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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


第一階層【廃棄物一次処理プラント】ゴミ山の守衛隊

メビオス零

【オープニング】
 ダークゾーンを抜けた場所がここか。
 都市区画‥‥都市マルクトも含んだそこで使われた水が、ここに集まっているようだな。まあ、下水道の行く末がここなのは当然なんだろうが。
 こんなゴミ溜めでも、何か拾い物があるかもしれねぇ。ちょっと、探してみるか。
 しかし、酷い臭いだな。鼻が曲がりそうだ。
 ん‥‥おい、待て。何か聞こえないか?
 何か‥‥囲まれているような‥‥




〜求める物〜

 ダークゾーンを何度も探索し、地理を覚えたアルベルト・ルールとジェミリアス・ボナパルトは、迷う事なく、今回の目的地である廃棄物一時処理プラントを訪れていた。
 と言っても、ゴミ処理場と汚水処理場が一つになったような施設なため、足下がグズグズ、ここなら大丈夫だろうと金属的なゴミの上に乗っかっても突然のし掛かってきた重量によってズブッと沈むため、二人とも何やら怪しい汚れをあちこちに貰っていた。
 異臭を放つ液体を払いながら、アルベルトは不快げに足下を見下ろした。

「ったく、本当にこんな所から、お宝が出てくるのかねぇ……」
「出てくるって思ったから、来たんでしょ?まぁ、出てきても壊れてそうよねぇ………」
「だよなぁ」

 ジェミリアスに言われて、アルベルトも溜息混じりに辺りの惨状を眺めた。
 やはりゴミ処理場なだけあって、ここに来ている物の尽くが壊れている。もっとも、捨てられているゴミの分別はちゃんとされているため、下水道を流れているような汚水と混じっていないだけまだマシだが、頭上から時々降ってくる地下水の御陰で金属的な物は錆び付いていた。
 時々動くベルトコンベアーにだけ気をつけながら、アルベルトは金属の山を散策していた。
 アルベルトは、段々と激化していく戦いのために備えて、万が一のために『脳保管装置』を探しにここに来た。表でも裏でも滅多に手に入らないためここに来たのだが、なかなか見つける事が出来ない。
 付き合ってくれているジェミリアスも、今のところ収穫は無さそうだ。アルベルトと同じところを一時間程探してくれていたが、一通り探してからフゥッと溜息を付いた。

「そろそろ私の方の物を探しに行くわ。ここで一泊してまで探すつもりはないし」
「ああ、仮装用の衣装を探しに来たんだったか。虫に気をつけろよ」
「はいはい。あなたこそね」

 アルベルトに背を向け、別のゴミ山へと向かうジェミリアス。何度も跳んで移動し、アルベルトから見えるか見えないかの範囲にまで来てから、ジェミリアスは移動をするのを止めた。
 アルベルトが見ていないのを確認して捜索を始める。

「まさか花嫁衣装を探しに来たなんて、息子には言えないわよねぇ……」

 苦笑しながら、ジェミリアスは雑多なゴミ山の上を見渡し、ひっくり返した。何やら謎な物品が多いのだが、主に燃えるゴミばかりの区画である。
 勿論衣服の類もここに捨てられているのだが、どれもこれも破れていたり一部が燃えていたり………捨てられる理由がよく解る物ばかりだった。

(ウエディングドレスなんて、やっぱりゴミ箱に捨てたりはしないわよね……)

 ボロボロになっている猫ミミパジャマを放りながら、ジェミリアスは捜索を続ける。ショッピングセンターで買い付ければ一発なのだが、やはり人目が気になってしょうがない。何せあの場所には息子だけでなく他に何人もの仲間が通っているのだ。誰に見られるか、分かったものではない。
 だからここでこっそりと見つけ、持って帰るつもりだった。贅沢を言うつもりはないので破れていても構わないのだが、やはりそうそうには見つかるような物ではないらしい………

(それにしても、あんなことがあって、何で花嫁衣装が欲しくなったのかしらね………彼女達に触発されたのかしら?)

 ふと、頭に昔の光景が蘇りかけたが、すぐに最近結婚した友人の事を考えて打ち消した。ジェミリアスは18の時に協会の手配までしておきながら………色々あって全てを無駄にした経験があるのだ。正直思い出したくもない。
 暫くの間、ゴミを背後へと放り投げ続けて溜息を付いた時、ジェミリアスはゴミの中に埋もれている一つの箱を見つけた。
 何やら鎖で厳重な封印を施されている箱だ。まるで自分の忌まわしい過去を捨て去るように、乱雑だがとにかく堅く封じられている。
 花嫁衣装を探していたジェミリアスだったが、不意に興味が出てきたため、忙しなく動かしていた手を止めた。鎖は鍵付きで空かなかったので、38口径で断ち切った。
 その音を聞いて、遠くでアルベルトが顔を上げる。
 それに気が付くことなく、ジェミリアスは箱の蓋を開けた。

「…………」

 カポ
 そして閉じた。

「………これは………どうかしらね」

 再び箱の蓋を開けて、中にある物を探ってみる。
 まず見つかったのは、漆黒のボンテージ。なんの素材で出来ているのかは良く解らないが、触った感じではかなり丈夫そうだ。
 続いてこれまた漆黒の鞭。何かの皮で出来ているのか、重量といい長さといい、かなり実戦的な鞭だ。試しに振ってみると、ビシッといい音が鳴る。
 最後に見つかったのは、目だけを覆うように出来た赤いマスクだった。
 どれもこれも新品のように綺麗だ。それは良いのだが、こんな物を見つけてしまったジェミリアスは、捨てるべきか持って帰るべきかを、ジッと見つめながら考えていた。これを持って帰っても良いのだが………いや、何に使うのか……

「…………それは」
「なっ!?アルベルト!」

 銃声を聞きつけていつの間にか背後に来ていたアルベルトが、ジェミリアスの背後で硬直していた。アルベルトはジェミリアスが手に持っている、箱から飛び出したドレスや鞭を見てゆっくりと下がっていく。

「コソコソと探していると思ったら、そんな物を……」
「ち、違っ!」
「いや良いんだけどな……まぁ、似合うとは思うし」
「違うって言ってるでしょ!!」

 勝手に納得するアルベルトに叫んだジェミリアスは、素早く手榴弾を取り出してピンを抜き、アルベルトを蹴り飛ばしてから投げつけた。手榴弾は蹴り飛ばされたアルベルトにコツンと当たると、その瞬間、アルベルトを周囲のゴミ山と一緒に消し飛ばす………!

「危なッ!」

 間一髪。PK能力で爆発を防いだアルベルトは、衝撃に乗って数歩後退した。足場が悪いためバランスを崩しそうになる体を絶妙なバランス感覚で支え、手榴弾が撒き散らした破片が通り過ぎるのを確認してから、無駄な精神力を消費するのを防ぐため解除する。
 途端、アルベルトが立っているゴミ山の穴から、何かがゾワゾワと這い出してくるのが振動として伝わってきた。
 PKで全身防御していたために気が付かなかったのだ。手榴弾の爆発の振動と音によって、ゴミ山の中に巣を張っていた害虫達が一斉に身の危険を察知し、外敵を排除するために這い出てきていた。
 所々の穴から這い出てきた人の頭程もあろう巨大なゴキブリを見て、さすがのアルベルトも「うっ」と一歩退いた。遠くからその後の動きを見ていたジェミリアスも、「うわっ」と声を上げ、自分一人だけでさっさと退散しようと姿を隠す。

「って待てよ!」

 アルベルトを敵と認め、這い出てきた何十匹、何百匹ものゴキブリ達が、一斉にアルベルトに襲いかかる。アルベルトは舌打ちしながらPKを発動させ、衝撃波で四方八方360°、あらゆる角度から襲いかかってくるゴキブリ達を薙ぎ払った。
 だがそれに釣られ、次々に別のゴミ山からも多種多様な虫達が顔を覗かせ、こちらを窺い始める。

「一体ここに何万匹いるんだ……?つか、どいつもこいつも巨大化してるんじゃねぇ!!」

 衝撃波で次々に虫を吹き飛ばし、蒸発させるアルベルト。だが虫達は逃げるどころか、怯むことなくアルベルトに喰い付き、排除しようと躍起になって飛びかかってくる。
 もしかしたら、人工神の半身として生を受けたアルベルトの危険性を、本能で感じているのかも知れない。
 視界を全て虫に覆われ、ジェミリアスを追う事すら出来なくなったアルベルトは、自棄気味に叫びを上げた。

「こうなったらとことんまで付き合ってやる……!!」

 終わりの見えない戦いに身を置くことになることを予感しながら、アルベルトは雲霞の如く襲いかかる害虫達に向かって、金色の衝撃波を繰り出した…………





 その頃、アルベルトの側から離れたジェミリアスは、アルベルトとはまた違う敵と対峙し、目を忙しなく動かしていた。
 イーターバグ二十数匹、後は人一人ぐらいならば丸飲み出来そうな超巨大蜘蛛が二匹………
 忌み嫌い、普段から使うまいとしているESPを使えば問題にならないのだが、それを使う使うつもりはない。
 だとすると、手持ちの装備だけでは少々荷が重い相手であった。38口径のオートが二丁、八口径銃が一丁、2oレーザーガンに高周波チェーン………いつもの通り、なかなか重い火力である。
 しかし、それでもそう長くは続かないだろう。
 なぜなら、片手が荷物で塞がっている………

(何で捨てないんでしょうね。これ………)

 左腕で抱えている【SM女王様セット】を捨てきれない事に溜息を付きながら、ジェミリアスは右手に用意した38口径オートの引き金を何度も引いた。大きな口径の弾丸は蜘蛛の目を同時に幾つか抉り、数発目には完全に失明させる。
 暴れる蜘蛛。その手足に引っかかり、数匹のイーターバグが弾き飛ばされた。

「おっと!」

 別方向からイーターバグが食い付こうと跳びかかってくる。素早く腕に着けたリングから高周波チェーンを取り出し、思い切り振り払った。
 イーターバグ達を切り裂いて切断する事までは出来なかったが、弾き飛ばして距離を稼ぐことに成功する。
 振り払ったと認識した直後、ジェミリアスは素早くその場を跳び、大蜘蛛の太い粘着糸を回避した。

(思ったよりもきついわね……)

 あちこちから来る攻撃を回避しながら、ジェミリアスは少しずつ出口、ダークゾーンへと向かう。あの暗闇には、暗闇の適性があまり高くないイーターバグでは、近付く事は出来ない。ましてや、大蜘蛛ならば下水道に入る事など出来ないだろうと踏んだのだ。
 アルベルトにテレパスを送り、応援に来るのを待ちながら、ジェミリアスはゆっくりと退避路を確保しだした………






 約十分ほどした頃、ようやくアルベルトは群がっていた虫達を一掃した。
 さすがに一撃一撃で数十匹を屠っていると、掃除もかなり速く終わるものだ。
 足下に転がっている虫達の死骸と体液を飛び越えながら、アルベルトは最初にここに来た時のダークゾーンの入り口へと走った。
 先にそちらへ向かったであろうジェミリアスからは、テレパスで既に連絡が取れている。まだ苦戦しているジェミリアスを助けるために、アルベルトはボディESPも使い、通常よりも速いペースで駆けつけた。
 ほんの数秒駆けただけで、ジェミリアスまで一歩手前のゴミ山の頂上へと跳び乗った。

「っつ!」

 その光景に、アルベルトはすぐにPKを発動させながら駆け下りる。
 ジェミリアスはあくまでESPを使おうとはせずに虫達と戦い、体に数カ所大きな切り傷を作っていた。やはり途中からでも両手でなければ戦えないと踏んだのか、先程の箱は少し離れた所に投げ捨てられている。
 虫達の数は既に元の三分の一までには減っていたが、残弾が尽きたのか、ジェミリアスは高周波チェーンのみを頼りに、防戦一方に回っていた。

(意地張らずに、ESP使えば怪我もせずに済むのにな……!)

 PKもESPも使わずに戦っているジェミリアスの目の前に飛び出したアルベルトは、今にも食い付こうとしていた大蜘蛛にPKをぶつけ、一瞬でその半身を蒸発させた。続いてイーターバグにもPKを飛ばし、ゴミ山の向こう側まで吹き飛ばしてやった。

「大丈夫かよ!?」
「何とかね……」
「後は休んでてくれ。後は俺がやる!」

 アルベルトが、再び能力を解放する。母親であるジェミリアスを傷つけられた事で気が高ぶっているのか、先程虫達の大群を相手にした時よりもずっと威圧力がある。
 虫やイーターバグもそのアルベルトの様子に攻め倦ねていたが、気を取り直し、再び攻撃を再開する。
 ジェミリアスは体の回復に専念することにし、戦いの邪魔にならないように回避運動に専念しながら、アルベルトの戦いを眺めていた。

(この子が親離れする日は来るのかしらね………)

 母親が傷つけられた事で激昂している息子を眺めながら、ジェミリアスは内心笑みを浮かべていた…………






〜後日の一コマ〜

「………結局、それは持って帰ってきたんだな」
「!!? いつから見てたのよ!?」

 後日、持って帰ってきた女王様セットを試着しているジェミリアスを発見したアルベルトがどうなったのかは………
 想像にお任せする。






★★参加PC★★
0552 アルベルト・ルール
0544 ジェミリアス・ボナパルト

★★ライター通信★★
 毎度ありがとう御座います。メビオス零です。
 何だか良いもの書けなくてすみません。特に最後、アルベルト君がどうなったのかは……う〜ん怖くて書けなかった。(^ー^;
 またの御機会が来る事をお待ちいたしております。それまでにはスランプ脱出しますんで、どうか見捨てないでぇ〜!
 では手短となりましたが、今回のご発注、誠にありがとう御座いました。(・_・)(._.)