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<東京怪談ノベル(シングル)>


【unknown report】

 ――記録1:無政府地帯の廃墟から審判の日以前に作られたと思われる兵器を発見。
 発掘隊により発見された兵器は、当初その外見からシンクタンクの一種ではないかと思われたが、オールサイバーであることが判明――――。
 モニターに映し出された記録映像の中、倒壊したビル群から運び出される兵器がズームされてゆく。
 映像が切り換わり、解体された頭部に脳と脊髄の一部が表示された。恐らく、これがオールサイバーと断定した理由だろう。非人間型オールサイバー。存在してはならないイレギュラーナンバーだ。

 ――記録2:オールサイバーを発掘した部隊が政府直属の特殊部隊により皆殺しにされる。
 特殊部隊により奪取されたオールサイバーの行方は不明――――。
 映像は監視カメラによるものだろう。漆黒に染められたブルーナンが基地内でマズルフラッシュを迸らせ、次々と発掘部隊がサイバー部隊に文字通り血祭りに上げられてゆく。音声が入っていれば、恐らく、銃声がけたたましく鳴り響き、周囲は爆炎と共に轟音に溢れ、断末魔や悲鳴が沸き上がっていた事だろう。正に地獄絵図、阿鼻叫喚というものだ。しかし、特殊部隊が何故?

 ――記録3:軍事施設からの通信が突如途絶える。
 部隊が到着した頃には生存者はおらず、施設内にあった兵器、サイバーパーツが殆ど無くなっていた――――。
 今度は記録係の捉えた映像が映し出された。圧倒的なまでの破壊と暴力に、小刻みにカメラが揺れる。未だ燃え盛る炎と白煙が周囲を包み、硝煙の匂いを容易に感じられそうだ。通路を進んでゆくに連れ、夥しい数の薬莢が転がり、数多の兵士が赤黒い池を作って倒れていた。中には人だったと例えるものも少なくなく、度々カメラが揺れては視界が床を映したものだ。
 兵士が手を挙げて記録係を呼んでいる。カメラが小刻みに上下する中、兵士が指し示す指からパーンさせ、内部を映し出す。格納庫だろうか? 幾つか武器装備品やサイバーパーツが残っているが、所謂部品にしか過ぎない。あまりに閑散とする中、壁に飛び散った鮮血がヤケに生々しく鮮烈だ。

 ――記録4:所属不明のオールサイバーが特殊警察、犯罪組織などの武装勢力を壊滅させる。
 政府はこのオールサイバーに賞金をかけ、討伐軍が組織されるも、所属不明のオールサイバーに因る被害は増す一方――――。
 ヘリからの映像だろうか。周囲を爆炎が彩る中、奴は姿を晒す。この時の奴は、MS――マスタースレイブと呼ぶに相応しい外観をしていた。シャープなラインを模る強固な装甲に包まれ、背中のブースターから炎を吹きながら残像を描く様に高速で市街を掛け回ってゆく。その機敏さに圧倒される。
 ヘリのカメラが奴を追跡すると、行く手を阻むブルーナンが数機ほど映った。奴は左腕を向けるとマシンガンらしき武装から銃弾をバラ撒き、MSに死のダンスを踊らせる。辛くも洗礼を免れた機体は、更なる地獄を見る事となった。奴は後退して体勢を整えようとするMSに肉迫し、右腕を叩き込んでいるのだ。銃弾を躰中に受けて鮮血を飛び散らせて絶命するか、鋭利な射突型ブレードで串刺しとなって、悶絶しながらゆっくりと死ぬか、正直、どちらも選択したくない。
 しかし、多勢に無勢と言うものだ。賞金を掛けられた奴へ次々と刺客が攻撃を仕掛けて来た。様々な記録映像が続く。奴は一見、兵器にしか見えない。賞金をかけたものの、嘘の証言などザラにあるものだ。そして、映像の中で、奴は幾つも戦火を巻き上げ、紅蓮の炎をバックに銃弾を撒き散らし、滑るように飛び込むと、右腕を叩き込んでいた。刹那、カメラへと緑色の『眼光』を向けられる。慌てるように奴から離れてゆく映像の中、気になったのかカメラがズームされてゆく。映し出されたのは、奴の両肩から覗くミサイルポッドだ。次の瞬間、白煙を棚引かせて放たれたミサイルが着弾し、映像はノイズと化した。

 ――記録5:エリアDでの目撃情報を最後にオールサイバーは姿を消す。
 今までの情報を纏めてみてもこのオールサイバーは――――。
 流れていた目撃映像が停止すると共に、羅列されていた記録が途切れた。何てことだ‥‥ようやく入手するに成功した記録ディスクだというに、肝心な所で壊れているとは!
『大佐! 未確認物体から現在攻撃を受けています! 現在交戦中ですが‥‥ッ!!』
 スピーカーから飛び出した声に私は戦慄を覚えた。耳に飛び込む銃声と爆音、そして悲鳴が、先ほどまで見ていた映像と重なる。刹那、施設内が激しい揺れに襲われ、室内の電気が切れた。暫しの闇が訪れ、ゆっくりと非常用ライトが室内を赤く照らす。その中に、武骨なシルエットが浮かび上がった。緑色の単眼が淡い光を放つ。
「‥‥や、奴、なのか?」
「ヤツ‥‥だと? 俺の名はグスタ。記録を知る者に鉄槌を下す為に来た」
 ――グスタ。それが奴の名前か。何となく私は満たされた気持ちを感じた。
 ‥‥私は銃弾を躰中に受けて鮮血を飛び散らせて絶命するのか?
 それとも鋭利な射突型ブレードで串刺しとなって、悶絶しながらゆっくりと死ぬのだろうか?
 あぁ‥‥ミサイルもあったな。これなら苦しまずに死ねる。
 緑色の単眼を見つめて、私は微笑みを浮かべた――――。


<ライター通信>
 この度は発注ありがとうございました☆
 はじめまして♪ 切磋巧実です。
 体調を崩してしまい、遅れて申し訳ございませんでした。ライターとして情けない限りです。
 さて、いかがでしたでしょうか? 報告書風との事ですので、殆ど記録映像の中という描写で演出させて頂きました。報告書風というものが、意図したノベルイメージと合っているか不安です。ラストシーンに登場して名前を告げているのは、ノベルの都合上、必要な事ですので御了承下さい。目の色は設定と合わせて緑とさせて頂きました事も合わせて御了承下さい。
 因みにカスタマイズメカアクションゲーム好きですか? 設定の中にチラホラとそんな片鱗が見え隠れしたり。PCイラスト拝見して驚いたのはヒミツです(笑)。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆