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【盲目の少女】夢想の記憶
「一体どうしたんだよ、行きたくないって!?」
「だって怖いんですもん!行きたくないですッ!」
「でも行かないとお前の記憶わからんだろ!目が見えなくなった経過だって分からない癖に!」
「でも知れば何かがなくなりそうでやなんです!」
言い合いする二人。
遠くから眺めても目立つほど。
どうやら少女の記憶を取り戻そうと、カイルが巷で有名な占い師を薦め、尋ねるとこらしいのだが。
いざとなってマイが駄々をこねる。
「なくなりそうって、何がだよ?」
「それは…分かりません」
「分かりませんって何だよ!?」
「分からないものは分からないんです!」
…このままじゃラチがあかない。
カイルは深く溜息をついてマイに提案する。
「なら、誰か他に人が一緒なら怖くは?」
「ないです…多分」
「じゃあ誰か探すか」
「でもでも!見つからなかったらどーするんですか!?」
「そりゃあ…。そのまま、二人で行く」
「やーだーーーーーーー!」
我侭娘っぷりを発揮しているようである。
そんな彼女を見つけたのは、知り合いでもあるアルベルト・ルールだった。
街頭にへばりついて駄々をこねてるカイルを見て同情しているようだった。
「カイルにマイじゃないか。どうしたんだよ、こんなところで?」
「確か…アルベルトだったか。貴公からも言ってやってくれないか?こいつ、自分の記憶を探したいとかいってたくせにここまで来て拒絶しやがる…」
「記憶はあったほうがいいと思うぜ?マイ、アンタもそう思わないか?」
「思いますけど、でも怖いんです!ヤなんですッ!」
「さっきからその言葉ばっかりだな、お前はッ!?」
カイルが怒鳴ると、マイも流石にしょんぼりとしてしまった。
その瞬間、カイルの動きもピタリと止まる。
どうやら彼女を泣かせたくはないらしい……のだが。
「じゃあこうしようか。俺も一緒についてってやる。だからアンタの記憶が何処にあるか聞きにいこうぜ」
「……ホントですか?」
「あぁ、ホントだ。いいよな、カイル?」
「貴公がそれでいいのなら此方も構いはしないんだが…」
少し複雑そうだが渋々と首を縦に振る。
どちらにしても目的はマイの記憶なのだから、目的が最優先だ。
「よし、それじゃあ決まりだな。占い師の所へ行こうか」
「……私、大丈夫なんでしょうか……」
小さく呟かれた不安の言葉は、誰にも届かない。
その不安は、何時掻き消される事か……。
有名占い師の館の家の前。
其処は豪華な屋敷のような家。
有名というからにはやはりこれぐらいはあるのだろうと覚悟はしていたが
大きすぎる。大きいにも程がある。
「さて、行くかね……マイ、覚悟はいいな?」
「…あまりよくないです…」
「そう言うなって。ホレ、行くぞ」
屋敷の中に入る三人。
その三人を待ち受けていたのはメイド風の女性。
小さく頭を下げると、こう呟いた。
「貴方達が来るのは予言されておりました。さぁ、どうぞ中へ…」
「予言されていた…?」
「やっぱ有名な占い師は違うもんだなぁ…」
どう違うのかはさておき、三人は案内されるがまま
奥の部屋へと案内された。
其処は暗闇に覆われていて、中央に微かな光りが見える。
其処には独りの老人が、其処に座っていた。
「ようこそ、お三方。来る事は予言出来ていた。知りたいのだろう?」
「知りたいのはマイのだけだ。頼む、彼女の記憶を教えてくれないか?」
「貴公は有名な占い師なのだろ?」
カイルが尋ねると、老人は小さく頷いた。
そして、怯えているマイの目をじっと見て、何かわかったかのように小さく頷いた。
「主。死の予言がなされておるな?」
「え……?」
「主の背に魔が見える。魔物のような、それでいて人であるかのような。主の体には魔物が住み着いておる」
「どういう事だよ、ばあさん?」
「とりあえず座りなさい。話はそれからだよ」
老人が苦笑して答える。
そして、ソファーに座るように促す。
どうやら長話になりそうである。
「本来、エスパーであるのならばまだ人として未来は見える。しかし、今の其処の娘には其れが見えんのじゃ。見えるとすれば、一つの詩…かの」
「………」
「大切な暦が一部欠けて…遺された月達は盛大に葬うだろう。喪服の楽団が奏る旋律で…霜月は高く穏やかに運ばれていく…。貴方は仲間と墓標に血をそえる。霜月が寂しくないようにと。 黒い商品ばかりの収納場で…貴方は永い眠りを強いられる。何よりも孤独を恐れなさい…一人という事程寂しくも切ないものはないのだから……」
「!」
老人が読み上げたその詩は、カイルには聞き覚えがあった。
その様子を、アルベルトは少し心配しながらも眺めていたが
それより心配なのはマイの方。
小さく震え、顔は真っ青になっていた。
「で、ばあさん?その詩は一体何を意味してるんだ?」
「死の予言じゃよ。其処の娘……お主、下手すると…死ぬぞ?」
「おい!だからどういう意味だって……!」
「天使の筆詩か……婆さん、貴公…何を知ってる?」
「さてな?」
カイルの質問をのらりくらりと避けていく老人。
そして、老人はマイに目をやると言葉を続けた。
「主の意識の中には破壊的な何かがある…その破壊的な何かを開放すれば、お前さんは命を落とすだろう…」
「そん、な……!私は……!」
「その閉じられた目に封じられし力は、破壊の力だという事を教えてもか?」
その言葉を聞くや否や、マイは表へと飛び出してしまった。
やはり自分が自分ではなくなってしまう恐ろしさには勝てなかったのだ。
「……そうか。マイが静寂の君……そういう事なのか」
「アンタ、マイは追わなくてもいいのか?」
「かまやしない。あいつはすぐに戻ってくる。そう信じるしかない」
「主も……破壊の力を持ってるな?」
「………」
黙り込むカイル。
人ではないと言われたが…実際はどうなのだろうか?
「……破壊の力を持っていて何が悪い?今は「人」として生きようとしている。貴公達には関係はない」
「やはりそうか……其処の人間。…主はその者達に関わらない方がいいだろう。そのうち、大きな災いが起きる」
「安心しろ、俺達から願い下げてやる」
そう言うと、カイルはマイの後を追って屋敷を出た。
アルベルトは小さく苦笑を浮かべて、ため息交じりで老人に告げる。
「警告はどうも。けどな、あいつ等とどう付き合うかは俺が決める事だ、アンタが決める事じゃねぇ」
アルベルトが屋敷から出た時には、マイの姿は何処にもなかった。
カイルだけが、その場にたたずんでいる。
「マイはどうしたんだ?」
「……行った。あいつは、俺の傍には居たくないらしい」
「けど、あいつの力はでかいんだろ?狙われたら……」
「テレパシーしようにもあいつ、心のカーテンを閉じやがった。連絡はもうつかねぇよ…」
「これからアンタはどうするんだ?」
「マイを探す。もしかすると手を借りる時があるかも知れん。その時は…貴公も手伝ってくれ」
そういい残すと、背中に哀愁を漂わせながら
カイルは霧の深い町へと戻っていった……。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【0552】/アルベルト・ルール/男/20歳/エスパー
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、神無月鎌です。
三度目の発注、ありがとうございました!
楽しく書かせて頂きました…(笑)
今回は少し臭わせ気味な文章とさせて頂きました。
次回にも色々とありますので
その時はよろしくお願い致しますね?
何はともあれ、キャラクター様を書かせて頂きまして
本当にありがとうございましたっ!
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