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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


第一階層【ショッピングセンター】必ず帰るから

メビオス零

【オープニング】
 ‥‥敵は一時退いたか。だが、また来るだろう。長丁場になりそうだな。
 今の内に休憩しておこう。焦っても仕方がない。
 しかし、散々だな。あんなに山程、敵を見たのは久しぶりだぜ。やってもやっても、次々に攻めてきやがる。
 て‥‥おい、まだ回収品を持ってたのか? 荷物になりそうな物は捨てろとさっき‥‥
 プレゼント? 約束したのか?
 プレゼントを持って必ず帰る‥‥そうだな、待っている相手がいるんだ。生きて帰らないとな。
 と、敵が戻ってきたな。今度は、奴らも本気だろう。
 行くぞ。必ず帰ると約束したんだろう?






〜大切な人へ……〜


 ショッピングセンターには、多数の様々な物品が埋まっている。食料・家財・衣服・宝石・コンピューターの端末から、とんでもない物ならば市販されていたMSでさえ埋まっている始末だ。勿論、始めに挙げていた衣服などは今でも手に入るが、コンピューターはロストテクノロジー扱いされている物が珍しくない。
 そして宝石は高価な物であり、それらを狙ってきたビジター達に掘り尽くされ、奥に行かなければ、発見は困難であった……
 そう、あの場所には、“奴等”がいるのだから……




「ハァ、ハァ、ハァ………」

 エレナ・レムは、息を荒げながら、緊張で強張っていた体から力を抜いた。まだそうするには時期が早いかも知れないが、このままでは機体よりも前に体が保たない。少しでも休ませなければ、帰還を果たすよりも前に神経が焼き切れてしまいそうだと脳が叫んでいる。
 体は長時間強張り、絶えず動かし続けた事で汗だくになり、体温を下げようと更に汗を出せと命令する。
 だがエレナは汗を拭ってから深呼吸をし、激しく動いていた心臓を落ち着けた。この手の行動には慣れている。戦闘を一時的にでも中断し、回避出来ている以上、そこで僅かな休憩を取るのは決して愚かな選択ではない。
 隣ではクリスティーナ・クロスフォードの駆る銀狼が、最近ちょっとした大会で獲得した新装備のソードに刃こぼれが無いかをチェックしながら、ケイブマンを切り払った事で付着した真っ赤な血液を拭い取っていた。前衛を務めてくれているだけあって、エレナの機体よりもより一層ボロボロになっている。せっかくオーバーホールしたばかりだというのに、これではまた修理工場送りである。
 ………まぁ、装甲に爪跡が残っているだけというのがほとんどだから、装甲を交換するだけで事足りる分、以前よりかはずっとマシであろう。

「エレナさん。大丈夫?」
「大丈夫です……すみません、こんな事に付き合わせてしまって」
「良いんだよ。僕だってお姉ちゃんに贈り物したかったから。……でも、これはちょっと大変な事になっちゃったね」

 クリスティーナが機体のカメラを動かし、瓦礫と化しているショッピングセンターの一箇所を映し出した。そこにはケイブマン達が数体辺りをキョロキョロと見渡し、一匹のイーターバグが、エルボーソードで切り裂かれたり二oレーザーガンで貫かれたケイブマンの死体を食べている光景……
 タクトニム達は、足下にある宝石を踏みつけながら、エレナとクリスティーナを捜していた……
 その足下にある宝石の類の内いくつかは、二人の手元にある。
 二人はそれぞれの大切な人のためにこれを求めてショッピングセンターに入り込み、奥深くまで来ていたのだ。ショッピングセンターの手前にあった物は真っ先に奪われているので、こういう直接金銭的に価値のある物は、大体は奥に行かなければ無い(コンピューターなどは使用や目的があやふやなため、時々放置されている)。
 熟練したビジターである二人でも、このショッピングセンターはかなり手を焼く場所だ。現にこうして、ようやく目的の宝石を回収出来たと思った矢先に、隣の食料庫から這い出てきたケイブマンとイーターバグの襲撃を受けて、隠れたばかりだ。
 監視を続けながら、クリスティーナが言う。

「暫くしたら、食料庫の方へ行くと思うけど……そっちの機体は生きてる?」
「勿論生きてます。ですが、ここから出入り口までの距離を考えると、あまり楽観出来ませんね」
「だねぇ。楽観出来ないどころか、後二〜三回引っ掻かれただけで倒れそうな気がする」

 クリスティーナは、いつも通り元気そうな口調で言う。だがその内容は真実であり、自分達の状況を如実に物語っていた。装甲は引っ掻かれて薄くなっているから、もう一度同じところを攻撃されたら貫通し、中の駆動系を殺られるだろう。

「そうなったら奴等の餌か………うわぁ、想像したくないよぉ〜」
「私達では、生身でタクトニムを相手に出来ませんからね……」

 エレナがそう言い、自分でもケイブマン達の様子を見てみる。ケイブマン達も探す事に飽きたのか、段々と自分達が元々いた食料庫の方向へと帰っていった。
 イーターバグはケイブマン達の死体を巣まで持って行こうとしているのか、腕を引っ張って噛み千切ってしまっている。
 二人はその様子を見届けてから、ようやく休ませていた機体を動かし始めた。

「後は、出来るだけ何にも会わないようにしながら帰るだけ……出来るかな?」
「出来なかったら死ぬ確率がグッッッッッッと上がるだけです。慎重に行きましょう」
「……そうだね」

 クリスティーナが言い終わると、二人は今まで機体を隠れさせていた瓦礫の山を退けた。まったく、戦闘の影響で崩れ落ちてきた天井の下敷きになり、それの御陰で二人とも無事にケイブマンを撒く事が出来た。………運が良いんだか悪いんだか。
 瓦礫の山から這い出した二人は、周囲にまだ先程の残党が残っていない事を確認しながらショッピングセンターを戻り始めた。目指す入り口は少々遠く、更に瓦礫を這い上ったり逆に下ったり、あちこち複雑に移動しなければならない。
 こんな奥まで来た事を若干後悔しながら、クリスティーナは来たときとは逆に、降りてきた瓦礫の山を登ろうと、その一角に手を掛けた。



 瞬間、手を掛けた瓦礫がガラッと崩れ、つい先程まで戦闘を行っていた“敵”が、その顔を覗かせていた……



「離れて!」
「!?」

 エレナが叫ぶ。クリスティーナが機体を飛び退かせ、瓦礫の山から離脱する。
 そして、戦闘中に生き埋めになっていたケイブマンの豪腕と、鋭い爪が放たれる。

「あっ!?」

 離脱は間に合ったと言える。爪は銀狼の胸部装甲をギリギリ掠めるだけに止め、機体を弾き飛ばす。実際のダメージよりも、着地に失敗して叩き付けられた事の方が威力があった。
 瓦礫から飛び出すケイブマン。弧を描くように落下して、クリスティーナを狙い打つ!

「させない!」

 エレナの二oレーザーガンがケイブマンの振り上げた腕を焼き切り、切断する。それと同時にクリスティーナの機体に走り寄り、ケイブマンが落下してくるよりも早く機体を引っ張ってその場を跳んだ。
 着地したケイブマンは腕を焼き切られて憤り、すぐに二人に向かって鋭い視線を向けた。エレナは二oレーザーガンでトドメを刺そうと相手の頭部に向けて照準を合わせた。
 そして、トリガーを引――――

「オーバーヒート!?」

 エレナが驚愕の声を上げ、コントロールパネルに出てきたエラー表示を見つめた。
 無理な機動でレーザーガンを使用したため、湯気が立ち上り、銃身が若干赤くなっている。
 これで撃ったら暴発するだろう………機体はそう判断し、安全装置が働いて、レーザーは発射されなかった。
 そしてその間に、ケイブマンは真っ直ぐにこちらへと走ってくる………
 エレナでは迎撃出来ないとクリスティーナは判断し、エレナの前に出て敵を迎え撃つためにエルボーソードを構える。
 だが無理な姿勢での着地の影響か、足の駆動系が不調を訴えていた。

「クリスさんダメです!」
「……ハァッ!」

 エレナの制止の声を振り切って、クリスティーナはケイブマンに向かってソードを突き出した。だがケイブマンの野生の本能か、それとも突然機体の姿勢が崩れたからなのか、鋭く突き出されたソードは切り傷を付けるだけで、ケイブマンの突進を止めるには至らない。
 そしてケイブマンの体は銀楼にタックルをかますと同時に、コクピットに向かって今まで散々モノを切り刻んできた爪を突きだした。



 目の前で起こる………閃光………
 一体何が起こったのかは分からないが、ケイブマンから閃光が起こったかと思うとその体が飛び散り、あげく空中にばらまかれた肉片も、横から飛んできたレーザーの掃射によって蒸発した。

「………エレナ?」
「違う。あれは………シンクタンク!?」

 クリスティーナの問いに否と回答し、エレナはレーザーの出所である真横を見た。十メートル程離れた所………その場所に、十数体のシンクタンクの群れが、瓦礫の影からワラワラと姿を見せ始めていた。

「………最悪」

 エレナが小さく呟いた。今の機体の状態では、これだけの敵から逃れるのは至難の業だ。先程までのケイブマン達も、もしかしたらすぐにこちらへと戻ってくるかも知れないというのに……
 だがシンクタンク達は、それぞれの砲や銃身をこちらへと向けるだけで、決して撃ってこようとはしなかった。
 一体どうした事かと、二人は冷や汗を流しながら、様子を見る。すると、不意にコクピットの中のスピーカーから、聞いた事のない少女のような声が流れ始めた……

『何……しに………来た………の?』

 まるで脳に直接話し掛けてくるような不思議な声に、二人は硬直して聞き入った。
 相手は、二人の状態にお構いなしに、続けてくる。

『帰って………でも………“それ”は…………置いて………行って…………』

 不思議な声の指す“それ”………エレナは、ポケットの中へと入れた心当たりに目を向けた。
 先程手に入れた、宝石店の取って置きの一品………
 エレナは考えるよりも早く、それに思い至った瞬間に口を開いていた。

「ごめんなさい。これは………置いて行けない」
『………』
「届けたい人がいるんだ。私の大切な…………」
『………』
「悪い事だとは思うけど………届けてあげたいんだ」
『……………』

 エレナが回答すると、シンクタンク達が一斉にレーザーの充填を開始した。覚悟を決める二人………

 鳴り響く攻撃音。

 しかし攻撃は一向に二人に向かって来ず、通り過ぎたレーザーは、隣の食料庫から騒ぎを聞きつけてきたケイブマン達を串刺した。
 惚ける二人。だが一斉にケイブマン達に攻撃を開始するシンクタンク達を見て、すぐにその場を離脱するために、出口に向かって機体を走らせた。
 クリスティーナの機体を助けながら、エレナは後ろを振り返る………
 ショッピングセンターの道の警備システムなのか、それとも宝石を守護する幽霊の仕業か………クリスティーナとエレナを守るようにしながらケイブマン達を迎撃し続けるシンクタンク達は、こちらを見ようともせず、ただひたすらに攻撃を続けていた。

「一体………どうなってるんだろう?」
「解らないですが、これだけは言えますね。………私達は助かるんですよ」

 あの声の持ち主は解らない。誰か、何なのか解る事もないだろう。
 ショッピングセンターから抜け出した二人は、それぞれの持ち帰った宝石を握りしめて宝石店の方向へと頭を下げてから、待ち人の元へと帰っていった………




fin




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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名
0656 クリスティーナ・クロスフォード
0642 エレナ・レム


【ライター通信】
 何度もご依頼下さいまして、ありがとう御座います。メビオス零です。
 今回はどうでしたでしょうか?何だか最初の部分からしてピンチになってますけど………あまり気にしないで下され。
 アイテムは二人とも宝石です。どうぞお大事に……
 では、手短で申し訳ありませんが、これにて失礼させて頂きます。
 改めまして、ご依頼ありがとう御座います。またの依頼を、心よりお待ちしております。(._.)オジギ