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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


ロジック:配線と型番

□Opening
「やぁ、いらっしゃいませ」
 数人のささやき声を越え、部屋の奥でジャッジの姿を見つけた。
 彼は静かに微笑み立ちあがる。
「ん? 何か新しいパズルが無いですかって?」
 そう、なのだ。パズルこそ、この部屋に来た目的。
「そう言えば、下の階の方から相談されていた事があるのですが」
 貴方になら、話しても良いかな……、そんな風にジャッジは話し始めた。

 新しい機械を買ったのだけれど、設計図を無くしてしまった。どうにか組み立てたのだが、五本のケーブルの配線が分からない。
 ケーブルは、それぞれ、青・黄・赤・白・黒色。
 また、今後の修理のために各ケーブルの型番(QT/001〜005)も知りたいのだが、それも設計図に書かれていたようだ。
 購入した再に確認した設計図の記憶がかすかに残っているので、それを頼りにケーブルの正しい配線の順番と型番を考えて欲しい。

 ★青の型番はQT/001
 ★白の型番はQT/003
 ★黄の型番はQT/005では無い
 ★黒は左から四番目
 ★左から三番目に来るのはQT/003
 ★QT/004は左から二番目でも四番目でもない
 ★左から一番目はQT/005

「架空のパズルより、余程緊張感が有りますね」
 ジャッジの笑顔に、どこか挑戦の光が見えた。
 貴方の考えを聞かせて欲しい。

□01
 部屋の奥、カウンター状に設置されたテーブルを挟み、リュイ・ユウはジャッジと向かい合った。用意された椅子に腰を落ち着け、軽く足を組む。
「機械がどんな物なのか興味もありますし、その挑戦お受けしますよ」
 ユウの言葉に静かに微笑むジャッジ。
「僕からの説明は以上です」
 配線と型番を、と。
 答えを促す。
「パズル……実はちょっと興味があるから遅まきながら混ぜてね」
 かたん、と。
 その時、小さな音がした。
 ユウとジャッジの隣に、小柄な少女がちょこなんと腰を下ろす。
「勿論、歓迎します」
 ジャッジのその言葉に、少女――メイ・フォルチェは微笑んだ。

■02
 さて。
 答えを示せとの言葉に、ユウが取り出したのは紙とペンだった。
「意外にはまると危険ですよね……」
 さらさらとペンを走らせながら、ユウはポツリと呟く。
「危険?」
 その言葉に反応したのか、ジャッジはくすりと一度喉を鳴らし、ユウに問いかけた。
「ええ、考えるのが好きなので、この手のクイズをやり始めたら止まらなくなるんです」
 しかし、ユウはジャッジのそんな様子に、全く動じる事は無い。
 答えながら、こんな表を書いてみせた。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一│二│三│四│五┃01│02│03│04│05┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃青┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
 ┃黄┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
 ┃赤┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
 ┃白┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
 ┃黒┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛
 ※:一〜五⇒配列、01〜05⇒型番

「まず、確実な物に○を付けて行きます」
 表を覗き込むジャッジにも分かるように、指差しながらゆっくりと桝目を埋めた。
 青と白の型番は決定している。同じく、黒の配列も決定。
「黄色の型番は、005では無いので、ここは×がつきますね」

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一│二│三│四│五┃01│02│03│04│05┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃青┃□│□│□│×│□┃○│×│×│×│×┃
 ┃黄┃□│□│□│×│□┃×│□│×│□│×┃
 ┃赤┃□│□│□│×│□┃×│□│×│□│□┃
 ┃白┃□│□│□│×│□┃×│×│○│×│×┃
 ┃黒┃×│×│×│○│×┃×│□│×│□│□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛

 このように、提示されている情報を表に書き込み、ユウは一息置いた。
 そして、何も言わずユウの動向を眺めるジャッジを眼の端に捉え、再び考えを整理する。
「白の型番は003……かつ、三番目に来るのが003ですから、白・三番目・003は確定です」
 後は、手元の表と情報を比べながら表を完成させれば良い。
「004は、二番でも四番でもない……つまり、四番目が確定している黒は004ではないと言う事です」
 同じように考えると、一番目が005と言う事は、005では無い物は一番目でも無いという事だ。
 ここまで来れば、列・行を見て一つしか空欄の無い桝目から○が入り、表が完成する。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一│二│三│四│五┃01│02│03│04│05┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃青┃×│○│×│×│×┃○│×│×│×│×┃
 ┃黄┃×│×│×│×│○┃×│×│×│○│×┃
 ┃赤┃○│×│×│×│×┃×│×│×│×│○┃
 ┃白┃×│×│○│×│×┃×│×│○│×│×┃
 ┃黒┃×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛

「結果、この表の通り、左から赤:005・青:001・白:003・黒:002・黄:004と言う事になりますが……」
 いかがです? と、眼鏡を持ち上げ、ユウがジャッジを見据えた。
 ともあれ、ユウの答えはこれで示された。

□04
「二人とも、ありがとう」
 お疲れ様でした、と。
 ジャッジが静かに立ちある。
 ユウは、一度手元の紙を遊ばせひらりとそれを持ち上げた。
 メイは、ゆっくり頬杖をつきジャッジを見た。
「では、僕からも表を一つお見せしましょう」
 いつの間に用意したのだろう。ジャッジが一枚の紙を取り出した。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一│二│三│四│五┃01│02│03│04│05┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃青┃×│○│×│×│×┃○│×│×│×│×┃
 ┃黄┃×│×│×│×│○┃×│×│×│○│×┃
 ┃赤┃○│×│×│×│×┃×│×│×│×│○┃
 ┃白┃×│×│○│×│×┃×│×│○│×│×┃
 ┃黒┃×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛

 それは、ユウが回答に用いた表と同じであり、メイが答えを導き出した表と同じ物であった。
 つまり、
「二人とも、正解です、流石ですね」
 と、それがパズルの答えであった。
「まあ、当然です」
 眼鏡を持ち上げ、ユウは頷く。
「良かった」
 ぱん、と。
 両手を鳴らし、メイはにっこり微笑んだ。

□Ending
「正解したお二人には、それぞれ★1ポイントずつ……」
 そう言って、ジャッジがポイント表を取り出した。
「回答が早かったユウさんには、ボーナスポイントも付加します」
 それは、パズル・ドアで使用されるポイント表だ。
 特に何の特典が有るわけでもないのだが、パズルに正解したと言う名誉を称える為だけの代物。
「で、件の機械とは一体何なのです?」
 パズルが終了し多少リラックスしているのか、ポイント表を横目にユウがジャッジに問いかける。
「そう言えば、何なんでしょう?」
 メイもその隣で首を傾げた。
 ジャッジは、パズルの片付けをしながら二人に微笑みかける。
「それは……そうですね、また次の機会に」
 何だろう? 何か言えないものなのだろうか?
 二人は、最後に残った疑問に多少胸のつかえを覚えながら揃って部屋を後にした。
<End>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス 】

【 0487 / リュイ・ユウ / 男性 / 28 / エキスパート 】
【 0712 / メイ・フォルチェ / 女性 / 11 / エスパー 】

(※:登場人物一覧は発注順で表示させていただきました。)

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■         ライター通信          ■
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 この度は、パズルへのご参加ありがとうございました。ライターのかぎです。そして、皆様、ご正解おめでとうございます! パズル……簡単過ぎましたでしょうか。これから、サイレント・パズル・ドアでは、難易度を上下させながらパズルのゲームを出題して行きますので、見かけたらよろしくお願いします。
 なお、納品後、ジャンクケーブ内『サイレント・パズル・ドア』のポイント表も更新致しますので、ご覧下さい。
 □部分は集合描写、■部分は個別描写になっております。
 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

■リュイ・ユウ様
 こんにちは、ご参加ありがとうございました。落ち着いたユウ様の魅力を引出せたらと思って描写させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
 それでは、また機会がございましたらよろしくお願いします。