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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【都市マナウス】休日はショッピングに


ライター:有馬秋人





アマゾン川を下ってはるばると。長い船旅だったが、ようやくついたな。
ここがブラジルのアマゾナス州の州都だったマナウスだ。
審判の日の後の一時はかなり荒れたが、今はセフィロトから運び出される部品類の交易で、かつて魔都と呼ばれた時代の様ににぎわっている。
何せ、ここの支配者のマフィア達は金を持ってるからな。金のある所には、何でも勝手に集まってくるものさ。
ここで手に入らない物はない。欲望の赴くまま、何だって手に入る。
もっとも、空の下で思いっきりはしゃげる事の方がありがたいがな。何せ、セフィロトの中じゃあ、空も拝めない。
お前さんもたっぷり楽しんでくると良いぜ。




   ***




「第一回ナンパツアーが無事に開催できて何よりっと」
マナウスのセンター街でくるりとターンしたアルベルトは付いてきた面々へむかって笑いかけた。端整な顔立ちに年若い女の子がちらちらと視線を送っているが、声はかけてこない。周りに年齢も風体もばらばな四人が立っているせいもあるだろう。まぁ一番の障害は、見た目としては美少女まんまのヒカルの存在だろうが。
「でもヒカル。いいのか置いてきて」
確たる名詞はでていないが、何を置いてきたのかは周り全員が知っていた。伊達は少しばかり顔を引きつらせた守久を哀れむ目をし、背後に控えていたコテツが口元だけで笑う。
「何、相棒のお守りにも疲れたんでな、たまには男漁りもよかろう」
「男漁りって…んな露骨な」
「どう憚っても男漁りには変わるまい。アルベルト殿の方は構わないのか」
「うーん。前に他の子に声かけてお茶するのは俺の趣味だって宣言しちゃったからな、いまさら取繕っても…」
少し困った顔をするアルベルトに、ヒカルはそうかと頷くだけだ。相棒がいいと思っているなら深く突っ込むことしまい、と微苦笑を浮かべる。後ろで何やら心臓を押さえて伊達に支えられている守久のことなぞ二人とも知らぬ気だが、ちろりと視線を送っているあたり気にしていないわけではないらしい。
二人ともがよからぬ顔をして守久に目を向けると、支えていたはずの伊達の目線が泳いでいた。つられて全員の視線も泳ぐ。顔を伏せていた守久でさえ、何事かと目を上げていた。
「……まぁ、美人だな」
ぼそりとコテツが呟けば、アルベルトものってくる。
「褐色の肌に金髪、目鼻立ちがはっきりしている感じから行くとブラジリアン。……胸でかっ」
「年のころは17あたりか」
目算であたりを付けた年齢を口にしたヒカルは、伊達の頭の先から足の先まで眺めて「6歳差は問題なし、か」と呟く。ヒカルの視線に気付いた伊達は肩をひょい竦めて掴まえていた守久の腕をコテツに渡した。物扱いされて守久がこけかけるが少しも気にせずに身だしなみをチェックする。
「龍樹」
どうやらターゲットと定めたらしい相手からひと時も目を離さず投げた物体の名を呼ぶ。何とかバランスを取り戻していた守久が、非難をこめた目で見ても、視線を返さなかった。
「どうせお前のことだから、ナンパの仕方なんて知らないだろ」
「悪かったな」
「俺がこれから手本見せてやるって。だから頑張ってキスくらいしろよ」
「――っ」
守久が返答に詰まると、伊達はにっと悪戯っぽい顔をする。そのまま視線だけはターゲットから外さずに、アルベルトたちに対して片手をあげた。
「んじゃ、ここからは個人行動だな楽しもうぜ♪」
「了解っ、明日の集合時間と場所覚えてるよな」
「遅刻しても待たぬぞ」
「はいよ。じゃちょっくら行ってくる!」
うきうきと早足でアルベルトらから離れた伊達に、四人の視線が集まっていた。
「お手並み拝見、というところかな」
「他人のナンパ方法なんて滅多に見ないって」
いい機会だからじっくり観察しようと提案したアルベルトにしたがって、四人は歩道の両脇に植えられている樹木による。顔を真っ赤にして固まっていた守久は、呆れた顔をしたヒカルに引っ張られて移動した。
「お、なんか遠回りしてる」
「まぁ対面ですれ違うつもりだろうな」
「…実況中継するなよ」
居たたまれない気分を味わっているのか未だ顔を赤らめたままの守久が苦情を言うが、二人は淡々と伊達の現状を口にしていく。
「すれ違った――ん? スった?」
「掏ったぞ。間違いなく」
ヒカルが目を眇めて伊達の動きを捕捉した。そこまで確実には見えてなかったアルベルトが目を丸くしている間に、コテツがさらに一言付け足した。
「で、落として、拾ったふりをする……常習犯だな」
三人の視線の先では、伊達が軽快な笑みを浮かべて女の子に財布を差し出している。声までは聞こえないが、見えているヒカルが読唇して中継した。
友人がナンパするところを見たくないのか首筋をまだ赤く染めたままの守久は、必死に視線を逸らしている。絶対に知りたくないのであれば、耳を塞ぐべきなのだが、迷いがあるのか三人の実況中継はしっかり耳に届いていた。
呻いているのか、唸っているのか、判別しがたい音が喉から零れているが三人は気にせずまるでクイズのように今後の予想を上げている。
「このままショッピングに行く」
「まぁ、もちろん食事もだろうな」
「財布を拾っただけの相手についていく警戒心の薄さから考えると、床までは共にするであろう」
「ぅぅぅぅぉぉぉぇぇぁぁぁ……」
耳元で聞こえる予想に、守久の赤面が酷くなった。あまりに顕著な反応に、アルベルトは苦笑して具体的なトドメの予想を口にするのを控えた。まぁ、このマナウスにその手の行為専用の宿泊施設があることなぞ、指摘されずとも知っているだろう。そこまで考えが行き着くかどうかは別にしてだが。
樹に片手をついて、何やら煩悶している守久を楽しげに見ていたコテツはふと思案気な顔になった。
「アルベルト……その、なんだ…」
言いあぐねているコテツを見て、その先を察したアルベルトはひらりと片手を振る。
「あの人は「男はタネを蒔くのが、本能」って動物学者的考えが根幹にあるから、全くヤキモチを焼かないよ」
「そうか。まぁそれはそれで、複雑だな」
苦みのある口調に、アルベルトは何も返さない。そのあたりは自分の領域ではないと示すような微笑に、コテツは浅く頷いた。
「俺もこの辺で別れよう」
「おふくろ似の俺の前じゃナンパし辛いとか?」
その問いかけに、コテツは肯定も否定もしなかった。ただ立ち去るときに見せた表情に、アルベルトは追及をやめて流すことにする。
「私もそろそろ離れよう。いると女避けになるだろうしな」
「俺は男避けになってるだろうけどね」
異性が一箇所にいれば、ナンパはもちろん逆ナンもやりにくいだろう。そんな科白の応酬だ。
アルベルトが見送る中、ヒカルはくつろいだ雰囲気のままコテツとはまた違う方向に消えていった。鴉の濡れ羽色の髪が、雑踏に完全に紛れたのを確認すると、アルベルトはようようと樹に懐いている男を振り返った。
「さて、さっきの伊達の手本は参考にならなかったみたいだな」
「なるかっ」
顔の赤みが取れてきた守久が、ごしごしと頬を擦りながら怒鳴るがアルベルトは気にしない。軽く肩を竦めて人ごみに目をやると、指先だけで何箇所かを示す。
「俺が手本代わりにそこの女の子たち誘ってくるけど、混じる?」
「遠慮する」
「気晴らしなんだ。そんな切羽詰った顔するなよ」
これじゃ誰もひっかからない、そう指摘したアルベルトに守久は降参の合図を出した。
「あー、俺はしばらくそこのベンチに座ってるから。お前一人でナンパしてきてくれ」
「はいはい。そうだな…一時間以上たってもまだナンパできていないんなら、合コンに強制参加ってのはどうだ?」
「………辞退する」
辞退の受理をするかしないかを曖昧に濁す笑いを浮かべて、アルベルトは手を振った。そのまま守久の見ている前でグループに声をかけ、首尾よく好感触を得てしまう。少し話しして、時計のフェイスを叩く仕草を見せるあたり、数時間後に会うなり、今後の予定を聞いたりしているのだろう。
守久が呆然としている間にアルベルトはにこやかな笑顔で女性限定の取り巻きを作り上げていた。
「一時間後にゃ天国だな」
呆然、を通り越して唖然とし、開きっぱなしだった口を無理やり閉じた守久は、ため息まじりに踵を返す。伊達といい、アルベルトといい、どうしてああも簡単に声をかけることができるのかわからない。直接的なシーンは見ていないがこの調子だとコテツやヒカルもそうなのだろうと推察して、ぐっと胃が重くなった気がした。
「キスをしろってな……どーすんだよ」
そんな科白を口にして、赤面してしまう自分に気付いて困惑を深くする。目の前に露店があることに気付き、数枚のコイン渡してとコーヒーを注文した。すぐに差し出されたそれに手を伸ばすが、か細い声が聞こえて動作をとめる。
「あの…」
たおやかな雰囲気を漂わせている女性が、守久の後ろに立っていた。相手が落とした何かを踏んでしまったのだろうかと、慌てて地面を確認した守久に、女性はくすりと笑ってお茶でもしませんか、とナンパ定番の言葉を口にする。たおやかに見えるが中々心の強いタイプらしい。
「へ…や、えっと」
何を言えばよいのかと、赤面する守久に女性はますます口元を緩めて腕を絡めてきた。そのまま歩き出す。コーヒーを受け取る暇もなく、気持ち的には引きずられている状態で付いていくが、行き先が喫茶店があるとは思えない方角だと気付いたとたんに意識が冴えた。
狼狽の欠けらすら、霧散してしまう。柔らかく絡む女性の腕をほんの少し引いて拘束を緩めると、口元を歪にゆがめた。



   ***



「美人局ってのには気付いたか」
女性と楽しくおしゃべりに興じていたアルベルトがそれに気付いたのは、伊達が最初の女の子とアイス片手に歩いているところに出くわしかけて、慌てて進路変更したお陰だった。マナウスが狭くはないとはいえデートコースに使える場所は限られている。この調子では他のメンバーとも遭遇しそうだと苦笑した矢先に女性と腕を組んでいる守久を発見したのだ。どう見ても守久がナンパしたようには見えず、相手の少しばかり強引にもとれる腕の動きに美人局ではいかと思ってしまった。少し慌てて連れの女性に一言を断り離れると、こそりと付いてきて今に至る。
「気付いているなら心配はいらないか…」
このあたりのごろつきがセフイロトで生活している人間を袋叩きにできるはずがない。そう確信している口ぶりで元の場所を振り返る。ここからではナンパした女性の姿が見えないが、それをいい事にため息をついた。
「ちょっと本気みたいだ…他に目が行かない」
今付き合っている彼女のことが、ちらちらと意識に上ってきてしまう。罪悪感とは少し違って、彼女以外の相手が視界に入らない感覚だ。こんなことは初めてで、ほんの少し楽しい。好きなんだなぁ、としみじみと実感できて。
胸の奥にほんわかとした気持ちを感じて和んでいたアルベルトは、相手を叩きのめして出て来た守久に気付いて隠れるように身を翻す。もう心配する必要はないからと戻りかけるが、視界の隅に逆ナンされている相手を見て歩みをとめた。
「あー、駄目だ。気になるっ。絶対もう駄目っ」
アルベルトが見てみるに、その女性もおそらく九割の確率で美人局だ。
「どんだけ引っかかるか数えたいっ」
連続でこの手のものにかかる確率は低い。けれど守久は叩きのめした直後にまた捕まっている。これはもう、そういうものを引き寄せる体質か、引き寄せる要素を抱えているのだと見ていいだろう。
目に入らない娘と話すよりも、人類未踏の領域に踏み込むかもしれない相手を観察しようと決意した。
「元々長居できなかって言ってたからな。大丈夫だろ」
待たせている女性にかける言葉を考えながら、アルベルトは振り返った。視線の先にはまたもや美人局かと気付いた守久の固い顔がある。それににんまり笑いかけると、気付かれていないと分かっていながら宣言した。
「俺が戻ってくるまで、その美人局にお仕置きしてろよっ」
次のに捕まっていたら見逃すかもしれないからと、次もまた美人局に捕まること間違いなしという確信をこめた、直球で酷い宣言を聞いたものは、あいにく本人しかおらず。当然、異論も反論もでてこなかった。



   ***



ナンパするのは嫌いではないが、いつもよりもずいぶんと健全な時間に始めてしまったナンパ活動に、どうしたものかとぶらついていたコテツは奇妙なものを見つけて足を止めた。
女性に引かれて、どこかうんざりした顔をしている守久と、満面の笑みを浮かべたアルベルトだ。とくに後者は前者に気付かれないよう動いているのか尾行距離を保っている。そっと顔を注視すると「わくわく」と書かれているのが目に見えるようだった。
「……なんだ?」
思わずさらに距離をとってついて行くと人気のない路地についた。
「なるほど、まぁ龍樹らしいかもしれんな」
アルベルトの動きと、うんざりしている様子の守久を踏まえて美人局に会いまくっているのだとあっさり理解する。叩きのめしてででくる時に、左右をよくよく確認している姿は確かにアルベルトの興味を引いたのだろう。コテツは軽く肩を竦めるとようようと暮れだした空を見上げて頷いた。
「まぁ、アルベルトがついているなら大事には至らないだろう」
自分は自分のナンパにでも精を出そう、首筋に手をやって頭を振る。ざっと見渡したかぎり好みの女性はいない。酒場にでも入ってみるかと目星を付けていた店のドアを目指した。コテツの目指す一角には、地下に掘り下げた形で作られた店が並んでいる。その中の一つ、使い込まれた黒檀の看板が下がっている店に足を踏み入れ、極端に抑えられた明かりに目を細めた。
出歩くことはなかったらしい。コテツの視界の中に、儚げな雰囲気を纏った女性が一人でグラスを傾けていた。
その空気はどこか、交際中の相手を思い出せるがそれとこれとは別だと、目の前の女性に優しくしたいという気持ちだけをのせて近づき、声を流す。
「寂しそうにしてどうした?」
穏やかな声色に面を伏せていた女性が顔を上げた。コテツは滲むような微笑を浮かべ、相手が嫌がっていないのを確認すると、対面で腰掛ける。
ウェイターに自分の酒を注文する前に、相手の空になっている杯を示して同じものを追加だと言葉を足した。



   ***



美人局率という未知の確率がはじき出そうとしていたアルベルトは、守久が突然走り出したのに対応しきれずに姿を見失ってしまった。途中からひっかけようとする女に嫌気が差したのか相手の気配が鋭くなっていたのも原因だろう。気付かれずに済む距離がかなり長くなっていて。
「どっちに行ったのか……」
ざっとあたりを確認して、美人局が殴られている音がしないのと理解する。先までは女性に腕を捕まれうんざりしていても抗わなかった相手が走り出したのなら気になることがあったのか、走らずにはいられない青春の衝動があったのか。
「まさか俺の尾行がばれた!?」
狼狽したアルベルトが物陰から飛び出し、守久を捕捉するべく全ての感覚を研ぎ澄ませようとする前に、酒場が密集している地帯からコテツが顔を出しているのに気付いた。
「まだ龍樹を追っていたのか」
「まだって…」
「夕方お前らの姿をみたからな」
予想は付いていると口端で笑ったコテツは、つぃと左方を指差した。
「そこの角を曲がっていったのは確認した」
「情報提供サンキューっ」
「まぁ、偶然見えたからな」
ちらと自分の後ろを振り返ったコテツにアルベルトは片眉を上げる。背後にいる人物には聞こえないように、囁いた。
「集合までもう少しだけど」
「引き止められない限りは、置手紙でもして戻る」
「止められないことを祈ってる」
同様に小声で返したコテツに軽く手を振ると、アルベルトは走り出す。目指せ世紀の美人局率。今の彼の中にはそんな単語がぐるぐる回っていた。
一方、アルベルトが自分の観察していたとは露ほども思っていない守久は酔漢に絡まれている女の子を助けていた。曲がるつもりのない角の先で何所ででも見るだろう諍いが目をひいたのは、巻き込まれている女の子が幼馴染によく似ていたからだ。思わず走り出して助けてしまい、その後どうすればいいのか分からなくなって近くの露店でジュースを買った。
道の端で二人並んで腰掛けるが、話すのは守久だけだ。幼馴染によく似た少女は口が聞けないのか喉を押さえてすまなさそうにしているが、守久は柔らかく笑んで話しかけていた。もっとも話題は、少女によく似ている人物のことで、相手がいかにお転婆なのかをとつとつと話し続けている。
時おりジュースを飲みながらだが話す口調に反して表情は楽しげで、少女も話せないことを忘れたかのように聞き入っていた。二人が座っている場所から角を曲がってすぐの場所で、近づきすぎて迂闊に動けなくなったアルベルトが耳を掻いて拝聴しているのにも気付いていないだろう。踏み込むべきかどうか悩んでいると、タイミングよく集合の連絡が流れた。予め設定してあった連絡時間に間違いがないのを確認すると、アルベルトは守久をからかうなり、意地悪するなりしてつけていた事を誤魔化そうと壁から背を離す。別れの科白を最後に話声が途絶えているあたり、守久も連絡に気付いたのだろう。
集合場所の方角は、アルベルトの位置と被っている。出会うのは必至。ならば自分から声をかけるのが上策だと、角からすべりでたアルベルトは守久の後ろに見える女の子の顔が恋人とそっくりで目を丸くした。似ているというレベルではない。これは、そんなレベルの問題じゃない。本人か、あるいはもう一人だ。
突然現れたアルベルトに守久が話しかけようとするが、それに構わず後ろの少女向かって走ろうとした。けれど、すでにずいぶんと離れていたせいか、少女の姿は忽然という言葉が当てはまるほど、唐突に消失する。
「アルベルト?」
「似ていたよなっ」
「ああ、そっくりとまではいかなかったけど…雰囲気が」
和む守久の様子と、自分が見た者には明確な差がある、そう判断を下したアルベルトはそのままこの場を濁すことにした。似ていて驚いたと話をあわせながら、後日あれが本人だったのかどうかを確かめる必要があるなと胸中で零した。
話しつつ集合場所にたどり着くと、やたらとつやつやしている肌のヒカルが一人佇んでいる。来るときより上機嫌だ。守久の背後に見えた者に関する不安を意識から一端押しのけたアルベルトヒカルの様子に興味を引かれる。
「ずいぶん楽しげだけど何してたんだ?」
「さて、のぅ」
ふふと笑って応える気配がない。この状態の彼女が口を割ることは滅多にない。それを肌で感じたアルベルトは、先の方向からコテツが戻ってくるのを見て「置手紙だな」と軽く笑った。アルベルトがコテツに話しかけている後ろで、守久がヒカルに「どうだった?」と尋ねているがやはり口を割らない。こっそり聞き耳を立てていたアルベルトは駄目だったかと内心落胆して残り一人の所在を確認する。
「守久、伊達は?」
「連絡なし。朝までこないんじゃないか? ……あの女の子と一緒に居てさ」
ごにょごにょと語尾が聞き取りにくいがその場にいた全員がきちんと聞き取り、さもありなんと顔に書いた。





2005/07...


■参加人物一覧

0552 / アルベルト・ルール / 男性 / エスパー
0351 / 伊達 剣人 / 男性 / エスパー
0535 / 守久 龍樹 / 男性 / エキスパート
0541 / ヒカル・スローター / 女性 / エスパー
0647 / コテツ・アヅマ / 男性 / ハーフサイバー



■ライター雑記


ご注文ありがとうございました。有馬秋人です。
まずは謝罪を。発注頂いた際に受け取った描写内容全てを反映することができませんでした。
個々のシーンを区切って描写することも考えましたが、それではパーティーノベルとして発注頂いた意味がないと思い、個別描写を控えました。また、頂いた発注内容によりキャラクターの描写に偏りが出ましたこと、後半のシーンが細切れになってしまったこともお詫びいたします。
全てのキャラクターを均等に絡めて、かつ楽しめる話を、と奮闘しましたがまだまだ精進する必要がありそうです。
今の私にはこのあたりがせいぜいで、せっかくご依頼してくださったのにちょっと情けなく思っています。
努力が足りていないモノカキですが、できましたら、今後も利用していただけると幸いです。