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都市マルクト【整備工場】武器マーケット
ライター:東圭真喜愛
■オープニング■
整備工場名物の武器マーケットだ。
自分にあった新しい武器を探すのも良い。
頼めば試し撃ちくらいはさせてくれる。弾代は請求されるけどな。色々試してみたらどうだ?
新しい武器がいらないとしても、今使ってる武器の弾や修理部品を探す必要もあるだろう。
まあ、楽しみながら色々と見て回ってくると良い。売り子の口上を楽しむのも面白いぜ。
それに、ここで目を鍛えておかないと、いつか不良品を掴まされて泣く事になりかねないからな。
何事も経験と割り切りながらも慎重にな。
あと、掘り出し物だと思ったら、買っておくのも手だ。商品は在庫限りが基本で、再入荷なんて期待は出来ないぞ。
■それぞれの戦利品(お買い物)■
さて、大事なバイクは取られると困るので隠しておき母親ジェミリアス・ボナパルトの車で来ていたアルベルト・ルール、それに赤いオープンカーで彼女達を追いかけてきていたエクセラ・フォースは、それぞれにちょっとしたカルチャーシッョクのようなものを覚えていた。
まず、衛生管理の悪そうな大きな広い場所に敷物の上に無造作に武器が置かれ、あちこちで売り子達が些か上品とは言い難い声で客の呼び込みをしている。
それはよかったのだ。セフィロトの中というのはどういうものかというのは、一応予想はしてきていたのだから。
しかし、まず一回りしてみて、「少なくともこの場所では権力も大金も通用しない」、ということだった。どうやら一人の店の者に聞くと、「俺達は物々交換のほうがどっちかっていや重要視してるからな」と言う。
そもそも、セフィロトは他国の国家権力の影響はない、と分かったのは、とあるどこかのお偉いさんと店主のやり取りを聞いたからだ。店主は「ここはブラジルなんだよ。連邦のお偉いさんだろうと、マルクとでは特別扱いはしないさ」と、全く怯む様子はなかった。
◇
「はあ!? こんだけ古札も宝石も持って来てんだぜ。いくら物々交換のほうがいいからって、これくらい出せば買えるだろ!」
早速店の者との言い合いで頭に血が昇り始めている、アルベルト。それはそうだろう、彼は今回、所持金としてスーツケース4個に入った「古札(レアル、ドル、ポンド、ユーロ、円、スイスフラン:各1億円相当)、宝石約1千億レアル相当」と、かなりの金額を持ってきていたのだ。
それが、「セフィロトの中では特に、古札は価値が落ちる、価値で言えば『物』のほうがはるかに高い」と言われたのだ。
「困ったわ……エリアちゃんの持っていた100万円相当のお金も確か、ユーロだったはずなの。お金が足りないと思って追いかけて持ってきたのだけど……」
エクセラがため息をつく。そのエリアとも、一回りしてきている間にはぐれてしまった。
「ものによっては、買えるかもしれないわよ?」
何故か今日は機嫌の悪いジェミリアスが、冷たい視線で売り子達を見渡しながら、口を開く。
「とにかく、私達もエリアさんを探しながら、各々買いたいものを買いましょう」
「そうですわね」
「あっ!」
歩き出そうとしたジェミリアスとエクセラの足が、アルベルトの焦ったような声に止まった。
「ない、この前渡された『例の紹介状』!」
───この喧騒の中だ、スられたのだろう。
「───欲しい武器に、追加品として『無礼者探し』も、のようね」
ジェミリアスが、冷たい雰囲気を放ちながら、言った。
◇
パチンコを探しに来た、と、とある店主にエリア・スチールが言うと、
「パチンコっつか、スリングショットならあるぜ」
と、返って来た。
「すりんぐしょっと、ですか?」
エリアがきょとんとすると、店主は後ろから、一つの、パチンコとさほど形状の違わないものを出してきた。
「これだよ。腕に固定するタイプで、まあ威力は武器としちゃあ弱いが『パチンコ』の中ではいいものだぜ。使い方によっちゃ、ゴム弾・飴玉・ペイント弾だって使える。ペイント弾なら威嚇撹乱にも使えると思うけどな?」
エリアは気に入り、「ちょっと試し撃ちをさせて頂いてもよろしいでしょうか?」と尋ねて店主が頷き、行き方を説明してもらい射撃場へと向かった。
◇
「いいなあ、あれも、これも欲しいなー」
兵藤・レオナ(ひょうどう・─)は、売り子達の呼び声にあっちへふらふら、こっちへふらふらしていた。
去年の暮れに幼馴染へのクリスマスプレゼント調達にセフィロトに潜ったのはよかったのだ。
しかし、目当てのものの代わりにほぼ全装備を失ってしまったため、相棒のヒカル・スローターと同伴で買出しにこうしてきていたのだが、売り声に今のような状態で目移りしているうちにはぐれてしまった。
レオナの本日のお目当てのものは、主武装のMS用高周波単分子ブレード。
だが、発掘品は高すぎて手がとても出ない。かといって、かわりに物々交換できるものも持っていない。
彼ら武器商人達は、物々交換といっても金品宝石類よりも、やはり武器やパーツのほうに価値を高くつけているようだった。
レオナの欲しいものの廉価版も高い上、財布は相棒が握っているときた。
ため息をついていると、隣の店で、やはりアルベルト達のようにカルチャーショックを受けて逆ギレしてしまい、店主に難癖をつけている小悪党3人組を発見した。
「ここにはここの常識があるんだから、キミたちちょっと往生際悪いんじゃないの?」
ちょっと遊んでやるつもりで、そう挑発した。
「なんだとこのガキ」
うまい具合に、乗ってきてくれた。これで暇つぶしも出来るというものだ。内心ほくそ笑みつつ、レオナは更に言う。
「悪いねー、ボク、20歳なんだ。20歳は常識で言えばオトナなんだよね。ま、キミたちみたいな例外はいるみたいだけど」
すると、血気盛んな男が一人、掴みかかってきた。
「ちょっと、暴力はよくないよ!」
言いつつも、レオナも喧嘩っ早い気質だ。自然と言葉と同時に拳が出ていた。
◇
「頼んでおいたものが揃っていてよかった。これで足りるか?」
ヒカル・スローターはレオナとはぐれた後、仕方なく一人で銃職人のところに来ていた。場所が場所なので何が起こるか分からないことも考え、PP装着済みの上から服を着ている。
「ああ、充分足りるな。モノがそんなにテックレベルの高いものでもないし」
店主はヒカルから受け取った金を数え、彼女にカスタムガンを渡した。
ヒカルは前から、武器庫代わりに使っているチェロケースに若干の空きがあるので副武器として以前からカスタムガンの完成品頼んでいたのである。
「あら、ヒカルさん」
聞き覚えのある声に、銃を早速チェロケースの空きの部分に入れていたヒカルは顔を上げた。
ジェミリアスの姿を認め、少し口の端を上げた。
「奇遇じゃな。ジェミリアス殿達も武器を買い求めに?」
「ええ。息子の大事なものも取り返すはめになっているけれど、ね」
と、ちらりとジェミリアスは誰か胡散臭い人間はいないかときょろきょろとしているアルベルトを見やる。しかし武器マーケットはいわば胡散臭い者の集まりだ。なかなか見つからず、アルベルトはかなり苛々しているように見えた。
「あなたは、おひとりですか?」
エクセラが尋ねると、ヒカルは経緯を話し、それならば一緒にレオナを探そう、と逸早く購入を終えたヒカルは銃職人の売り場を後にした。
暫く広いマーケット内を歩いていると、ふと、一箇所からざわざわと「違う」ざわめきが聴こえてきた。
「喧嘩らしいぞ、また」
「それが威勢のいい女の子が一人で立ち回ってるんだと! 見に行かなきゃ楽しくないぜ!」
隣を駆けていく野次馬達のその声に、ジェミリアス達はそれぞれに顔を見合わせる。
ヒカルが走り出した。
「きっとレオナじゃ。一人で立ち回れる少女などあやつ以外におらん」
そのヒカルの後を、ジェミリアス達も追っていく。
ふと、アルベルトの腕に何かが飛んできて、彼は素早く避けて手でキャッチした。───ゴム弾?
「あ……ごめんなさい」
射撃場の近くを通りかかっている時だったので、本物の銃弾でなくてよかった、とエクセラもジェミリアスもホッとしたところ、謝って駆けてきたのはエリアである。
「あ、アルベルト様にエクセラ様」
きょとんとし、だがどこか安心したような表情で、エリア。こんな喧騒の中、やはり独りでいるのは心許なかったのだ。
エクセラが、エリアの忘れていったお金を渡して、とりあえず早めにスリングショットを買ってしまうと訳を話しながら再び走った。
◇
喧騒の騒ぎの真ん中で、レオナが果敢に戦っていた。野次馬はこういうことに慣れているらしく、ただ、女の子が一人だけで、ということが関心深いらしく時折「いいぞーねぇちゃん」など野次が飛んでいる。
だが明らかに、レオナは疲れてきていた。
「大丈夫ですか?」
こちらも女性が相手と知って態度がころっといつも通りにかわるアルベルトがレオナの肩を支えている頃には、機嫌の悪いジェミリアスが、にこりと絶対零度の微笑みを男達三人に向けた。
「悪いわね。いつもならある程度手加減するのだけれど、今日はご機嫌斜めなの。赦してちょうだいね」
一瞬背筋がひやりとした男達だったが、あっという間にジェミリアスの足と拳の餌食になり、数分後にはレオナに縛り上げられ、ジェミリアスに顎を上向かせられていた。
「ちょっとお聞きしたいのだけれど……良いかしら」
「はっ……はいっ」
すっかり怯えきってしまっている男達である。
「息子の大事な封筒がね、スられてしまったのだけれど……ご存知ない? 武器店MIYAMAへの紹介状で、黒い封筒って言えばここでは分かると思うのだけれど違って?」
「あー、その封筒なら」
ふと、喧嘩の近くだった拳銃屋が大富豪の養女のエクセラに、今回彼女の目的の品である小型の護身用の拳銃を手渡しながら首をこちらに向けてきた。
「俺のとこにあるぞ?」
「なんだと?」
アルベルトの顔色が変わる。拳銃屋の首を締め上げると、「違う違う、話を聞け」と拳銃屋が些か焦ったような声を出した。
「あのな、ここに来るのならスられることは覚悟の上で来な。上物は傍目にチラつかせる真似はしないこった。スる連中は一瞬でも獲物をみのがさねえんだから」
聞くと、その「スる連中」から一時的にスったものを比較的高めの金額で買い取り、スられた者に返してやっている、一種のボランティアのようなものをこの男はやっているようだった。
そしてアルベルトの紹介状もまた例に漏れずこの男のところに既に売られており、アルベルトは一応感謝の気持ちとして金を多めに渡し、武器店MIYAMAへやっと向かうことが出来た。
「ああ、待ってくれねえちゃん」
武器店MIYAMAの長い行列の後ろに自分もつきあいで並ぼうとしていたレオナに、違う職人、さっきレオナが「いいなー」と見ていた武器屋の店主が声をかけた。
「さっきの腕っ節と度胸、気に入ったぜ。金はいらねえ、なんでも好きなもん言ってみな。ただしねえちゃん一人だけだ。一人だけに大サービスだぜ、いいもの見せてもらったからな」
パチリとウィンクをする店主にレオナは「ほんと!?」と目を輝かせる。どうやら、武器職人の中にも、こんなイキな者も少なくないようだ。
いや、武器職人の溜まり場だから、こういう者が実は多いのかもしれない。
そしてレオナは無事に主武装のMS用高周波単分子ブレード、発掘品を手に入れることが出来たのだった。
さて、武器店MIYAMAの順番がさくさくと進んで回ってくると。
店主は難しい顔をした。
「あのな、普通の5.56mmバルカン砲なら売ってやれる。ただ、自動照準連射ってのはテックレベルBに入るから、ここ武器マーケットには基本的に入ってこねえんだよ」
「なら、どうしたらいい?」
アルベルトは食い下がる。
「とりあえずこの紹介状は確かなものだしな、今は5.56mmバルカン砲売ってやる、なんでも一個なら交換できるってのが紹介状だからな。住所はどこだ? とても一人で運べたものじゃないから宅配で送る」
「ああ、住所は……」
アルベルトが「バイクに搭載する予定なんだ」と話しながらメモ用紙にサラサラと当面の住所を書いていると、店主はそのメモを見直し、
「バイクに搭載ねぇ……どんなバイクでも、まあタイヤがパンクしないことを祈ってるよ」
と、もっともな意見を言った。
そして、ジェミリアスには手榴弾12個×12ケースを希望通り売った店主は耳寄りな情報を小声で教えてくれた。
なんでも、塔内のタクトニムが自動照準連射バルカン砲というのを所持しているらしく、欲しがる者の何人かが行ったが、誰もが酷い目にあって帰ってくるだけだという。
「良かったら自力で手に入れてみないか? うまくすりゃあ名声もあがるぜ」
こういう話に、男は腕が鳴るものだ。アルベルトもまた、ちょっと興味深げに目をきらめかせていた。
「よし、次の探索の時にでも行ってみるか。店主、できるだけ詳しい場所を教えてくれ」
そしてアルベルトが戻ってくると話を皆にして、帰りに皆で軽く昼食でもとっていこうということになった。
いいピザとケーキの店をエリアとレオナが見つけて入り、それぞれに注文をすると、ジェミリアスがご機嫌な息子に一言、こう言ったのだった。
「この前持ち出した指輪はどうせ誰かにあげちゃったんでしょうから、お金はちゃんと返して頂戴ね」
にっこりと、無礼者をなぎ倒した美しい真っ赤な口紅の目立つ体のラインが出る黒革パンツスーツを着た母親は、息子のアルベルトには今日は特に、女王様に見えて素直に頷くしかなかった。
それを微笑ましく見ながら、ピザやケーキを食べるエリアとレオナ、ヒカルにエクセラなのだった。
《END》
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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】
0552/アルベルト・ルール (あるべると・るーる)/男性/20歳/エスパー
0536/兵藤・レオナ (ひょうどう・れおな)/女性/20歳/オールサイバー
0541/ヒカル・スローター (ひかる・すろーたー)/女性/63歳/エスパー
0544/ジェミリアス・ボナパルト (じぇみりあす・ぼなぱると)/女性/38歳/エスパー
0592/エリア・スチール (えりあ・スチール)/女性/16歳/エスパー
0598/エクセラ・フォース (えくせら・ふぉーす)/女性/25歳/エキスパート
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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、または初めまして。ライターの東圭真喜愛(とうこ まきと)と申します。
この度はご発注、ありがとうございましたv そしてまずは、気管支炎になってしまったことと父の一周忌が重なってしまい、執筆が遅延しましたことを深くお詫び致します。
内容には、なるべくPC様其々の個性、主に性格を重んじて取り入れて書いてみましたが、如何でしたでしょうか。今回は皆様のプレイングを総合して考え、全体的にあまり危険のない、けれど武器マーケットがどのような場所であるか、ということを知識として分かるようなノベルに仕立て上げてみました。アイテムはそれぞれに手に入れられたはずですので、また後ほどご確認をお願いできたらと思います。本当は、もっと武器マーケットはゴロツキのような連中もたまっていそうだなと考えたのですが、今回はやめておきました。
何はともあれ、少しでも楽しんで読んで頂けたなら、幸いです。
ご意見・ご感想等ありましたら、お気軽にお寄せくださいませ。
これからも魂を込めて書いていきたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い致します<(_ _)>
それでは☆
2005/03/07 Makito Touko
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