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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


【ボトムライン・アナザー≪バトル1:rookie≫】

・第1バトル
■チーム名:アークエンジェル(MS名:紫電改)
■チーム名:ブレーヴハート(MS名:護竜)

・第2バトル
■チーム名:銀狼(MS名:Katze)
■チーム名:アライブプラン(MS名:サーキュラー)

・第3バトル
■チーム名:大っきいわんこ(MS名:SilveWolf)
■第1バトル勝者

・ファイナルバトル
■第2バトル勝者
■第3バトル勝者

 男は控え室でカードを切っていた。
 慣れた手捌きでシャッフルを繰り返す。
「意外と手先が器用なのね♪」
 女の声が飛び込み、キリル・アブラハムの手が止まる。小麦色の肌に髭を生やした壮年の男は、静かに黒い瞳を流した。視界に映ったのは酒場エタニティーのオーナーであり、マッチメーカーも務めるアンナ・ミラーだ。彼女は笑みを浮かべて歩み寄る。
「お待たせ☆ あなたの好みに合うMSをセッティングしておいたわよ」
「そうですか。では、早速準備しましょう」
 二人は薄暗い通路を進み、ガレージへと辿り着く。そこにはバトラーを待つ、艶消しの黒と灰色に彩られたMSが佇んでいた。
「ベースはバリエよ。機動性は優れているわ。但し、ご存知と思うけど装甲が薄いのも特徴よ」
 アンナは悪戯っぽい微笑みを投げて見せるが、キリルは真新しい機体を見上げるだけだ。やがてゆっくりと口を開く。
「ふむ、新しい機体の慣しには丁度良いですね」
「余裕ね? あなたを見れば幾つもの危険な橋を渡り抜いて来たと思うけど、ボトムラインは戦場と違うから気をつけてね♪」
 男は静かに頷く。雰囲気、年齢、表情と瞳から、軍人か傭兵かと容易に推測できるが、制限のあるコロシアムで如何に戦ってくれるのか。
「出撃します」
 胸部ハッチを開くと、慣れた動作でコックピットへと滑り込む。望遠カメラを流すと、アンナが小さく手を振っているのが確認できた。キリルは静かにエンジンキーを入れる。セラミックエンジンを鼓動を打ち鳴らす中、MSは鋼鉄の扉へと向けて歩き出した。

 ――フェニックス。
 アメリカ南西部ソノラン砂漠の中心にある町である。
 太陽の谷とも呼ばれたこの町を訪れる者は様々だが、皆どこかに焦燥感を持っている者ばかりだ。中でも、戦場の硝煙の匂いと緊張感が忘れられない者が多く訪れる。
 ――ボトムライン。
 かつて警察の賭博だったモノが何時の間にか広まったMS(マスタースレイブ)バトルだ。
 何ゆえ金色の大海に囲まれ、気温は40度を越える町で開催されているのか定かでないが、密かな話題になっていた。

 この物語は、硝煙の匂いと鋼鉄の弾け合う戦いを忘れられない者達が、トップ・ザ・バトラーを目指して戦い合う記録である――――


『ハァ〜イ☆ それではボトムラインGPファーストバトル第2戦を始めるわよ♪』
 突然スポットライトの中で、よく通る女の声が響き渡った。
 インディアンルックの若い美女がマイク片手に解説を始める。どうやら司会という立場か。
『このバトルは30m四方が壁で覆われた、沈んだ床で行われます。バトルは射撃武器を使用しないピットファイト! 鋼鉄の機体が互いの得物でぶつかり合い、殴り合いを展開する正に原始的で最も熱い対戦です。それじゃ、パパッと紹介するわよ♪』
 金髪美女の右の細腕を上がった。
『チーム・銀狼! MS・Katze!!』
 スポットライトにバリエベースの機体が照らされ、歓声が響き渡る。
『チーム・アライブプラン! MSサーキュラー!!』
 望遠カメラに捉えたMSは白い機体だ。シャープなシルエットで模られているが、下半身は膝部を覆う裾の広いフレアスカートのようなイメージを醸し出す。外観からはベース機体が何かは確認できなかった。本当に噂通りに謎のMSだというのか。
『それじゃ行くわよ♪ ボトムライン! レディィィゴーー!!』

●ビギナーと白いMS Katzevsサーキュラー
 ――互いに得物は同じですか‥‥。
 カメラ越しに捉えた白いMSはスレイブアームにモーニングスターを持っている。対するキリルが駆るKatzeも、右手に同じ武器を持っているが、彼の機体は左手にランスシュータベイルを装備している事だ。互いにコンクリートの床を踏み鳴らしてMSを前進させてゆく。
 ――相手の武器は同じですが、モーニングスターのみ。
 ならば巧く弾いて落させれば有利になりますが――――
『わ! わわわッ!』
 突然コックピットに流れたのは女の声だ。視界に映るサーキュラーは駆けながら分銅を回し、この勢いで機体をグラつかせていた。声とMSの様子がシンクロする。つまり――――
「通信機の回線を開いたままでバトルしているのですか? しかも、あの動きは‥‥」
 ――明らかに機体を扱い切れていない。
 キリルが瞳を研ぎ澄ます。勘が『今だ』と知らせていた。男は、Katzeを接近させる。
『えぇッ? 向かって来てるよ!』
 動揺が覗えた。これが作戦なら手の込んだものだが、芝居で分銅に振り回されている滑稽さは明らかに扱い切れていない証拠だ。
 ――申し訳ありませんが沈めさせて頂きますよ。
 左腕の先で鋼鉄の槍が照明を受けて輝く。
『さ、刺すの? これでやられちゃうの? えーいッ!』
 サーキュラーは分銅を放り投げた。しかし、その洗礼を受けない所か、明後日の方角で壁にメリ込んでいる。
「武器まで手放してどうするつもりですか?」
 滅多に戦闘中に口を開かないキリルが呟いた。次に飛び込んだのは慌てふためく女の声だ。
『え? あぁッ! 通信回線開きっ放しだ! え』
 プツッと通信が途中で切れた感覚がした。恐らくチャンネルに割り込まれたと推測できる。可能性で言えば、マッチメーカーからの指示が入ったのだろうか。
 いずれにせよ、既にKatzeはサーキュラーの懐に踏み込んでいた。このまま機体を貫けば勝負は決する。キリルはマスターアームに覆われた左腕を突き出し、トリガーを絞ろうとした時だ。突然黒いスレイブアームに蒼白い火花が迸り、のたうち回った。
「な、何が!? ええーいッ!」
 痛みは感じなかったが、明らかに機体はダメージを受けている。キリルは構わず鉄槌を叩き込んだ。火薬の弾ける音が響き渡り、白い機体に突き刺さる槍。衝撃にサーキュラーが吹き飛び、壁へと叩き付けられた。そのまま機体は動かない。
「殺しはしていない筈ですが‥‥まあ、こんなものか」
 望遠カメラをサーキュラーにズームさせる。2名の黒い服を着た者が駆け付け、胸部ハッチを外側から開く姿が捉えられた。コックピットが曝け出される中、赤毛の少女がグッタリと気を失っていた。男達が彼女を引き摺り出す。白い水着にフリルの施されたようなバトラースーツに身を包んだバトラーは、手首と足首から先が欠如していた‥‥。
「噂と違い、金持ちお嬢様の道楽ではなさそうですね」
『キリルさん、次のバトルが待っているわよ。ガレージに戻って頂戴』
「‥‥了解しました」
 釈然としない中、歓声が響き渡るコロシアムを離れた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/クラス】
【0634/キリル・アブラハム/男性/45歳/エスパーハーフサイバー 】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 はじめまして♪ 切磋巧実です。
 始めに『この物語はアメリカを舞台としたボトムラインです。セフィロトにボトムラインはありませんので、混同しないようお願い致します』。また、MSの演出面もオフィシャルでは描かれていない部分を描写したりしていますが、あくまでライターオリジナルの解釈と世界観ですので、誤解なきようお願い致します。
 今回は決勝戦以外は、ノベルごとにコックピット視界で描写されています。次回、どちらの描写演出を希望されるか明記して頂けると助かります。
 さて、上記で説明しております通り、セフィロトとボトムラインは別の物語です。よって、選択肢に無いセフィロトのMSは、同じ性能のバリエに変更させて頂きました事を御了承下さい。また、台詞もセフィロト関連を削除させて頂きました事もご理解頂けますと幸いです。
 アンナをマッチメーカーに選択とは予想外でした。そんな訳で、多少冒頭が他の方の構成が違っていたりします。これは、キサトも用意が必要であり、控え室に挨拶には来れない状況と解釈して下さい。
 決勝戦は他の方のノベルを読んでみて下さい。なかなか喋らない方らしいので、心の中で口ずさむ感じになっておりますが、いかがでしたでしょうか?
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 いえ、リアクションが無いと不安にも‥‥。
 それでは、また出会える事を祈って☆