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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【都市マナウス】休日はショッピングに



〜大食い大会開催〜

「さぁ皆様!大変お待たせしました!フェイジョアーダの大食い大会、只今より、グループの部を開始します!!」

 ギャラリーが沸き立ち、盛大な拍手が起こった。グループごとに選手席に座っている何人もの者達は、それぞれが不安と期待に満ちた表情でそわそわと待っている。
 J.B.ハート.Jr.は、一緒にチームメイト達を見回しながら、勝算有りと見てグッと拳を握った。
 隣の席にはアルベルト・ルール、エクセラ・フォース、ゼクス・エーレンベルクの三人が座っていた。皆やる気満々である。
 特にゼクスは、しばらくの間何も食べていなかったのか、品のフェイジョアーダが来るのを、今か今かと心待ちにしている。一見細身のエクセラも、「自信はないんですけど……」などと言いながら、どう見てもやる気満々だった。ただ一人、アルベルトだけがそんな二人を見て「俺はなぁ……」と、どうやって他の参加者のフェイジョアーダにハバネロを入れるかどうかを思案していた。

「しかし、どうしてシオンがあそこに居るんだ?」
「ああ、懸賞に当たったそうだ。審査員として応援するから頑張って来いとよ」

 審査員席にどっしりと座っているシオン・レ・ハイを見てアルベルトがぼやくと、J.Bが大笑いしながら答えた。アルベルトが、「それって良いのか?仲間が審査員って……」と、頭を押さえた。
 やがて料理の準備が整ったらしく、司会が大きく声を上げた。

「さぁ、ついに料理の入場です!!」
「選手入場は省略しておきながら………」

 選手が小声で言うが、料理が目の前に置かれたことで黙り込む。目の前のフェイジョアーダは、どれもこれも具だくさんで、しかもほとんど真っ赤っかだった。何処からどう見ても激辛風である。何やら得体の知れない物をぶち込んであるらしい。大食い大会と言えど、早く選手を脱落させて料理費用を安くしようという魂胆が見え見えだった。
 ………ただ唯一、一皿一皿の量が大盛りというわけではないのは救いだと言えるかも知れない。

「今回のお題は特製フェイジョアーダ!!たった一口で魂が昇天する味を再現したと、料理長が病院に運ばれる寸前に漏らしたという曰く付きの料理です!!」
「死人が出てるのか!?」
「死んでませんからご安心を。それなりに改良を加え、人が食べられるレベルまでちゃんと落としてあります!ただし一皿毎に、少しずつ辛さが増してくるのでご注意してください!…………では、フェイジョアーダの大食い大会 THEチーム戦!!よ〜〜い……スタート!!」

 司会が叫ぶと、パァン!と言う軽い銃声が響き渡り、一斉に選手達ががっつき始めた。




△前半戦★


(思ったよりも辛くないわね)

 エクセラは、フェイジョアーダの皿を静かに食べて、すぐに来る次の皿に取り掛かった。他の選手達は必死になって食べているが、エクセラはあくまで一人、マイペースを守っている。皿の数も、周りの男達に比べると、半分以下だった。
 隣のアルベルトも、急いで食べているゼクスに「胃に来るぞ」と言って、マイペースで食べていた。この大会で体調まで崩す気はないらしく、冷静に状況を見ている(他の選手の隙を窺っているとも言える)。
 ゼクスは「この程度ならば問題ない!」とばかりに次々にお代わりしていく。その細身な体には、既に五皿以上のフェイジョアーダが消えていっていた。とても常人の食欲とは思えない。お金があったり無かったりするゼクスにとっては、『食べられる時に食べておけ』が基本らしく………食べ放題の大食い大会など、もはや標的だった。
 J.Bは、予想以上のゼクスの食べっぷりに目を剥きながら、負けてられないとばかりに飛ばし始める。だが、ハイペースでありながらも苦悶の表情を浮かべることもないゼクスに比べると、食べる毎に少しずつペースが落ちてきているJ.Bでは、端から見ていると勝敗の行方が実によく分かる。
 ……ゼクスの圧勝。
 その光景を審査員席から見ながら、シオンが他の審査員や司会と解説を行っていた。

『あのJ.Bチームは、食べるものと食べない者とで差がありすぎますね。現在突出して食べているのはゼクス選手、そしてJ.B選手ですが、ゼクス選手は猛スピードで食べてますね。あのペース、いつまで続くと思いますか?』
『最後まであの調子で終わると思います。ゼクス選手は、こういった大会ではとにかく好成績を叩き出しているという実績がありますからね。普段から思う存分食べるチャンスが少ないらしく、こういった時に食い溜めしてるようで……』

 何やらとっても冷静に解説している。この大食い大会に参加しているのか参加していないのか…………分け前は無いに等しいのに、ちゃんと仕事をしている。

「はぁ、もう満腹よ」

 エクセラは、選手席に置いてあった白い旗を手に取ると、ぱたぱたと軽く振った。それを見て、司会が声を上げる。

「J.Bチームのエクセラ選手!リタイア宣言です!ご健闘、ありがとうございました!皆様、拍手でお迎え下さい!!」

 エクセラは、観客の拍手に迎えられながら退場し、今度は観客席の方へと移って行った。チームの中で、一人でも良いから最優秀の成績を残せばいいのだ。ゼクスとJ.Bがいれば、エクセラには無理をする必要など無い。

 エクセラ・フォース。フェイジョアーダ六皿で脱落。





□中盤戦●


 開始から三十分も経過すると、そろそろ脱落者が続出してきた。最初のエクセラを始めに、他のチームから次々に出てくる。参加費から考えて、十分に食べていると判断すると迷わずに脱落を宣言する者達までおり、一時間もしないうちに半数が居なくなった。
 J.Bチームも、エクセラの次にアルベルトが脱落した。八皿まで食べたアルベルトは、「これ以上食べると腹を壊す」と言ってヨロヨロと退場し、エクセラの隣に座って胃薬を飲んでいる。常人レベルなら、これで十分だろう。腹を壊してもおかしくはない。
 だが、明らかに常人レベルを超えた者が、今、この会場には溢れていた。

『ゼクス選手、J.B選手!二人とも十五皿突破!!早くに脱落した二名の穴を埋める為に無理をしているのか、それとも二人でただ張り合っているのか、二人してまだ前半のペースと大差ありません!!』
『いや、J.B選手はかなり無理してますね。あの年齢でこれ以上食べるのは、私は危険ではないかと思えます』
『そうなんですか?シオン審査員。ですが、今大会では、本人が気絶するかリタイアするまで、あえて私達運営委員は口出ししません。あくまで自分で責任を持って下さい』
『う〜む………あまりゼクス選手と張り合わないことをお勧めするが……止めないであろうな』

 審査員席で、シオンが密かに二人を応援しながら解説している。残り半数にまで減った選手席で食べ続けている二人は、未だに差し出される皿に躊躇うことなく手を付けている。
 他のチームの選手達も、流石に冷やかしばかりではない。細身でありながら食べ続けるゼクスが注目されがちなのだが、中には同じぐらいの量を食べている巨漢の男もいる。他の大食いの者達は、大抵が同じような、見るからに大食漢と言った連中だった。
 そんな連中に一体どこまで付いていけるのかは分からないが、少なくとも、二人はそんなことを全く気にしていなかった。

「う……見ているだけで気分が悪くなってきた。悪いけど、ちょっと出てくるわね」
「大丈夫かエクセル?」
「多分……胃薬でも買ってくるわ」

 気分悪そうにその場を後にするエクセル。アルベルトは既に回復したのか、大会の行方を静かに見守っていた。
 大会は更にヒートアップし、次々に退場者を出していく。中には、フェイジョアーダを食べて悲鳴を上げている者まで居た。どうやら、いつまで経っても食べ続けている選手達に業を煮やした運営委員が、スパイスの量を増やしたらしい。悲鳴を上げた選手は、急いで水を大量に飲み干し、そのまま口を押さえて走って出て行った。水は腹に溜まる。出来るだけ飲まない方が、まだ吐く可能性が少ないだろうに………

「良くもまぁ………本当に良く食べるな。あの二人は………」

 とりあえず、ゼクスとJ.Bには絶対に食事を奢るということは言わないと誓いながら、アルベルトは戦いを見守った…………

アルベルト・ルール。フェイジョアーダ八皿で脱落。




◎終盤戦×


 終わりが近付いてきた。参加者の大半が、もはや選手席で突っ伏して眠っている。素で気絶しているような者も多く、口を押さえて駆け出す者までいた。
 そんな中、ついに奮戦していたJ.Bにも限界が来た。

「……………………グフッ!」

 何故かリアクション付きで、J.Bが突っ伏した。アルベルトが「ついに死んだか……」と十字を切っていると、観客席から、一人の女性が出てきて、J.Bに無理矢理謎の丸薬を飲ませ、担いで退場させた。胃薬を買いに行くと言って出ていったエクセラだ。アルベルトに、声に出さずに口を動かして「医務室に行く」と言ってから、自分も退場していく。
 ついに自分達のチームはゼクスだけとなったが………既に25杯突破?ふざけてる都市か言いようがない。あの細身で、二メートルはありそうな巨漢の大男達と並んで食べまくっている姿は、一種の脅威にすら見えた。しかもまだ食べてる……
 オマエは……オマエは一体何なんだ!?

「グハァッ!」
「ゲフエッ!」
「ブホァッ!」

 どんどん脱落者が増えていく。優に、普段からゼクスの1,5倍は食べていそうな者達が次々に倒れていった。その中、まだ食べ続けているゼクス……
 ………いや、もう止めておかないと、流石に体に悪いと思うぞ?ゼクスよ……

「ふぅ………ご馳走様と言っておくか」

 しばらくして、ようやくゼクスがスプーンを置いた。皿の数は優に30杯を超えている。流石に満腹になったのか、ゼクスはグテ〜と椅子にもたれていた。
 少し遅れて食べていた周りの選手達も、頑張ってゼクスの数に追いつこうと躍起になっている。だが、誰一人として追いつけずに倒れていった。このフェイジョアーダの辛みが増してからと言う物、数をこなす毎にどんどん脅威的となっている。もはやタクトニウムですら倒せるのではないかとすら思える。
 味覚が麻痺し、味が良くわからない物を食べるのは非常につらい……満腹感に負け、「もういいや」と言った感じで投げ出す者達も出てき、ついに……

『ついに最後の一人が脱落しました!これまでで、一番多くの皿を食べた選手は………』

 司会の声に反応し、運営委員の者達が一斉に選手の食べた皿の数を数え出す。選手達は半ば放心状態だったが、それでも懸命に身を起こした。観客は、固唾を呑んで見守っている。この大会は賭け事もしているため、自分が掛けた者が勝っているかどうか、それが非常に気になっているのだ。
 運営委員達が数えながら、顔を青くした。それを見て取り、アルベルトが席を立つ。

『え〜〜……優勝者が決まりました!!優勝者は……』

 司会がマイクを持って間を空ける。ごくっと見守る者達が唾を飲み込んだ。

『ゼクス・エーレンベルク選手!34皿で優勝です!!』

 わぁぁぁぁぁ!!!
 ブーーーーー!!!

 観客達から、歓声とブーイングが沸き起こる。流石に、賭け事をしていたために、純粋に祝福してくれている者達などほとんど居なかった。ゼクスは席から立ち上がり、優勝杯を受け取るために壇上へと上がった。
 ゼクスは、流石に辛かったらしく、優勝杯を受け取って解散となった後、J.Bとエクセラの居るであろう医務室へと向かった。






〜エピローグ〜

 ガチャ……
 アルベルトが医務室に入ると、そこには、優勝杯と称された金色の丼を持ったゼクスと、胃薬を飲んで回復したJ.B、そしてエクセラがいた。シオンは、運営委員としての後片付けがあるらしく、まだ来ていない。アルベルトは、ポケットに突っ込んでいた手を出し、ゼクスに差し出した。

「優勝おめでとうと言った所だな」
「ああ、ありがとう」
「で、早速だけどな、賞金の分配は?」
「俺が五割貰うぞ?J.Bで三割。残り二割りが君達の取り分だ」
「えらい差があるが……まぁ、俺達はオマケみたいなものだからな。しょうがないか」
「そうそう。宿泊代が浮く分儲けよ」

 皆が笑う。もっとも、ゼクスが最初、全額手に入れようと策を巡らせていたことは誰も知らない……
 しばらく金の使い道について雑談している所に、審査員をしていたシオンが戻ってきた。

「お疲れ様。そして優勝おめでとう」
「ありがとうシオン」
「うむ。そう言うことで、これから食事に行かないか?私が奢ってあげよう」
「是非奢って貰おう」

 ゼクスがシオンの肩を叩く。J.Bは、それを見て「まだ食べるのか!?」と、医務室のベッドに突っ伏した。エクセラが苦笑しながら、そんなJ.Bに残りの胃薬を渡した。

「それでは、早速行きましょうか。観客達で外は賑わっているでしょうから、あんまりゆっくりしていると良い店に入れませんよ」
「まぁ、奢りなら良いか」

 皆が早速とばかりに腰を上げて医務室から出て行く。その時、アルベルトと目があったゼクスは、ふと、アルベルトに尋ねた。

「そう言えばアルベルト………会場を早く出ていった割りには、俺よりも遅くここに来たな。一体何をしていたんだ?」
「ああ。少しゴミ掃除をな」
「?そうか」

 取り立てて気にする必要も無さそうだと判断し、ゼクスは先に進んでいくシオンの後を付いていった……




〜おまけ〜

 会場の裏手、ゴミ置き場に不審な男達が十数人倒れていた。賭け事で集まっていた、膨大な金を目当てに集結した裏の住人達は、軒並み殴られ、昏倒されている。ほとんどの者達には意識自体がなかったが、意識の残っている者達は「おのれぇ、あの金髪がぁ……」などと呻いていた。

 ……その金髪というのが誰なのかは、記憶操作によって顔が鮮明に思い出せなくなっていたために、ついに判明しなかったという………








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 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0375  シオン・レ・ハイ 男 46歳 オールサイバー
0552  アルベルト・ルール 男 20歳 エスパー
0598  エクセラ・フォース 女 25歳 エキスパート
0599  J・B・ハート・Jr. 男 78歳 エキスパート
0641  ゼクス・エーレンベルク 男 22歳 エスパー

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 ■         ライター通信         ■
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どうも。書かせて頂いた、メビオス零です。
今回の発注、誠にありがとうございます!!
内容的にはどうでしょうか?まだまだ至らない箇所もあると思うんですが……反省点などがあった場合、どんどん意見してしまって下さい。参考にして反省します。
またの機会がありましたら、その時も頑張らせて頂きます。
改めまして、ありがとうございました!!これからもよろしくお願いします!!