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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


都市マルクト【整備工場】武器マーケット

ライター:燈


【0.オープニング】

 整備工場名物の武器マーケットだ。
 自分にあった新しい武器を探すのも良い。
 頼めば試し撃ちくらいはさせてくれる。弾代は請求されるけどな。色々試してみたらどうだ?
 新しい武器がいらないとしても、今使ってる武器の弾や修理部品を探す必要もあるだろう。
 まあ、楽しみながら色々と見て回ってくると良い。売り子の口上を楽しむのも面白いぜ。
 それに、ここで目を鍛えておかないと、いつか不良品を掴まされて泣く事になりかねないからな。
 何事も経験と割り切りながらも慎重にな。
 あと、掘り出し物だと思ったら、買っておくのも手だ。商品は在庫限りが基本で、再入荷なんて期待は出来ないぞ。


【1.機械屋『ENGRENAGEM』】

 その整備工場地帯から逸れた元・廃材捨て場であるジャンクケーブの1画に、シュワルツとアルベルト、エリアは来ていた。ジャンクケーブは掃溜めだったにしては、いつだってある種の活気に満ちている。セフィロトの内部では空が見えないため、時間で区切ることでしか昼夜の別はつけられなかったが、ジャンクケーブはそれすら不用とばかりに日がな煌煌と明かりが灯され、そこら中に騒音が充満している。
 そんな中、アルベルトとエリアはシュワルツが案内するままに一軒の店の前で立ち止まった。扉のない入り口から見える店内はコンクリートが剥き出しで、店というよりは箱のようだ。店である部分はそう広くはなく、3尺の丸テーブルと並べられた椅子がその4分の1を占めていた。
 その店の名を、『ENGRENAGEM』という。ちなみに看板なぞはなく、あるのはスプレー缶で直接コンクリートに噴き付けた文字だけだ。
「……随分とアバウトだな」
 以前よりも重量の増した愛車を傍らに、アルベルトは少し不安げに眉を顰めた。大事なバイクを軽はずみに人に預けてしまったばっかりに、今回こうしてここへ訪れることになってしまった身としては、普段よりも慎重になってしまうというものである。
「ん……あんたは確か」
 後ろから声がして、3人は同時に振り返った。シュワルツには大分劣るものの、人としてはかなり体格のいい男の登場にアルベルトとエリアは気を引き締まらせる。男は容貌もかなり厳つく、何となく因縁をつけられそうな感じだった。
 だが男は警戒されていることに慣れているのか、少しも気にしない様子で言葉を続けた。
「この間は世話になったな。……何の用かは知らないが、おやっさんなら奥で作業中だ。待つんなら上がって待ってな……お連れさんも」
 途端にエリアの周囲の空気が変わる。緊張していた空気はあっという間に四散して、代わりに彼女特有のおっとりとした雰囲気を纏っていた。
「でしたらお茶の用意をさせていただいてもよろしいでしょうか? 本日は、先日の件の御礼に参りましたので」
 男――バルグが構わない、と頷くのを見て、シュワルツは早速以前も使った簡易キッチンへと入って行った。
「あ、それならわたくしもお手伝いを……」
 それを見ていたエリアが慌てて駆け出そうとして、店の入り口の低い段差で躓いた。咄嗟にバルグが腕を伸ばしたが、それより素早く横から伸びた手が、転げそうになったエリアを危なげなく抱き留めた。
「エリア、何度も言うけど足元には気をつけろよ」
「あはは、すみません。ちょっと慌ててしまって……」
 てへへと照れ笑いを浮かべるエリアに、アルベルトは彼女を立たせながら深めのため息を吐いた。体勢を立て直したエリアはそのまま駆け足でシュワルツの後を追い掛ける。その後姿を彼女がもう1度転びやしないかとじっと見張っていたアルベルトに、さり気なく出した腕を引っ込めたバルグが尋ねた。
「よく転ぶのか?」
「そうだな、今朝待ち合わせた時も何もない所で躓いてた」
 その時もしっかりとエリアを支えたアルベルトは、その彼女が無事簡易キッチンに姿を消したところを見届けて、視線をバルグへと向けながら答えた。バルグはそうかと小さく返事をすると、まああんたも入れと入り口近くの丸テーブルの椅子を引く。
 程なくして湯気の立つ紅茶と編み篭に盛られた焼き菓子、それから何故かバナナが一緒に丸テーブルの上に並べられた。コーヒー豆とインスタント食品やパン、食器類はマグカップか素っ気無いプラスチック製品しか置いてないはずだとバルグが訝しげな表情をするのを見て、シュワルツが察して答えた。
「家から持って参りました。この焼き菓子にはお茶がとても合うので」
 そう言うとシュワルツは篭の中に入っている焼き菓子をトングで摘んでプラスチックの皿に盛り直し、まずはバルグの前に置いた。続いてエリアとアルベルトの分も。それからはまったく甲斐甲斐しい給仕っぷりで、誰かのカップからお茶がなくなりそうになればティーポットから注ぎ足し、皿に盛った分の菓子が平らげられれば伺ってから盛り足すという作業を延々と繰り返した。バナナもきちんと房からはずして手渡したり。
 ちなみにバナナを提供したエリアはテーブルには着かず、壁に立て掛けられている銃剣を眺めていた。かなり古い物のようだが、刃の部分まできちんと手入れが行き届いている。銃の部分が主なので、剣の部分はほとんどおまけといった様子ではあったが、それでもやっぱり剣は可愛いです、とうっとりするエリアだった。
「来ないなら全部食うぞー」
 アルベルトが冗談で言った言葉にはっと我に帰る。
「今行きますから残して置いてください!」
 急いで方向転換をし、そう広くもない部屋で駆け出そうとしたエリアは、案の定またこけそうになって今度はシュワルツに助けられるのだった。


【2.店主についての考察】

「そういえば店主さんは何をしてらっしゃるんです?」
 エリアがそう発言したのは、『バナナはおやつに入るのか』という論争をしばし繰り広げた後だった。気が付けば店に入ってから小1時間ほど経過している。
「仕事中なのか?」
 アルベルトが重ねて問うと、バルグは苦笑して首を振った。
「おやっさんは暇さえありゃあ機械いじりしてる。それも需要のなさそうな玩具ばっかりな。……こんな時代でもなけりゃ、あの人は子供相手にちっちゃい店でも構えてたんじゃないかと思う」
 バルグの答えにアルベルトは気の優しそうな老人を思い浮かべる。とその時、丁度いいタイミングで鉄製の扉がガンガンと音を立て、店の主が作業場から出て来た。
「随分と騒がしいじゃねえか……一体何事だ」
 予想を裏切る強面の登場に、アルベルトは一瞬呆気に取られた。――玩具作りが好きで、子供相手に商売? 到底信じられない話しである。機械工という職業はなかなか似合っているように思えるが、子供を相手にするとなると、その子供と会話する以前に泣かれるか逃げられるかされそうだとひっそり思った。
 その店主・ゼトが店の外に停められているバイクへと視線をやったことで当初の目的を思い出し、アルベルトは簡単に挨拶と状況を説明すると、どうにかしてくれないかとゼトに頼んだ。
「おっさんの技術で、何とか外部電源着けて貰えないか!」
 ゼトは積まれているのがバルカン砲だと聞いて、思いきりしかめ面をした。
「よくもんなもん組み込んだな……まぁ、バッテリーはあるからすぐにでも積んでやれる。見た目は多少悪くなるがな」
 何とかなるという返事を聞いて、アルベルトはほっと一息吐いた。思えば結構長い間、このバルカンはただの威嚇として居座っていたものだ。最悪取り外すしかないと思っていたが、口振りからしてそう難しいことではないらしい。
 その隣でよかったですねと茶を注ぎ足している男に気付いて、ゼトは声を掛けた。
「おまえはこの間の……」
「ごぶさたしております。先日は大鎌を強化して頂きましただけではなく、大層な物を頂きましたにも関わらず、お礼に伺えず大変失礼致しました。お恥ずかしながら、私が焼いた焼き菓子でございますが、休憩の際にでも召し上がっていただければと思い、お持ち致しました」
 流れるようにすらすらと感謝の辞を述べるシュワルツに、ゼトは少し渋面になった。照れてるな、とバルグはその様子を伺いながら結論づける。シュワルツが手渡した焼き菓子を物珍しげに口に入れる姿は、普段のゼトからは考えられないほど子供っぽく見えて、バルグはうっかり笑ってしまわないように頬の内側を噛んだ。
「そういやぁ、あれはどうした? ……まだ持ってんのか?」
 ゼトが言っているのがこの間のモーターカーのことだと気付き、シュワルツは所持していたモーターカーをゼトに差し出した。綺麗なままの車体にゼトは満足そうに頷くと、ちょっと貸してみろと言ってそれを取り上げ、また作業場へと篭ってしまう。その手にしっかりとプラスチックの皿が握られていることに、バルグはしっかりと作業場のドアが閉まってからついに噴き出してしまった。モーターカーを取り上げられたことで、何か不手際でもしてしまったのかと不安な顔になっているシュワルツに向けて違う違う、と手を振って、何とか腹の痙攣を押さえ込む。
「見てな、きっとランクアップして返ってくるぞ」
 にやりと笑ったバルグの真意がわからずに、シュワルツはやっぱり首を傾げるのだった。


【3.土産】

「待たせたな……持ってけ」
 空になったプラスチックの皿をテーブルの上に置きながら、ゼトはぶっきらぼうにそれを渡した。黒い流麗なボディはそのままで、コックピット後部にアンテナが足されているそれは、一緒に渡されたコントローラーで遠隔操作ができる、いわゆるラジコンカーとなっていた。
「探知機能を追加した。前よりちっとは役に立つだろ。……それから、嬢ちゃんと坊主にはこいつをやる」
 がしがしと頭を掻きながら差し出したそれは、小さなロボットの形をしていた。
「まあ、可愛らしい」
 エリアが嬉しそうにひとつ手に取る。つぶらな瞳が可愛いと言えなくもないけど……とアルベルトは手にしたロボットとゼトの顔を交互に見遣った。ホントに玩具作りが好きだったのか、とついまじまじと見てしまう。そうして眉間の皺が深くなったゼトに気付き、慌てて目を逸らすのだった。
「お土産までいただいて、今日はありがとうございました。とっても楽しかったです」
 にっこり笑うエリアにどう応対していいかわからずに、バルグもゼトも微妙な表情だった。エリアのようにおっとりしたタイプの女性には慣れていないようだ。
「ゼトさんも是非バナナを召し上がって下さいね。健康にもいいんですよ」
 ああ……と答えたゼトはいつものように顰め面だったが、それが困っている風に見えたアルベルトは、エリアを促して先に店を出る。その際きちんと礼を言うのも忘れなかった。
「……これ、サンキュ。それからバイクの方も、助かった」
 数時間預けていたバイクは収納スペースの左サイドに、小型の黒いケースのようなものが着くという形で納まった。見た目が悪くなるといっていたが、これぐらいなら別段目立ちはしないだろう。……まあ多少値は張ったが、大方満足した様子でアルベルトは背を向けた。
「またこのような物をいただいて、よろしいんでしょうか? 本日はお礼に伺いましたのに、かえってご迷惑をお掛けして……」
「いいからさっさと行け。日が暮れちまうだろうが」
 珍しくも店先まで出て来たゼトが、しっしっと手を振ってみせる。それに苦笑しながらバルグが付け足した。
「早く行かないと置いてかれるぞ」
 それを聞いたシュワルツが、もう1度深くお辞儀をして急いで先の2人の後を追うのを見届けて、ゼトとバルグは店内へと戻るのだった。


 >>END


(※シュワルツ・ゼーベアはラジオコントロールカーを取得)
(※アルベルト・ルールはチビロボを取得)
(※エリア・スチールはチビロボを取得)



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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名/性別/年齢/クラス
【0607】 シュワルツ・ゼーベア(しゅわるつ・せーべあ)/男/24才/オールサイバー
【0552】 アルベルト・ルール(あるべると・るーる)/男/20才/エスパー
【0592】 エリア・スチール(えりあ・すちーる)/女/16才/エスパー


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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お待たせしました。この度パーティーノベル『都市マルクト【整備工場】武器マーケット』を書かせていただいたライターの燈です。

 さて、今回シュワルツさんにはモーターカーを改造したラジコンカーを、アルベルトさんとエリアさんにはチビロボを贈呈させていただきました。ゼトさんはどうも玩具を造るのが好きなようです。……どちらもセフィロト内で場数を踏んで来た御三方には不用なシロモノですが、か、可愛がっていただければ……(汗)
 アルベルトさんのバイクにも外部動力を着けさせていただきました。水素燃料のおかげで現代とは違い格段に軽く小さくなるようです。

 それでは、失礼致しました。また機会がありましたらその時はよろしくお願いします。