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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


都市マルクト【整備工場】オーバーホール
『対決!!男の浪漫』

ライター:橘真斗

【オープニング】
 装備の手入れは生き残りの必須条件だ。いざって時に、武器が壊れてましたじゃ、命が幾つあっても足りないからな。
 だが、素人が弄り回してたんじゃあ、限界もある。たまには、本職に見てもらうのも必要だ。
 それに、整備や手入れですまない、ぶっ壊れた装備は本職に修理してもらわなきゃならん。
 サイバーなんて、傷一つ直すにも修理が必要だし、年に一回はオーバーホールが必要だって言うじゃないか。戦場じゃ頼もしいが、私生活じゃ大変だな。
 さて、整備工場へ行こうか。あそこで、装備の修理や整備をやってもらおう。



「おやっさんいるか〜」
「今いねぇよ、おととい着やがれ」
「今日がその一昨日なんだけどな〜」
 バンバンとボロボロの扉を叩いて、神代・秀流 (かみしろ・みのる)は整備工場とは名前だけのガレージの家主と挨拶を交わした。
 出てきたのは背が低く恰幅のいい髭面の男だった。汚れたツナギに、腰周りには工具がベルトにささっていて『職人』というオーラを放っていた。
「よう、ボウじゃねぇか。護竜とアリストのメンテか? いい加減てめぇもバラックの一つくらいもったらどうだ?」
 頭をかきながらよれよれのタバコを咥えて火をつける。ぽうっとワッカの煙を一つ秀流の顔にぶつけた。
「んなこというなよ、おやっさん。自分でいじるのもいいが、おやっさんに見てもらったほうが安心できるんだからさ」
「そういうことは、このツケをどうにかしてから言いやがれクソガキが…」
 ぺしぺしとツケのメモを自分より背の高い秀流の胸に叩きつけるおやっさんこと、源田五郎だが、その顔はまんざらでもなく笑っていた。
「ハンガーのほうにうごかしておけよ、あと俺はハード専門だが、戦闘記録とかはディスクで読んで抜き出しておけよ…お前らの扱いによって組み替えなきゃならねぇパーツがでてくるかもしれねぇからよぉ」
 それだけいうと、五郎はガレージの奥へと消えていった…。



 ハンガーへそれぞれの愛機を動かしていく、そこはまさに男の領域(テリトリー)だった。
 高純度の油のにおい。暗い部屋、使い込まれた工具…整備工としては当たり前の世界が広がっていた。
 ガキュンとハンガーに次々とMSが固定されていく。3体の鋼の人形が並ぶ姿はなかなかカッコいい。
「ユズボウは外面に傷がねぇのは上等だが、シリンダーとかに負荷がかかってやがる。もうちょっと女を扱うくらいデリケートに扱えねぇか? んん?」
 護竜のチェックをしながら、手元のリストに記入をしていく。部品の確認などをしていく姿はプロだった。
「サミアッドのは逆に外がボコボコだな。格闘戦はかまわねぇが、もうちっと勝負は早くつけちまえよ…」
「うっせぇな、このスタイルが俺なんだよ。あんたにうだうだ言われる筋合いはねーんだよ」
 図星だったのかふてくされた顔で五郎に文句を吐き出すサミアッド。
「メカニックを嫌うやつは戦場じゃ早死にするぜぇ、サミアッド」
 余計なお世話だクソジジイと後ろから聞こえる声を無視してチェックを済ます。
 エリドゥーの外装は全部交換だなとぼそりとつなげつつアリオトの前をさっくり通り過ぎた。
「五郎おじさん、どうしてチェックしないんですか?」
「タクトニムだろこいつは…それに外装はかなり大丈夫だし、やらなくても大丈夫だ。ジョウは使い方も丁寧だからな…」
 高桐・璃菜の疑問にさらっと、答えるとソフトのチェックを璃菜に任せて五朗は作業にとりかかった。



「おやっさん、こいつをカスタムするとしたらどうしたらいい?」
 一緒に護竜をいじっていた秀流がぽつりと言い出す。
「男の浪漫のドリルを尻尾にあるからなぁ…あとは…」
 すす汚れた顔で考えこんでいると、璃菜が休憩のコーヒーとお菓子を持ってきつつポツリといった。
「そういえば、この間TVでやっていた映画で火を吐く怪獣のやってたよね〜。火炎放射器なんか似合うんじゃない?」
 この一言が、文字通り二人のハートに火をつけた。
「いいなぁ、火炎放射器。そいつを忘れているたぁ俺もどうかしていたぜ!! 
ユズボウ、『男の浪漫その2:火炎放射器』をいっちょつけようじゃねぇか! 」
 子供のように笑いながら五郎が秀流の肩をバシバシとたたき、がははと笑う。
 そして、改造が始まった。テーマは特撮怪獣だった。
「背中をカードリッジ式の背びれでもつけるってのはどうだ?」
「いや、吐くたびに背びれが消えていくのはなぁ」
「それじゃあ、ここに燃料を入れて、装甲を厚めにして太い首をアピールしつつ」
「ああ、それはいいな。 んじゃま、ここはこうで…」
 散らかっている机の上を無造作に片付けて、設計図を広げてああでもない、こうでもないと論議を始めだした。璃菜はそんな燃える二人にたじたじである。
 しかし、サミアッドは違った。
 
『異議あり!!』

 なにやら左指を突き刺して異議を唱える、その姿は様になっていた。
「何だよサリア、おやっさんとの相談の邪魔をしないでくれよ…」
 秀流はめんどくさそうにサミアッドを見た。突っかかってくるのは昔からなので、またかという感覚だ。
「うるさい!!男の浪漫はヒートサーベルだ! これからそれを証明してやる!!」


 二人の制止も聞かずにエリドゥーに乗り込み、起動させた。ハンガーからはずれ、ズシンと重量感のある一歩を踏み出した。
 エリドゥーはガレージにおいてあるヒートサーベルを拾い上げる。サミアッドはモニターでグリップの確認、そして電気系統のコネクトを確認した。今のところ異常はない。
『馬鹿っ、高周波ブレードと違うんだぞ? わかってんのかテメェ!!』
 右のサブモニターに五郎の濃い顔がアップで映り叫んでいる。声もでかいがサミアッドは通信をきる。
「これ以上…秀流にいいカッコさせてたまるか! 俺だって! 俺だってぇぇぇ!!」
 コクピット内のサミアッドの叫びに呼応するかのようにヒートサーベルが熱を帯び、淡く光りだす。
「見ろ、これぞ男の武器だっ!」
 そこまでいい終わったとき

ピシュゥン

 突然、エリドゥのブレーカーが遮断、システムが非常モードに入り、異常を知らせるレッドアラームがけたたましくコクピット内に響いた。
「え、えぇ!? な、なんだ、何がおきたんだ」
『ばーか、高周波ブレードより燃費わりぃんだよ。熱伝導武器って代物は…テメェ電気系統まで壊しやがって…請求書高くつくからなっ!! 覚悟しろ!!』
 非常モードのため、外部との通信が自動的にオンになったのか五郎の罵倒がレッドアラームのけたたましさの中ではっきりと聞こえた…。


 落ち込んだ顔でエリドゥーから降りてきたサミアッドを璃菜が慰め、その間にも秀流と五郎は着々と火を噴く護竜の改造を進めていった。喉元のパーツ交換、耐熱処理など
 結果としてはライターの原理で火をつけることとなった。歯を高周波で軽く振動させてぶつけることで火花をだし、それに着火させるという原始的なものだ。一番安全でもあるし、何より
「この方がかっこいいじゃねぇか」
 という五郎の趣味だった。二人ともツナギを汚して汗まみれではあるが、一仕事を終えたいい笑顔をしていた。
「とりあえず、ユズボウ機動してみろ…いけるはずだ」
 秀流に乗るように指示をだし、自分は仕事の後の一服にふけだす五郎。
「おう、やってやるぜ! 璃菜見てろよ」
 タッタッタッと護竜のコックピットへ行くタラップを駆け上がり滑り込むようにして秀流は中に入り込む。
 しばらくすると、護竜の目が光、鋼の人形に命が吹き込まれた。光のともった目で五郎の指示した的を見つめ、両足を広げて構えた。高周波の歯が動き、ガチガチンッとかみ合って火花を散らして
『過激にファイヤァァアっ!!』
 ブォォォォォッ!!灼熱が口から吐き出され、的を焼き尽くした。
「秀流、やったね!」
『おう、成功だぜ! おやっさんありがとよ!』
 語竜の外部スピーカーから秀流の声が聞こえてきた。
「秀流〜、ちょうどいいからご飯にしましょ」



 階段を上ってガレージの屋上に行くとあまりにまぶしさにみんな目を細めた。しかし、暖かな日差しと心地よい風を感じるとまんざら悪くない場所だった。
 青い空に白い雲、目の隅に入ってくる男ものの洗濯物はこの際排除すれば絶好の景色でもある。
「ささ、食べましょう」
 璃菜が敷物を引いて、バスケットからサンドイッチなどを出す。具材は缶詰製品をつかったものだがおいしそうだ。物資の少ないセフィロトでもがんばっている様がよく分かる。
 いただきますを合図に、再び秀流とサミアッドのバトルが始まった。我先にとサンドイッチをとり食べていく二人。食い物に関しては二人ともガチだった。
「もう、そんなに急いで食べなくたって…二人とも子供みたいよ」
「「ほふぇふぁほっひにひへ(意訳:それはそっちにいえ)」」
 もごもごとサンドイッチをくわえ込みながら互いを指差す二人。
「ガキだな、てめぇら…」
 こんな平和なひと時をいつまでも過ごせたら…誰もが思うささやかな幸せがここにあった。


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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名

【0577】神代・秀流 (かみしろ・みのる)
【0048】サミアッド・アリ (さみあっど・あり)
【0580】高桐・璃菜 (たかぎり・りな)

【NPC0264】源田・五郎(げんだ・ごろう)

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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 はじめまして、アナザーレポートでは初受注です。
 ありがとうございました!とりあえず、幼馴染と恋敵という感じで描写をがんばってみましたがいかがでしょうか?
なかなか面白い設定で書くのは割りと楽でした。
 この源田のおっちゃんは今後個室関連で深く掘り下げていくと思いますので、よろしければまた参加を検討していただけたらと思います。
 今回はどうもありがとうございました!

>サミアッドさん
 すみません、ビーム兵器はサイコマスターズでは存在していません。レーザー火器がいいところなのです。ということでヒート系武器にしてみました。有名な一つ目が持っているアレです。そういうことですので、今回はこれでご了承を