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ブラジル【都市マナウス】休日はショッピングに
ライター:燈
【0.オープニング】
アマゾン川を下ってはるばると。長い船旅だったが、ようやくついたな。
ここがブラジルのアマゾナス州の州都だったマナウスだ。
審判の日の後の一時はかなり荒れたが、今はセフィロトから運び出される部品類の交易で、かつて魔都と呼ばれた時代の様ににぎわっている。
何せ、ここの支配者のマフィア達は金を持ってるからな。金のある所には、何でも勝手に集まってくるものさ。
ここで手に入らない物はない。欲望の赴くまま、何だって手に入る。
もっとも、空の下で思いっきりはしゃげる事の方がありがたいがな。何せ、セフィロトの中じゃあ、空も拝めない。
お前さんもたっぷり楽しんでくると良いぜ。
【1.集合】
「んー…よし、みんな集まったかー?まあ偶には骨休めも必要ってことで今日は集まったんだけどー…」
みんな何する?とギルハルトは少々腰を屈めて微笑んだ。正面には白玲とシーム――どちらも年齢にしては幾分背が低く、幼く見える――、斜め後方では空を見上げたまま口元に微笑を刻み、ふわふわと宙に浮いているフルークの姿が。
「ボクは特にやりたいことないなぁ…久々に太陽の下に出て来たかっただけだしね!だからギルハルトおじさんにくっついてくよ」
親指を立てて元気よく宣言したシームは、白い歯を覗かせてにっこりと笑った。
「私も特にこれといって重要な買い物はないからな…一緒に行こう」
白玲は腰に手を当てたまま悠然とした表情で告げる。実は方向音痴の気があって、一人でこんなに人込みの多いところを歩いていたら、まず間違いなく迷うだろう、ということは隠しておく。
「俺も欲しい物ってアサルトライフルぐらいだしなー。じゃあみんなでブラブラする?」
ギルハルトは後方を振り返って、ぼぅっとしているフルークに向けて問うた。フルークはやはり空を見上げたまま答えを返す。
「ああ。俺もちゃんとついてくし…アクセサリーとか、欲しいかなって思うけど…」
かくして、一行は4人でそぞろ歩くことになったのだ。
【2.繁華街】
煉瓦造りの簡素な建物が立ち並ぶ。マナウスはずっと以前に『森の都』と呼ばれた程木材が充実していたが、数々のエネルギー源が失われた現在では、木は燃料として扱われるようになり、代わりに近辺で採れる赤土を利用した煉瓦が壁の材料としてよく使われていた。
広い通りに出るとワゴンの店が出ていることもある。この辺りの人間は養蓄業に熱心で、肉の類は安く手に入った。加えて、歴史を遡った民族料理も盛んであるためさまざまな種類の肉がその場で味わえる。
「なかなかいけるな。これは何の肉だ?」
薄くスライスされ串に通った肉を頬張りながら白玲が尋ねた。店員はピジンイングリッシュで早口に「牛の耳だ」と答える。ふうん、と自分から聞いた割には気のない返事をすると、白玲は最後の一切れを食し串をワゴンにつけてあるドラム缶に放りこんだ。
「やっぱり外で食べるとおいしいね〜!」
既に食べ終わったシームが白玲に笑顔を向けた。白玲はその言葉に妙に納得したように頷いた。そうか、外で食べるから美味いのであって、これをマルクトの中で作ったって同じ味だとは…。
少し後方ではギルハルトが財布の中身を確認していた。いくら安いからと言って、先ほどから結構な数の店を食べ歩いている。先日少し稼いでいたので気前よく奢っていたのだが、そろそろ止めないとアサルトライフルの購入が危うくなるかもしれない。
そう思って声を掛けようとすると、シームは何か見つけたらしく目を輝かせてギルハルトを手招きした。差した指の先には露店のようなものはなく、ギルハルトは訝しんで彼女に近付く。
「何?」
「ギルハルトおじさん、今日はたくさん奢ってもらっちゃったからお礼にすっごいアサルトライフルが買えるようにしてあげるよ!」
言うが早いかシームは指し示した先にある薄暗い階段を下りていったのだった。
一晩のうちに…いや、一瞬のうちに大金が泡として消え失せ、また泉のように湧き出でる場所、カジノ。人の流れもさることながら、金の流れはもっと凄まじい。昼間でも暗い地下に設営されたそこは、珍しく暖色のランプが薄らと灯っている。
シームはスロットの前に座っていた。既に結構勝っているみたいで、周囲の人間がちらちらと彼女の方を見ている。ギルハルトはまずいな、と少し眉根を寄せつつ、そうっとシームに近付いた。
「潮時かな」
黙ったまま隣に座ったギルハルトに聞こえるようシームが呟いた。ギルハルトが頷くと、シームは「ちょっと待ってね」と言って最後にもう1度スロットを回す。――結果はハズレ。賭けていた500レアルを損失した。恐らく、わざとだ。
店員から少々刺のある視線を浴びながらも、2人はなんとか無事に外へ出ることが出来た。再び青空の下に戻って、シームはうんと伸びをする。
「所詮マフィアの根城だしね。最後ぐらい負けとかないと、折角の休日潰されちゃいそう!」
掛けていたゴーグルを額に上げながら、目がチカチカする、とシームは笑った。お礼を貰って懐具合が5割増ししたギルハルトもつられて笑う。
「あれ、そう言えばフルークちゃんの姿が見えないけど…?」
カジノの入り口で待っていた白玲にギルハルトが尋ねると、白玲は呆れた風にアレ、と通りの方を指差した。いつの間にか人だかりが出来ている。
白玲の指が動くままに視線を動かすと、その先ではフルークが楽しそうに空を飛び回っているところだった。空中で大きく旋回したり、地面すれすれまで落ちて急上昇をしたりして、観客からはおひねりが飛んでいる。
「先程からずっとあの調子だ。いい加減他の所へ行かないと日が暮れてしまうぞ」
待ちぼうけを食らわされて不機嫌になってしまった白玲を宥め、一行は続いてショッピングセンターへと向かうのだった。
【3.レッツ・ショッピング】
様々な種類の商店が軒を競っている商店街。4人は一件の服飾・装飾品店にいた。
「こちらはイーグルフェザーのペンダントになります」
にこりと笑った店員に、フルークは軽い返事をして実際にそれを手に取った。さらりとした羽根の感触は心地よく、付随しているトルコ石の澄んだ青さはどこか空を思い浮かばせる。知らず微笑が浮かんだ。
「貰おう」
「ありがとうございます」
店員は一礼して包装紙を取り出したが、フルークは金をカウンターに置きつついらない、とそれを制した。たった今購入した鷲の羽根のペンダントの茶色い皮紐を解き、早速首に掛けてみる。
上機嫌でフルークが皆の所へ戻ろうとすると、何やら子供服売り場の方が騒がしかったので、ちょっと覗いてみることにした。
「つまり私の背丈に合う物はここにしかないということか!?」
「い、いえ…そんなつもりは…」
聞いたことのある声は白玲のものだった。大方新しい服でも、と見ていたところを店員に迷っているのと勘違いされてこちらへ連れて来られたのだろう。早とちりしてしまった店員の方が悪いといえば悪いのだが、ちょっと不憫に思ったフルークは戸惑いながらも白玲に声を掛けた。
「おい…」
女性に耐性のない彼は、いくら相手が10以上も年下で、さらに幼く見えようとも何となく気後れしたような調子になってしまった。そのことにフルークは眉を顰め、それに気付いた白玲が声を掛ける。
「買ったのか?」
「え?」
ソレ、と白玲が指差したのは、フルークの胸元で揺れているフェザーペンダントだった。「なかなか似合ってるぞ」と事も無げに言われ、フルークは照れ臭くなって後頭を掻いた。
「…サンキュ」
そっぽを向いてぼそっと呟かれた言葉はかなり愛想も素っ気もなかったが、白玲は自分もぶっきらぼうな方なので気にしなかった。それにしても、と彼女はいつの間にかいなくなってしまった店員のことを思い出して怒りを復活させる。
「確かに私は他人と比べてちょっと小柄かもしれんが、子供服というのは失礼ではないか!」
青筋を立てた白玲は暴れ出しこそしないもの、全身から怒りオーラを放っていて、フルークはどうしたものかと暫し考え込んだ。
「…いいんじゃないか?身軽な方が高く飛べそうだし…」
「何?」
「俺は見ての通り結構でかい方だが…もうちょっと小柄だったらもっと高く速く飛べたんじゃないか、とか、思う…ってんなの俺だけか」
白玲は呆気にとられたようにじぃっとフルークの顔を見ていたが、フルークが困った風に自分の髪をくしゃくしゃと掻き混ぜたのにふぅと溜息を吐いて、結局のところ訳のわからない理由で溜飲を下げることにしたようだった。
【4.戦利品】
日も暮れかけた頃に4人が訪れたのは、所謂武器マーケットという場所だった。マフィアが各地で台頭するようになって依頼、武器取引は最早公然と行われている。
「それはちょっと高いんじゃないー?」
重火器店の前でギルハルトは店の親父に抗議していた。だが親父は難しい顔で腕を組んだまま頑なだ。
「AK47だったらせいぜいテックDってところだろー?しかも中国製で、中古品じゃん」
「そうは言っても大口径のフルオート機能付きライフルは人気だからなぁ。対タクトニム戦ではこういうのが真価を発揮するもんだぜ」
だから弾薬2ケース付けてこの値段だ、と親父は断固として言い張った。
「確かに威力は凄いけどさぁ…AK47は照準線が短いから精密射撃には向かないし、第一量産できるでしょ。だからもう20レアルでいいからまけてくんない?」
これからも親父さんのところ贔屓にするからさ、とギルハルトは手を合わせて頼み込む。
「…10レアルならまけてやらんこともない」
「…17レアル」
「12」
「よし!それなら間を取って15レアル引くってことで。親父さんありがとー」
嬉々としてギルハルトがそう宣言すると、親父は負けたというように額を押さえて手を振った。ギルハルトは代金を支払ってライフルを紙袋に納めると、店の外で待っている他のメンバーに声を掛ける。
「みんなは何買った〜?」
なかなか良い買い物をしたのか、それぞれ上機嫌な様子だった。
「俺は鷲の羽根のペンダント。何かさ、空に近付いた感じしない?」
首から下げているペンダントを軽くつまんで、フルークは示して見せた。鳥の羽根のアクセサリー、というところがいかにも彼らしい感じがして、少し笑う。
「私は服を買った。…着るかどうかはわからんが」
何だかんだ言っても15才の女の子な白玲は、照れているのかちょっと俯き加減で言った。押しの強い店員にしつこく勧められて購入したのだが、悪くはないと思っている。
「ボクはモーターカー。色々と改造出来そうだし、すっごく楽しみ!」
シームは満面の笑顔で持っている袋を大きく開けて見せる。中は無類の機械好きらしく、さまざまな種類のパーツで一杯になっていた。
「俺はAK47…突撃銃だね。こいつも自由度高いから、色々手を加えられると思うんだー」
ギルハルトは嬉しそうに言って袋に入ったままの銃身をさらりと撫でた。頭の中では既にどんな風に改造していくか、という構想が練られ始めている。
「…それにしても随分遅くなっちまったな…」
フルークが橙と紫の混じった空を見上げながら呟いた。今日もそろそろ終わりに近付いている。
「あっという間だったな」
「時間が流れるのって早いなぁ…」
白玲とシームが少し残念そうに言った。本当に、楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。
「それじゃあ最後に夕飯と行きますかー」
そんな2人を元気付けるようにギルハルトが背中を叩いて、歩き出すよう促した。通りを並んで歩く4人の影は、長く長く伸びている。
偶にはこんな休日も良い、と揃って心の中で呟いた。
>>END
(※ギルハルト・バーナードはAK47を取得)
(※呂・白玲はショートパンツ(レッグウォーマー付き)を取得)
(※フルーク・シュヴァイツはフェザーペンダントを取得)
(※シーム・アレクトはモーターカーを取得)
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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名/性別/年齢/クラス
【0209】 ギルハルト・バーナード(ぎるはると・ばーなーど)/男/36才/エスパーハーフサイバー
【0529】 呂・白玲(りょ・はくれい)/女/15才/エスパー
【0538】 フルーク・シュヴァイツ(ふるーく・しゅヴぁいつ)/男/26才/エスパーハーフサイバー
【0604】 シーム・アレクト(しーむ・あれくと)/女/15才/エキスパート
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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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初めまして。この度パーティーノベル『ブラジル【都市マナウス】休日はショッピングに』を書かせていただいたライターの燈です。
馬鹿は風邪ひかないと言いますが、自己管理のできない馬鹿のため、うっかりインフルエンザにかかってしまい、大分お待たせ致しましたが…(汗)ギリギリですね…。
普段は戦闘系ノベルばかり書かせていただいているので、何だかとても新鮮な感じでした。どうも各PCさんを把握しきれていないような気がしますが…ヘブンズドアの書き込みも拝見させていただいたのに…何故!?
それにしても日常ノベルは難しいのだと痛感しました。プレイングは極力盛り込ませていただこうと頑張ったんですが…うーむ……私は楽しかったです!(ヲイ
それでは、長々と失礼致しました。皆さんに少しでも楽しんでいただけることを祈って。
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