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都市マルクト【自警団詰め所】決定、御宿泊
メビオス零
【オープニング】
で‥‥何をした?
自警団員に捕まって、自警団詰め所にしょっぴかれて、取調室でこうやって自警団員と御面談だ。何もやってませんってのが、通じるとは思わねぇよなぁ?
どうせ、酒飲んで喧嘩でもしたって所だろう。
ま、少し牢屋で反省するんだな。その後、罰金か労働奉仕か‥‥そんな所か。
それとも‥‥
いや‥‥俺はちょいと忘れっぽくてな。特に、臨時収入のあった日なんかは、色々と忘れてしまってなぁ‥‥
お前さんを牢屋に蹴り込むのをすっかり忘れた、なんて事にもなりかねないと思うんだ。
〜猫と子猫の関係〜
「‥‥そりゃまた‥‥‥あんたも運がないな。そんな理由でここに来たのかよ」
「連れてきたのはあなた達よ?それに、別に運がないわけじゃないわ。結構良い収穫があったからね」
「へぇ?収穫‥‥か。なるほど、あんたにとっては、これが収穫になるんだな。薄汚れてて、俺にはよく分からんが」
「あら。宝石って言うのはね、磨かなきゃ、そこらの石とあまり変わらない物だってあるのよ?まだまだね」
「ははっ、精進するよ」
薄暗い照明の下で、白神・空と尋問に出て来た自警団員が話していた。二人はまるで古い馴染みのように会話し、お互いの立場を忘れたように親しそうである。
そんな空の隣では、不機嫌そうな顔で、一人の少女が椅子を揺らしている。年の頃は推定16〜18ぐらいだろう。茶色い髪を左右に束ね、ツインテールにしている。顔立ちは少々幼いが、きめ細かい肌と整った顔立ちは、年相応の中でもレベルが高い内に入るだろう。
もっとも、裏路地辺りで生活しているのだろうか‥‥‥服装といい体といい、汚れが付いていて、それらに目が行くことは稀だったろう。そうでなければ、こんなろくに治安も取れていない所では、今頃無事では済むまい。
まぁ、無事で済んでいても、こうして自警団の詰め所にまで連行されてしまっているのだが‥‥‥これについては、この少女は自業自得である。
今から約一時間前‥‥‥空と少女がこの詰め所にまで連れてこられたのは、少女が空の財布をスッたことが原因である。数々の修羅場を潜り抜けた空にしてはあり得ないことではあったのだが、その油断が招いたことだろう。
夕刻、仕事帰りの者達でごった返している道を歩いていた空は、その人混みに紛れていた少女に財布をスられたのだ。もっとも、一秒と経たずに空は気が付き、少女を捕捉して捕縛したのだが、その際に「キャーーー痴漢痴漢痴漢ーー!!誰か助けてーー!」等と盛大に叫ばれてしまい‥‥‥
こうなったのだった。
すぐに駆けつけてきた自警団に弁解を聞いて貰うことは出来ず、空は大人しく、少女と共にしょっ引かれたのである。
しかし空は、いつもと変わらない口調で話していた。不機嫌そうな少女とは対照的に、その態度はひどく友好的だ。時折少女の方を訳ありげに見て、薄く笑っていたりする。
「じゃ、お願いね」
しばらくの間自警団員と話していた空がそう言うと、団員は小さく笑ってから立ち上がった。
「おうよ。じゃ、付いて来な。
団員は軽く言う。空もそれに続くいて椅子から立ち上がるのだが、少女の方は立とうとしない。二人の会話など聞いていないらしく、そっぽを向いて口笛を吹いていた。
呆れたようにその少女を見つめ‥‥‥団員は溜息を吐いた。
「‥‥おい、嬢ちゃんも来るんだよ」
「へ?あたしも?」
本気で聞いていなかったらしい。空はニヤリと笑い、団員は頭をクシャクシャと掻きむしった。
「はぁ‥‥まぁ良いか。貰えるもんさえ貰えればな。ほら、嬢ちゃんもついて来な。今夜はここに泊まるんだからよ」
「あ〜、やっぱりか。‥‥‥しょうがないわね。一晩だけ、お世話になってあげるわ」
どういう状況なのかが分かっているのだろうか。本気で仕方がないと言わんばかりに椅子から立ち上がった少女は、微笑んでいる空の前に立って廊下へと出る。‥‥‥‥それから何を思ったのか、列になって廊下を進む三人の最後尾に位置する空を振り返り、なぜだか歩を早める。
それからそっと先頭を歩く団員へと声を掛けた。
「ねぇ、一応訊くけどさ‥‥‥一人部屋だよね?」
「んなわけねぇだろ。お前、自分の立場が分かってるのか?まぁ、女同士、仲良くやってくれ」
「!? いや、それは‥‥何だか嫌〜な予感がするんだけど」
「知ったことか。そこらの男と同室になるよかマシだろ?」
クククッ、と小さな笑いを漏らしながら、団員は少女に返していた。少女としてはここで一言二言言い返してやりたい所だったのだが、下手に言い返して本当にそこら辺のむさい男と一緒の牢に入れられても困るため、「む〜‥‥」と唸りながら団員を睨むだけで片付けていた。
その間、空は少女の後ろ姿を見つめながら、これからの段取りを考えていたりする‥‥‥
(まずは体を綺麗に洗ってあげて、髪も梳かしてあげないと。気が強そうだから、最初のうちだけでも多少強引に“構って”あげないとダメね。隅々まで洗ってあげた後は‥‥‥さすがにここに服は置いてない筈だから、ベッドの中で湯冷めしないように‥‥)
‥‥‥何をするつもりなのか。空は薄く口元を歪ませ、どことなく無意味に黒く染まっているオーラを放射し始めている。
オーラを向けられている少女自身も気が付いたのか‥‥‥進む足を速め、ついには団員を追い越していく。団員が声を掛けて止めようとするが、決して振り返ろうとしない辺り、相当なプレッシャーを感じているようだ。
だが、その少女の足がピタリと止まり‥‥‥
目の前に立ちはだかる壁との睨めっこを開始した。
「何をしているの?ほら、ここがあたし達の愛の巣‥‥‥じゃなくて、牢屋よ。まぁ、特別に客室にして貰ってたりとかするんだけど」
「ベッドもシャワーもあるぞ。悪いが、食事は勘弁してくれ。さすがに他の奴等に気が付かれる。‥‥‥つーかお前、壁を蹴りつけてまで‥‥‥‥諦めろよ。隣で俺達が会話してたのを聞いて、抵抗しなかったお前が悪い」
事情聴取の時に抵抗すれば間にあったものを‥‥‥などと溜息を吐いている団員。その隣を通り過ぎ、空は少女の手を取った。
そして、滅多に見せない極上の笑顔でその手を引く。
「さ、朝までたっぷりと遊びましょ♪大丈夫。あたしの見る所、あなたには資質があるから」
「にゃーーーーー!!」
ついに現実逃避まで始めた少女は部屋の中へと引きずり込まれ、団員は閉じた扉の前で手を合わせた。
―――合掌―――
☆☆☆☆☆☆
薄暗い部屋の中には、一つの大きなベッドと簡素なシャワールームがついていた。外からは見えないようにするため、窓はついていない。その代わり、天井でゆっくりと回っている換気扇が、部屋の中の空気を清浄なものと入れ替えている。
空に連れ込まれた少女は、この部屋に入った途端に溜息を吐いていた。
数ある自警団詰め所の中には、時々こういった特別製の部屋が用意されていると聞いたことがあるが、まさか自分が利用することになるとは‥‥‥
そう思っていただろう。
だが今では、その事は微塵も頭に残っていない。
「ン‥‥‥ハァッ‥‥‥」
全身を汗だくにしながら、少女はシーツにくるまっていた。シャワーを浴びている空の手から逃れてから、ずっとボーっと、良く言えば夢見心地で、悪く言えば呆けていた。
思考は上手く回っていない。何だかんだで空と話を付け、“お小遣い”を貰って“教えて”貰ったわけなのだが、最初の十数分から、意識が半ば飛ばされていたような気がする。
「うう‥‥‥もうお嫁に行けない」
段々クリアになってきた頭が、真っ先に出させたセリフである。ちょっとだけ目の端に涙を滲ませ、枕をボフボフと叩きながら少女はベッドの上で暴れ始めた。
その音を聞き付けたのか、空がシャワー室から出て来て、タオルを身に巻ながらベッドに歩み寄ってきた。
「どうしたの?まるで自分の大切なモノを奪われたかのように暴れて」
「‥‥‥うう、元凶が何を言うかぁ」
空を見た途端に弱気になった少女は、ここに来る前までの不貞不貞しい態度がすっかりと鳴りを潜めている。怯えるようにしてシーツを手に後退り、ベッドの端っこまで逃げて行く。
しかし悲しいかな‥‥一般的なスリの少女が、セフィロト歴が長い空から逃げられるわけがない。あっと言う間に間合いを詰めた空は、まるで愛おしい者に触るようにして少女の肩に手を回し、もう一方の手で少女の顎を撫で始めた。
「あら、さっきまではあんなに可愛かったのに、もう反抗的になってきたの?もう一度躾ないとダメかしら」
「!? し、躾って‥‥!?」
「フフ、冗談よ。でも、そうねぇ‥‥まだまだ朝までは時間があるし、教えてあげたことを復習しましょうか」
「いえ!もう結構で‥‥‥ウニャ!」
少女が声を上げる。肩に回した手で少女の動きを封じてから、空がそっと首筋に息を吹きかけたのだ。
少女の可愛らしい声を聞いた所為か‥‥‥空の中で、悪戯心が燃え上がり始める。
「ここからの保釈金に、さっき払ったお小遣い‥‥‥これぐらいは良いわよね?」
「だ、ダメって言ってもやるんでしょ!?」
その通りだった。
少女の言葉など無視し、空の手が動いていく。それから数分程の間続いた少女の罵倒とも悲鳴ともつかない声は、やがて色っぽい女の声へと変わっていった‥‥‥
〜翌日〜
「‥‥‥で、本当にお楽しみだったみたいだな」
「ええ。久しぶりに満足したわ」
一晩中眠らなかったにも関わらず、空は疲れた表情も見せず、むしろつやつやになった肌を見せていた。その胸の中で眠っている少女は、さすがに一晩中せめられて疲れたらしく、幸せそうに目を閉じている。
その顔を覗き込みながら、昨晩二人を部屋へと案内した団員は、苦笑気味に空へと話しかけた。
「これ、大丈夫か?まさか、お前無しじゃあ生きられない体にしちまったとかじゃあ‥‥‥」
「大丈夫よ。この子なら、たぶん一人で元に戻れ‥‥るわ」
「オイ、今の間は何だ?」
「気にしないで」
「いや‥‥お前等を二人っきりにしたのは俺だからな。さすがにそれだと罪悪感が出るっつーか」
「安心して。その時は、あたしがこの子を貰ってあげるから」
「なおやばいわ!」
団員が声を上げるが、上機嫌な空はその程度では怯まない。
楽しそうに詰め所の廊下を歩きながら、胸に抱えている少女の頬にキスをした。
Fin
★★参加キャラクター★★
0233 白神・空
★★ライター通信★★
毎回ご発注をありがとうございます。メビオス零です。
まず始めに、納品が遅れてしまったことをお詫びいたします。
なんて言うか‥‥‥‥百合物ってのが初めてだったんで、内容はどうでしょうか?ご不快にさせなければいいのですが‥‥納品時に引っ掛からない程度に押さえてありますので、ちょっと内容が足りないかな?
またご感想を頂けたら幸いです。例えば百合的なコツとか(^_^)
では、またのご発注を頂けたら、その時にはまたもっと良い物を書きたいと思います(最近セフィロトの発注が来なくなりましたし)。
では、改めまして、今回のご発注、ありがとうございました。(・_・)(._.)
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