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<バレンタイン・恋人達の物語2005>


Confession 〜貴方へ伝える思い〜

 一体何がいいのでしょう?一つの所に、留まる事がなく、帰ってきたら直ぐに出かけてしまうあの人を思い、ぱらぱらとページを捲る。
 あの人は一つの所に留まらない、流転する川の流れか、吹き抜ける風のような人。
 どうしたらあの人にわたくしの思いを上手く伝えることができるかしら……?
「在り来たりだけどやっぱりぃ……」
 手作りのお菓子が一番でしょうか?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ここマルクトでは珍しくなった、紙のレシピ集には、色とりどりなお菓子の作り方が並んでいる。
 折角のバレンタインに贈るなら……
「チョコレートかしら?」
 彼は甘いものが大丈夫だったかしら?男の人だから少し甘みを抑えた方がいいかもしれない。
 考えているだけでも、なんだかわくわくしてくる。バレンタインは女の子の聖戦なんて、以前は言われていたこともあったみたい。本当にその通りだと思うの。
 好きな人に、自分の心からの思いを伝えることが出来る素敵な一日。こんな素敵なイベント楽しまなければ損。
 何がいいだろう?
 チョコレートたっぷりのケーキ?可愛らしいカップケーキ?マーブル模様の入ったクッキー?それとも、やっぱり大道のハート型のチョコレート?
 可愛くラッピングして渡そう。細いリボンも結ぼう。
 はにかみながらも、きっと彼は受け取ってくれるだろうから。わたくしの思いにもきっと気が付いてくれるはず。
「上手くできるかなぁ?」
 美味しくできればいいけどぉ………
「作る前から弱気になってちゃ、だめよね」
 大きくぶんぶんと頭を振り、もう一度レシピ集を見た。きっと美味しく出来る。料理の基本は、出来上がりを想像しながら楽しい気持ちで作ることが一番大切なの。
 マイナスのイメージのままつくったら、その気持ちが料理に出ちゃう。
 なんといっても、今回作るのは思いを伝える大切なお菓子なのだから。あの人が好きだというわたくしの思いの丈の気持ちをめいっぱい込めてつくろう。
「これにしましょ♪」
 レシピの一つに目に入る。それ程難しくなさそうだし、何より美味しそう。きっとあの人も気に入ってくれるはず。

 甘みを抑えたシャンパントリュフがわたくしが選んだ、チョコレート。
「材料はぁ……スィートチョコレートと生クリーム……この辺はあるわ」
 アーモンド、ココアパウダー、グラニュー糖までは何の問題も無くそろう。
「後はシャンパンね……」
 流石にお酒まではわたくしも常備していなかったので、これは買わないといけないみたい。
「料理用のワインならあるけど…だめよねぇ?」
 スパークリングワインでも大丈夫とあるけど、流石に赤ワインはやめておいた方がいいかな。手抜きは失敗の元だしね。
「料理用の温度計も必要かな」
 チョコレート作りは温度管理が大切だと聞いたことがあったから、買い物メモに追記する。
 ラッピング用の、箱と包装紙とリボンも買い揃えて、結局作り出したのはお夕飯の後。
 これは徹夜も覚悟しておいた方がいいかも……。
 チョコレートを刻んで、温めた生クリームに入れて溶かす。砂糖と買って来たシャンパンも入れて優しく混ぜ合わせると、トリュフの中に詰めるガナッシュクリームが出来上がっる。
「よし」
 うん、良い感じ。ここまでは順調だ。出来たガナッシュクリームを少しだけスプーンにのせて味見。
「美味しぃ!」
 甘すぎなくて、ほろ苦い少し大人の味が口いっぱいに広がる。これならきっと大丈夫。彼も気に入ってくれるはず。
 俄然やる気になって、眠気も忘れて、わたくしはガナッシュを丸めていった。

 明け方も近くなったころ、わたくしの前にはお皿の上にはココアパウダーやココナッツパウダーそしてアーモンドで飾られたトリュフの小山が出来ていた。
 少し形が歪な物もあるけど、それが余計に手作りの感じを引き立たせていると、自画自賛。
 ラッピングをすれば、完璧だ。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 チャイムが彼の来訪を告げる。
「どぉ〜ぞ〜♪」
 わたくしはいそいそと玄関まで彼を出迎えた。折角きてくれたのだから、一番可愛いわたくしを見てもらいたい。
「あまり出来栄えは良くないのだけれど、受け取ってくれるかしら」
 少しだけ、小首を傾げて見せて、作ったチョコレートを差し出した。
 突然の出来事にきょとんと、していた彼の首筋まで直ぐに真っ赤になる。
「…あ……」
 ふふふ、照れてるわ。徹夜をしてまで作ったかいがあったかも。
「有難う」
 口ごもりながらも嬉しそうに、彼はわたくしのチョコレートを大切そうにコートの内ポケットにそっとしまった。
 まるで落としたら壊れてしまうガラス細工がはいっているとでもいうように。
 宝物を扱うような、彼の様子が何よりも嬉しかった。

「じゃぁいこうか」
「えぇ」
 わたくしは差し出された、彼の腕に自分の腕を絡ませた。
 今日は恋人達のための特別な一日、貴方のとっても素敵な一日であって欲しい……
 わたくしは貴方がいるだけで、幸せよ……


 仲睦まじく寄り添う二人は、街並みに消えていった。



【 Fin 】




登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】


【0592 / エリア・スチール / 女性 / 16歳 /エスパー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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エリア・スチール様

初めまして、はると申します。
バレンタイン・恋人達の物語への御参加ありがとうございました。
チョコレートを彼へ作って渡したいとの、ことでしたのでエリアさんの視点から書かせて頂きましたが……いかがでしたでしょうか?
楽しんでいただければ幸いです。
素敵な一日を書かせていただきありがとうございました。