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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


都市マルクト【ヘルズゲート】出陣

メビオス零



 さて、こいつが地獄への入り口。ヘルズゲートだ。
 毎日、誰かが門をくぐる。そして、何人かは帰ってこない。そんな所さ。
 震え出すにはまだ早いぞ。
 こっちはまだ安全だ。敵がいるのは、この門の向こうなんだからな。
 武器の準備は良いか? 整備不良なんて笑えないぞ? 予備の弾薬は持てる限り持てよ?
 装備を確認しろ。忘れ物はないか? いざって時の為に、食料と水は余分に持て。予定通りに帰ってこれるなんて考えるな。
 準備は良い様だな。
 じゃあ、行くぞ。地獄へようこそだ。



 ヘルズゲートを抜けてからと言うもの、しばらくの間は平穏なものだった。
 周りには、同時期に侵入した同業者がワイワイガヤガヤと雑談していたりもしたし、極希にタクトニム達が出てきても、たったの一体や二体…………ほとんど瞬殺出来ていたのだ。
 だが、周りにいた者達も、自分達の目的のために、仲間達とあっちこっちへとバラけて行く。そして最終的に、自分達も、ビルの連立する場所に辿り着く頃には、元から組んでいたチームだけで立っていた………



 周りをタクトニム達に囲まれたような状態で………



「くっ、速いな」

 レイカ・久遠は呟きながら、撃ち漏らしたソーサーの突撃を避けるために、背後にあったビルの中へと飛び込んだ。ソーサーは、そのまま止まることもせずに頑強そうなビルへと突っ込んで爆発する。
 レイカのMSが急激に動いたためにロックが外れたらしく、ソーサーはレイカの後を追おうとはしなかった。そのため、爆発はレイカの機体とは、少しだけ離れた場所で起こっている。
 大きな風穴が空き、ビルが崩れ始める。
 ビルが崩れ始めているのを、センサーの警告よりも早く、MSを伝わってくる振動で看破し、舌打ちしながら、タクトニム達で埋まっていると言えそうな広い路上へと躍り出た。ほぼ同時に、ビルが倒壊する。
 背後から来る衝撃。大きなビルが倒れる衝撃波は凄まじく、爆風を受けて倒れそうになる機体を、自慢の長い腕で強引に支えた。吸収しきれない衝撃で機体がガタガタ言っているが、「ビルの下敷きにならなかっただけマシだろう」と、悲鳴を上げる機体を叱咤する。
 そして、今が好機とばかりに間髪入れずに跳びかかってくるイーターバグを、前転しながら蹴り飛ばした。

『レイカ!離れて!!』
「頼む、クリス!エレナ!」
『まっかせて!!』

 前転した勢いを利用し、レイカは出来るだけ敵の集団から(と言っても、どの角度にもいるのだが)、全速力で離脱する。前衛として前に突出していたレイカが動いたことで、外で身構えていたタクトニム達は、一斉にレイカの後を追って動き出した。
 そこに、離れたビルの陰に控えていたクリスティーナ・クロスフォードと、エレナ・レムの二人のMSから、2oレーザーガンの援護射撃が突き刺さる。
 ほとんど乱射と言えるほどの弾幕に、タクトニム達は何体も焼き切られて、慌てて手近なビルの中と陰に逃げ込んでいく。だが、あちこちで飛び交っていたソーサーが誘爆に誘爆を重ね、タクトニム達を吹き飛ばし、見えている範囲だけでも、優に十数体は軽く四散させた。

「なかなか良い狙いだな」
『普段、あまり当たらないから……僕もビックリだよ!』
『レイカ、大丈夫か?』
「なんとかな」

 答えながら、援護射撃の間も走り続けたレイカは、二人の所まで戻り、機体の損傷度をチェックした。………特にこれと言って問題はない。整備する時には泣きを見そうだが、まだ動くことに支障はない。
 傍らでタクトニム達の動きをセンサーで追い、索敵しているクリスティーナ。通信回線を開いて顔を見せてくるが、その表情は苦笑いしている。

『ハハ、敵が前よりも増えてるよ』
「今の爆発か………まぁ、あれだけ盛大に爆音立ててたら、音につられて集まってくるよな」
『笑い事じゃないぞ。しばらくの間は、これも使えないからな』

 エレナは、2oレーザーガンの銃身を軽く振った。クリスティーナも、自身の銃を見やる。二人して、無理矢理に連射させた所為だろう、銃は薄く白煙を上げており、傍目から見てもオーバーヒートをして、しばらくの間は使えないことが見て取れる。

『加えて、あいつ等もまったく諦めてないからな。これでは弾も足りなくなる………早くゲートまで戻らなければ、そのうち追いつめられるぞ』
『そうは言っても、ゲートまで行くには……』
「ああ、あいつ等を突破しなければ不可能だな」

 三人は、油断無く壁から身を乗り出させ、敵を視認する。再び群がり始めているタクトニム達の群れは、先程よりも数を増して路上を受け尽くしている。イーターバグ達の群れを主戦力として、空中を大量のソーサーで固めている。
 それぞれが連係して行動している訳ではないだろうが、それでもイーターバグを突破している内に、空中から小型のソーサーが襲ってくる……と言うコンボは、MS乗りとしてはゾッとするような攻撃だ。小型で縦横無尽に飛び回るソーサーを撃ち落とすのは難しいのだ。
 不用意に触れれば爆発するし、距離が開けている内に攻撃してソーサーを撃ち落としたりするのは、三人の装備では難しい。
 数を増し続けるタクトニム達を見て何かを固めたのか、クリスティーナは、冷却中の2oレーザーガンを構えながら、ビルから身を乗り出した。

『僕は穴を開けて突破するから、二人はちょっとだけ迂回して、急いでゲートに走って』
『なっ』
『エレナの機体は重いからさ、三人セットで行動すると、どうしても時間が掛かっちゃう。ここは一旦別々に行動して、そっちはとにかく速く脱出して』
『囮になるって言うのか!?』
『機体の相性の問題だって。ゲートはタクトニム達を挟んだ向こう側………その機体で、一転突破は難しいでしょ?』
『……』

 エレナが押し黙る。反論は出来ない。クリスティーナの乗っているsilverwolfと対になっているこの機体のことは、クリスティーナも解っている。同じような機体でも、エレナが乗っている機体は重武装型になっているため、機動性では大きく劣る。装甲はそれなりに厚いが、あのタクトニムの群れと戦ったら、そう長く保たずに破壊されてしまうだろう。
 三人で突っ込んでも、足手まといになる可能性がある。

『僕なら突っ切るぐらいは出来るから、とにかく……』
「ゲートに先回りしてから、そのレーザーガンで援護射撃を頼むぞ。クリスのことなら、私に任せておけ」
『レイカ!?』
「私の機体も起動戦型だ。それにクリス、一人であの群れに飛び込んで、集中砲火に耐えられるのか?」
『む』
「そう言うことだ………エレナ、こちらも出来るだけ速く行くから、迷わず走ってくれ」
『……分かった。だが、絶対にゲートまで来いよ』

 エレナの機体が、ビルの中を通って、こちらの死角へと走っていった。クリスティーナとレイカが姿を現しているため、タクトニム達は二人の方へと集まってきている。裏へと消えていったエレナには、一体も気が付いていないようだ。

『はぁ、こんな役回りに志願するなんて、結構無謀だったんだね』
「発案者が何を言う。………来るぞ!」
『それじゃ、パーティーの始まりだね!』

 二人は、イーターバグを先頭にして襲いかかってくる、タクトニム達の群れの中へと機体を飛び込ませた………






 イーターバグ達は、食欲旺盛な巨大な蟻……と言うのが強い印象で、実際それに近い。だが、様々な物を噛み砕くその牙は、MSの装甲ですら例外としない。しかも生命力が非常に強く、手足がもがれても動き続け、さらに凶暴になって襲いかかってくる。
 加えて群れの規模も大きいため、セフィロト内ではもっともポピュラーであり、そして厄介な敵として認識されていた。

「ああもう!しつこい!!」

 クリスティーナは、レーザーガンでイーターバグの一体を殴り飛ばし、さらに真上から飛んできたソーサーを撃ち落とした。ここら一体のソーサーは、どうやら爆発機構がメインになっているらしく、着弾した瞬間に、周りのタクトニム達を巻き込んで爆発していく。
 タクトニム達を巻き込む分は構わないが、その爆発力はクリスティーナのMSにも及ぶ。間近で爆発したため、強い熱と衝撃で機体がギシギシと悲鳴を上げる。
 休む間もなく、小さく広がっている爆炎を突っ切って、真っ正面と左右両方から、イーターバグがクリスティーナへと走り寄ってきた。不意を付かれて動きが固まるsilverwolf。だが、左右から襲いかかってきたイーターバグは、背後から伸びてきた長腕に切り裂かれて、地面に叩き付けられた。
 正面から来るイーターバグに集中したクリスティーナは、大きく開かれた口に向かってレーザーを打ち込んで頭部を吹っ飛ばす。

『止まるな!走れ!!』
「言われなくても!」

 切迫した戦闘状態のためか、強く言うレイカの言葉にも苛立つことなく、クリスティーナは爆炎が止まないうちに駆けだしていた。
 何体ものイーターバグを飛び越え、ソーサーの突撃を必死に身を伏せて回避しながら、二人はタクトニムの嵐の中を疾走する。機体のカメラに写る光景は、全てグロテスクな蟻ばかり………このままでは揉みくちゃにされてしまうのではないかと本気で覚悟した時、ついにその大群に切れ目を入れ、そして抜け出すことに成功した。
 そして目に映るのは、今や懐かしのヘルズゲート!!

『ゲートまで、後一q!!』
「全力疾走でGO!!」

 二人は、起動型MSの本領発揮とばかりに、ゲートに向かって一目散に走っていく。ゲートは開け放たれていて、いつでも脱出できるようになっている。先に着いたエレナが、開けておくように計らってくれたのだろう。当のエレナは、ゲートの前で膝を付き、こちらに向かってレーザーガンを構えている。

『そのまま走り続けろ!!』

 通信を入れながら、エレナは正確な狙いでレーザーガンの引き金を引いていく。レーザーは空気中で威力を拡散させながらも、十分な威力で二人を背後から組み伏せようとしていたイーターバグを吹き飛ばした。ついでに、空中から追ってきていたソーサーを撃ち落として、例によって爆発を起こさせる。
 クリスティーナとレイカの後ろから付いてきているタクトニム達が外に出ないためだろう。ゲートの門は、だんだんと閉じ始めていた。さすがに焦っているらしく、エレナは機体を立たせ、援護射撃をしながら後退する。

『早く早く早く!!!』
『閉じるな!今閉じたら私たちが死ぬ!』
「後三秒待って!!」

 エレナは最後まで援護射撃をし続け、後を追ってきているタクトニム達の足を止めていく。そして追われていた二人は、もはや機体一機分ほどの隙間しか開いていないゲートにブースターも使って全速力で突っ込み………
 後退もままならないエレナの機体を押し倒しながら、雪崩れ込むようにヘルズゲートを潜り抜けた…………







エピロ〜グ


「怪我……無かった?」
「機体も体もガタガタよ。しばらくの間は、休養したい所ね」
「う〜ん、と言うより、これって修理したりとかしなきゃ、怖くて次の出陣に使えないね」

 三人で口々に不平を口にした。
 機体を降り、ヘルズゲートの横で自分達の機体の損傷度などを簡単にチェックする。
 使いすぎたレーザーガンは、回路が焼き切れる寸前。
 四方八方から攻撃を受けていたMSは、装甲が凹んだりあちこちでバチバチと火花が散っている。
 ついでに、燃料や弾薬も八割以上を使い切った。

「そして収穫は無し………ふざけてるわね」
「まぁまぁ、命あっての物種って言うしね。元気出して」
「…………今日生き残れたのは、どうやら、私たちだけのようですしね………」

 重い沈黙が降りる。唯一の脱出口であるこの門が閉じられている以上、そこから出てくる者は一人もいない………









 セフィロトと外界をつなぐ門、ヘルズゲート……
 この門が無くなった時、この世は終わりを告げるのかもしれないと………
 そう、誰かが言った………


Fin






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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】
0656 クリスティーナ・クロスフォード
0642 エレナ・レム
0657 レイカ・久遠

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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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初めまして、メビオス零です。
この度の発注、誠にありがとうございました。
登場人物達の性格などはまだ上手くでていないとは思いますが、何とかなっている………とは思っても良いのかな?
何だかみんなしてボロボロになっての帰還となりました。でも……もうちょっと盛り上げても良かったかな。
色々反省点がございますので、指摘等がありましたら感想下さい。次回からは反映されると思います。
では、未熟な文を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。

メビオス零より