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ロジック:予約システムオーバー
□Opening
静かな部屋を分け入っていく。その先にジャッジの姿を見つけた。
何か、面白いパズルは無いか? 問おうと思った矢先、ジャッジが微笑んだ。
「やぁ、いらっしゃい、実はね……」
面白い依頼があるんだ、と。
それは、つまり、パズルの始まり。
「下の階の人がね、新しく飲食店をオープンしたんだ、けれど」
ジャッジは、一度言葉を切り、くすりと笑った。
いや、笑い事では無いのだけれども。
「開店日の予約者が思いの他多くてね、システムがパンクしてしまったようなんです」
そう言って、肩をすくめた。
一応、システムの画面を見てはいたので、曖昧ながら記憶はある。
しかし、客の来店時間・予約人数・食事コースの組み合わせが分から無ければ意味が無い。さて、どうしたものか。
以下、システム画面を見た記憶。
★予約客は、スズキ・ヤマネ・シナガワ・ウチムラ・マツモトの五名。
★予約時間は、13時〜17時まで一時間きざみ。
★コースは、観世・宝玉・金春・金剛・喜多の五種類。
★予約人数はそれぞれ一名・二名・三名・四名・五名。
★スズキさんは15時の予約。マツモトさんは16時の予約。
★観世コースを頼んだのはヤマネさん。
★ウチムラさんは三名の予約で、スズキさんはウチムラさんより人数が少ない。
★14時の客は金剛コースを頼んだ。
★13時に来店の方は一名。
★四名の客は16時に来店し宝玉コース、三名の客はそれより前の来店。
★金春コースを頼んだ客は宝玉コースよりも後に来店。
「ね? これって、パズルでしょう?」
ジャッジは、穏やかな口調で、挑戦的な目で、貴方を見ている。
□01
さて、カウンターを挟み、ジャッジと彼らは向き合っていた。
「自己評価より実際は高く評価されていたのね」
最初に席についたのは、メイ・フォルチェ。
ジャッジの話を静かに聞いていたメイは、一つため息をつき頷いた。
「嬉しい事だろうけど、大変ね?」
メイは微笑む。
そして、静かに隣の席へ腰を下ろしたゼロ・J・バドウィックを見た。
「ああ、どうだろうな」
ゼロは、一度ちらりとメイへ視線を投げ、それ以外は無言でジャッジを見ている。
「クイズと言うものは、どうも、はまってしまっていけませんね」
カウンターに手を乗せ、リュイ・ユウも席についた。
そうやら、皆、考えがある様子だ。
「では、答えを聞かせてくれますか?」
三人の様子を確認し、ジャッジが静かにそれぞれの顔を見た。
■02
「んー……、ちゃんと紙に書かないと私解らなくなるから」
メイは、早速紙とペンを取り出した。
前回の時もそうだったのだが、やはり表を作り順序立てて考えるのが一番良いような気がする。
「今回も表を作成作成、と」
と言うわけで、メイは快調にペンを走らせた。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃13│14│15│16│17┃観│宝│春│剛│喜┃一│二│三│四│五┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
┃ス┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃ヤ┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃シ┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃ウ┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃マ┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃二┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃三┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃四┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┃五┃□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┛
┃観┃□│□│□│□│□┃
┃宝┃□│□│□│□│□┃
┃春┃□│□│□│□│□┃
┃剛┃□│□│□│□│□┃
┃喜┃□│□│□│□│□┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┛
※:観⇒観世・宝⇒宝玉・春⇒金春・剛⇒金剛・喜⇒喜多
メイの作り出した表は、縦横で全ての条件を交差させるような表だった。
「まずは、分かっている所を埋めて行くわね」
メイはそう言って一度ジャッジを確認し、再び表に視線を戻した。
ジャッジは、静かに頷く。
例えば、『スズキさんは15時の予約』と言う事実に、スズキ列15時行のマスに○を入れる。また、条件が重複する事は無いので、その他のマス目には同時に×を入れて行く方式だ。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃13│14│15│16│17┃観│宝│春│剛│喜┃一│二│三│四│五┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
┃ス┃×│×│○│×│×┃×│□│□│□│□┃□│□│×│×│×┃
┃ヤ┃□│□│×│×│□┃○│×│×│×│×┃□│□│×│□│□┃
┃シ┃□│□│×│×│□┃×│□│□│□│□┃□│□│×│□│□┃
┃ウ┃□│□│×│×│□┃×│□│□│□│□┃×│×│○│×│×┃
┃マ┃×│×│×│○│×┃×│□│□│□│□┃□│□│×│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃○│×│×│×│×┃□│×│□│□│□┃
┃二┃×│□│□│×│□┃□│×│□│□│□┃
┃三┃×│□│□│×│×┃□│×│□│□│□┃
┃四┃×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×┃
┃五┃×│□│□│×│□┃□│×│□│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┛
┃観┃□│×│□│□│□┃
┃宝┃□│×│□│□│□┃
┃春┃□│×│□│□│□┃
┃剛┃×│○│×│×│×┃
┃喜┃□│×│□│□│□┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┛
「ひとまず、今、表に確実に正誤を書けるのはこれだけで……」
呟きながら、表を眺める。
次の作業は、縦と横で条件を見比べ、正誤を埋めるのだ。スズキ列では、15時が決定している。と同時に、コース枠では『観世』、人数枠では『三・四・五』に×が入っている。
と言う事は、スズキである15時の行『三・四・五』『観世』マスには、それぞれ×が入るという寸法だ。
ちなみに、15時の行ではすでに『一』にも×が入っている。従ってこの段階でスズキは15時来店、人数は二人と決まる。
同じように、その他の個所もきちんと○×を記入して行く。
メイの真剣な瞳は、いつしか、きらきらと輝いているような気がした。きっと楽しいのだろう。ジャッジは心の中で納得し、静かにその様子を見ていた。
「ここで、『金春コースを頼んだ客は宝玉コースよりも後に来店』と言う条件を持ってくるのね」
スズキ・ヤマネ・シナガワ・ウチムラと、上から順に確認していたメイの手が止まった。正誤表に誤りが無ければ、マツモトは16時に四人で来店し宝玉コースを予約した事になる。
つまり、宝玉コースの時間決定により、最後の条件を表に書き込めるのだ。ちなみに、宝玉コースは16時と言う事なので、これより後と言う事は金春コースは必然的に17時になる。
そして、その答えともなる表が完成した。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃13│14│15│16│17┃観│宝│春│剛│喜┃一│二│三│四│五┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
┃ス┃×│×│○│×│×┃×│×│×│×│○┃×│○│×│×│×┃
┃ヤ┃○│×│×│×│×┃○│×│×│×│×┃○│×│×│×│×┃
┃シ┃×│×│×│×│○┃×│×│○│×│×┃×│×│×│×│○┃
┃ウ┃×│○│×│×│×┃×│×│×│○│×┃×│×│○│×│×┃
┃マ┃×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×┃×│×│×│○│×┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃○│×│×│×│×┃○│×│×│×│×┃
┃二┃×│×│○│×│×┃×│×│×│×│○┃
┃三┃×│○│×│×│×┃×│×│×│○│×┃
┃四┃×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×┃
┃五┃×│×│×│×│○┃×│×│○│×│×┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┛
┃観┃○│×│×│×│×┃
┃宝┃×│×│×│○│×┃
┃春┃×│×│×│×│○┃
┃剛┃×│○│×│×│×┃
┃喜┃×│×│○│×│×┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┛
「実は得意な訳じゃないから助けになるかは心配だけど……」
メイは完成した表を持ち上げた。
「好きな分ちゃんと正解に当たると思ってる! ……かな?」
それから、少々照れ笑い。
●スズキ(15時・喜多・二名)
●ヤマネ(13時・観世・一名)
●シナガワ(17時・金春・五名)
●ウチムラ(14時・金剛・三名)
●マツモト(16時・宝玉・四名)
以上、メイの答えが示された。
□05
「皆さん、お疲れ様でした、ありがとう」
それぞれの意見を聞き終えた後、ジャッジは静かにほほ笑んだ。
メイは、不安そうに、しかしちょっぴり期待の眼差しでジャッジを見ている。
「好きなだけで得意じゃないのって、まさに『下手の横好き』ってヤツだなぁ」
ふふふ、と。
メイは沈黙を破るようにつぶやいた。
「いいえ、ここにいる条件は『好き』な事、それが全てですよ」
ねぇ、と、ジャッジはゼロに同意を求めた。
「ああ、そうだろうな」
ゼロは右手をちょっとだけ持ち上げ、それだけ答える。
「そうですね、その上、今回は、ただ働き……」
二人の隣で、ユウはくいと眼鏡を持ち上げた。
その言葉を遮るように、ジャッジがトレイを持ち出す。
「まぁまぁ、皆さん、今回は飲み物をご用意させていただきました」
そのジャッジの様子に、何事かとメイとゼロは顔を見合わせた。
「メイさんはそうだな、ミルクティーはいかがです? ゼロさんはフレッシュジュースかな」
不自然ながらも、そそと二人の前に飲み物が並んだ。
ちなみに、ユウの前には、すでにカフェオレが用意されていた。
「ユウさん、お代わりはどうします?」
にこやかなジャッジの問いかけに、ユウは片手でそれを断った。
「それでは、正解を発表しましょう」
そして、ジャッジは、再び静まりかえった面々に、表を出してみせた。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃13│14│15│16│17┃観│宝│春│剛│喜┃一│二│三│四│五┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
┃ス┃×│×│○│×│×┃×│×│×│×│○┃×│○│×│×│×┃
┃ヤ┃○│×│×│×│×┃○│×│×│×│×┃○│×│×│×│×┃
┃シ┃×│×│×│×│○┃×│×│○│×│×┃×│×│×│×│○┃
┃ウ┃×│○│×│×│×┃×│×│×│○│×┃×│×│○│×│×┃
┃マ┃×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×┃×│×│×│○│×┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛
すなわち、正解は、
●スズキ(15時・喜多・二名)
●ヤマネ(13時・観世・一名)
●シナガワ(17時・金春・五名)
●ウチムラ(14時・金剛・三名)
●マツモト(16時・宝玉・四名)
という事になる。
「……、良かった」
メイはほっと呟き、にっこりほほ笑む。
「そうだな」
ゼロは腕を組み、深く頷いた。
「ん? ……、読み間違えましたか」
ユウは、一度肩をすくめ、眉をひそめた。
□Ending
皆の様子を確認し、ジャッジは表を取り出した。
「では、正解の方には、★1ポイントずつ」
その表は、パズル・ドアのカウンター横に、小さく表示されているものであり、パズルに正解したと言う名誉を称えるだけの代物。
気がつけば、新しくゼロの名前も記されていた。
「それから、今回の特別ポイントは、これだけのパズルを簡潔に説明してくれたゼロさんに付加します」
と。
ゼロの名前の欄にもう一つ★が付加された。
メイはその表を見ながら、ミルクティーを少しずつ飲み込んでいく。
ゼロは静かにフレッシュなジュースを飲んでいた。
ユウも、仕方が無いと、残ったカフェオレを口に含む。
ジャッジは、三人の様子を、やはり静かに見ていた。
<End>
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス 】
【 0712 / メイ・フォルチェ / 女性 / 11 / エスパー 】
【 0542 / ゼロ・J・バドウィック / 男性 / 20 / オールサイバー 】
【 0487 / リュイ・ユウ / 男性 / 28 / エキスパート 】
(※:登場人物一覧は発注順で表示させていただきました。)
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■ ライター通信 ■
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この度は、ジャッジのパズルにお付き合い頂きましてありがとうございました。ライターのかぎです。正解した方はおめでとうございます。不正だった方はごめんなさい。
納品後、ジャンクケーブ内『サイレント・パズル・ドア』のポイント表も更新致しますので、ご覧下さい。『サイレント・パズル・ドア』では、またの挑戦をお待ちしております。
□部分は集合描写、■部分は個別描写になります。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
■メイ・フォルチェ様
こんにちは、再びのご参加有難うございます。見事な正解をありがとうございました。
どうしてもパズルの回答中心の描写になってしまいますが、その中でも、メイ様の可愛い魅力を引出せたら良いなと思い、書かせて頂きました。
それでは、また機会がございましたらよろしくお願いします。
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