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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


□■□■ はじめてのせふぃろと! ■□■□



 武者修行には丁度良いだろう――師の言葉に南米はアマゾン川、セフィロトの塔にやってきた呂白玲は、地面にうつ伏せていた。別段何処か負傷があるわけでもなく、持病があるでもない。ただ――激しいまでの、空腹に襲われていた。
 生来の方向音痴は自覚していた、事実師の元からここに辿り着くまで何度も迷子を繰り返してきたのだし。やっと辿り着いた入り口、ギルドの場所も聞いて、流石に屋内では迷うこともないだろうと思っていたのだが――

「屋内どころか、まるっきりの町なのか……思ったより随分広い……」

 むしろ、ここ、どこ。

 廃墟のような場所、怪しい店らしきもの。人の通りもまばらな場所に迷い込んで力尽きてしまったのだから、なんとも致命的だった。ぐぎゅるる、と身体の奥から鳴る音は聞き飽きてうんざりする。誰か食糧を持った人間でも通り掛らないものか、いよいよ意識も朦朧としてきているし。辿り着いた途端の飢え死になんて、まったく冗談じゃない――ぐでり、目を閉じる。腹の虫が秋の夜長のように鳴いていた。

「……おい」
「…………」
「公道で寝るとは随分剛毅な娘だが、世の中には幼児性愛者や人身売買を扱うマフィアもいる。むしろ邪魔だ、起きろ」
「……だ、れが幼児だ」
「お前だ。道端に伸びている銀髪の弓を背負った娘」
「私はこれでも十五だ!」

 ガバッと彼女は起き上がる、突然動いた所為でくらくらと眩暈がした。目の前には影――人が、立っていた。真白な詰襟のハーフコートが、薄暗い街の空気に慣れた眼に少し痛い。見上げれば、妙に生っ白い男が自分を見下ろしている。だがそんなものはどうでも良い、むしろ彼女の眼を釘付けにしたのは。
 その視線に気付き、青年は自分の腕に抱えられた紙袋を見る。そこからはにょっきりとパンが突き出していた。彼女とそれとを交互に見――そして溜息を吐く、と同時に、白玲の腹がぎゅぅぅっと鳴る。

「……ここにいるということはビジターだろう。ギルドに行けば食事ぐらい世話してくれる」
「そこを探してこの体たらくだ」
「空間把握能力皆無か」
「黙れ、いいからそのパンを下さい」
「…………」

 ぽむ。
 フランスパンが一本と、牛乳が一本。彼女は差し出されたそれを奪い取るように受け取り、はぐはぐと口の中に詰め込む。口の中の水分を奪うような食感だったが、中にカスタードクリームが挟んであるので幾分かは緩和された。この男まさか甘党か。
 喉に詰まり掛けて慌てて牛乳を飲み、またパンに食いつく―― 一本完食するのには、それほどの時間が掛からなかった。

「生き返った……これに免じて幼児は聞かなかったことにしてやる。時にあんた、ここに住んでいるのか。名は何と言う」
「一応このジャンクケーブに住み着いている。名は葬師と呼ばれるが」
「そうか、私は呂白玲だ。あんた、ビジターなら街の様子にも詳しいのだろう。ものはついでだ、私にここらを案内しろ――ジャンクケーブとか言ったが、どの辺りなのだ? ギルドへは遠いのか」
「ギルドなら反対方向だ」
「…………」
「お前、方向音痴か」
「黙れ、射るぞ」

 やれやれと葬師が肩を竦める。白玲は立ち上がって、軽く衣類の埃をはたいた。
 大暗黒期以降、略奪と暴力が支配しきっていた時代は過ぎたとは言え、殺伐とした環境はまだ拭い去れていない。行き倒れがいたならばその金品を奪い取りとどめを刺すのが常識という世界にあって、自分の食糧を寄越したのだから、信用出来る部類にあるだろう――一瞥してから歩き出せば、視線が背中を追う気配がある。

「おい、お前」
「なんだ、早くしろ」
「そっちに行くと更に逆走だぞ」
「…………」
「来るなら来い、置いて行くぞ」
「黙れ」

 葬師が白玲の手を取る、子供扱いに、彼女はその手を振り払った。

■□■□■

「あんた、ビジターの割には武装している気配がないな。マフィアの一味か」
「あんな奴等と一緒にするな、俺は自分の目的の為には動いている。お前こそ、どうしてこんな所に来た? 子供が来る場所じゃないだろう」
「だから私は十五だと言っているだろう。あんたこそひょろっちい成りだろうが」

 言い合いながら歩いて行けば、段々と人々の喧騒が聞こえ出す。どうやら入ってきてすぐの時点で、人気の無い方にばかり進んでいたらしい――案内看板を見て方向を決めたはずだったのにどうしたことなのか、まったく謎が深い、思いながら彼女はきょろきょろと辺りを見回す。
 極彩色のネオンサインや、妙に露出の多い服を纏った女性達。酔っ払いやゴロツキのように柄の悪い男達がたむろしている――見上げれば、通りの看板には『HEAVEN'S DOOR』と記されていた。天国への扉――それが持つ清浄な響きとこの空気は、どうも矛盾している。
 逸れないようにこっそりと葬師のコートの裾をつかみながら、白玲は彼を見上げる。

「おい、ここは?」
「ヘブンズドア、まあ繁華街の一種だ。歓楽街としての色も強いが、情報屋や仲間を募る時はここに来るのが手っ取り早い。子供には刺激が強いかもしれんが、慣れろ」
「子供ではないとッ」
「殆どの店が未成年者お断りだが」
「…………」

 道行く者達は殆ど、彼女より背が高かった。人の壁が常に自分を囲んでいる状態では場所の把握も上手く出来ない。だが、慣れなければならないのだろう――不意に葬師が歩みを速める。慌てて付いて行けば、道の端に出た。真ん中よりも人通りは少なく、見通しは良い。
 葬師は彼女を振り返ることなく、また歩き始める。彼女も何も言わず、その後に続く。

 だが、人通りが少ないと言うことは、人目にも付きやすいと言うことである。ぽむっと突然肩を叩かれたと思えば、そこには強面の男がニッと笑っていた。右の眼はサイバーアイらしく、皮膚と機械の接続部が近い。顔を顰めれば、男は矢継ぎ早な言葉を繰り出した。

「お嬢ちゃん、随分可愛い顔してるねぇ。そっちの兄さんは保護者かい? 良い仕事があるんだが……大丈夫さ、何にも怖いことはないって。客と一緒に酒飲んでるだけで良い楽な仕事だよ」
「生憎だが、私はビジターとして来たのだ。接客に従事するつもりはないし、ついでにコレはただの案内人だ」
「コレ扱いするな。ついでに無視しろ、そんなもん」
「まあまあそう言わないで、上手くすりゃ上客が掴めるぜぇ? こんなトコで稼がなくても良いぐらいの玉の輿に乗れるってもんだ、嬢ちゃん、悪くない話だろう?」

 無視したいのは山々だったが、肩を掴んでいる手に離れる気配がないのではどうしようもない。酒臭い息とたまに掛かってくる唾に彼女はますます顔を顰めるが、葬師は手を貸す気配も無い。と言う事は、こういう連中を上手くかわすのもビジターに求められるスキルなのだろう――彼女は手早く背中に掛けていた弓を取り、矢を番える。向けられたそれにポカンとした顔を見せた男に、彼女は、矢を放った。

「ッど、わぁあぁぁ!?」
「って――お、お前は何をやっている!?」
「ち、避けられたか」
「『チッ』じゃない! お前なぁッ」
「まあ良い、ホーミング出来る――」
「良いわけあるか、止めろ!!」
「ッあ、うわぁあぁ、ひぃいッ!?」

 放った矢は仰け反られることで避けられたが、矢の行く先は自在に操ることが出来た。エスパーとしての彼女の能力である、少し加速させれば当てることは出来るだろうが――あえてギリギリ避けられる程度に設定した。ぐるぐる回るように狙ってくるそれに、男は勿論周囲の人間までも叫び声を上げる。と、不意に矢の動きが止められた。見れば何処から来たものか、リングによって静止させられている――それを認識した瞬間、彼女の身体が抱え上げられた。

「ッわ」
「この馬鹿、何をしている!!」
「だ、誰が馬鹿か――」
「客引き如きに能力を使う奴がいるか!! ここらの店は殆ど背後にマフィアが付いてる、連中が出て来る前に逃げるぞ!!」
「は、離せッ子供扱いするな――――ッ!!」

 白玲を抱えたままに葬師が走り出す、見れば店の中から『いかにも場慣れしています』的な男達がゾロゾロと出て来るところだった。武術の心得はあるが、サイバーやエスパーとの実践にはそれほど慣れているわけでもない――腰を抜かした男が何か喚きながら彼女達を指差してきたが、葬師は既に人波の中に紛れていた。

「ふむ、客引きに暴力は法度か」
「当たり前だ、冷静に考えろ!!」
「面倒だな、一気に片付けてしまえば次に遭遇することもないだろうに」
「そういう問題じゃない!!」

 ゼェゼェと肩で息をしながら突っ込みを繰り返す葬師を一瞥しながら、白玲は人の流れを見る。塔の中は薄暗いので現在の時間は知れないが、殆どの店が二十四時間営業のところから見ると――四六時中この場所には人が群れているらしい。歓楽街、繁華街、どちらの性質にしてもそれは頷けるが――あまり、好きになれそうな空気ではない。もっともここにいるのが一番に手っ取り早くビジター達に混じることだと言うのならば、仕方がないが。
 たし、ッと葬師の腕から降り、彼女は辺りの様子を伺う。明らかに堅気ではない顔立ちの連中ばかりで、正直取っ付き難い印象が強かった。もう少し人当たりの良さそうな奴はいないものか、場所柄なのだとは思うが。そこでふと彼女は巡らせていた視線を止める。

 妙にキョロキョロと挙動不審な男が、目に付いた。やせっぽっちで小ずるそうな顔立ちの中年―― 一人の酔っ払った青年に、近付く。青年は気付かない。無造作にその後ろポケットに入れられた財布を――

 彼女は矢を番え、打ち放つ。

「だからお前は何をやっているんだぁあぁッ!?」
「う、うひゃああぁぁ!!」
「何を言う、犯罪を未然に防いだのだ。あの男、酔っ払いから財布をすろうとしていたのだぞ? まったく誤解も良いところだな、あんたには観察力と言うものが――」
「良いから集中しろ、弾道が逸れてッ」

 ずがしゃーんッ!!

「…………」
「おッ俺の店がぁあぁ!!」
「な、何だ、露店がフッ飛んだぞ!?」
「誰だよこんなトコでブッぱなしたのは!!」

 壁際で細々と商売していた露店を襲った悲劇。
 弓を思いっきり構えたままの少女。
 …………。
 なむなむ、白玲は他人事のように合掌した。

「あ、あいつらです、さっきも向こうで!!」
「ったく、どこの新人だコラァ!!」
「だぁ――おいお前、逃げるぞ!」
「ん? なんだ?」

 ガヤガヤと声が聞こえ、彼女は視線を向ける。見れば数名の男達がこちらに向かっていた。全員が同じバッジを胸に付けているところから見て何かの組織らしいが――さてはスリの仲間か。葬師が彼女を抱え上げるその寸前に、白玲は数本の矢を弓に番えていた。向かってくる男達に狙いを定める、そして、指を離す。

「ッだぁあぁお前は何をやっている!!」
「何だ葬師、さっきから叫び担当か。口の中が乾くぞ。煩わしい連中を片付けているだけの事だろうが」
「あれは自警団の連中だ!! 騒ぎを聞きつけてやって来たんだろう、くそッ良いから逃げるぞ!!」

 ひゅんひゅんと弾道を変えながら襲い掛かる矢でてんわやんわの騒ぎになっている繁華街の中、葬師は再び白玲を抱えて走る。まあ暫く足止めしておいた方が良いだろう、矢を操りながら、白玲はむぅっと唸った。

■□■□■

「と言うか、私はギルドを探していたんだが」
「この状況でのこのこ顔を出してみろ、即行で説教だぞ」
「そうか、それは面倒だな。まったく役に立たん」
「……貴様……ッ」

 ふう、息を吐いた二人はひと気のない路地を歩いていた。
 どうも予定通りに事が進まない、案内人の人選を誤ったのだろうか。白玲は葬師のコートの端を掴んだままに巨大な溜息を漏らす、彼も同様に息を吐いていた。

「まったく……もう少し大人しいものだろうが、十五にもなったなら」
「大人しいものがこんな荒くれ者の溜まり場に来るものか。私は武者修行に出されたのだ、私も強くなりたいと思っている。淑やかなだけの娘など詰まらん」
「……こんな子供を武者修行に出すとは、随分だな」
「あんたの観念がどうかは知らんが、私は師匠の判断に間違いはないと思っている。何時までも井中の蛙では、伸びるものも伸びん」
「そう言うものか――まったく」

 ぺし、と葬師が彼女の頭を叩く。訝って見上げれば、ああ、という顔をされた。

「妹を最後に見たのが、お前と同じくらいの年の頃だったからな――少し重ねているのかもしれん。似ても似つかないんだがな」
「あんたの妹なら、髪の色は同じだろう? 私のような銀髪だとは思うが」
「いや、俺は鬼子だったからな。全く似ていない」

 鬼子。
 ふうん、と彼女は生返事をする。

「大体あいつはもっと大人しかった」
「喧嘩なら買い叩くが」
「まあいい、お前が武者修行に来たと言うならほとぼりが冷めるまで――腕試しに出るのも良いか」

 葬師が足を止める。見れば、彼の視線の先には巨大な門が立っていた。門番のようにMSが佇んでおり、その前には数人のビジターが立っている。少しの問答の後、ドアが開かれた。入り口の案内看板で見た記憶がある――おそらくは、ヘルズゲート。セフィロトの内部へと続くドア、その向こうにはタクトニムが待ち構えている。様々な敵が、待ち構えている。
 ぶる、と彼女の脚が武者震いを起こした。

「ゲートを開けるにはギルドの認証が必要だ。お前はまだ持っていないし、俺は端から持っていない」
「あんた、ダメダメだな」
「煩い。……とにかく、そういう場合は他の連中が通る際に、便乗して入り込むのが良い。たまにゲート破りしてる奴がいるから、そいつに更に便乗するのも良いだろう――と。丁度良いところに」

 見ればゲートの前にビジターの姿があった。どうやら内部に行くらしい、丁度良い――白玲は弓に矢を番え、上空に打ち放つ。

「……おい?」
「脚の関節や銃身を狙うだけだ。タイミングを見計らって連中に向ける」

 問答、ゲートが開く――彼女は矢をMSに向けた。一瞬の混乱にゲートが無防備になる、隙を突いて入り込む。罵声か怒声か、声が聞こえたが無視した。ドアが閉じられ、音と空間が遮断される気配が背中に伝わる。ゆっくりと速度を落とし、彼女は、辺りを見渡した。
 人の気配はごくごく朧で、何がいるのかいないのか分からない。静寂の中、機械の稼動音が僅かに響いていた。廃墟の群れは、復興前の町並みを髣髴とさせる――この場所だけが、まだ大暗黒期で止まってでもいるような。矢を取り、弓に当てておく。いつでも対処が出来るように。

「さて―― 一番近いのは居住区か。腕試しには物足りないかもしれんが、精々頑張れ」
「言われずともそのつもりだ。そちらこそ足手纏いになるな、助けてやる余裕など知れんのだからな」
「ふん。まあ、いつも通りにはな――ああそうだ、逸れるなよ。ここで迷子になると洒落にならないからな」
「子供扱いするなッ」

■□■□■

 攻撃は居住区に入るなりの事だった。もっともそれは予測されたものであったと言っても過言ではない、場所を移る、境界と言うのは獲物を待ち構えるために適した場所である。放った矢の加速度を調節し、タクトニムの装甲版の間を貫く――繁華街で矢を無駄遣いしたのは失敗だったかもしれない、纏めて四・五発放つとすぐに残量が心許なくなってきた。
 対しているのは三機。内一機の相手は葬師がしており、一機は白玲の矢で倒れていた。残りの一機は彼女に向かってきている、こちらの方が小柄で潰しやすいと思っての事か。チッと舌打ちをし、矢を放つ。薙ぎ払われた矢は力を失い、ばらばらと落ちていた。もう残量もない、一本に集中するのでは効率が悪い。床に向かって振り下ろされる腕を避けて飛び退けば、傍らに倒した一機に転がっていた。

 そこに刺さった矢を引き抜き、弓に番える。
 気配が、あった。
 倒れていたタクトニムが、その腕を――

「ッき、あ」
「まったく――」

 葬師の声が響く。

 見れば、白玲に向かっていた一機の動きが止まっていた。倒れていたはずの一機もギシギシと音を立てながら停止させられ――葬師が相手をしていた一機は、宙に浮いている。三機とも飛ぶタイプのものではなかったはずなのに。白玲は呆然と、口を開ける。
 避けているだけだった葬師の周囲には、いつの間にか無数のリングが浮かんでいた。そしてそのいくつかが、タクトニム達の動きを封じている。ミシッという音が響く、分厚い装甲版がリングに締め付けられて罅割れていた。彼女の矢でも貫けなかったそれが、ぎりぎりと締め上げられていく。

「確かに修行が必要のようだな。任せてみたが、少し隙が多い」
「そ、うし」
「物を操るのなら、応用は大切だ。何よりも予断はするな、命に関わる――」



――Kyrie, Eleison.
――Christe, Eleison.
――Kyrie, Eleison.



 響いたのはレクイエムの一節だった。歌に呼応するようにリングの直径が狭められ、タクトニムの身体が締め上げられていく。罅割れは大きくなり、機体のうねりも激しくなっていく。やがて装甲版が完全に割れ、抵抗のなくなったその身体にリングが食い込んだ。ブチリと音が鳴り、部品が千切れる。あれほどに苦戦した相手が、簡単に。
 そういえば繁華街で最初に矢を放った時も、リングに矢を止められていた。速度は緩かったとは言え、手で止められるほどに遅かったわけでもない――それを止めていたのだから、その動体視力も大したものだったのだろう。自分は矢の周囲を見ることが出来るが、果たして、彼は。

「無事か?」
「あ――あ、あ」
「さて、矢も無くなったようだしな。今日はここまでとしておくか。そろそろ向こうも新しい騒ぎが起きて、ほとぼりが冷めている頃だろう」

■□■□■

 ゲートは入った時と同様に、誰かが入ってくるのに便乗して飛び出した。捕まらないように逃げたが、向こうも慣れているのか深追いはしてこない。ふぅっと息を吐き、白玲は葬師を見た。彼は歩みを止めずにさっさと進んで行く――どこに、向かっているのか。コートの裾を眺めながら、その後ろを付いていく。

 助けられたのだから礼を言わなければ、と思っていた。ゲートを出る前も、歩いている最中も、それを考えていた。だがどうもタイミングが掴めない、無言で歩いている所為だろうか。どうにか会話の切り口を作らなければ。

 白玲は顔を上げ、口を開く。
 ぽん、と頭を撫でられた。

「――ぁ?」
「ここがギルドだ。とにかく登録より何より先に地図は貰っておけ、もう迷うな。次も誰かが助けるとは限らんし、俺みたいな奴に見付かるとろくなことが無い」
「あ、あぁ」
「それじゃあな」
「ま、待て――」

 さっさと踵を返される、声を掛けるタイミングが逸される。
 溜息を吐き、白玲は自分の手を見詰めた。
 とにかく精進は大切らしい――暫くは、それに専念だ。
 ギルドのドアを叩く、開かれたその向こう側には武骨な男達がたむろしていた。

 まずは、ここから。



■□■□■ 参加PC一覧 ■□■□■

0529 / 呂白玲 / 十五歳 / 女性 / エスパー


■□■□■ ライター戯言 ■□■□■

 随分長くなりましたが…初めましてこんにちは、ライターの哉色です。この度はご依頼頂きありがとうございました、早速お届け致しますっ。PCの口調や性格などがちゃんと出せているか不安なのですが、如何でしたでしょうか。どうやら初めてのノベルとお見受けしたので気を付けたのですが……ああわわ。妙な所などございましたらどうぞリテイク掛けてやって下さいませ;
 セフィロトはNPCと一緒に動かしていく予定で、のろのろとですがシナリオも増やしていく所存です。また機会がございましたらどうぞご利用下さいませ。それでは少しでも楽しんで頂けている事を願いつつ、失礼致しますっ。