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【ボトムライン・アナザー≪バトル1:rookie≫】
●出会い
・第1バトル
■チーム名:アークエンジェル(MS名:紫電改)
■チーム名:ブレーヴハート(MS名:護竜)
・第2バトル
■チーム名:銀狼(MS名:Katze)
■チーム名:アライブプラン(MS名:サーキュラー)
・第3バトル
■チーム名:大っきいわんこ(MS名:SilveWolf)
■第1バトル勝者
・ファイナルバトル
■第2バトル勝者
■第3バトル勝者
――コンコンッ☆
対戦カードを眺めていると、控え室をノックする小さな音が聞えた。
返事をするとドアが開かれ、車椅子に座った一人の少女が姿を見せる。その背後にはサングラスを掛けた細身の男が佇んでいた。彼女は短めの赤毛を揺らして微笑む。年齢は14〜16歳ってところか。
「これからバトルなのにゴメンね☆ 私、キサト・テッドっていうの! ヨロシクね♪」
ヨロシクも何も誰だろう? ファンの少女? 否、そんな訳はない。第一、これからバトルなのに、関係者以外の立ち入りを許す筈がない。それに、腰から下はレースの施されたシーツで覆われていた。両手も膝の上らしく、シーツの中だ。
「あ、ゴメンなさい! 私もバトラーなんだよ♪ もしかしたら戦う事になるかもしれないから、挨拶に来たんだ。頑張ろうね☆」
言いたい事を告げてキサトの微笑みはドアの向こうに消えた――――
――神代秀流の第2バトルが始まろうとしていた。
「コチラにはシードバトラーが配置されていたとはな。幸いダメージは少ない。頼むぞ護竜!」
ヘッドギアを付けた青年は恐竜を模ったMSをゆっくりと前進させる。四角いコロシアムに姿を見せると、周囲から歓声の波が注ぎ出した。護竜は第一バトルを勝ち抜いたMSだ。観客の声援も熱が入る。
――フェニックス。
アメリカ南西部ソノラン砂漠の中心にある町である。
太陽の谷とも呼ばれたこの町を訪れる者は様々だが、皆どこかに焦燥感を持っている者ばかりだ。中でも、戦場の硝煙の匂いと緊張感が忘れられない者が多く訪れる。
――ボトムライン。
かつて警察の賭博だったモノが何時の間にか広まったMS(マスタースレイブ)バトルだ。
何ゆえ金色の大海に囲まれ、気温は40度を越える町で開催されているのか定かでないが、密かな話題になっていた。
この物語は、硝煙の匂いと鋼鉄の弾け合う戦いを忘れられない者達が、トップ・ザ・バトラーを目指して戦い合う記録である――――
『ハァ〜イ☆ それではボトムラインGPファーストバトル第3戦を始めるわよ♪』
突然スポットライトの中で、よく通る女の声が響き渡った。
インディアンルックの若い美女がマイク片手に解説を始める。どうやら司会という立場か。
『このバトルは30m四方が壁で覆われた、沈んだ床で行われます。バトルは射撃武器を使用しないピットファイト! 鋼鉄の機体が互いの得物でぶつかり合い、殴り合いを展開する正に原始的で最も熱い対戦です。それじゃ、パパッと紹介するわよ♪』
金髪美女の右の細腕を上がった。
『チーム・大っきいわんこ! MS・SilveWolf!!』
スポットライトにバリエベースの機体が照らされ、歓声と笑い声が響き渡る。なかなかユーモラスなチーム名と言うべきか。
『第1バトル勝者! チーム・ブレーヴハート! MS護竜!!』
次に秀流の方に美女の顔が向けられ、歓声と声援が飛ぶ。
『それじゃ行くわよ♪ ボトムライン! レディィィゴーー!!』
●唸る銀狼! 鎖の鞭を捌け! 護竜vsSilveWolf
護竜はブロードソードを上段に構えて間合いを計った。SilveWolfはMS用高周波ダガーを右手に、大型チェーンを左手に持っている。一気に肉迫するか否か、その判断が重要だ。まして相手はバリエベース。装甲を犠牲にしているだけに機動性はエリドゥーを凌駕している筈。
秀流は望遠カメラに、如何にも速そうなシルエットの銀色の機体を捉えるものの、機動性に目を見張る。
「速いッ! 護竜だって機動性を上げている筈なのに、機体ベースの違いって訳か!?」
刹那、衝撃に機体が揺れた。青年は顔色を変え、不安を彩る。
「長距離から!? クッ! 何て正確な狙いなんだ! 一撃は軽傷だが‥‥」
――躱せない!?
何とか動き回り鎖の洗礼を躱そうと努めるが、機体は鋼鉄の鎖を叩き付けられ、赤い火花を散らし続けた。恐らく相手からの視点では、回避が追い着いておらず、面白いように攻撃がヒットしている事だろう。
「こうなればダメージ覚悟で接近するしかない!」
護竜は防御体勢を取りながら前進した。同時に視界に銀色のバリエが肉迫する! 直ちにバックスピンの動きに入ろうとするが、望遠カメラに映る相手のカメラアイが発光したのを確認する。
「接近戦で来るのか!? 間に合わないッ!? うあッ!」
チェーンの時よりも激しい衝撃がコックピットを襲う。
SilveWolfは攻撃手段を高周波ダガーに切り換えたのだ。振るわれた刃が恐竜のシルエットに火花と共に切り傷を刻んでゆく。
「これ以上やらせる訳にはいかないんだよッ!!」
護竜はタックルを叩き込む――――筈だった。しかし、相手は自分の機体が脆い事は熟知していたのだ。巧みな操縦と機動力でヒット&ウェイを繰り返す。それは正に狼が獲物に跳び掛かり、牙の洗礼を与えては跳び去り、再び牙を向ける野獣そのものの動きだ。
高周波ダガーは使用回数に限りがあるものの、確実に恐竜にダメージを与え続けた。塗料が熱で鮮血のように舞い、装甲の破片が爬虫類の皮膚の如く飛ぶ。護竜のメカニックを担当した緑のロングヘアの少女には、恐竜が痛みに咆哮をあげるように見えた事だろう。
――渾身の一刀が叩き込まれ、カメラアイが破片を飛ばした。
次に響き渡ったのはバトル終了を告げるサイレンの音だ。
「やられたな。こりゃ修理代が掛かるか」
胸部ハッチを跳ね上げると、頬を掻いて秀流は苦笑する。歓声と罵声がコロシアムを包む中、銀色の機体も胸部ハッチを開いて、バトラーが陽気に手を振り声援に応えていた。
「女‥‥の、子?」
秀流の瞳に映った対戦相手は、銀髪の小柄な少女だ。しかも、ゆっくりと歩きながら少女に近づくのも、同じく小柄な銀髪の娘。
「双子‥‥じゃないよな? メカニックか‥‥。あ、コケタ‥‥」
おっといけない。対戦相手とはいえ、あまり少女を見ていてはパートナーに何を言われるかも分からない。
「うーん、まだ力不足ってことか‥‥。だが、次は勝たせてもらうぞ!」
小さな声で呟き、傷付いた護竜をゆっくりと扉へと向かわせた。
後に秀流は対戦相手を知る。
クリスティーナ・クロスフォードとエリア・スチール。
次に対戦する刻は訪れるかは知る由もなかった――――。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/クラス】
【0577/神代・秀流/男性/20歳/エキスパート】
【0656/クリスティーナ・クロスフォード/女性/16歳/エキスパート】
【0592/エリア・スチール/女性/16歳/エスパー】
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■ ライター通信 ■
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この度は御参加ありがとうございました☆
お久し振りです♪ 切磋巧実です。
始めに『この物語はアメリカを舞台としたボトムラインです。セフィロトにボトムラインはありませんので、混同しないようお願い致します』。また、MSの演出面もオフィシャルでは描かれていない部分を描写したりしていますが、あくまでライターオリジナルの解釈と世界観ですので、誤解なきようお願い致します。
今回は決勝戦以外は、ノベルごとにコックピット視界で描写されています。次回、どちらの描写演出を希望されるか明記して頂けると助かります。
対戦相手が優勝者では不運でしたね。相手も機体を改造しており、元々の機体も機動性が上でしたから、仕方が無いです。また、割り振られた数値も僅差ですが上でした。
今回で2度目(しかも納品前)の納品分ですが、あと1本残っております。だいたい切磋の演出方法が見えて来たと思いますが、お手が空いておりましたら感想をお願い致します。
楽しんで頂ければ幸いです。
いえ、リアクションが無いと不安にも‥‥。
それでは、また出会える事を祈って☆
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