を抱いた。
「……、」
多少、その光景を煩いと思いながらも朱理は、次はどこから来るか、と耳をすます。そこに聴こえてきたのは、『彼』の声ではなく、少女の肩を抱いた青年の声だった。
「……あなた、何とも思わないんですか、こんなことをして」
思わない、その証拠に朱理は殆ど青年の声になど構っていない。
「何の為にこんな残酷な事を、」
──何の為、でしょうね……。
そもそも、何の因果でここまで『彼』に振り回されているのか、朱理はその問いから頭の端でぼんやりとそんなことを考えた。
視界の端で、黒い影の気配の気配がゆら、と動いた。
「レオ、……!」
朱理が振り返ろうとした時には、腕は既に拘束されていた。総合的な戦闘力は比べようもないが、単純に力の強さだけで華奢な朱理がレオの手を跳ね飛ばす事は不可能だ。
「っ、……」
口唇の端が切れた。鉄の味が口中にも流れ込んで来る。それをチ、と指先で飛ばすと、朱理はレオ──『彼』に、忠告した。
「不敵ですね……、どうなっても知りませんよ」
──選りに選って、レオに寄生するとは、だ。
【4】
背と肩を強か地面に打ち付けた時に一瞬止まった呼吸に顔を顰めはしたが、その姿勢で身体を押さえ付けられていても朱理は比較的冷静だった。
いかに宿主に寄生することで能力を発揮しているエスパー人格だろうと、レオの人格をそう簡単に乗っ取れる筈はない。どれだけ持つか。──或いは、長く居続ければ逆にレオに取り込まれて「消える」可能性もある。
どうなっても知らない、とはそういう事だ。
朱理の表情に、自然、笑みを浮かんだ。散々人を弄んでくれたが、『彼』はレオを甘く見ているようだ。
──殺さなくていいのかよ。やっぱり、相棒に刃は向けられない、か?
声自体は、相変わらず脳にダイレクトに響いて来る。レオの口を介して、ではない。既に、完全にはレオの身体を乗っ取れていない証拠だ。
「腕力でレオには叶いませんから。無駄な足掻きはしない事にしているんです」
──余裕〜。
黒い指先が、朱理の頭部を押さえ付けた。其処から感電したような傷みが弾けた。──また、朱理の記憶か、感覚だかをどうにかしようとしているらしいが──。
「……無駄ですよ」
朱理は呟くように云った。
朱理の目に見えたのは、二人の人間の姿だ。──一応、何歳かまでの時期を彼等の子供として過ごした、両親の顔だ。苦痛に歪んだ顔で、こちらの方を呪うような目で睨み付けている。
「──……、」
朱理は自由な方の指先で前髪を払った。単純に、切れた口唇に貼り付いて邪魔だったから何気なくそうしただけだ。
──……。
『彼』が苛ついているのを感じた気がする。これを見て、まだ冷静でいられるのか、それ程落ち着いていられるのか、とでも思っているのだろう。どんなに冷めた朱理の感情でも、この記憶を見せれば取り乱すとでも思っていたらしいが、──甘いな、と思う。
追い討ちを掛けるように、朱理の右目蓋の裏辺りに見えていた両親の頭の先から、どろどろとした赤黒い血が流れ出した。全然きれいじゃない色。血に塗れた顔には瞳孔の開いた目だけが恨めしそうに開かれている。
そう、一応、親だった。今はどちらも没している。
朱理が、その手で殺した。もう何年も昔の事だ。
それを気に病んでいるとでも思っただろうか。
酷い両親だった。望まれず生まれてからその手にかけたあの日まで、一度も愛情どころか心の安息すら与えられた記憶はない。小さかった朱理には痣と化膿した傷の傷みが耐えなかった。その傷が癒える前に、次から次へと虐待の跡は増えて行った。
それを怖い、と感じるより先に、朱理は感情を殺す事を覚えたのだと思う。ほんの小さな幼年期の朱理は、既に暴力に対して、どれだけ止めて欲しいと願っても、謝っても非力である事を知っていた。恐怖を感じたってそれで暴力が止む筈がない。両親からは、幼い朱理には逃げることもできなかった。
感情を凍らせていたから、ナイフを手にし、それを彼等に向ける力を得る日まで壊れることなく耐えられた。両親から自由になるには、そうするしかなかった。その時の朱理に迷いはなかった。
「……、どうです、無駄でしょう。他に、何か見つかりましたか? まだ、私の精神を壊せそうなものがありますか?」
──……。
僅かずつ、『彼』の意思で朱理を拘束しているレオの手の力が弱くなってきていた。
朱理は、『彼』がその赤い目を通して自分を見ているだろうレオの目に向って微笑みかけた。
──チッ、
レオの身体が朱理から離れた。少し、よろめくように後ずさっていたが、朱理が立ち上がって土埃を払っている内に、その姿は消えていた。
「……、レオ、」
今までの様子を固唾を飲んで見守っていたらしい街人の視線を感じた。朱理はナイフを拾い上げて収めると、凍り付いた空気の中を交錯する視線に冷ややかな一瞥を投げ、落ち着いた足取りでその場を後にした。
【5】
「……、」
ざわ、と木の枝を掻き分ける音に振り向くと、レオの黒い影があった。赤く光る目の視線には、本当はさっきから気付いていたが。
「レオ」
『彼』が今レオの中には居らず朱理に話しかけても来ない事から、結局どうなったかまでは分からなかったが、……朱理にとっては大した問題ではない。
「……、」
名前を呼んでも、すぐには近寄って来ない。こちらから歩み寄ると、やや躊躇ったような間の後に黒い指先が朱理の喉元に伸びてきた。──痣が、出来ている。
「……、」
朱理は、その手を軽く掴むとレオの目を見上げて口唇の端にだけ幽かに笑みを浮かべた。
「まさか、遠慮をしている、なんて訳ないですよね」
──世界は混沌としている。平和というのは、即ち嘘だ。どれほど建て前を並べてみた所で、傷つけられればそれはその人間の非力さが悪いのであり、殺されれば安全神話などという作り話を信じきっていたのが悪い。それが本質だ。
遠慮──など、本質から程遠い。
「もし、そうだったら少し軽蔑しますよ」
そう云ってレオの手を放すと、朱理は先に立って歩き出した。後から、黒い影が追ってくる確信を持ったまま。
「……」
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0024 / 風道・朱理 / 男 / 16 / 一般人】
【0311 / サード・レオ / 男 / 25 / ハーフサイバー】
NPC
【少女】
・平和な街に暮らしていた大人しい少女。ある時突然侵入してきた『彼』により、自分の身の回りや、助けてようと関わった人々が壊れていくのを見て、もう誰も巻き込まないようにと街を離れていた。
【『彼』】
・<px006>、それだけで一つの意思を持ったエスパー人格で、他人の身体に寄生することで能力を発動。残酷且つ破壊的、享楽的な性質。
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■ ライター通信 ■
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こんばんは。今回はアナザーレポート初のシナリオに御参加頂き、ありがとうございました。
最初にシナリオを御覧になった時にお気付きかもしれませんが、本シナリオは、「徹底的に救いのない世界」です。
混沌の世界に生きる皆様には、優しさや思い遣りだけでは誰かを救い切れない場面に遭遇される事もあろうかと思います。
そんな時、一体どんなPCが今回のような少女を気に留め、どう接してくるだろう、という事を考え、このようなシナリオに設定致しました。
<px006>という名称に深い意味はありません。
ライターが便宜上型番的にこの人格に割り振った名前です。
尚、このシナリオに於いての各章通し番号には他PCとの互換性はありません。(一部除く)
本シナリオではほぼ個別シナリオの形式を取りましたが、全ての結果に於いて<px006>自体は死んでいません。
今後、何らかの形で『彼』が顔を出すこともあるかもしれません。
非常に悪質な性格の持ち主ですので、一度梃子摺らされたPCの事はしっかり記憶しているでしょう。
楽しい再会とはなり得ないでしょうが、またサイコマスター・アナザーレポートの世界の中で『彼』を見かけた時に気が向かれましたら是非遊びに来てやって下さい。
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