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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【密林地帯】インディオ村

メビオス零

アマゾン流域の密林地帯には、昔ながらの暮らしを続けているインディオの村が幾つもある。
 インディオは凄いぞ。あの審判の日と、それ以降の暗黒時代、高度なテクノロジーを持ってた奴らがバタバタ死んでいった中、インディオ達は何一つ変わらない生活を送っていたというんだから。
 本当に学ばなければならないものは、インディオの元にあるのかも知れないな。







 セフィロトからそう離れていない密林地帯に、鉱物資源や、民芸品を町に送ることで富を得ている、比較的豊かなインディオの村がある。
 審判の日以前から、それこそ遙か昔から培ってきていた確実な技術は、今の時代になって、簡単には得られないほどの利潤を生むことを可能としていた。
 だが、そういう村こそ、当然のように近代技術に狙われるものだ。
 町から派遣されていた運搬車は尽く山賊達に狙われ、略奪されていた。
 山賊と呼ばれていても、その装備は侮れない。山賊達はMSを駆り、インディオの装備ではまったく歯が立たない。
 そこでインディオと町の者達は、一計を案じ、腕の立つ者達を招集して山賊達を狩ることを依頼した…………





 密林地帯を、数機のMSが身を隠しながら静かに歩いていた。
 キリル・アブラハムの【Katze(カッツエ)】、アマネ・ヨシノの【ムーンシャドウ】、クリスティーナ・クロスフォードとエレナ・レムの対となっている【shadow wolf】、レイカ・久遠の【リッパー】………
 これだけ集まってたら隠密行動とは言えなさそうだが、高い木々と、あちこちで四方八方に伸びている葉や蔓などの濃い植物によって、五体のMSはすっぽりと覆われ、少なくとも、注視でもしていない限りは、そう簡単には見つかりはしないだろう。

『問題のテロリスト達は、出てくると思うか?こちらの行動、読まれていたりはしないだろうな?』
「今まで護衛が居ようが居まいが出てきているんだ、せっかくの獲物を前に、退いたりはしないだろう」
『そやで、案外心配性やなぁ、レイカさんは』
『あんな見え見えの罠に引っかかるのかどうかが疑問なだけだ……』
『まぁ確かに、今まで盗られまくっているのに、護衛を強化するどころか減らしているんだしね…………ッて、トラックの周りに一機も付いてないんだけど』

 クリスティーナが、機体のカメラを操作して、護衛の一つも付いていないトラックを映し出す。トラックは、たったの一両だけで、ノロノロと普段の半分程度の資材を積んで走っていた。
 密林地帯の中で、唯一車両が通れる細い一本道………ここを通らなければ大きな町への運搬が出来ないため、ここに網を張れば、必ずと言っていいほど捕捉されてしまう。
 だが逆に、こちらも相手が狙ってきそうな場所やタイミングなどは予想し安いため、こうして相手がトラックに食い付くのを待っている訳だ。

『そろそろ、山賊達が現れてもおかしくない場所に着きます。俺たちは、所定の位置に向かいますね』
「ああ、気を付けてくれ」
『むしろキリルさん達の方が危ないと思うけどね。誘い出しがんばって!』
『そっちが失敗すると、私たちの出番がないから』
『レイカさん、それやとウチが失敗するようやないか。安心しぃ、そっちにぎょうさん敵を送り込んだるさかいな』
『『『それはそれで問題だ(よ)』』』

 苦笑しながら、エレナ、クリスティーナ、レイカの三人が、山賊達を強襲するための地点へと走っていった。予め罠を仕掛けておいて、敵を誘い出す作戦である。トラックに引っかかった山賊達を、アマネとキリルの二人で攪乱、誘導し、エレナ達三人が隠れているところまで誘導するというシンプルなものだ。
 戦闘領域になる予定の場所には、すでに地雷や落とし穴などが多数隠されている。
 仲間内までが引っかかったらお笑い種だが、それはそれ、そこまで気にしていたら、こんな何処にでも罠が仕掛ける事が出来る密林地帯などに入ること自体が自殺行為だ。
 キリルとアマネの二人は、三人の姿が消えたことで、トラックと自分達の周囲に集中する。



 こうして、作戦がスタートした。









 トラックがギリギリ見える位置に、キリルとアマネは陣取った。
 密林の木々は太くて、惜しげもなく葉を生い茂らせている。人よりも明らかに大きなMSでも、この樹海の中で身を潜ませることは容易なことであった。
 三人と別れてから、早十分………すでに所定の位置に着いたことを合図を受けて知った二人は、山賊達が来るのをジッ…と息を潜めて待っていた。
 二人が警戒している中、周囲の空気が変わり始めているのを、キリルは長年の経験で察知し、アマネに警告した。

「来てますね……センサーは?」
『あちこちからジャミングされとるけど、こっちからはお見通しやな。二〜三、四…………キリル、こりゃちょっと不味いかもしれへんで……』
「どうかしたのか?」
『…………これ、ホンマに山賊………か?』

 いつもは楽天的なアマネの声に緊張が混じり、本人は珍しく真剣な表情で機体のセンサーをフル稼働させる。
 アマネの乗っている【ムーンシャドウ】は、電子戦に特化した装備を調えている。そして、それを使いこなすだけの技量を持ったアマネは、高度な技術を持って姿を隠している山賊達の機影を、様々なセンサーを駆使して拾い上げていった。
 そのセンサーで引っ張り上げたMSは、報告されていた物よりも数が若干多い。
 だが、アマネを唸らせているのはその拾い上げた数ではない。
 その隠れている技術力。とても、山賊の経済力と技術で得られるような物では無い。
 これではまるで………

『動かないで貰いましょうか?』
「なっ!?」
『動かないでください。まぁ、お二人とも、こんな密林で死にたいというのでしたら………止めはしませんがね』

 ガチャガチャと、背後から二体のMSによって、銃口を押しつけられる。そして、地上のあちこちの木々から、ぞろぞろと重武装した歩兵達が姿を現した。
 アマネは、「あら〜」と小さく舌打ちし、MSの両手を万歳させて降参の意を示してみる。
 隣で同様に銃を突きつけられているキリルは、自分達に呼びかけてきた声を聞き、顔を強張らせて振り返った。

「…………まさか、テロ組織のお偉いさんが来ているとは思いませんでしたよ。クラウス・ローゼンドルフ!」

 キリルの声に答えるように、二機のMSを従えて、一人の男が姿を現した。
 クラウス・ローゼンドルフ……テロ組織『血の同盟』の首領であり、通称【深い森】と呼ばれているテロリストである。

『フッ………私も、君がノコノコと仕組んだとおりに来てくれるとは思わなかった。応援として誰かを呼んでくると分かってはいたが…………正体不明の山賊を相手にするには、少々人員もレベルも不足していないかね?』
『むっ』

 アマネが不平の声を漏らす。だがこの時、アマネとキリルは、二人して同じ事を考えていた。

――――あの三人を切り離しておいて、本当に良かった………と

 これは、別に自分達が死んでも、あの三人がどうにかしてくれるとか、そう言ったことを考えての思考ではない。
 むしろ、これならば囮として、ちゃんと役割を果たすことが出来る。用は、あの三人の居る場所まで誘導するか、ここの異常に気付かせれば良いだけだ。
 そうすれば、内側と外側から攻撃する事が出来る。いくら訓練されているテロリスト達でも、そんな攻撃を受けては、平静を保てまい。必ず包囲に穴が出来る。
 もっとも、これは三人と合流するまで二人が生き残っていることが絶対条件なのだが、そんなことまで考える必要はない。
 このような絶望的な状況下で自分達が負けることなど考えては、本当にそうなりかねないと、二人は理屈ではなく、ほとんど本能的に知っていたのだった。

『さて、では大人しく投降してくれないかね?機体を降りれば、手違いで殺してしまうようなこともないと思うのだが………』
「………待て、それより、聞きたいことが出来た」

 キリルが、堅い口調で聞く。アマネはその声を拾い上げながら、いつもと違う雰囲気に不安感を覚え、その問いを止めようとする。

『えっと、キリル?それは……』
「この一帯で張っていた山賊………アレはあなた達ですか?」

 その問いに、クラウスは数瞬間だけ腕を組んで、何かを思い出すようなポーズをとった。

『山賊………ああ、もしかして、一週間程までに、私たちが狩り捕った蟲のことですか?いえね、君たちがここに来ると知って、最初は連係しようと思ったんですけど、あまりに身の程知らずでしたので、消えて貰いました。ああ、ご安心を、彼らが溜め込んでいた物品は、全て私たちで貰っておきましたから。…………そうですね、なかなか価値のある物が多かったですから、出所の村、私が頂いておきましょうかね?』
「っつ!このっ!」
『アカンで、キリル!!』

 アマネの制止を聞かずに、キリルはMSを発進させて、クラウスに突撃した。
 クラウスの手前にいたMSの一機がクラウスを手に乗せて、颯爽と立ち去っていく。もう一機はキリルの【カッツエ】を阻み、そして森の中へと消えていった。
 なにやら因縁があったのか、クラウスの登場から頭に血が上り始めていたキリルが飛び出したことで、アマネは否応なしに戦闘に参加することになった。周りにいた敵達が、一気に活動を開始する。
 突きつけられていた銃口が火を噴く前に、アマネは体当たりをさせて敵のMSを押しのけ、その場を跳んだ。MSの、そして地上の歩兵達から、集中砲火が開始される。
 慣れない密林で、必死に木々を盾にしながら走り、跳び、隠れながら通信を開始する。
 周りに敵がいても何とか生き残れると踏んでいたのは、自分が強力なECMで攪乱し、キリルが攻撃してくれれば、と思っていたからだ。
 当のキリルが居なくなってしまった今、アマネはこれ以上ないほどの大ピンチに立たされることになったのだ。

『多勢に無勢すぎるわ!レイカ、エレナ、クリス!!早う来てぇ!!』

 アマネは休むことも反撃することもなく、機体に回避行動をとらせながら、そう叫んでいた………








 ザザッ!
 足下に生い茂る草木を蹴り飛ばし、舞い上がらせながら、三機のMSは疾走していた。
 搭乗者達にも余裕はなく、忙しなく機体をコントロールする。密林地帯で強引にスピードを出しているため、すぐにバランスを崩しそうになるのだ。

『もっと早く!』
『これ以上は無理だよっ!』
『それでも走れ!!』

 それぞれが通信機に叫びながら、機体を走らせている。
 密林地帯の木というのは、こういう時には邪魔な存在でしかない。
 盾にもなるし、罠を張るにも便利な物なのだが、如何せん、MSが通れるだけの幅を残していない場所が多く、それらを掻い潜って急ぐとなると、どうしても全速力は出すことが出来ない。
 せっかく張った罠の地点から離脱し、戦闘領域に近づいている。アマネから送られてきた必死のSOSを受け、それぞれの最高スピードを出してアマネの救出に向かっていた。
 キリルのことは、詳しくは分かっていないが、それでも今、アマネが一人で逃げ回っているのは分かっている。
 アマネからの通信を聞いて、三人は居ても立っても居られなくなり、こうしてとにかく走っている。それほど距離を開かせていた訳ではないので、ものの数分で合流できるはずだ。
 まさにその通りで、走り出してからおよそ二分で、アマネを追いつめているテロリスト達が木々の合間から視認できた。
 アマネの機体には、すでにあちこちに大小の傷が出来ていた。しかし起動には問題がないらしく、反撃せずに、回避行動に専念してやり過ごしている。
 だが逃げ道がない………このままでは撃ち落とされるのを待つだけだっただろう。
 そう、三人が来るまでは……

『間に合ったか!?』
『エレナはここから援護射撃!!頼むよ!』
『了解!』

 エレナの【silverwolf】だけが、少し距離を離してレーザーガンを構える。
 レイカとクリスティーナの二人は、アマネの【ムーンシャドウ】を仕留めようと躍起になって攻撃しているテロリスト達に向かって突っ込んでいった。
 敵を蹴散らしながら、レイカは素早くセンサーと目視で敵の人数と装備を分析する。

(重装歩兵三十人に、MSが三機……キリルを追って行ったって言うのを含めれば五機。厄介なことになったわね。しかもディスタンが二機に、【ステルヴ】が一機残ってる………贅沢な)
『アマネ、生きてる!?』
『当然や!死んでたまるかい!!』
『ECMは、もう使った?!』
『使うとる!でなかったらやばかったわ』

 ぼやきながら、アマネはようやく安堵し、レイカとクリスティーナの二人の間に挟まるようにして姿を隠した。
 今までは、ECMを使っても敵の攻撃が集中してしまっていたため、危なっかしくて使えなかったのだが、援軍が来たことで、敵の攻撃が分散し、または困惑で一部が止んでいる。
 この好機を逃すまいと、アマネは【ムーンシャドウ】に備え付けられている某秘密研究所の渾身の一作、【スタンフォード(重力制御)機関】を発動させる。
 機体の周囲の重力が機関によって歪み、そしてその機体を、ドン!と言う衝撃と共に、中空へと舞い上げた。

『あわわわわわわ!!!』

 アマネは慌てて機体を操作し、密林の上空にまで来た機体の体勢を立て直した。
 今まで試す機会がなかったために初めて使ったのだが、どうやら、これを扱いこなすには、少々練習が必要なようだ。少々不安定な格好で宙に浮かびながら、アマネは3oレーザーガンを、眼下で唖然としているテロリストへ向けた。

『でもま、慣れれば便利なもんやな。空飛べるっちゅうのは』

 引き金を引く。
 自分を追いつめていた重装歩兵達は、降り注ぐ光線が辺りの木々を焼き切るのを見て、ようやく我に返り、飛び込んできたレイカとクリスティーナの機体に反撃しながら、辺りの陰に散開した……








『凄い物を隠していたね。まさか飛ぶとは思わなかったよ……』
『ああ。だが、援護としては最高だ!』

 レイカは、空中からのレーザー攻撃で浮き足立っているMSを、独特の長い腕で切り裂きながら、歩兵の地雷などの攻撃を回避し続けていた。
 クリスティーナも、あちこちを跳び回り、PP達を右腕に装着されているバルカン砲で吹き飛ばしながら高周波ダガーを使って敵を蹴散らしていた。MSの方が大きく、PPの方が小回りがきくために少々相手し辛いが、それでも地上と空中の両方に神経を割いているため、テロリスト達の反応が一瞬だけ遅く、確実に一人一人を仕留めていっていた。
 だがしかし、三十人程もいるプロのテロリスト達相手では、さすがに装備が充実していても、この少人数ではどうしようもない。
 空中にいるアマネはともかく(テロリスト達は、対空装備を持っていなかった)、地上にいるレイカ、クリスティーナ、そしてエレナの三人は、戦いが長引いてテロリスト達が冷静になるに連れて、だんだんと劣勢に追い込まれていった。

『囲まれてきてる……これ以上は危険すぎる』

 レーザーガンで援護しながら、周囲を包囲されてきているのを察し、エレナは退路を断たれようとしているのを危険視した。すぐに通信回線を開き、レイカとクリスティーナに繋ぐ。どうやっているのかは分からないが、器用なことにアマネのECMは、味方には雑音程度で済んでいるようだ。

『包囲されてきてる、こっちから穴を開けるから、走れ!!』
『助かる!』
『ナイス!エレナ!』

 エレナにロケットランチャーを撃とうとしている歩兵に、レーザーガンを撃ち込んでやる。命中はしなかったが、横から飛んできた攻撃に気をそらされ、歩兵の放ったロケットランチャーは明後日の方向へと飛んでいく。
 エレナの方向へと駆けだしている二人に組み付こうとしているMSやPPを、レーザーガンで同じように牽制して後退させる。空中にいるアマネも、下の三人の様子に気が付いてすぐに援護射撃を牽制に移した。勿論敵に当たればそれで良いので、駆け寄ろうとする方向に向けて撃ち、足下をすくってやる。
 レイカとクリスティーナは、後退をすでに開始しているエレナに追いつくと、機体備え付けのバルカンなどで、追いかけてきている歩兵達を一斉に撃ち払った。そう簡単に当たってくれるような相手ではないのだが、辺りに周囲の木々が倒れ、草木が邪魔になる。
 MSなら蹴散らすなり何なりしていけば良いのだが、歩兵やPPには十分に行動を阻害する障害物となる。
 エレナを最後尾に、三人はそれ以上追撃を入れずに撤退を開始する。これ以上戦闘する気はない。無理に戦闘を続行すれば、今度は弾薬や燃料の問題も出てくるだろう。こういう時には逃げられる時に逃げておくものである。
 数分程走り抜き、敵をとりあえずレーダー範囲から出したところで、四人は一息ついた。アマネも見つからないように高度を落とし、密林の中に機体を埋める。
 アマネが合流したことでキリルのことを思い出したのだろう。エレナが声を上げた。

『キリルは?置いていく訳にはいかない!』
『あ〜、確かにね。あの人が死ぬとは思えないけど、それでも一人で置いていく訳にもいかないね』
『アマネ、キリルの位置は分からないか?』
『キリルの位置?ちゃんと追跡できとるよ。ここから一q離れたところで、反応は止まっとる。動いてへんなぁ………』
『なっ……』
『とりあえず詳しい位置を送信するさかい。聞くよりも見て確認しぃ。少しの間なら、こっちで奴らを攪乱しておくわ』
『悪いわね。予定時間通りに、例の集合場所で会いましょう』
『了解や』

 再びアマネが空中に飛び、少し迂回して敵のいる方向へと飛び立っていく。敵を出来るだけ引き離して、三人(キリルを入れて四人)の脱出を容易にするためだ。
 感謝しながら機体を動かし始める三人だが、アマネは単に、機体の重力制御装置を試したかっただけだったりする。
 アマネが飛び立っていった軌跡の先で、再び戦闘が開始される………








 キリルの【カッツエ】は、機体の節々から薄い煙を上げながら、地面に倒れ伏した。目の前には、自分を阻んでいた【ステルヴ】の残骸が残っている。
 組み付いてきていたMSを破壊して、ようやくクラウスを追跡しようとした時、キリルはクラウスを連れて行ったMSに背後から襲われ、一瞬で行動不能にされてしまった。
 キリルは後ろから自分を撃った、クラウスを乗せている【ギュイター】を睨み付けた。
 機体を動かそうと手を動かすが、クラウスの【蛇眼】に飲まれてしまっている体は、意志に反してまったく動こうとしなかった。カメラ越しにも受けてしまった事実に舌打ちしながら、それでも負けてなるものかと、薄れ始めている意識を強引に意志で繋ぎ止める。
 クラウスはそれを見下ろしながら、口元に笑みを浮かべた。足下にキリルが倒れていることで、満足したように腕を組んでいる。

「殺しはしませんから、安心してください。今日は、ちょっと貴方に挨拶したかっただけですので、これ以上はやりませんよ。もっとも、その状態では、降参以外は出来ないでしょうが………」
「くっ……」
「ふむ、貴方のお仲間が来たようですね」

 悔しげに声を漏らすキリルから視線を外し、遠くから聞こえるMSの駆動音に耳を澄ませる。そして、手を振って【ギュイター】に撤退を命じた。
 背中を見せるMS。その翻り際、クラウスは、確かにキリルに対して嘲笑していた。

「では、せいぜい彼女に会うまでは、死なないようにしてくださいね?」

 MSが立ち去っていく。
 そのすぐ後に、救出に来たレイカ、クリスティーナ、エレナの三人から通信が入る。

『キリル、大丈夫!?』
「大丈夫です、それより、あの男を……」
『落ち着け、もう戦えるような状態じゃない……ここから離脱するぞ』

 返答も待たず、レイカは動かなくなったキリルの【カッツエ】を担ぎ上げる。キリルは、カメラに写る、自分とそう変わらない程傷だらけになっているレイカの機体を見て、確かに戦えるような状況ではないことを認識した。

「……すいません」
『気にするような事じゃない。いくぞ!』

 クラウスの歩兵達に見つからないように、出来るだけ静かに急ぐ四人。
 敵を攪乱していたアマネの待つ町まで隠れながら移動する間、キリルは、またあの男が現れた時、一体どうすれば良いのかどうかを考えていた………









 それから暫くして、小さなインディオの村が一つ消滅したという噂が流れ始めるが、それの真偽を確かめようとする者は、誰も居なかった………






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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名

0634 キリル・アブラハム
0627 クラウス・ローゼンドルフ
0637 アマネ・ヨシノ
0642 エレナ・レム
0656 クリスティーナ・クロスフォード
0657 レイカ・久遠