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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


【盲目の少女】―コレクター―

「うーん…それらしい手触りのものはないですねー…」

瓦礫にうずくまり、一人の少女が何か地面を手探りで探している。
マイだ。今回はお付きであるはずのカイルの姿は何処にも見当たらない。

「ここら辺にいると思ったんですけどねー…」

何かを必死に探している。
「いる」という事は生き物なのだろうか?

「本当に何処いったんでしょうか。何時もは私の肩にいるはずなんですけど…」

どうやら動物のようだ。
肩に乗るという事は小動物らしい。

「あの砂ネズミ…何処にいったんでしょうか。まさかまたくだらないものでもコレクトしてるんじゃあ…」

どうやら探し物は砂ネズミ。
しかもコレクター癖があるというのだ。
前にも一度あったらしいのだが、その時は
瓦礫のカケラ、とか。ガラスの破片、とか。挙句には誰のか分からない骨、とか。
本当にとんでもないものばかりコレクトしていくらしい。

「早く見つけないと、また誰かから何かすっちゃうかもですね…。でも一人で探すのは……」

広いスラム街の真ん中でマイは困惑して座り込んでいた。


大きな音が聞こえた。バイクの音。
そのバイクの持ち主。アルベルト・ルールだ。
どうやらバイクをながしている最中らしい。
そんなとき、彼の目に飛び込んできたのは見覚えのある少女の背中。
一度会った、不思議な少女を思い出す。
「でも、あの人は確か盲目で何時もカイルが一緒にいるはず…」
そう思ってバイクを止めて辺りに目をやるが、カイルらしき人物は見当たらない。
どうも一人でここにいるようだ。
「一体どうしたんだろう…。このままって訳にもいかないし…。やぁ、マイ」
アルベルトが少女…マイに声をかける。
マイは聞き覚えのある声に少し安堵したのか、すぐに振り返る。
「その声は…えっと、アルベルト…さん?」
「凄いな、声で分かるんだ?…目が見えないんだから仕方ないか」
「あはは…一度会った人は忘れないように声を覚えるようにしているんです」
「に、しても。どうしてここに?しかも一人じゃないか。一体どうしたんだ?」
「あの…私の砂ネズミが…いなくなってしまいまして」
苦笑を浮かべるマイ。どうもその砂ネズミはマイにとってはとても大事なネズミらしい。
「私にとっては、唯一のお友達なんです。ずっと私の肩にいたと思ったのですが…」
「いなくなってた、と?」
「はい、そうなんです…。アルベルトさん、見覚えありませんか?」
「砂ネズミ?そういやあ、猫が何かを追いかけて飛び出して来たのを危うく轢きそうになったっけ」
アルベルトのその言葉にマイが背筋をぶるりと奮わせた。
そして、まさか?という目でアルベルトを見る。流石に少し不吉すぎたか?と思いながら。
「その砂ネズミの特徴、分かるかい?」
「え?…あの、探してくださるんです、か?」
「見たところカイルもいないし、一人みたいだし。スラムは危ないからボディーガードも兼ねて、ね」
「あ、ありがとうございます。カイルには砂ネズミの事、いえなくて…」
「ふぅん?まぁ、あいつのことだから嫌ってそうだけどね」
苦笑を浮かべながらそう言うと、図星だったのか、マイは小さく俯いてしまう。
「とりあえず、特徴を教えてくれ。そうすればきっと見つかりやすいかも知れないし」
「えっと…毛並みはちょっと変わっていて青いんです。背中にうっすらと星型の模様が…。でも…」
「でも…?」
「その子、コレクト癖があって…その…変わったものは何でも取ってきてしまうんです」
コレクト癖のあるネズミ。これこそまさに泥棒猫ならぬ泥棒ネズミか。
「あー…それは結構難があるな…」
「や、やっぱりですか?」
「で、そのネズミの巣穴とかはあるのか?」
「えっと…ここのスラムの隅に巣穴が一つ…何だか不安なんですけど…」
「大丈夫、大丈夫!きっとすぐ見つかるさ。さ、いこうか?」
手を差し出すアルベルト。マイは本当に安心したのか、手探りでその手を探しぎゅっと握る。
盲目の人の難点な所でもあるのだが。

スラムの外れ道。
其処では何故か人だかりが出来ていた。
何だか騒がしい。喧嘩のような声。
「何だ?何があったんだ…?」
「ま、まさか…あの子がまた何かすったんじゃあ…」
マイが心配そうな声を出す。辺りを見回すと、巣穴は脇道のすぐ傍にあった。
中を覗くアルベルト。其処には何か不思議なものがてんこ盛りだった。
宝石やら、花やら、洋服やら、靴やら、骨やら。
統一性一つ感じ取れない。
「…か、変わったものコレクトするネズミだな、こりゃあ…」
「統一性がないって何時も言われます…」
「…そりゃあ、こんだけ様々なものすってればなぁ…」
「アンタ達!アンタ達もそこのネズミに物をとられたクチかい!?」
おばさんの声がして、アルベルトが振り返る。その声に、マイはやっぱり…という表情で溜息をついていた。
「(今ここでマイが飼い主だって言うことを言うのは得策じゃないな…)あぁ、そうなんだ。その子の大事なものをとられてね。追いかけているところなんだ」
「そうかい、アンタもかい。アタシもとられたんだよ、大事な宝石!」
「宝石なら、この巣に結構あったけど…」
「本当かい!?助かったよ…この宝石はなくなった旦那のでねぇ…」
「それで、その砂ネズミなんですけど…何処かで見かけませんでしたか?」
「さぁねぇ?今頃は酒場なんじゃないのかい?噂では酒場のマスターのネズミだっていうしね!」
「…他人に飼われちゃってるんでしょうか」
またマイが不安そうな顔をする。アルベルトは必死に元気づけようと頭を撫でる。
「ありがとう、おばさん。酒場にいってみるよ。ほら、マイも元気出せよ」
「はい…でも、もし其方の方がいいのでしたら、私は探さないほうが…」
「でもこのままにしておくのも…だろ?」
アルベルトがそう諭す。すると、マイも小さく頷いて酒場へ行く事を承諾した。

酒場。
古びれた建物だ。
そこにはゴロツキが数人、溜まり場にしているようだった。
二人が其処に入ると、ゴロツキの視線が一斉にマイへと向いた。
マイはアルベルトに隠れるようにして、少し怯えている。
「ここのマスター、いるか?」
「おう、若いのがこんなところに何の用だ?彼女連れでここに来るたぁ命知らずだぜ?」
「彼女じゃないですっ!」
焦って返答するマイに苦笑を浮かべるアルベルト。思いっきり否定しなくてもいいのに。
「実は、ここに珍しい砂ネズミがいるって聞いてきたんだ」
「砂ネズミ?あぁ、あの星模様のあいつか」
「今、ここに来てるか?」
「おう、其処で飯がっついてるぜ」
マスターが指差したその先には、マイの情報通りの砂ネズミがいた。
「マイ、そこの隅。いるみたいだぜ、話は俺がつけるよ」
「え…?ルーベンス、ルーベンス…いるの?」
砂ネズミがマイの声に反応する。すると、素早くマイの手を伝って、肩へと飛び乗る。
「ルーベンス…貴方、こんなところにいたんですね…」
「おいおい、若いの。まさかあの砂ネズミ、嬢ちゃんのなのかい?」
「あぁ、そうなんだ。頼む、マスター。あの砂ネズミ、返してやってくれないか?」
「ふーむ…コレクター癖があるみたいだし、結構な稼ぎをしてくれると思ったんだがなぁ…」
「お願いします、マスターさん。私にはこの子が必要なんです…返してください、お願いします…!」
「…やれやれ。嬢ちゃんにそこまで言われちゃぁなぁ…でもよ、嬢ちゃん。お辞儀する方向、逆だぜ?」
マスターがおかしそう笑いながらそう言うと、マイはハッとして慌ててキョロキョロと体を動かす。
アルベルトが落ち着けと言わんばかりに、マイをマスターの目の前に立たせる。
「嬢ちゃん、その砂ネズミ大切にしてやんな?そいつぁ珍しい種類で、今絶滅しそうなネズミなんだ」
「は、はい。私の友達ですから、ちゃんと大切にしますっ!」
ゴツン!
「あっちゃあ…やっぱりやっちゃったか…」
まさかとは思っていたがこんなにまで見事にやるとは思わなかった。
マイがお辞儀した瞬間、目の前のカウンターで顔面を打ったのだ。
痛そうにしているマイを見て、アルベルトは苦笑を浮かべる。

「とりあえず、砂ネズミが見つかってよかったな」
「ありがとうございます。アルベルトさんのお陰で見つかったんです」
「いや、見つかってよかったよ。とりあえず、送ろうか?」
「あ、大丈夫です。テレポートで、帰りますから…」
マイがそう言うと、アルベルトもそうか、と呟いてマイの頭を軽く撫でた。
マイは少し照れるようにしてテレポートしていく。
「やっぱ不思議な奴だなぁ…」
そう呟くアルベルトだった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】

【0552】/アルベルト・ルール/男/20歳/エスパー

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月鎌です。
二度目の発注、ありがとうございました!
楽しく書かせて頂きました…(笑)

ちょっと今回はコメディありで書かせて頂きました。
何か変な所とかあったらバシバシ言ってくださいねー(汗)
あうあう、不安な部分がいっぱいいっぱいです(汗)

何はともあれ、キャラクター様を書かせて頂きまして
本当にありがとうございましたっ!