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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【密林地帯】インディオ村

メビオス零


【オープニング】
 アマゾン流域の密林地帯には、昔ながらの暮らしを続けているインディオの村が幾つもある。
 インディオは凄いぞ。あの審判の日と、それ以降の暗黒時代、高度なテクノロジーを持ってた奴らがバタバタ死んでいった中、インディオ達は何一つ変わらない生活を送っていたというんだから。
 本当に学ばなければならないものは、インディオの元にあるのかも知れないな。






 やっぱりやりすぎたのかしら?
 別に私は悪い事をしているとは思ってないんだけど、それでも向こうにとって、私の事が死活問題だって事は解ってる。
 いくらジャングルだって言っても、この付近は貿易に使えそうな資源が乏しい上、他の村とあまり距離が開けていないから祈祷でも何でも、セールスポイントを失ったら大変だもの。あの人達が必死に隠そうとするのも解るわ。
 ‥‥‥‥でもね、だからと言って、別に村の秘密をバラすつもりなんてないって言ってる私を攻撃する事無いじゃない。それも村人総掛かりで。
 この前はついちょっとだけ‥‥‥‥反射的にうっかり反撃しちゃったけど(村人の半数以上をノックアウト!‥‥殺してないわよ?)、お互いの立場はこれで明確になったわ。
 狩る側と狩られる側‥‥‥じゃなくて!





「私は例えあなた達を相手にしてでも彼女に会いたい。あなた達は私の口から、この村の大事な資金源である祈祷の秘密をばらされたくない。
 ‥‥‥でも、あなた達じゃあ、私を取り押さえる事も出来ない。なら、話は簡単じゃない?」
「取り引き‥‥‥か。確かに、もう、これ以上のいざこざは無いものとしたいしな」

 数日後、早くも見慣れる程に村へと通い詰めていた白神 空は、村長のテントの中で話し合っていた。
 テントの周りでは村人達が聞き耳を立てている。
 空によって身体のあちこちに包帯を巻いたり添え木をしていたりする村人達は、村長と空の会話を聞き逃すまいと、ずっとコソコソと聞き耳を立てている。
 ‥‥‥‥正直バレバレなのだが、村長がどうせ他の皆に話してしまうのなら同じなのだと空は納得し、放置していた。

「しかしこの村に入りたい‥‥というわけではないのじゃろう?まぁ入れんがな」
「別に村に住みたい訳じゃないのよ。出来ればお客、そうね、観光客ぐらいには思って欲しいわ。
 最初来た時にだって、同じようなものだったでしょ?」
「そうだが。だが他の者達はそれでも納得すまい。つい先日に打ち負かされ、その相手がこれからこの村を訪れ続けるなど‥‥不安で仕方があるまい
 それに、取り引きをするとしてそちらは何を提供するのじゃ?
 言って置くが、口を割らないと言うだけじゃ、もう誰も納得せんぞ」
「そうでしょうね」

 空が気にかけているのはその部分だった。
 理由はどうあれ、村人達に手を挙げたのはまずかった。あれ以来、祈祷師の少女と会う事は妨害されなくなったのだが、少女の待遇が大分変わっているように思える。
 ‥‥‥これ以上事を荒立てるような事をすると、自分ではなく少女の方が傷付けられるようになるだろう。

(それだけは避けたいから、こうして話し合っているんだけど‥‥困ったわね)

 こちらの手札は強力だが、少ない。
 この村の秘密は十分に牽制の材料になっていたが、それで少女が傷付けられれば意味がない。それに、少女がこの村に居続けているのは自らの意志だ。
 それを曲げさせる事は‥‥出来ない。
 もし空に出来る事と言ったら、少女の負担を軽くするぐらいの事だ。
 少女の秘密でここまで村があ〜だこ〜だと騒いでいるのは、それがこの村の財産‥‥‥それこそ、失えば存続すら危うくなるようなものだからだ。
 実際、この村は名高い祈祷術の事で知られている。それが実は“詐欺でした”‥‥等とバレようものなら、それこそ近隣のインディオ達から攻撃されかねない。(周囲の村の神事にも関わってしまっているらしい)
 空が秘密を話さないにしても、祈祷以外で村を立ち行かせる要素が必要になるのだ。

(‥‥‥やっぱり、他の村を襲おうかしら)

 祈祷のメイン場面(空的に)の情報を町に流して顧客獲得率をアップ!‥‥‥とも考えたが、それだと祈祷師の少女の負担が増えすぎる。
 大体、それだと良からぬ考えを持っている者達が集まってくるだろう。それは避けたい。愛しい彼女のために。
 大体、金銭の問題ではない。インディオは金銭を持っていないし、取り引きの類は物々交換となる。
 空が他の村を襲おうと考えたのは、他の村の資源の採掘地を奪い、かつ敵を排除するという、何とも合理的なやり方だ。(あまりにも乱暴というか、ある意味戦争ではあるが)
 一番良いのはこの村だけで作られる民芸品などがあれば良かったのだが、そう言う物は古い物にこそ価値が出て来る。質が良くても、マルクトにある品物を考えると、決定的な材料にはならないだろう。
 ‥‥‥だけど、派手に奪い取るって言うわけにも行かないわよね。真相が漏れたら賞金掛けられてもおかしくないし。

「ふむ‥‥‥‥それなら、一つ頼み事を聞いて貰えるかな?」
「頼み事?あんまり荒っぽい事はお断りよ」
「荒っぽいと言えば荒っぽいが、この前の時よりかはまだ“マシ”じゃよ」

 皮肉混じりに言ってのける。
 この前‥‥とは、間違いなく空との時だろう。やはり根に持っているようだ。

「だがこれをしてくれれば、必ず他の者達もあんたの事を邪険には扱えんじゃろう。それぐらいの仕事がちょうど良いと思うが、どうかね?」
「‥‥‥‥そうね。仕事をした後で物言いが付くぐらいならそれで良いけど‥‥‥で、その仕事って?」
「うむ。それはな‥‥‥」








 ‥‥‥このジャングルは広い。それでいて天候は常に熱帯であり、とにかく野生の動物がひたすら多い。
 だがジャングルというのは、例えばサバンナのように広い平原が広がっていて、そこでシマウマのような草食動物が呑気に過ごしているような場所ではない。
 草食動物も確かにいるが、当然ながらそれを補食する肉食獣もいる。
 しかし当然、そんな場所で過ごしているインディオは、そんな危険な場所で食糧を確保しなければならない。
 しかも文明的な物を極力断っているため、銃などで武装する事も出来ず、常に危険に身を晒していなければならないのだ。
 自生している果物を採っていても良いのだが、それでも村から離れなくて話にならない。インディオにとって、只でさえ増え難い人口が減ってしまう主な理由だ。
 ‥‥‥つまり、だ。この村では、そう言うリスクを減らす事が出来れば、諸手をあげて歓迎出来るのである。

「はぁ、つまりこういう事ね」

 【玉藻姫】に変化した空は、本日二匹目の獲物の首を切りつけていた。
 玉藻姫の鋭敏な五感で捕捉し、その戦闘力で確保する。
 現在、空が相手にしているのは肉食動物の代表の一匹、ジャガーであったが、普段からセフィロト内でタクトニムを相手にしている空にとって、これと言った障害にはならない相手だった。
 ジャガーの抵抗によって頬に小さな傷が入ったが、これぐらいなら何と言う事もない。空の回復力ならば、それこそ数分で完治するだろう。

「これぐらいで十分かしら」

 ようやく動かなくなったジャガーを見下ろし、空は溜息を吐きながら血に濡れた頬を拭う。
 手に付いた血で余計に汚れてしまったため、後で川にも立ち寄らなければ、と苦笑する。
 ‥‥‥空が村長から言われた条件とは、“手土産”だった。
 空が滞在する間だけ、必ずその日の村全体の食糧を確保しなければならない‥‥という物である。
 もちろん。村長達にとっては絶対に不可能だと踏んでの事だ。狩りに慣れているインディオ達でも、全体に行き渡せるだけの食料を確保するのは至難の業だ。
 人口が百人に届かないとはいえ、その量は膨大である。肉が欲しければ100s近いものを一匹は狩らなければならないし、果物となるとそれこそ山のよう‥‥‥天候や周囲にいるインディオ狙いの野盗達の事を考えると、長く村を開ける事も出来ず、そこまで狩るのは難しいのだ。
 だからこそ、絶対に無理だと踏んで空に提案したのだ。
 “村全体の食料を採ってくれば‥‥そうじゃな。その食料が残っている間は、泊まっておっても良いぞ”‥‥‥と。
 もし空がマルクトまで戻って、採ってくるように言った食料を買ってきたとしても、それはそれで空に経済的な痛手を負わせる事が出来るし、頻繁に村に出入りする事も出来なくなる。
 どちらかと言うと、この取り引き内容は、空に対しての嫌がらせの類であった。
 ‥‥‥しかしここに誤算がある。
 それは、この空の変身能力。
 【玉藻姫】‥
 【人魚姫】‥‥
 【天舞姫】‥‥‥
 陸・海・空のすべてに置いて超人的‥‥‥否、超獣的な能力を手に入れる事の出来る空にとっては、それ程難しい事ではなかったのだ!
 たった一人でやらなければならない分、当然時間はかかる。しかしそれでも数時間で済む事だった。
 丸一日狩りに精を出せば、それこそ数日分は稼ぐ事が出来るのだ‥‥

「‥‥‥案外、セフィロトに潜っているよりも性に合ってるのかしらね」

 【人魚姫】に変身して血を洗い流し、ついでとばかりに数匹の魚を手に入れていた空は、陸に上がって再び【玉藻姫】に変身する。
 この姿になれば全身が体毛に覆われるため、まぁ、あれだ。服を着る必要もなくなるため、木の枝に引っ掛かって破れたり動物の返り血に汚れたり突然降り出したスコールにビショビショになったりしても、別に心配する必要がない。
 ‥‥‥‥ちなみに服は、持ってきたバックパックの中にキッチリと入っている。変身した状態で村に入ろうものなら、それこそ狩られかねない。と言うか引かれる。逃げられる。絶対に。

「あの子にも、これは流石に秘密にしないとね」

 苦笑しながら、全体的に数百sもある荷物を持ち上げ‥‥る事は出来なかったため、分割して運ぶ事にする。




 ―――教訓。これからは大荷物を取りに行く時には、予めこまめに村まで持っていこう。
 空が席を外しているうちに、野生の獣に盗られる可能性がある‥‥‥から、ね!!









「さて、これで良いかしら?」
「‥‥‥‥‥‥‥」

 ポカ〜ンと、村長だけではなく、村人全員が口を開け、空が採(狩)ってきた“戦利品”の山を眺めていた。
 動物、魚、山菜、果物‥‥‥
 量にすれば、それこそ数日‥‥‥これだけの量があれば、一週間は持ち堪える事が出来るだろう。
 熱帯なだけあって保存期限が辛いが、それを差し引いてもこの採集量は魅力というか異常というか‥‥‥

「まだ足りない?あんまり採りすぎるとまずいと思って遠慮したんだけど‥‥」
「‥‥こ、これで十分じゃ。ご苦労だったの」

 村長はそう言うのがやっとのようだ。背後に控えている村人達も、さすがに文句を言う気はないらしい。

「それじゃ、報酬を貰うわよ。あの子はどこ?」
「む‥‥‥ああ。そうじゃな、うむ。こっちじゃ」

 村長は深呼吸をしてからようやく緊張が解けたらしく、食料を手にして喜んでいる村人達の横を通り過ぎ、いくらか振りのテントへと到着する。

「後は自由じゃ。じゃがな‥‥‥節度は保っておくれ。頼むからな」
「大丈夫よ。別に悪い事なんてしないから♪」

 そうだ。どちらかと言うと“良い事”をするんだから問題もないだろう。

「さ。懐かしのお姫様の顔を見せて貰おうかしら‥‥‥♪」

 空がテントの中に入っていく。
 そしてその中には――――――






「あ〜!会いたかったわーーー!」
「え?キャーーーー!なになになにナニーーー!!?」

 寝込みを襲われる少女の声が聞こえたとか聞こえなかったとか‥‥‥‥
 まぁ、気にしない方向で、村人の中では決着したのだった。






 めでたしめでたし♪








★★参加キャラクター★★
 0233 白神・空


★★WT通信★★
 毎度毎度ありがとうございます。メビオス零です。
 今回は交渉‥‥‥いえ、脅迫術の応酬です。良いのかこいつ等って感じですが、互いに利害が一致したんですから交渉という事にしておきましょう。ええ。飴と鞭が大事です。
 空の能力を使えば、絶対に野生に生きたって問題ありませんw。そしていずれ、森の主として暮らす事に‥‥‥ぁ、何かホントに出来そう(^_^;)
 今回は割と楽しく書けたのでこちらとしては不満はありませんが、お客様はどうでしょうか?改善点がありましたらおっしゃって下さい。鋭意努力させて頂きます。

 では、今回のご発注、誠にありがとうございました。(・_・)(._.)
 またのご発注をお待ちいたしております。ご意見ご感想を頂けたら幸いです。