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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


ロジック:Machine

□Opening
 静かな部屋の奥、ジャッジはそこでいつものように静かにたたずんでいた。
「やぁ、いらっしゃい」
 いつものように挨拶を交わし、いつものように何かパズルを、と辺りを見まわす。
 くすり、と。
 この日ジャッジは、珍しくはじめに笑った。
「実はね、下の階の人に機械を見せてもらったんです」
 ジャッジは言う。
 いつか、下の階の住人が、機械がどうのと言っていたような気もするけれど、突然何故?
「その機械が店の要なんだけどね、これが面白い仕組みなんですよ」
 何を言い出すのかと思えば。
 本当に、面白いだけの世間話なのか?
「ボタンを決められた回数だけ押せば、それに応じた品が出てくるんです」
 余程、印象深かったのか、ジャッジはくすくすと笑う。
「ああ、そうだ、ではここで一つ頭の体操と行きましょうか」
 そして、思い出したかのように、ジャッジはこちらを見た。
 それは、はじめから予定されていた事だったのかもしれない。
 まぁ、それでも構わない。それこそが、この部屋へ足を踏み入れた目的なのだから。
「ボタンは赤・青・緑・黒の全部で四種類、押す回数は10・11・12・13回といずれかに振り分けられていて、それにより出てくる品は、アガリ・シャリ・ワサビ・ネタ」
 これが、最初の前提のようだ。
「ここからが問題です……」
 ジャッジは、いつの間にか笑みを無くしていた。その代わり、静かに以下の条件を伝えて来たのだ。

 ★赤いボタンを押すとシャリが出てくる。
 ★緑のボタンは11回押す。
 ★アガリは12回押すと出てくるが、これは黒のボタンでは無い。
 ★ワサビはアガリよりも押す回数が多い。

「さぁ、ボタンを押す回数と出てくる品物は?」
 そして、ジャッジの瞳が挑戦的に光る。
 貴方の回答を聞かせて欲しいと。

□01
 薄暗い部屋。
 そこここでささやき声が聞こえる。
 皆、各々パズルに興じているのだろう。
 そんな様子を眺めながら、いつもの場所、いつものようにリュイ・ユウは部屋の奥の席についた。
 カウンターを挟み、ジャッジと向かい合う。
 ユウは、くいと眼鏡を持ち上げ眼鏡の奥からジャッジを見つめた。
 そして、いつものように、ペンと紙を取り出す。
「では、クイズとして楽しむことにしますか」
 やはり欲を出すと良くないという良い例ですかねと、心の中で呟き、ペンを走らせる。

□02
 ユウは静かに、そして、丁寧に表を書いている。
 ジャッジは、その様子を黙って見ていた。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃10|11|12|13┃ア|シ|ワ|ネ┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┫
 ┃赤┃□|□|□|□┃□|□|□|□┃
 ┃青┃□|□|□|□┃□|□|□|□┃
 ┃緑┃□|□|□|□┃□|□|□|□┃
 ┃黒┃□|□|□|□┃□|□|□|□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┛

「アをアガリ、シはシャリ、ワはワサビでネはネタとします」
 ユウはそう言いながら、空欄ばかりの表を、ジャッジにひらりと見せた。
 ジャッジは、静かに頷く。
 その目は、早く回答をと、急かしている様にも感じられた。
 しかし、ユウは自分のペースを崩さない。
 一度ふうと息を吐き、手元でくるりとペンを器用に回した。
「まずは、前提の条件を書き込みます」
 呟き、赤―シャリ欄に○を書く。それから、その他のシャリ列を×で埋める。同じように、赤の他行も×を書き足す。次は、緑―11の欄に○、該当欄以外に×。アガリ―黒の欄に×を入れた所で、ユウはペンを置いた。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃10|11|12|13┃ア|シ|ワ|ネ┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┫
 ┃赤┃□|×|□|□┃×|○|×|×┃
 ┃青┃□|×|□|□┃□|×|□|□┃
 ┃緑┃×|○|×|×┃□|×|□|□┃
 ┃黒┃□|×|□|□┃×|×|□|□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┛

「さて、アガリは12回押す……と言う事は、11回が決まっている緑のボタンでは有りません」
 あくまで冷静に、与えられた情報を分析する。
 緑―アガリ欄にも×をつけ、ユウは頷いた。こうなると、アガリに残されたボタンは青のみ。つまり、青=アガリ=12となり、青―アガリ欄は○、青―12欄にも○がつく。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃10|11|12|13┃ア|シ|ワ|ネ┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┫
 ┃赤┃□|×|×|□┃×|○|×|×┃
 ┃青┃×|×|○|×┃○|×|×|×┃
 ┃緑┃×|○|×|×┃×|×|□|□┃
 ┃黒┃□|×|×|□┃×|×|□|□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┛

「最後に、ワサビはアガリよりも押す回数が多いんですよね」
 条件を確かめながら、ペンの先でワサビの欄を叩く。
「つまり、ワサビは13回、この時点でワサビの列は緑か黒しか空欄がありませんから、ワサビは黒で決まりですね」
 黒=ワサビ=13回が決定すると、残る緑=11回=ネタも自動的に決定という事になる。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃10|11|12|13┃ア|シ|ワ|ネ┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┫
 ┃赤┃○|×|×|×┃×|○|×|×┃
 ┃青┃×|×|○|×┃○|×|×|×┃
 ┃緑┃×|○|×|×┃×|×|×|○┃
 ┃黒┃×|×|×|○┃×|×|○|×┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┛

 出来あがった表を確かめ、ユウは確認する様にジャッジを見上げた。
「赤がシャリで10回、青がアガリで12回、緑がネタで11回、黒がワサビで13回、これで大丈夫だと思いますが……」
 くいと、眼鏡を持ち上げる。
 ジャッジは、静かにユウの回答を確認していた。
 ともあれ、これでユウの答えは示された。

□03
「お疲れ様でした、いかがでしたか? 頭の体操」
 ユウの答えを聞き、ジャッジは静かに微笑んだ。
 その問いには、無言で答える。
 元より、この部屋に入ると言う事は、それを楽しみにしているからと言うわけなのだから。
 そんなユウの前に、そっと一枚の紙を提示するジャッジ。
「僕の方でも、回答を表にしてみました」

 ┏━┳━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃10|11|12|13┃ア|シ|ワ|ネ┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┫
 ┃赤┃○|×|×|×┃×|○|×|×┃
 ┃青┃×|×|○|×┃○|×|×|×┃
 ┃緑┃×|○|×|×┃×|×|×|○┃
 ┃黒┃×|×|×|○┃×|×|○|×┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┛

 ユウは、その表をちらりと見て、満足げに頷いた。
「おめでとうございます、見事な正解です」
 ジャッジも、静かにユウの正解を祝った。

□Ending
「で、どう思いますか?」
 この日は、珍しくジャッジがユウに問いかけた。
 パズルは終わった。にもかかわらず、だ。
「下の階の住民は……と言う事ですか?」
 顔を見たことも無いが、随分と関わってしまった気がする。
 ユウは、しかし、あまり興味も無さそうに苦笑いをした。
「発明家か何かですか? 寿司屋というのも何でしょうし」
 確かに、ボタンを押せば出てくると言う画期的な機械だ、とは思う。
 しかし、この機械で寿司屋が上手く回るとも思えない。
 妥当な回答だった。
 その様子に、ジャッジも頷く。
「こればかりは、決まった条件も無い憶測の……つまりパズルでは有りません」
 もったいぶった前置きのあと、ジャッジも苦笑いをした。
「でも、そうですね、寿司屋では、無いでしょうね」
 只一つ、困った事は、きっと下の階の住民はまた相談を持ち込むだろうと言う事だった。
「さて、そんな事より、ポイント表ですね」
 ジャッジは言いようの無い不安を拭い去る様に首を振り、パズル・ドア・ポイント表を取り出した。
 すでに、ユウの名前も記載されている。
「正解ポイント、特別ポイントをユウさんに付加しましたよ」
 言われて、ユウも表を見た。
――あと一つで、五つですか
 だから、どうしたと言うわけでもないのだけれど……。
 パズル好きだと言う証だけの表を見つめ、ユウはぼんやりそんな事を考えた。
<End>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス 】

【 0487 / リュイ・ユウ / 男性 / 28 / エキスパート 】

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■         ライター通信          ■
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 この度は、ジャッジのパズルにお付き合い頂きましてありがとうございました。ライターのかぎです。ご正解おめでとうございます。
 納品後、ジャンクケーブ内『サイレント・パズル・ドア』のポイント表も更新致しますので、ご覧下さい。『サイレント・パズル・ドア』では、またの挑戦をお待ちしております。

■リュイ・ユウ様
 こんにちは、いつもご参加ありがとうございます。見事な正解をありがとうございました。パズルはいかがでしたか? 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
 それでは、また機会がございましたらよろしくお願いします。