PSYCOMASTERS TOP
新しいページを見るクリエーター別で見る商品一覧を見る前のページへ


<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


都市マルクト【整備工場】オーバーホール

メビオス零



【オープニング】
 装備の手入れは生き残りの必須条件だ。いざって時に、武器が壊れてましたじゃ、命が幾つあっても足りないからな。
 だが、素人が弄り回してたんじゃあ、限界もある。たまには、本職に見てもらうのも必要だ。
 それに、整備や手入れですまない、ぶっ壊れた装備は本職に修理してもらわなきゃならん。
 サイバーなんて、傷一つ直すにも修理が必要だし、年に一回はオーバーホールが必要だって言うじゃないか。戦場じゃ頼もしいが、私生活じゃ大変だな。
 さて、整備工場へ行こうか。あそこで、装備の修理や整備をやってもらおう。




 MSに乗り込んでいるクリスティーナ・クロスフォードは、思う様に動かないMSにイライラしながら、やっとの思いでトレーラーに積み込んでいる。相棒のエレナ・レムは先に積み込みを終え、外からクリスティーナが動かしているMSを眺めていた。
 積み込みを終えようとしているクリスティーナは、トレーラーによじ登ろうとした途端、機体の腕が動かなくなったことで、ついに悲鳴を上げた。

「あーーー!!もう、これも動かないよ!?」
「まぁ、そこまで装甲が凹んでいれば、腕の一本ぐらい動かなくなるだろうな」

 MSから飛び出てきたクリスティーナにそう言いながら、エレナはさっさとトレーラーの助手席へと飛び込んだ。
 聞きながら拗ねた様な顔をしていたクリスティーナは、頬を膨らませながら運転席に滑り込んだ。

「そう言うエレナなんて、機体が動かなくなりつつあるじゃない!さっきトレーラーに積んでいる時、凄くギシギシ言ってる音が聞こえてきたよ!?」
「あれはもう、本整備どころじゃないな。一回隅々まで点検して貰わないと、何時爆発するか……」
「……お互いボロボロだね」

 大きなトレーラーにMS二機を積み、クリスティーナとエレナの二人の少女は、運転席に並んで座りながら口々に言い合った。特にクリスティーナはしみじみと後ろに積まれているMSを振り返っている。
 ここ最近、MSを使っての戦闘に厳しいものが続いてしまい、この度二人とも、仲良く機体がボロボロになってしまっていた。
 まだ動かそうと思えば何とか動くのだが、間違いなく戦闘には耐えられない。整備工場までだって、このトレーラーで移動させなければ、途中の道で完全に故障してしまって動かなくなっていただろう……

「ここまで壊れたら、やっぱり“あの人”に整備して貰わないとダメか………ちょっと苦手なんだけどなぁ……」
「そう?いい人だと思うんだけどな〜」
「悪い人じゃないのは解るんだけどな……まぁ良いか」
「それじゃ、ちょっと急いでいこうか!」

 クリスティーナがトレーラーを動かし、都市マルクトの一区画……整備士達の集まる、通称【整備工場】と呼ばれている場所へとトレーラーを走らせていった………







 整備士達の集まる整備工場区域に、トレーラーを進めさせていく。目指している先は決まっているのだが、この区域は整備士達で勝手に縄張りを決め、大きな機械やら何やらを持ってきているため、ゴチャゴチャと入り組んでいて本当に分かり難い。
 広い区画を三十分近く迷ったあげく、ようやく二人は顔見知りの整備士の元へと辿り着いた。
 トレーラーから降りて、まずは先に挨拶を済ませる。

「ああこれは。久しぶりですなぁ、お嬢!」
「お久しぶり〜〜!!景気はどう?」
「ボチボチでんなぁ」
「またまたぁ。ウチにいた時よりも儲けてるクセに」
「「はっはっはっはっはっ!」」
「・・・何でそんなに仲が良いんだ」

 元気に肩を叩き合う二人を眺めながら、エレナは溜息をついた。この場所の店主である中年整備士は、元クロスフォード財団の腕利き整備士で、二人の乗っているSilverWolfの整備については、財団の整備士達でも右に出る者は居ないと言われている。
 エレナは荷台に掛けてあった布を固定していた紐を外していき、機体を整備士にも見える様にしていく。

「早速だけど、機体の方を見て貰えるか?」
「おし来た!どんな具合…………だ!!?」

 整備士の目が機体に向くと同時に、今まで明るかった口調が一変する。

「何じゃこりゃーーーーーーー!!!」

 両手で頭を抱え、さりげに自分の耳を塞ぎながら、店主が絶叫した。
 あまりに大きな声に、横に立っていたエレナは頭を蹌踉めかせ、遠くで作業していた部下の整備士達も、何事だと三人を振り返っている。
 クリスティーナは慣れているらしく、ちゃっかり距離を離して耳を塞いで難を逃れている。店主の叫びが終わったと察すると、平然と、にこやかに駆け寄ってきた。

「直る?」
「直るっーーーか、何だこの壊れ方は!?装甲三割拉げてるしカメラ半分割れてるしブースター一個無いし………ここ!燃料タンクのある場所の装甲がない上に弾痕があるぞ!?」
「あはは、あと数センチめり込んでたら爆発してるね!」
「笑い事か!?ったく、相方も似たり寄ったりか。揃いも揃って、俺様の芸術作品をボロボロにしおって……!」
「「すいません」」

 “俺様の”とか言う部分には何やら言いたいのだが、これ以上相手を怒らせると“ある意味”命に関わるので、言葉をグッと飲み込んだ。
 整備士工場の掟:整備前の整備士を怒らせてはいけない。命と財布に響いてくるぞ!!

「前衛のクリスだけでなく、後衛のエレナまでここまでやられてるとは………どんな戦闘やってきたんだ?」
「ん〜?ここまで遣られちゃったのは、流石に不本意なんだけどね。なんか色々あって」
「本意でボロボロにされちゃ敵わんよ。……ったく、あっちで待ってろ。とりあえず修理場所と点検場所、全部見積もるから」
「よろしくね」

 部下を呼び集める店主に手を振りながら、クリスティーナとエレナの二人は、少し離れた所に無造作に置かれている、折り畳み式の休憩用ベンチに座り込んだ。
 遠くでワイワイガヤガヤと騒ぎながら二人のMSに群がる整備士達を眺めながら、二人は溜息をつく。

「機体直るかな?」
「直らなければ困る。……まぁ、コックピットもエンジンも、そんなに酷い損傷はしていない。現在の技術で直せない様な、ブラックテクノロジーじみた装置を積んでいる訳でもないからな。大丈夫だろ」
「そっちの機体の方が重傷だしね」
「あちこち弄り回して、ほとんど別機体になってるからな。そこら辺の良さを失わない様に修理して貰えるかどうか………早いな。もうこっちに来たぞ」

 ほんの十分も経たないうちに、店主が数枚の紙切れを持って、二人に歩み寄ってくる。ざっと簡単に見回しただけの筈だが、それでも紙に書かれている検査箇所数は、優に数十カ所に及んでいた。
 二人に一枚ずつ紙を渡した後、コホンと咳払いをしてから説明に入った。

「まずはクリスの方だが、まず右腕は丸ごと交換。カメラはレンズを交換。エンジンは使えるから点検だけしておくぞ。後は各種装甲の交換と、内部の点検だけだ」
「はーい!」
「エレナの方だが………よくもまぁ、あそこまで重装備にした物だな。アレはもう、あっちこっちやられてるから、全身を見直すぞ?外部と内部の総点検&修理。損傷が激しいから、ちっと改造することになると思うが、それで良いか?」
「お願いします」

 ペコリとエレナがお辞儀する。店主は「ようしっ。改造内容はこっちのお勧めにしておくからな」と言い、部下達に指示を飛ばしに戻っていった。作業場の奥へと運ばれていくMSを眺めながら、二人は両手を挙げてノビをした。

「ん〜〜………さて。MSのなくなった僕たちは自由行動だけど、どうする?」
「そうだな………俺は整備の手伝いをしに行こうと思ってるんだが………」
「僕もそうしようかな。外での整備とかは自分でしないとダメだし、自分でも、整備のスキルをちょっっっっっっっとだけ上げたいと思ってたからね」
「…………クロスフォード財閥の総帥が機体の整備…………家の者達が聞いたらどう思うかねぇ?」

 エレナの呟きなど聞くことなく、クリスティーナは店主と部下達の元へと走り寄っていく。エレナは店主に教えを請うクリスティーナを見て、僅かにだが、歩むスピードを速めていた。





 その後、店主直々に整備の技術を叩き込まれるクリスティーナとエレナの悲鳴が上がったとか何とか……
 それはまた、別の話………





■━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━□

【整理番号(NPCID)】 PC名
0656 クリスティーナ・クロスフォード
0642 エレナ・レム


【ライター通信】
 どうも、まいどありがとうございます。メビオス零です。
 今回はちょっと短めのシナリオですが、なんと言いますか………機体ボロボロにしちゃってごめんなさい(前回とか前々回とか)。これからはもっと気合いを込めてズタボロに……しませんから!……しませんからそんな目で見ながら離れていかないでぇ!?
 なんて一人で騒いですみませんでした。
 これからもがんばって書きますので、またご縁がありましたら、お会いいたしましょう。

追伸:HPに感想・要望などを書き込めるBBSを設置し、軽く新調しました。
   http://mebiosuzero.poke1.jp/
   気が向いたらどうぞ。