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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【アマゾン川】ジャングルクルーズ

メビオス零



【オープニング】
 セフィロトはジャングルの中に孤立している。
 そこで唯一、他の土地と繋がる道。それがアマゾン川だ。
 河口の方とは違って、マナウスからセフィロトの辺りは対岸が見えない程広いって事はない。
 それでも、セフィロト建造の際には、外洋で使う様な巨大な貨物船が川を遡ってきて、その資材を運んだというから、アマゾン川の大きさがわかるってもんだろう。
 人も物資も、このアマゾン川を通して運ばれている。貨客船の定期航路もあるし、少々稼げば手漕ぎのカヌーくらいは簡単に手に入る。
 船旅をしながら、マナウスまでゆっくり過ごしてみるのも良いかも知れないぜ。
 ところで‥‥お前さん、船酔いに弱かったりしないよな?







★★★

 その日、アマゾン川の黄褐色の水をジーーっと睨み付けながら船を進めるビジター達の姿がよく見られた。彼らはそれぞれ手に大きな釣り竿を持ち、意気揚々、ワイワイガヤガヤと仲間内で騒ぎながら川を上っていく。
 彼らは、アマゾン川で漁をしている漁協の人々から要請を受け、川の“主釣り”に挑みに来たのだ。最近この近くでは、謎の巨大な影が船の下を通過したりしているらしく、それが見かけられる様になってからと言うもの、この近辺では高値で取引されている高級魚『ピラルク』が全く獲れなくなったとか………
 とまぁ、そう言う訳で、業を煮やした漁協の方々から“主釣り”依頼が出された訳である。賞金の額もなかなかの物なので、こぞって馳せ参じていた。



★★★

 そんなビジター船団の群れから少し離れた樹海(と言ってもちゃんと川の中)に、一隻のクルーザーが待機していた。その上から双眼鏡を使ってビジター達を監視していた呂・白玲は、自分のペットであるトド丸を探しているジェミリアス、ボナパルトに声を掛けた。

「ちょっと、あんたのペットはまだ見つからないの?」
「そう急がせないで。あの子は高性能すぎて、潜水艦としての性能が凄く高いのよ。潜水艦にとって隠密性は命。見つけるのは大変なのよ」
「あいつ等の方が先に見つけたら?」
「その時はあなたの出番よ。頑張ってちょうだいね?」
「む……あんたの話じゃ、別に釣り竿程度じゃ傷一つ付けられないんだし、護衛しなくても良いじゃん」

 頬を膨らませながら、白玲は律儀にも、ビジター達から視線を外したりしていなかった。会話しながらも、ビジター達がジェミリアスの探しているトド丸を先に見つけていないかどうか、ジッと見て監視し続けている。
 文句を言いつつもきっちりと心配してくれている白玲に微笑みかけながら、ジェミリアスは船のセンサーを使ってトド丸を捜した。トド丸の体は5メートルもあるのだ、この付近の樹海にジッとしているのなら見つけるのは困難だが、いったん川を泳ぎだしたらすぐに分かるはずである。
 現在はお昼寝でもしているのか、レーダーの類には引っかかってこない。

(まぁ、そんな簡単に引っかかるぐらいなら、とっくにあの人達にも見つかっていたでしょうけどね……)

 何せ相手もビジターだ。全員何らかの奥の手を持っているはずである。それを視野に入れれば、もしかしたら釣り針でも釣られてしまうかも知れない・・・
 急いで探していたジェミリアスだったが、それよりも早く、ビジター達に異変が起こったことを白玲が察知した。ビジター達はそれぞれ大きな竿を振って川の一部分に集中的に投げたり、中には銛を打ち込んでいる者まで居る。

「大変だ!」
「待って!そのままで行ったら迎え撃たれるわよ!」

 飛び出そうとした白玲を、ジェミリアスは手を掴んで船に押し止めた。もしここで不用意に出て行ったら、自分達が漁業を妨害している一味だと思われても仕方がない。
 弓矢を構えている白玲は、トド丸に対して猛攻撃を始めているビジター達を、悔しそうに睨み付けた。
 あの程度の攻撃では傷一つ付けられないと思うが、それでも相手が機械の身体だと知られたら、誰も手加減してくれないだろう。だからそれがバレる前に、彼らの気を反らして、トド丸を安全な場所まで誘導しなければならない。

「ってあんたのペットだろ?!あっ!撃たれてる撃たれてる!!」
「大丈夫、こういう事態を想定して、私が対(男性)ビジター用最終兵器を持ってきてあげたから。これを白玲ちゃんが付けてくれれば、間違いなく彼らを瞬殺出来るわ!」

 そう言いながら、ジェミリアスは船に積んでいた荷物の山の中に手を突っ込んだ。ごそごそと探っているジェミリアスに怪訝な表情を向ける白玲。

「瞬札って……ちょ、ちょっと待て!!その手に持っているのは一体何!?」

 ジェミリアスが取り出した物を見て、思わず後退る白玲。逃げ腰になっている白玲に、ジェミリアスはジリジリと間合いを詰めた。

「まさかそれを着ろって言うんじゃ………待って!まだ心の準備が」
「そんな暇はないわ。私がトド丸を誘導するから、その間、あなたは彼らをこれで引きつけていて。頼んだわよ!」
「うわぁぁあああ!!」

 ジェミリアスに掴まり、一瞬で拘束される白玲。
 その瞬間、ビジター達が見ていない所で、一人の少女が変身を遂げた…………





★★★

 謎の巨大生物を仕留めようと、ビジター達は躍起になって手持ちの武器を使用していた。
 謎の生物はその攻撃を受けながらも、別段ダメージを受けた様なリアクションは見せずに、ゆっくりとした動きで移動していく。
 影でしか見えないが、それでも全く痛がる素振りも見せない怪物に、段々とビジター達も不信感を募らせていた………

「隊長。この“主”、全然ダメージを食らってないですよ?」
「うむ、そのようだ。参ったな。この釣り竿や銛で歯が立たないとなると、最終手段に映らざるを得ない………」

 隊長の言葉に、隊員達がザワッとざわめき始める。
 隊長が言っている最終手段とは、要するにエスパーの超能力の行使、さらにサイバーとしての重火器の使用である。どちらも、下手をすると大騒ぎになって漁協に怒られる可能性があるために、使用を控えていたのだ。

「諸君、考えても見た前。我々はこの生物に対して、様々な武装を費やした。数々の大物を釣り上げてきたと言われる呪いの釣り竿!もはやこんなのを食べる奴がいるのかという様な体長五十センチもある大ミミズ!!対鯨用のすっごく重くて丈夫な鋭い銛!!!それが尽く破れているのだ!!もはやこれは、魚の類ではない!!」

 演説口調で言い切る隊長。隊員の中から、「むしろそんな道具を集めてくるのがどうかと思う」と言う声が上がるが、隊長は全く聞いていない。

「これは…………そう、タクトニムに違いない!!」
「こんな所にですか?ここには一般の漁協の人達が来ているんですよ?まさかこんな所に……」
「シャラップ!それが出てきたからこそ問題が発生したのだ!!と、言う訳で、思いっきり殺ってしまおう!!」

 もはや暴走とすら取れる程の狂気を発しながら、隊長は思いっきり高笑いをする。

「何でそこまで………」
「ほら、隊長って釣りが趣味だから」
「でも雑魚すら釣れたことがないんですよね」

 その背後で、隊員達はボソボソと小声になって雑談している。だがその手にはしっかりと、機雷やら何やらの、兵器とすら取れる物が持たれていた。

「さぁ皆の物!一斉攻撃開すぃ!?」

 開始の合図を出そうとした隊長は、その瞬間、頭に凄まじい衝撃を受けて吹っ飛んだ。どこからか飛んできた矢がオデコに深々と突き刺さり、隊員達に衝撃が走る。

「隊長!!」
「大丈夫、怪我はない!!」
「怪我はないって………あれ、ゴム?」

 隊長は勢いよく起きあがり、オデコに刺さっていた矢を抜いて床に放り投げる。それを手に取った隊員は、その先端が、ゴム状の吸盤になっているのを見て取った。
 隊長と隊員は、矢の放たれた場所を素早く探し当てる。

「ええい!誰が邪魔をグフッ!?」
「うわっ、また倒れたよこの人……って、どうしたんですか?皆さんまで鼻血を出して……」

 一人だけ矢を調べて下を向いていた隊員は、他の隊員達が全員鼻血を出して悶絶しているのを、怪訝な表情で眺めた。鼻血を出している隊員達は、揃って同じ方向を指差した。

「一体何が………なるほど」

 鼻を押さえながら、目を離すことなく、手荷物の中からカメラを取りだした。
 隊員達が見た者………それは………





★★★

「一斉発射!!」
「「「「ラジャ!」」」」
「撮るなぁぁぁぁ!!」

 白玲は涙目になりながら、ゴム矢をこれでもかとばかりに連射し、能力でそれを加速させてカメラを破壊する。だが、全員釣った怪物の記念撮影でもしようとしていたのか、次々にスペアカメラを取り出して、ビジター達は執念で撮影会を続行した。たちの悪いことに、カメラやビデオの替えはいくらでもあるらしく、どれだけ破壊しても、ビジター達は諦めることなく次々に別の得物を取り出してくる。
 白玲は、ジェミリアスの作戦によって、(強制的に)それほど魅力的な格好をさせられていた。
 もっとも、本人は……

「うわぁぁん!何で私がこんな格好を!?」

 恥ずかしくて死にそうになりながらも、「こんな格好で終わりたくない」という気持ちだけで生き延びていた。目の前にいるビジター達は、当初の目的を完璧に忘れ、目の前のウサギを追いかけてきている……
 ………ウサギ、そう、ウサギなのだ。もっと詳しく言えばバニーさん。フワフワの尻尾が付いている水着の様な服を来て、きちんと頭の上にウサギ耳付きのヘアバンド。さらにおまけとして、両足に網タイツ!!
 加えて呂・白玲(15歳)の低い身長と小柄な体型。そしてこれ以上ない程の恥ずかしそうな顔(と言うか実際恥ずかしい)……
 これを見て、ビジター達が萌えないはずがない!!(と思う……え?違う?)

「あの人何考えてるんだぁ!?」

 ついに堪えていた涙を決壊させながら、それでも撮られてなる物かと矢を射続ける白玲。
 ここで一枚でも自分が撮られている写真が残ろう物なら、それは永遠に自分の人生最大の恥辱として残ってしまうだろう……

「動きが止まったぞ!今だ!!」
「撮るなって言ってるだろ!!ああもう!早く合図をくれジェミリアスーーーー!!」

 叫び声を上げる白玲。彼女が待っている合図というのは、トド丸の避難を終えたというジェミリアスからの合図のことである。
 だが無情にも、この激しい攻防戦は、何と数時間にも渡って行われることになるのだった…………






★★★

『あちらの方が騒がしいようですね』
「そうみたいね。まぁ、あまり気にしないで良いわ。私たちは、ゆっくりと遊んでいきましょう」
『そうですか?聞き覚えのある声もするのですが……』
「気のせいよ(ハート)」

 離れた所で、トド丸………こと、シュワルツ・ゼーベアと、その背中に乗ったジェミリアスが、遊覧を楽しみながら話していた。
 ジェミリアスは白玲と離れた後、そんなに時間も掛からずにシュワルツを連れ出していた。白玲がバニー魔人二号として覚醒した御陰で、ビジター達の注意がそちらへ集中した御陰だった。
 今は、白玲達の居る場所から約1q程離れた場所にいる。問題になっていた漁業区域からは既に出ているため、ビジター達も、ここまでは追ってこないだろう。
 シュワルツの聴覚は人間の千倍程あるため、まだ白玲達の騒音を聞き付けている。だが、それが誰かまでは、判別できていない様だった……

(まぁ、彼女にシュワルツの本体を見せて良いかどうか、もうちょっとだけ様子見をしてなくっちゃね)

 ジェミリアスは、内心でそう思いながらシュワルツの背中から川におり、一緒に潜ってみる。川の濁った水でも、ジャングルの暑さの御陰で気にならない程気持ちいい。
 ちなみに、漁師達が釣れなくなったと言っていた『ピラルク』は用心深い魚であるため、シュワルツの本体がこの付近に来ていたために隠れていたらしい。少なくとも、暫く離れていれば、また元通りになるはずである。

「ちょっとだけ心配しちゃったわ。ダメよ?ビジター達がいる様な所に出て行っちゃ。下手に姿を見せたりしたら、狩られるかも知れないんだから」
『ご心配をおかけして、申し訳ありませんジェミリアス様』

 巨体で頭を下げるシュワルツ。ジェミリアスは、笑いながら、その体をペシッと叩いた。

「この辺りを散策していたんでしょ?良い穴場に案内してくれないかしら?」
『了解しましたジェミリアス様。では、参りましょう』

 ジェミリアスは、シュワルツと一緒に大きな川を泳ぎ回り、久々の遊泳を楽しんでいた………







★エピローグ★

 二人は、万が一に連絡が取れなくなった時の集合場所として、出来るだけ人の来ない場所を選択していた。何せ、何人ものビジターの稼ぎを邪魔したのだ。顔を見られた時のために、あまり人の多い所で会うと、無用なゴタゴタが起きてしまう可能性があったからだ。
 白玲は、集合場所に、集合時間よりも遅れてコソコソとしながら現れた。何処から調達したのかは知らないが、少しボロボロになった麻布を被って身を隠している。
 ジェミリアスはそんな様相の白玲を呆れながら見て、ポツリと訪ねた。

「その格好、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか!早く私の服を返して!」

 そう言いながら、白玲はバッと布を地に落とした。その下から出てきたのは、多少汚れているが、ジェミリアスが無理矢理着せ替えたバニー服である。
 その特性上、元から着ていた服を下に着込む訳にもいかず、脱がされた服が乗ったクルーザーは、ジェミリアスが乗っていってしまったため、今までずっとこのバニー服で過ごしていたのだ。真面目で口下手な白玲は、バニー服で新しい服を購入することも出来ず、出来るだけ、表にも人が少ない時間帯になってやって来たという訳だ。

「似合ってるのに……」
「そんな事あるか!?」
「似合ってるわよ。可愛いもの。ねぇ、そう思うわよね?」
「はい、私も可愛らしいと思いますが……」
「!!!!?????」

 ジェミリアスが背後に声をかけると、そこから白玲も聞き覚えのある、ローゼンドルフ家の執事の声が聞こえてきた。執事はジェミリアスが持ち去った白玲の服を持っており、こともあろうに『誠心誠意、私自身の手で洗濯させて貰いました』等と言った………




 その後、街の中に、「よりにもよってこんな姿を見られたぁ!」という悲鳴が上がったとか何とか………
 真偽の程は、定かではない………









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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名
0607 シュワルツ・ゼーベア
0544 ジェミリアス・ボナパルト
0529 呂・白玲

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 ☆ライター通信☆
 ☆☆☆☆☆☆☆☆
 初めましてと、またもありがとうございましたのメビオス零です。
 今回の話はどうでしたでしょうか?コメディ風味……白玲様ばかりが可哀想な目に遭ってます。バニー姿。可愛いと思うんだけどなぁ……(本音)
 不覚にも、ジェミリアス様のバニー姿を描写出来ませんでした。入れ忘れたわけではないんです。ただ、ジェミリアス様がバニーになられると、白玲様の泣き顔が……ってまた本音が出た。別に苛めてるわけではありませんよ?
 さて……今回一番の反省点は…………トド丸、ことシュワルツ様ですか。出番少ないぃぃ……う〜ん、もう一踏ん張りした方が良かったかな?でもこれはこれで。
 何かご指摘などがあったら、ビシバシ言ってきて下さい。呼び名なども、言ってくれれば、次回から対処します。
 では、またの御機会がありましたら、是非また書かせて頂きます……

追伸:呂・白玲→バニーの衣装ゲット(^_^)


メビオス零より