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都市マルクト【ラジオ局】貴方の声が聞きたい
メビオス零
【オープニング】
はい、リスナーのみんな〜、まだ生きてますか〜?
放送中に死んじゃった人に最期の曲を送りながら、今日の放送を終了します。生き残ったみんなはまた会いましょうね☆
ラジオビジター。パーソナリティーは、みんなのアイドルのレアでした〜
‥‥‥‥
よしっ、放送終了ーって、あ、ごめんなさい。次の人待ってました?
はいはい、撤収撤収。次のラジオ放送、頑張って下さいね。それじゃ、次に逢う時はレアのラジオ放送でね。
〜The curse doll?〜
「さてと、着いちゃったけど、まだ私の番までは時間があるわね。今の内に、鑑定士でも探しましょ」
ラジオ局にまで出向いた白神・空は、丈夫な袋に入れた人形を持って、フロントに集まっている一般客や、暇そうに雑談している可愛い少女達に話しかける。どうやら放送局のアルバイトらしく、腕に腕章を着けていた。
「ねぇ、ちょっと良いかしら?聞きたいことがあるんだけど……」
内容は手持ちの人形のことだ。数ヶ月前にゴミ処理場から拾ってきた人形の事を調べて貰おうと、鑑定士を捜しにここに来たのだった。もっとも、人形自体がボロボロなため、今のこれにそれ程の価値があるとは思えない。
実際にその少女達に人形を見せてみると、彼女たちは顔を見合わせて、ヒソヒソと話し始めた。
(ねぇ、もしかしてこれって、“アレ”じゃない?)
(多分そうでしょ。なんだか変なオーラ出てるし)
(あの番組に出すはずだったのかな?)
(なら出し忘れか………あの人なら、まだ楽屋にいると思うし、言ってみる?)
小声で交わされる会話を、空の敏感な耳は全て聞き取っていた。何となく会話の陰に隠れている怪しい雰囲気に冷や汗を流し、二人の話が終わるのを黙って待つことにした。
やがて話は纏まったらしく、二人して空に向き直り、にっこりと微笑んだ。
「心当たりがあるんで、案内しますね!」
「そう………ありがとう。お願いするわ」
一抹の不安感を感じながらも、空は他に当てもないため、その二人について歩いていった………
「すいませ〜ん!ちょっと相談したいことがあるって人が来ているんですけど。入って良いですか?」
『ああ、入って入って〜』
「失礼する……わ」
中から答えて来るお気楽な少女の声。空はその若々しい声(てっきり禿げな親父集団だと思っていた)に驚きながら扉を開け、踏み込もうとした足を、更にそれを超えた驚愕によってピタッと止めてしまった。
部屋の中は本当に雑然としていた。恐らく借り受けただろう部屋だが、足の踏み場はほとんど無く、床には得体の知れない怪しい物体が、ゴロゴロと転がっていた。
その中で“埋もれていた”少女が、その様子を見て笑った。
「あはは、ビックリした?足の踏み場もないでしょ」
「………そうじゃないわよ」
空がこめかみを押さえる。空が足を止めたのは、その足の踏み場もない惨状が原因ではない。部屋に散らかるそのガラクタの内容…………透明な髑髏とか水晶玉とか怪しい絵画とかってどういう事か!?
思わず後ろを見ると、ここまで案内してきた少女二人は、離れた所で苦笑していた。それから気まずそうに空に手をヒラヒラと振りながら、段々と距離を開けてフェードアウトしていった。
(絶対この人形をみて勘違いしたわね。………まぁ、否定は出来そうにないけど……)
「で、この私に相談とは如何なる事か?」
「ええ、これを鑑定して貰いたくて……」
空がチラッと袋の中に目をやる。そこには古ぼけた人形が―――
キラッ!
目を光らせていた。
「ムッ!?その袋の中から怪しい波動!見せて見せて!」
空が息を呑んで硬直しているうちに、何やら電波でもキャッチしたのか、突然鑑定士の少女は空が持っていた袋を引ったくり、中の人形を取り出した。渋い顔をしている空を無視して鑑定を始めた鑑定士は、頻繁に「お〜!」だの「こ、これは!?」とか唸りながら、目を見開いて空の顔を凝視した。
「こ、これ何処で見つけたの!?」
「え?これは……」
ゴミ処理場から拾ってきました………
(言えないわよねぇ)
空は心の中でだけ冷や汗を流しながら、興奮しながら詰め寄ってくる鑑定士から距離を取りつつ答える。
「自宅の倉庫の奥で見つかったから持ってきたのよ。古そうだったから、値打ちものかなっ……てね」
「じ、自宅の倉庫!?よく生きてられたね!」
信じられないとばかりに後退り、空を見る鑑定士。その間に、空は一瞬にして鑑定士との間合いを詰めた。それから両手で鑑定士の肩を掴み、逃げられないように動きを封じる。
「今、何かすごいことを言わなかったかしら。“よく生きてられたね”って?」
「あ、あはは〜〜〜」
「誤魔化さないで。その人形、知ってるのね?」
詰め寄ってきた空から目を反らし、唸る鑑定士。空は廊下を歩いている人達から見えないように部屋へ入り、扉を閉めて鍵を掛けた。
睨む空。目を反らす鑑定士………
二人の硬直は十数分間も続き、長い沈黙合戦の結果、ついに鑑定士が折れた。
「えっと………その人形ね、私らの仲間内では、呪いの人形って事で通ってるんだ」
「呪い?」
「胡散臭いって言いたそうだけど、実際それを手に取った人達って、尽く死んじゃってるからね。伝説では数百年前……それこそ審判の日以前からずっっっと存在したんだって」
「…………」
「職人さんは大昔の偉人の一人で、かなり有名な人でね、これってお客さんから頼まれた特注品なんだ。だから希少価値がすごく高いの」
「あら、そうなの?」
「うん。まぁ、それを注文した人も、一年ぐらいで死んじゃったらしいけど。それからは人から人へと渡って、死人を増やしているという……」
「…………それ上げるわ」
「いらないから、持って帰ってね♪」
「持ち主に突っ返す!」
「持ち主が生きてたらね。あ、それと、下手に捨てようとすると憑いて回るって噂もあるから気を付けて♪」
鑑定士はにっこりと笑顔になり、人形を空が持ってきていた袋に突っ込んだ。それから鍵を一瞬で開け、蹴り出すようにして空を部屋の外に強引に押し出すと、扉を閉め、そのまま「じゃあね〜!!」と言って閉じこもってしまった。
空は一瞬の出来事に唖然としていたが、暫くするとスゥッと視線を袋の中に移し……
キラッ!
人形と目があった。
言い知れない悪寒に背筋がゾクッとするが、あくまで気のせいだと言うことで自己完結し、早々にその場を離れていく。
「………誰かに売ろうかしらね」
だとすると、まずはこの人形を修繕する必要があるだろう。ボロボロの人形など、いくら貴重品でも、誰も買ってくれまい。
果たして今時人形を直してくれる専門家が居るかどうかは分からないが、今日の放送で呼びかけるため、空は足早にスタジオへと直行した………
それから数日後。修繕屋に預けていた人形は、人形の修繕と一緒に頼んでおいた豪華な箱に入れられて、空の手元に帰ってきた。流石にプレゼント用にするため、人形を入れる箱が欲しかったのだ。
………むき身で渡したら、雰囲気から危険を察知されかねない。
「これで良し。後は誰かに押しつけ………プレゼントするだけね」
空は、修繕が終わり、真新しい服を着たアンティーク人形を眺めてみた。薄汚れていた顔や手足は綺麗になって、白い肌(?)になっている。髪もボサボサだったのが、今では綺麗なストレートだ。目に取り付けられている宝石も、以前よりも更に妖しい光を放っていた。
これなら、そこら辺の店頭に並んでいる高価な人形にも決して引けを取らない。これなら、プレゼントとしても十分通るだろう。
「後は、渡す相手を探すだけね」
まぁ、呪い云々もあくまで噂に過ぎないので、そう深刻な事態にならないだろう。
空は人形を丁寧に箱の中に封印し、上機嫌でその場を後にした……
その夜、人形が勝手に箱から出て来たとか出てこなかったとか………
真相は空以外、誰も知らない………
★★参加キャラクター★★
0233 白神・空
★★WR通信★★
こんにちわ……メビオス零です。(暗闇から登場)
今回は怪談物何だかそうでないんだかよく分からないことになりました。え?てか本当に呪われているのかって?
残念ながら、あくまで噂……としか言えませんねぇ……フフフフフ(ニヤリ)
まぁ、この人形は、どうしようと自由です。さりげにパワーアップして贈呈してますので、見てみて下され。
では、今回のご発注、誠にありがとうございました。(・_・)(._.)
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