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都市マルクト【サンバカーニバル】ダンス・ダンス・ダンス
メビオス零
【オープニング】
外が賑やかになってきたな、そろそろ外をカーニバル隊が通る頃合いかな?
ああ、別に毎日やってる訳じゃないけどな。結構、良くやってるよ。
何だかんだあって暗くなりがちだから、明るくって事だろうな、実際、あれ見てるとどうにも心が浮かれて仕方ねぇし。
お前さん、外に行って踊ってきたらどうだい? 飛び入り大歓迎だ。きっと、楽しいと思うがね。
〜騒がしい夜に‥‥〜
暗い夜に煌めく光。様々な色となって辺りを照らし出しているその中で、精一杯の音を鳴らして音楽を奏でる音楽屋達。そしてその騒々しく、なおかつ一定のリズムを持っている音楽のリズムに乗って、忙しなく踊るダンサー達。
都市マルクト名物、サンバカーニバルである。
普段は薄暗い都市も、今夜は廃墟でさえ飾られている。
「ふぅ‥‥すごい人ね。気を抜いたら流されそう」
飾られた街の中を行き来している人混みの中で、白神 空は呟きぼやきながら人を掻き分けていた。
目指しているのは、既にチェックインを済ませている安ホテル。
ちょっとだけ買い物に出ているはずだったのだが、少々店の中に入り浸り、外に出てみればこの騒ぎである。
大きな道も小さな道も塞がれてしまったため、空はサンバカーニバルの見物をしながら、ゆっくりと帰る事にした。
‥‥‥‥のだが、その途中で見知った顔を見つけ、思わず目を瞠ってしまう。
「あの子は‥‥」
空が目を凝らす。その目に映るのは人、人、人‥‥‥だが空は、絶え間なく動き続ける人混みの中に、見知った顔を捉えていた。
「ちょっと退いて‥‥はい、そこ。退いて退いてーー!」
騒々しいカーニバルの音に紛れるか紛れないかという絶妙な少女の声。
年の頃は推定16〜18ぐらいだろう。茶色い髪を左右に束ね、ツインテールにしている。特徴的な髪型もそうだったが、少々幼い顔立ちは、空の記憶の中にも鮮明に残っているものだった。
「‥‥‥仕事の真っ最中みたいだけど、割と上手いものね」
空は素直に感心していた。
少女は空でさえ手を焼く人混みの中をスルスルと流れに乗るようにして動き回り、あっちこっちを行ったり来たりしている。
他の者達はカーニバルに夢中で気が付いていないが、空のように彼女を注視している者ならば、その動きの違和感に気が付いていただろう。
少女はあちこちを動き回っているが、目は時折手元に行き、そして一瞬で戻り、そして素早くその場から離れるというのを繰り返している。
数週間前‥‥‥少女と共に留置所で一泊した事のある空から見れば、スリを働いている事がバレバレだった。
最も、少女の事に気が付いている者は、今のところは空以外には居ないようだ。どうやら、以前空の財布をスル事に成功したのは、まぐれとは言い切れないようである。
‥‥‥だが
(こんな場所でやるには、ちょっと手際が悪いわね。いくら人が流れているからって、同じ様な場所でばっかり‥‥‥カーニバルに乗じた犯罪を抑止するために、どれだけのマフィアや自警団が巡回しているか、解ってるのかしら?)
思考しながら、辺りを見回してみた。
‥‥どうやら、大丈夫ではないようだ。まだ人混みの中を見回している程度だが、それなりの人数が集まってきている。恐らく、この辺りで財布をスられた事に気が付いた者達が届け出たのだろう。
一人二人ならば兎も角、何人も何人も出て来れば、騒ぎも大きくなる。しかも、見たところ集まってきた者はマフィアみたいだ。もしかしたら、彼等の仲間の物を盗んだのかも知れない。
ならば、捕まった時は怒られたり留置所に入る程度で済むわけがない。
「仕方ないわね。あの子も捕まった時の事は解っていると思うけど‥‥」
だからと言って、ここで見過ごすわけにも行かないだろう。ここで見過ごせば目覚めが悪いし、何より、自分があの少女を気に入っている。
空は出来る限り素早く近付き、少女の手を取った。
「えっ!?」
「こっち、早く!」
驚愕して声を上げる少女の声を押し止め、空は有無を言わせずにその場から離れ始めた。
少女を監視していたマフィア達はその様子を見ていたらしく、数人がバラバラになって尾行を開始してくる。もっとも、一人の少女にあまり時間も人数も割く事は出来ないだろう。追ってきている者はほんの数人で、それも数時間で解除されるはずだ。
(長くても明日の朝までね。出来れば、この子の持っている財布の類を、捨てられれば良いんだけど‥‥)
引っ張っている少女を横目で見てから、空は溜息を吐いた。少女は自分の立場が解っているのか、空を見るなり真っ赤になって逃げ出そうとしている。
何やら色々と言いたそうに口を開こうとしているが、残念ながら、今ここで誰かに調べられて厄介なのは自分な為、思うように騒げないでいるようだった。
‥‥‥これはこれでちょっと厄介なので、手を掴んでいた手を少女の首に巻き付け、それからもう一方の腕で両手を拘束する。
端から見てたら怪しさ抜群だが、まぁ、そこら辺はじゃれ合ってるようにも見えるだろう。
(とりあえずは変装が必要ね‥‥良し)
「ここに入るわよ」
「え?何処に‥‥‥‥う、うわっ!嫌だよ、こんな所!!」
「ツベコベ言わない。ほらほら」
「いーやーだーーー!!」
引きずられていく少女。空は少女の様子を見てノリノリになりながら、店の中にいた店員に、目当ての物を注文した。
‥‥‥‥二人が入ったのは貸衣装屋である。
勿論。今日のサンバカーニバルに合わせ、面白可笑しい煌びやかな服装ばかりが並んでいた‥‥‥
「うう、なんでこんな事に‥‥」
「泣き言言わないの。あんなにいっぱい“物”を持っていたら、拉致られるだけじゃ済まないわよ」
「だからって〜‥‥」
少女が半泣きになりながら腕を振り、腰を振ってダンスの列の中で踊っている。
彼女を強引に参加させた空もまた、喋りながらもノリノリで音楽に乗っていた。
「この格好は‥‥ちょっと勘弁してくれない?」
「ダメよ。ちょっとぐらいの変装じゃ、すぐにばれちゃうんだから」
「むしろ目立ってるじゃない!」
「良いの良いの。ほら、もう少しでカーニバルが終わっちゃうわよ?今の内に楽しんじゃいなさい」
「これが最期のお楽しみになるかも知れないんだから‥‥」と耳打ちしてやると、少女は自棄になったのか、周りに負けないような気合いを入れて踊り出した。周りの者達はその様子を見て、負けるものかと加速する。
だが加速しているダンスカーニバルの中に混ざりながらも、空は周りの警戒を解いていなかった。辺りに時折目を走らせ、マフィアの監視者を探り出す。
(まだ監視はいるみたいね‥‥‥もっとも、店に置いてきた服から財布は見つかっていないでしょうし、この衣装じゃあ、隠し持つ事も出来ない。証拠不十分での無罪放免も、時間の問題でしょうね)
だが油断は出来ないだろう。今は空が付いているから相手も直接少女に手を出してこようとはしていないが、離れたらどうなるかは分かったものではない。
カーニバルが終わり、盛大な拍手と歓声に包まれる中、空は少女の手を引き、にっこりと笑いかけた。
「ねぇ、この後時間ある?あってもなくても、私のホテルに来てくれないかしら?」
「‥‥‥‥あんた。実はすっごくワガママだったりするんじゃない?」
「あなたのためを思って言っているのよ?」
空はチョイチョイと指を動かし、未だにマフィアに付けられている事を少女に合図する。少女もその事には気が付いていたのだろう‥‥‥長く悩んでいたのだが、結局折れて、空の提案に乗る事にした。
「のは良いんだよ‥‥」
それから数時間後‥‥‥
空の泊まっているホテルにまで連れ込まれた少女は、自分の迂闊さに拳を握り、やはり半泣きになりながら、共にベッドに入り込んでいる空を睨みつけていた。
「良いんなら良いじゃない。遊びましょ♪」
「だからっ!その“遊び”が問題なんじゃない!」
安い宿だからだろうか?以前の留置所よりも逃げ場の少ないベッドの中で後退しながら、少女は躙り寄ってくる空に抗議した。
既にカーニバルが終わってから数時間が経っているため、外も暗く、他の部屋もホテルの従業員も寝入っている。まだホテルの外では人が行き来しているが、それもやがては無くなるだろう。
静まり返ったホテルの中、この一室だけが、未だに声を上げている。
「良いじゃない。この前だって、結局は楽しめたでしょ?」
「ぁ‥‥あれは‥‥‥その‥‥‥後になって何だかすっごく恥ずかしくなって‥‥‥大変だったんだから!」
「体が疼いちゃった?なら、私も責任を取らないとダメね」
狭いベッドの中、空はあっさりと間合いを詰めて少女に手で触れた。
「ちょっ‥‥――――――ぁ」
少女が漏らす小さな声。
間近にまで迫っていた空の耳が、その声を聞き逃すはずもない。
「フフフ‥‥可愛い声ね。もっと聞かせて頂戴」
「うう‥‥‥馬鹿」
少女が漏らす声は酷く小さい。だが消え入りそうな声は、一言たりとも逃されることなく、空の耳へと届いてしまう。
(外の黒服達の事も忘れられるぐらい、気持ちよくしてあげるわ)
もし朝になってもまだ外に出られないようなら、出られるようになるまで一緒にいよう‥‥
空はそんな事を思ながら、少女の柔らかな肌に手を這わせた‥‥‥
★★参加キャラクター★★
0233 白神・空
★★WT通信★★
メ‥‥メビオス‥‥零‥‥です。
只い‥‥ま‥‥謎の電‥‥波障が‥‥いにより‥‥通信が‥‥‥
Mayday‥‥‥‥緊急‥‥‥自た‥‥い‥‥‥救‥‥援‥‥‥求む
通信機‥‥‥‥破損‥‥‥長く‥‥は‥‥‥‥
こ‥‥こまで‥‥読ん‥で下さ‥って‥‥‥‥‥あり‥がとうござ‥‥‥いました。
またのご発注をお待ちいたしております。ご意見ご感想を頂けたら幸いです。
では、今回のご発注、誠にありがとうございました。(・_・)(._.)
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥
ぁ、通信機直ったね(爆
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