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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


スラム街に咲く花

とあるスラム街。この世界ではスラム街なんて珍しくもないだろう。
復興もちまちまとしており、そこには荒くれ者が集うという。
そんな危険なスラム街に二人の見慣れぬ人影が現れたのは数日前の事。

「カイル。本当にここにあるのでしょうか?」
「あるって言ったのは貴公だろう?それを今更そういうのはらしくないぞ」
「それでも私は不安になってきたのですよ。何分、貴方と一緒なわけですから」
「それは俺をバカにしてるのか?」
「バカにしているだなんてとんでもない。ただ、余計な破壊活動をしないかどうかが心配なだけですよ」

盲目で糸目の少女がからかうようにそう言う。
隣にいる青年は不機嫌なようでムスッとしている。

彼等がここに来たのは他ではない、綺麗な花を探しているのだと言う。
それは、この世界では珍しいもので、白くて綺麗な花であるという。
綺麗な月の夜にしか咲かない白くて小さくて綺麗な花。
それを見れない少女は、カイルと呼ばれる青年にそれを記憶させ
どんな物かというのを見てみたいらしい。

しかしスラム街は広い。
そして数も多い。スラム街はここだけではなく、各地にスラム街は一つや二つまだ残っている。
そんな中を彼等は探し回っているのだと言う。

「大体、夜にならないと見つけるにも話にならないんだろう、マイ?」
「それはそうなんですけどね。でも、もし昼の間に踏まれでもしたら大変じゃないですか」
「だからってアテもなく探すのはどうかと思うぜ?」
「……。適当な人を探して手伝って貰うのはどうでしょう?」
「他人に接触するつもりか?…気は乗らないが」
「それでも二人だけでというのは流石に無茶がありますよ。人が居そうな所へ行きましょう。カイル、先行してくださいね」

マイは淡々とそう言うと、カイルの肩にそっと手を置く。そうでもしないと盲目の彼女は歩けないからだ。

「やれやれ。なんで俺が貴公とこんな事をしなきゃなんないのだか…」

そうぼやく二人の後ろで不気味な目が光る。
「あいつ等、見かけない奴等だな」
「丁度いい獲物だぜ。女の方は売れば高値かもしれねぇ」
「よし、決まりだな。男の方は殺しても構わんだろ」
スラム街に住む荒くれ者達だった。

果たして二人は月夜に咲く花を見つけられるのだろうか…?


ラジオ無線機をいじる女性。
プリムローズ・ハーウェルだ。ラジオ無線機が壊れたらしく悪戦苦闘していた。
マイは、その人の気配を感じとり、カイルの服を引っ張る。
「あそこに誰か、いませんか?」
「誰か?あぁ…一人いるな。何かいじってる」
「助けてあげてください、何だか困っているみたいなのでしょう?」
「またそういうお人よしを…」
「助けてあげてくださいっ!」
マイが頑固になってしまった為、仕方なくカイルはプリムローズへと近寄る。
「どうかしたのか?」
「あぁ、無線機が少し壊れてな。アンタ達も何か探してるみたいだな?」
「あ、いや。…まぁな…」
「よし、じゃあ交換条件だ。私はお前達の探し物手伝う。お前はこの無線機を直す。どうだ?」
プリムローズの提案。カイルは視線をマイに移す。小さく頷き、直す事が確定された。
「何だ、これ?…ただの接触不良じゃないか」
カイルがべしっとラジオ無線機を叩くと、ガガガガという音を出しながらも復活する。
「うあ、ホントだ…ちっくしょ、手間かけさせやがって!」
「あの…私達の方もお手伝いしてくださるんですよ、ね?」
「そういやそうだな。で、何を探してるんだ?」

「私達はアルフェリアの花を探しているんです。このスラムにあると思うのですが…」
どうやらこの話にプリムローズの理解は苦しむご様子。
何故こんなところを探すのか。時間の無駄じゃないのか。
でも直してもらったものがある手前、義理は棄てれない。
「なーるほどな。よし、それじゃあ聞きまわりながら探そうか」
「お手伝いしてくださるんですね!?ありがとうございます!」
「さて、それじゃあいきますかね…」
カイルとマイは歩き出す。
プリムローズも歩き出しながら後ろをチラリと見る。
其処にはゴロツキの光る目。確実に此方を狙っているというのが分かった。
「やれやれ。ストレス解消できるからいいか」
と。呟いて二人に同行するのである。

花探しは意外と簡単だった。
酒場で話を聞き、このスラムの元花壇という場所を教わった。
しかし、酒場を出た時から自分達を監視する殺気にマイがフッと気づいたのである。
「カイル、プリムローズさん。……そろそろ、殺気が出始めているみたいです」
「分かってる。まさかここまではっきりとした殺気を出してくれるとはな」
「ストレス解消になるんだ、付き合うぜ?」
口々にそういっていると、予想通りごろつきはマイ達三人を取り囲んだ。
カイルは戦闘能力のないマイを自分の背に隠す。
流石に盲目なので、放っておくわけにはいかない。
ごろつきは案外弱かった。
プリムローズが殴った感触で悟ったのだ。

逃げる者もいれば、向かってくる者もいる。
それを容赦なくプリムローズは叩き潰していく。
「何だか、本当にストレスたまっていたみたい…ですか?」
「女のヒステリックは怖い怖い…」
「何かいったか!?」
「別に」
何だかカイルとは折り合いが悪いらしい。
まぁ、この男は誰とも折り合いが悪い。
人を信じる事をあまりしない為こうなったのである。

花壇についた頃にはもう夜になっていた。
「…あう…夜になってしまいましたね…」
「アルフェリアの花ってのは、夜に咲くもんなのか?」
「はい…綺麗な白い光があるはずなんですけど…」
キョロキョロと首を振る。盲目な為、見回しても何も見えないというのが少し苦笑ものだった。
しかし、プリムローズとカイルは見つけていた。
マイの目の前に白く光る花を。
「だとすると、これがアルフェリアの花ってわけか?結構綺麗なもんだな」
「え!?花、あったんですか!?」
「マイ、ここだ」
カイルがマイの手を引っ張って、花に触れさせる。
マイはふっと優しい笑みを見せた。触れた瞬間に人を和ませる程のものだったのだ。
「プリロムーズさん、最後のお願いがあります」
「うん?何だ?」
「この花を、スラムの人達につかってあげてください。この花は、どんな傷にでも聞く薬草なんです」
「幻想物語に記されていた花だしな。多分これが最後の一本だろう」
「だから有効に使って欲しいのです」
マイが切実に言うものだから、プリムローズも大きく頷く。
それを見ると、マイは嬉しそうに頷いた。そして、カイルと一緒に立ち上がる。

「また何処かで出会えたら、その時はお声をかけてくださいね」
「それじゃあな」
「貴女にも、運命の加護がありますように」

そして、二人は消えていってしまった。
取り残されたプリムローズは、花を手にしながら少し苦笑した。
「何か、私には似合わないんだけどな…」

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】

【0638】/プリムローズ・ハーウェル/女/19歳/ハーフサイバー

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■         ライター通信          ■
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初めまして、神無月鎌です。
この度は私のシナリオ、【スラム街に咲く花】にご参加頂きありがとうございました。
PCノベルというのは初めてだった為、不手際な所とか
納得の行かないような書き方があるかと思います。

そういう部分は遠慮なく申してください。
次からは気をつけながら頑張って作成させて頂きます。

皆様のキャラを書かせて頂き、光栄です。
本当にありがとうございました。