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EP2:Another Mind
人工の光にあふれる、マルクト……その中でも、享楽の通りと巷で呼び合わされる通りを空は彼女らしからぬ、気も漫ろな様子で一人歩いていた。
安っぽいネオン灯の光に、傾いた看板。彼女のような妙齢の美女にはあまり縁のない、場所といえた。
うにゃ〜……
余程、このあたりの食事情が宜しいのか、まるまると太った虎縞の猫が路地の小道からのそりと、大通りに出てきた。
「…猫……」
ふてぶてしいその様子が、なんだか笑いを誘う。
「そういえば、あの子も猫を連れていたわね……」
先日捕まえる寸前に、逃してしまった小鳥のような少女をふと思い出した。
目の前の通りから、猫を追いかけるように飛び出してきた少女。その柔らかな髪は、 今は無い小さ島国の春を告げる花と同じ、淡いピンク色。
「アシャ!」
くるりと少女が振り返った。
「誰?」
意思の強い眼差し。人違い?そんなはずは無い。少女の手の平につけているハンカチは空のものだったから。
「あたしを、覚えてないの?」
うーんと、少女はこめかみに指を当てて考え込んだ。
「アシャのお友達?でも……」
残念ね。
「アシャなら寝てるの」
ここでと、まだ未発達なふくらみの小さな胸に両の手の平に押し当てた。
「……寝てる…?一体どういうこと」
「ねぇねぇ、暇ならあたしと遊んで」
とててて、と警戒心の欠片も無く空に駆け寄った少女はその手を引いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あたしは空よ、貴女は?」
以前も口にした問い。
「ないしょー」
「それは困るわ、遊ぶときに名前がないと貴女の名前が呼べないもの」
空の質問に少女は目をぱちぱちと瞬かせる。
「うーんとね、じゃぁ……空があたしのことを捕まえられたら教えてあげる♪」
言うやいなや、少女はたたっと、壁を蹴り三角飛びの要領で傍の建物の屋根に飛び上がった。空が鬼よ。笑い声が頭上から聞こえてきた。
「多重人格みたいなものかしら…?」
明らかに先日のアシャとまったく違う空気をまとう少女。
「でも……こっちの子の方が付き合い易そうね」
折角のお誘いを断る、いわれは無い。あちらが遊ぼうといっているのだから……
「一緒に遊んでもらおうじゃない」
ニッとその濡れたように艶やかな赤い唇に、空らしい妖艶な笑みが戻ってきた。
「あの子も身が軽そうだし……本気を出した方がいいかしら」
これは少し手ごわいかも。空は自分の体に意識を向けた。
変容は一瞬。顔以外の表皮は白銀の艶やかな体毛に覆われその耳は大きくとがっている。長く太い尾を持つ狐型の獣人の姿があった。
肉体強化能力ボディESPに秀でた、空の戦闘形態の一つ玉藻姫。狭く、障害物の多いマルクトの中で最も効率よく動けるだろうと、予想しての選択。
獣人と化した空の鋭い嗅覚が、少女の方向を告げていた。
「今度は逃がさないわ……」
少女を追って、空もその今にも抜け落ちそうな屋根に飛び移った。
少し先の屋根を、子リスのように少女が身軽に飛び移っている。
「見つけた」
空の視線を感じた少女が、振り返りその瞳を見開く。
驚いたような、唇の動きが空の名を呟いた。
人の物とはまったく違う、正に獣の身のこなしで、空は少女との間合いを詰める。その動きにあわせ、太く長い銀色の尻尾が動く。
少女の身軽さは、本物だった。玉藻姫の状態の空の追跡を巧みにかわし、路地から路地を逃げ回る。それでも、空の追跡をかわすことは出来なかった。
「すごいね……空…」
流石に荒い息をつきながら、少女が開けた路地に腰を下ろす。
「さ、約束よ。貴女の名前を教えて」
こちらは息一つ乱さずに、少女の傍にストンと降り立った。体の力を抜くと、獣人から元の空の姿に戻る。
「ドゥルジ」
「ドゥルジ?随分変わった名前ね」
「みんな、そういうの。でもこれがあたしの名前」
額に光る汗を拭わずに、まっすぐドゥルジと名乗った少女は、空の瞳を見た。
「汗もかいちゃったことだし…ドゥルジだったわね。もっとあたしと楽しいことしない?」
「いっしょに遊んでくれるの?」
ドゥルジがぱっと瞳を輝かす。
「えぇ」
一緒にいい事しましょ。もっともっと楽しいことを。
空がドゥルジを伴って訪れたのは、歓楽街の中にあるモーテル。けして、上等とはいえない場所だが、シャワーが各部屋についていたのが気に入った。
やはり珍しいのだろう、興味深そうに部屋中で少女がきょろきょろとあたりを見回す。
「服を脱いで」
「うん」
ベッドの傍で、空も服を脱ぎ捨て下着だけになる。
「お風呂は?」
「遊び終わった後で一緒に入りましょ」
恥じらいも何も無く、ドゥルジも着ていた白いワンピースを脱ぐ。この年頃の少女特有の白い滑らかな肌が、薄暗いルームランプの下に晒された。
「何して遊ぶの?」
何も知らない無垢な魂。摘み取る、果実の味はさぞ甘かろう。その瞬間を考えるとゾクゾクしてくる。
無邪気に見上げる少女と視線を合わせながら空は密っりと笑みを漏らした。
「こうして、遊ぶの……」
啄ばむように、数回少女の柔らかな唇を奪った後、空は深く口付けそのまま少女をベッドに押し倒した。戯れに、その悪戯な指は少女の髪を飾っていた、リボンを引き抜いていた。
それ程広いとはいえない、簡素なベッドのシーツに広がる淡いピンクの髪。波打つドゥルジの髪に空の銀色の髪が滑り落ち、褥の上に2色の流れを作る。
「空…?」
繊細な指の動き。未知の感覚に、少しだけ少女の声が上ずる。
「大丈夫、全てをあたしに預けて……」
力の抜いて……耳元で、優しく囁きながらその柔らかい耳朶に歯を立てた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
享楽の宴が一段楽したの何時のことだったか。瑞々しい少女の体を存分に、味わい尽くした空は一種の心地よい達成感に包まれていた。
薄らと少女が瞳を明けたことに気が付いた、空は薄く開いたその唇を舐めあげる。
「気が付いた?」
「く…う…?」
掠れた声をもらす、ドゥルジはまだ忘我の境地にあるのか瞳を彷徨わせていた。
「楽しかった?」
「…よくわかんない…」
でも…
「空の体が暖かかったの……」
きゅっと傍にあった柔らな白い胸の谷間に顔を埋める。
「そう?」
なら良かったわ。優しく、その髪を撫でてやる。予想以上の少女の感度と相性のよさに、満足げな顔。
「さ、汗を流そうか?」
いろいろと運動をした、二人の首筋や額にはそれぞれの髪が張り付いたまま。まだまだ、これで終わったわけではないのだけれどと、空は心の中で舌を出す。
その艶やかな笑みの下で空はこれから先、まだ長い夜の営みの数々を気だるげなドゥルジに重ね合わせて思い描いていた。
【 To be continued ……? 】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【0233 / 白神・空 / 女 / 24歳 / エスパー】
【NPC / ドゥルジ】
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■ ライター通信 ■
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白神・空様
お届けが大変遅くなってしまって、申し訳ありませんでした。
いろいろと、下準備で躓いたり、話の構想に手間取ったりと…不手際の連続で…(すみません><)
うちの娘を美味しく召し上がられる、空さんの妖艶さが上手く出せずにぎりぎりでの納品となってしまいました…。
これに懲りず、また路地裏に脚を運んでいただければ幸いです。
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