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都市マルクト【整備工場】武器マーケット
メビオス零
【オープニング】
整備工場名物の武器マーケットだ。
自分にあった新しい武器を探すのも良い。
頼めば試し撃ちくらいはさせてくれる。弾代は請求されるけどな。色々試してみたらどうだ？
新しい武器がいらないとしても、今使ってる武器の弾や修理部品を探す必要もあるだろう。
まあ、楽しみながら色々と見て回ってくると良い。売り子の口上を楽しむのも面白いぜ。
それに、ここで目を鍛えておかないと、いつか不良品を掴まされて泣く事になりかねないからな。
何事も経験と割り切りながらも慎重にな。
あと、掘り出し物だと思ったら、買っておくのも手だ。商品は在庫限りが基本で、再入荷なんて期待は出来ないぞ。
◆狼と猫の休日◆
仕事明けの休日。ビジターとしての活動もせず、自警団の仕事もなかったため、神代 秀流と高桐 璃菜の二人は、馴染みの武器マーケットへとやってきた。素人のフリーマーケットよりも遥かに大きく、危険な物ばかり置いてある店に二人は入り、まず弾丸を購入する。
便利な超能力の類などがないエキスパートの身としては、この弾丸補充の行動は欠かせない。店主とひたすら値切りまくった後、秀流は疲れた様に肩を落とし、逆に璃菜は上機嫌で弾丸の入った紙袋を持って出てくる。今回こそはと自分でも交渉事をやってみたのだが、やはり璃菜には足元にも及ばなかったらしい。
秀流は、自分が値切った額からさらに半額まで落とされて落ち込んでいた。（店主も）
璃菜は秀流を励ましながら歩き、秀流が立ち直った頃、ようやく二人は幼い頃から通っていたゴミの山へと辿り着いた。ゴミと言ってもジャンクパーツの山で、他の店の者達から出た物や、ビジター達が売りに来て買い取って貰えなかった物などが散乱しているのである。
それを集めて修理することが出来る者にとっては、ここは宝の山だった。
「おーいジジイ！何処にっっ！？」
ジャンクの山に向かって秀流が大声で呼びかけると、その山の一角から時速百qは軽く出ていそうな速度で鉄パイプが高速回転しながら飛んでくる。不意打ちとしては随分な凶器を、秀流は事も無げに受け止めた。百qあろうが何だろうが、銃弾の様に目に見えない訳ではない。目に見える以上、秀流にとっては大した凶器にはならなかった。
だが隣に立っている璃菜は、秀流が止めた鉄パイプを見て、「うわぁ」と声を上げている。手にしたパイプの一旦は槍のように尖っており、それだけを見ても、これを投げた者の心象が見えてくる………
まぁもっとも。回転が掛かっている御陰で殺傷力は大分下がっている辺り、手加減はしてくれている様だ。
「もう。お爺さんをジジイ呼ばわりしちゃいけないって、何度も言ってるでしょ？」
「いや、それは覚えてるんだけどな。何つうか……こう……」
「こりゃ若造！！この儂をジジイ呼ばわりするとは何事じゃ！！ええいそこに直れ！って痛！このジャンクパーツがぁ、足に絡むでないわ！！」
「あれを見ると元気な頑固ジジイにしか見えないからな」
ジャンクの山から生まれるかの様に這い出てきた老人は、足に絡み付いていたジャンクパーツを振り払い、山を駆け下りてドシドシと重そうな足音を立てて二人に向かってくる。父親にこのジャンク屋に連れてこられて以降、長い間お世話になっている元整備士の老人だ。頑固で無愛想なのだが、とにかく元気だけは良い。
秀流はその様子を見て「やべっ」と呟き、璃菜はクスクスと笑っていた……
「まだ生きておったのか小僧！」
「そりゃこっちのセリフだろ？ま、爺さんはまだまだ現役で居られそうだけどな」
「当然じゃ！久しぶりに来たかと思えばいきなり失礼なことばかり言いおって」
秀流と老人は、ギャーギャーと言い合っている。璃菜は二人が肩で息をし、キリの良い所まで来たと判断してから挨拶をした。
「一週間ぶりです、お爺さん。お元気そうで何よりで」
「うむ。璃菜ちゃんも前より可愛くなったのう。どうじゃ？こんな男とは縁を切って、儂の孫と……」
「オイオイ！真面目な顔して何言ってるんだ！？」
無愛想な表情で、かなり真面目に言う老人と璃菜の間に、慌てて秀流が割って入る。老人は「ッチ、ケチが」などと言いながら、二人の横を通り、ジャンクパーツを売るためのジャンク屋へと入っていった。秀流はその後ろ姿に対し、「じゃ、いつもの様にさせて貰うぜ」と言いながら、自分は正反対にあるジャンクの山へと入っていく。
璃菜はジャンク屋へと入り、ゴチャゴチャと修理品の散乱している店の中を見渡した。椅子で休んでいる老人を見つけると、荷物を適当な所に置き、勝手知ったる動きでお茶を淹れる。
老人は、ジャンク屋の窓から秀流の様子を見ながら溜息を付く。璃菜からお茶を受け取ると、礼を言ってから啜り、再び秀流へと視線を向けた。
璃菜も、ジャンクの山で様々な物品をひっくり返し、時々手にとって弄り回している秀流を眺めながら、不思議な気分になった。
「やれやれ、あの若造、あんたの親父さんにドンドン似ていきよる………ああやっとる所を見ると、尚更じゃなぁ」
「うん。そう言えば、ああやってる所はそっくりかも」
「腕も上がってきとるようじゃし、あれなら跡継ぎとしては問題無さそうじゃな」
お茶を啜りながら、昔を懐かしむかの様にして老人が言う。璃菜は亡くなった父親を思い出しながら、その背中を眺めてみた………
「似てますね」
「そうだろう？だから少し心配なんじゃがなぁ……」
「はい？」
「おーい！璃菜！ちょっとこっち来て手伝ってくれ！」
「はーーーい！それでは、ちょっと失礼しますね」
自分のお茶を片づけてから、璃菜は秀流が上っていったジャンク山へと駆けていく。その背中と秀流を見ながら、老人はポツリと、小さく呟いた。
「長生きせいよ。若造」
老人はそう呟いた後、新たにお茶を入れるため、店の奥へと引っ込んでいった………
☆☆☆
「うん美味いな」
「良かった。まだまだあるからね！」
「璃菜も食べろよ」
ジャンク山の上から武器マーケットを眺めながら、二人は昼食を取っていた。食べているのは、璃菜が作ってきたお弁当である。
途中から璃菜も手伝っていた御陰か、ジャンク屋の梺には様々なガラクタが散乱している。それらは邪魔だからとはね除けられた訳ではなく、まだ使えると判断されて取り置かれた物だった。
璃菜の主婦の勘とでも言うのか………「これは使えないかな？」と璃菜が持ってくる物品は、どういう訳か秀流が汗水垂らして探し当てた物よりもレア品が多かったりする。
持ってこられた時は複雑そうな表情だった秀流だが、お弁当を食べ始めると、そんな事はすっかりと忘れていた。
老人はそんな二人を邪魔しないようにとジャンク屋で食事を取っていたのだが、「若い者がイチャイチャしおって…………」などと呟いている。
お弁当を食べ終えて一息ついてから、二人は再び探索作業へと入った。
「よしっ！午後は負けないからな」
「別に競争している訳じゃないでしょ？」
気合いを入れる秀流に突っ込みながら、璃菜は楽しそうに笑っていた………
☆☆☆
セフィロト内には夕暮れというものがないが、ちょうど塔の外でも暗くなり始めている頃、ようやく秀流と璃菜は、作業をしている手を止めた。ガラクタの山から引っ張り上げたパーツから使える物ばかりを厳選し、使えない物でも、まだ修理出来る物をリアカーに積み込んでいく。
「使えそうなパーツ、これで全部かな？」
戦車である『アリオト』に取り付けられたリアカーに積まれているパーツ群を見ながら、璃菜は秀流に向かって言った。老人にパーツの代金を渡していた秀流は、振り返り、今日の成果を確認する。
「もっと探せばあると思うが、今はこれで十分だろ。後はMSと戦車のある倉庫に戻って、パーツの組み立てとか色々だな。使えるまで暫く掛かるだろうが、まぁ、次の仕事には間に合うだろ。爺さん世話になったな」
「パーツが足りなくなったらまた来いや。ただし璃菜ちゃん付きでな。付いて来なかったら料金五割り増しにしてやるから覚悟しろ」
「いい年こいて何言ってるんだ」と文句を言いつつ、次に来る時にも必ず二人揃って来てやると約束し、秀流は璃菜が操縦するアリオトへと上った。アリオトは元々璃菜の持ち物なため、操縦するのは璃菜だ。
老人はエンジンが掛かり、走り始める戦車の上に乗っている秀流に向かって駆け寄ると、強引にその体を引っ張って耳を寄せた。
「オイ小僧！絶対にこの嬢ちゃんは守り切れよ。分かったな？！」
「………ったく、何言ってんだ。そんなの当然だろ？安心しろよ」
不器用に心配してくる老人の肩を叩き、秀流はそう言って去っていく。璃菜も運転席から手を振って、マーケットのために作られた搬入路を走っていく。それを見送ってから、老人は溜息を吐いた。
「やれやれ。親子揃って、良く似ておる………」
あれならば大丈夫……………だと思うことにし、老人はジャンク屋の中を片づけ始めた………
☆参加キャラクター☆
0577 神代・秀流
0580 高桐・璃菜
☆ライター通信☆
初めまして、メビオス零です。今回の発注、ありがとう御座いました。
今回のお話はどうでしたでしょうか？何だかお爺さんのお話なのか二人のお話なのか……び、微妙…………
ご不満な点や要望がありましたら、どうかファンレターなどを下さい。出来るだけ善処し、改善していきたいと思っております。ＨＰにも、ＢＢＳがありますので、お暇でしたらどうぞ
今回は入手アイテム付きです。スラッグガンとグレネードランチャーです。ドンドン使ってやって下さい。
改めまして、今回の発注、誠にありがとう御座いました。(・_・)(._.)
http://mebiosuzero.poke1.jp/
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