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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


都市マルクト【ビジターズギルド】初めての会員登録

メビオス零

【オープニング】
 ビジターズギルド。ゲートの前のでかい建物だと言えば、その辺の婆ちゃんだって教えてくれる。
 中に入っても迷う必要はないぞ。上のフロアにお偉方の仕事場があるんだろうが、用があるのは一階の受付ロビーだけだ。階段昇らずまっすぐそっちに行けばいい。
 軌道エレベーター『セフィロト』探索を行う者達は、まずここで自らを登録し、ビジターとなる。書類の記載事項は余さず書いたか? 書きたく無い事があったら、適当に書いて埋めておけ、どうせ誰も気にしちゃ居ない。
 役所そのまんまで、窓口ごとに担当が別れている。お前が行くのは1番の会員登録窓口だ。
 並んで待つ事になったり、待合い席に追いやられる事もあるが、気長に待つんだな。
 同じような新人を探して、話なんかしてるのもいいだろう。つまらない事で喧嘩をふっかけるのも、ふっかけられた喧嘩を買うのも悪かない。
 まあ何にせよ、書類を出せば今日からお前はビジターだ。よろしく頼むぜ。





☆☆☆

 今日のビジターズギルドは、どういう訳か盛況だった。元より登録する場所は一つしかないため人で賑わうのは別におかしくはないのだが、それでもここにいるのはセフィロトに行こうという輩達である。あんな危険な場所に行こうという者達がここまで大勢詰めかけているとは………

「「世も末だな……」」

 思わず口から漏れた言葉が、偶然隣に座っていた青年のぼやきと重なった。ロディ・カーロンは隣に座っている青年と顔を見合わせ、互いに苦笑した。

「あんたもやっぱりそう思うか?」
「ああ。自分から死地に飛び込もうというのだから、まったく持ってどうしようもない者達だと思う」
「まぁ、俺達も人のことは言えないんだけどな………あんたはどうしてビジターなんかになりたいんだ?って、その前に名前を名乗るのが礼儀ってもんだな。俺はラーフ。ラーフ・ナヴァグラハ」
「ロディ・カーロンだ。よろしく」

 互いに握手をして、友好の意を示す。どちらも本名かどうかはかなり怪しいのだが、そんな突っ込んだことを気にする様では、ビジターになったとしても生き残ることは出来ない。
 二人ともそれは承知しており、暇を潰すための雑談中でも、お互いに相手が言ったことを、およそ半信半疑ぐらいの割合で聞き入っていた。
 ロディはあくまで真の目的を避け、賞金首としての仕事の都合上必要になったと言うことにして話をする。
 ラーフはロディの話を聞いてからウンウンと頷くと、納得した様に言った。

「そうだな。あんたの言う通り、捜し物をするのならセフィロトに行けなきゃならねぇよな」
「ああ。あっちこっち行かれたあげく、最終的にセフィロト内に逃げられることが多いからな。そうなると、ここで登録しておかないと、中にまで追っていくことが出来ない」

 既にそんなを経験しているのか、ロディは苦笑しながらラーフに言った。実際、賞金首タチがセフィロト内に逃げ込むという話は時々あることだ。何せあの場所は危険で、そう簡単に追ってこられる様な場所ではない。
 もっとも、その後で賞金首自身の身の危険があるのだが……そこまでは知ったことではない。
 ラーフは何か訳ありなんだとは感じても、適当に相槌を打つだけに止めておいた。前述したが、あれこれと詮索しすぎると本当に身の危険がある。ましてやこんな場所に来る様な者達だ。それこそ一癖も二癖も持っていると思って正しいだろう………
 二人が雑談をしながら、待っていると、不意にラーフの名前が呼ばれ、書類の提出に向かわされる。だが受付の前には数人の列が出来上がっており、少しずつ、段々と受付の順番が進んでいく。簡単にプロフィールなどの情報を出すだけなのだが、しかし時々順番のことで喧嘩になったりしているため、なかなか進もうとしない。
 ようやくこの退屈な空間から解放されると思っていたラーフは、ウンザリした気分になった……

(げっ、ここの順番待ちも、結構掛かりそうじゃねぇか………)

 口に出すと争いの火種になりそうなので、心の中でだけ悪態を付く。思わず先程まで座っていた待合い席の方を見てしまうが、待合い席に座っているロディも暇そうに、辺りを見渡している。

「ちっ。大人しく待つか」

 ラーフは舌打ちし、手に持っている書類を扇状に開いて団扇にし、人混みの暑さを吹き飛ばした………




☆☆☆

「はぁ、これなら日を改めてきた方が良かったかねぇ……まだ出来上がってないプログラムとかもあるし………」
「だが、ここまで待って帰るのか?」
「ん〜……それは悔しいな。何をしに出てきたのか解らない」

 人が多くて暑くなっている待合室で、受付で受け取った数枚の書類を団扇にしながら、レイル・ノーツは溜息をついた。話し相手になっているロディも、先に名前を呼ばれたラーフを半ば羨ましがる様にして待っていた。
 この場所に来てから既に一時間。まさか書類を出すだけで、ここまで待たされるとは思わなかった………
 先に名前を呼ばれたラーフは、さっさと書類を出しに行ってしまった。もっとも、受付前の列に並んで待たされているため、まだ書類の提出を済ませられずにいる。
 残されたロディは、自分の名が呼ばれるまでじっと待っていたが、無意識に人を目で探してしまい、偶然隣に座っていたレイルと目が合ってしまった。それからという物、今度はラーフの代わりというか何というか、レイルとの暇潰し雑談が開始されたのである。
 ポツポツとだけ語り続けるレイル。元から秘密主義者らしく、自分のことはあまり話そうとはしなかった。
 だがボーーっとして待っているよりかはずっとマシと、ロディも話を合わせて雑談に耽る。
 ただ黙っているよりかは、随分と充実した時間に感じられた………

「そっか、人を探しのためにセフィロトに……どんな奴なんだ?案外知り合いかも知れないぞ」
「まぁ、出入りできるような街も限られてるから、案外知り合いかも知れないが、しかしそれでも、俺の職業は“賞金稼ぎ”だ。恨みばかり買ってるからな。何処から情報が漏れて、厄介な事態になるかも知れない。すまないが、俺だけで探すことにしてるから……」
「なるほど。人質に取られたりか………いやすまない。こちらこそ、どうやら突っ込んだことを訊いてしまった様だ」
「まぁ、俺が探している奴らも、セフィロトに入れるぐらいの奴だから大丈夫だとは思うんだがな」

 そう言いながらも、ロディは、探している当人(異母兄妹)を心配し、こうして自分までビジター登録しに来ているのを思いだした。
 思わず苦笑してしまう。どうやら自分は、あの兄妹にはなかなか甘いタチの様だ。
 何せ“危ないから止めろ”と言うためにセフィロトに行くのではなく、“危ないから護衛させろ”と言いに行くのだ……
 これで三人兄妹全員ビジター入りである。一人は行方不明になっているが、その捜索のためとはいえ、何とも危ない話である……

「ロディさーーん!ロディ・カーロンさん!受付列にまでお越し下さいませーー!」
「おっと、それでは、俺はこれで失礼するよ」
「ええ。また縁がありましたら、セフィロトででも会いましょう」

 軽く挨拶をしてからロディは席を立ち、ようやく人が少なくなり始めた列へと並びに行く。ちょうど入れ違いで受付を済ませたラーフと言葉を交わし、出口へと向かうラーフを見送りもすることなく列に並ぶ。
 そんな様子を見ながら、レイルは、「偶にはこんな日も良いか……」と小さく呟き、自分の名前が呼ばれるまでの時間を静かに潰していった………








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 】
0584 ロディ・カーロン
0610 ラーフ・ナヴァグラハ
0683 レイル・ノーツ

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■         ライター通信          ■
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 えっと、また一部の御方、お会い出来て有り難いです。そしてその他の皆さん初めまして。メビオス零です。
 今回の発注有り難う御座います。初めてのビジター登録のシナリオは、書くのは初めてですが、いかがでしたでしょうか?
 ちょっと短いとも思ったんですけど……何とも登録所の様子を書いてもこれが精一杯でした。反省してます。まだまだ修行をしなければ……
 要望・感想など、HPのBBSを作りました。まだほとんど書き込みも何も無いので、お暇でしたらどうぞ。
 ではまたお会い出来たら光栄と思いつつフェードアウトさせて頂きます。
 今回のご依頼、誠にありがとう御座いました……(・_・)(._.)

HPURL:http://mebiosuzero.poke1.jp/