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【盲目の少女】―プレゼントを求めて―
「うーん…どうしましょう…?」
一人呟く少女。
何かを探しているようで、きょろきょろしている。
「記憶を失くした私を助けてくださった方ですし、私を今まで守ってくださりましたし…」
彼女の名はマイ。
自分を失い、自分の記憶をも失った。
何時もは自称護衛であるカイルと一緒にいるのだが離れて一人でうろうろしている。
記憶を探す為に古代遺跡に侵入し、開眼を果たすも未だ盲目のままのようだ。
そんな彼女も一緒に古代遺跡へと侵入したアルベルトという青年により自我を取り戻す事が出来、今はカイルを探しているのだが……。
「何だか、このまま探して見つけて合流するのも悪いです…私の勝手で振り回してばかりいたのですから、お礼をしなくてはなりません…」
困るマイを見兼ねた商人らしき男が肩を叩いた。
「お嬢さん、贈り物をお探しかい?」
「はい、男性に似合うようなものを探しているのですが、見つからなくて…」
「なら、アクセサリーや服を手作りしてみるのはどうだい?道具なら化すし、材料も基本的なものだけあげよう。他に追加してみたい飾りとかは自分で調達してくれると助かるよ。こっちも商売だからさ」
「よろしいのですか?でも…」
「俺は恋焦がれる娘の味方だよ」
と、下手なウィンクをすると商人らしき男はマイに一つの袋を手渡して去っていった。
マイは首を傾げ、呟いた。
「…恋焦がれる…って何ですか…?」
こうして、一人でアクセサリー作りを開始するマイ。
しかし、一つの問題点があった。
彼女は
……不器用なのである。
はたして貴方は黙って見ていられる事が出来るか!
街中。
アクセサリー材料を御丁寧に頂いたマイは、それを大事そうに抱えながら壁伝いにゆっくりと歩いていた。
これを落としてはいけない。これを落としては申し訳ない。これを落としては…。
そう心の中で繰り返し呟きながら。
「うわっ!?」
「きゃっ…!」
目の見えないマイの事だ。何時かはこうなるとは分かっていた。
ドサリと言う荷物が落ちる音。そしてその後に聞こえた悲惨な音。
物が潰れるようなグシャリという音。
マイは少し愕然としていたものの、先に謝らなくては!と思い直す。
「す、すみません!!大丈夫でしょうか・・・!?お怪我はございませんか!?」
しかし、マイの向いている方向は壁。
ぶつかってきた相手、兵藤・レオナは苦笑を浮かべながら立ち上がった。
見下ろすと、其処には潰れた荷物の残骸。
・・・あっちゃぁ・・・という顔をするレオナとは違い、マイは必死に壁に謝っている。
「ボクはこっちだよ・・・。大丈夫、ボクは怪我してないよ。それよりキミの方は大丈夫?怪我はしてない?」
「あ、あら・・・?声が此方から・・・此方にいらっしゃるのですね?す、すみません。私に怪我はないと思います、痛みもそんなにありませんから!」
「怪我はないと思う・・・?」
レオナの頭の上には?マークが三つほど並ぶ。
レオナはじーっとマイを観察してみると、マイの閉じられた瞳にやっと気付くのである。
この娘には光がないのだという事を。
「あー・・・悪い・・・これ、キミの荷物・・・?」
「え・・・!?ま、まさか・・・?」
「潰しちゃった・・・」
「あ、あぅぅぅ・・・アルベルト卿へのプレゼント・・・・・・」
「え・・・誰かのプレゼントだったのか!?悪い!ボクも手伝うから!ボクは兵藤レオナ。キミは?」
「マイ・・・マイ・ランフォードです・・・」
マイは既に泣きそうな声だ。
その声に罪悪感を感じたレオナは全面的にマイを手伝う事にした。
「しかし、アルベルトか。ボクの友人と同じ名前だなんて偶然だなぁ・・・」
「そうなんですか?同じ名前の人だなんて、ホント偶然ですねぇ・・・」
「しかし、この潰したたのもあるし・・・どうしようか・・・このレアメタルで知恵の輪とか・・・」
「でも、それじゃアクセサリーじゃないです・・・」
「ブレスレットとかはどう!?」
「廃材ですと、強度が少し心配ではあります・・・」
マイがそう言うと、二人はうーんと唸り悩みはじめた。
そんな時である。一人の女性がそんな2人を見てあら?と声を出す。
どうやらその女性には其処に知り合いの女性がいたようだ。
「あら、レオナさん?何をしているの?」
「あ・・・それが、この人のプレゼント壊しちゃってさ・・・。それでボクが手伝う事になったんだけど・・・」
「なるほど、いい案が浮かばないのね?」
「・・・御名答・・・」
「レオナ卿、知らない匂いのお方がおられるのですが、何方様・・・ですか?」
「自己紹介が遅れたわね。私はジェミリアス・ボナパルト。其処のレオナさんの知り合いよ」
ジェミリアスがそう言うと、マイはレオナの知り合いという事であってか警戒心を解いた。
やはり最近人見しりが激しくなってしまっているようだ。
「で?誰にプレゼントしようとしているのかしら?」
「アルベルトっていう卿なのです・・・!記憶のない私を守ってくださり・・・挙句の果てには振り回してしまって・・・だから、その・・・」
「なるほどね。貴方は盲目みたいだし・・・そうね、ミサンガなんてどうかしら?掴んでいる紐さえ間違えなければ何とか作れるし。色毎の端に形の違うビーズを着けて編めば、盲目でもいけるわよ?レオナさん、手伝ってあげて」
「あ、あの・・・この星の石も・・・つけたいのです・・・。これは絶対に・・・つけたくて・・・」
「ならそれを真ん中にこうやって通して・・・♪」
レオナがマイの手を優しく掴んで、糸を持たせ、石をゆっくりと通させる。
その石は今時珍しい、蒼く済んだ石だった。
ジェミリアスはそれが珍しいものだと気付いていたみたいだが、何も言わず二人の作業を見守っていた。
そして、彼女にアルベルトの母である事も告げず。
一つ一つビーズをつけ、編まれていくミサンガ。
其処にはマイの祈りと想いが込められていた。
無事を願う祈り。そして……。
半分まで編めた頃には、マイも少し疲れたようで一息ついていた。
「大変そうね、大丈夫かしら?」
「は、はい!なんとか・・・!」
「・・・形は少し歪だけれど、大丈夫。上手か下手かではなく、こめられた想いで決まるのだから」
「そうだよ!そのアルベルトってヤツも分かってくれるよ!ほら、もう少し頑張ろう!」
「は、はい!レオナ卿、ジェミリアス卿・・・ありがとうございます。私、頑張ります・・・。初めて一人で決めて・・・初めて一人で・・・作るんですもの・・・」
その言葉は、マイにとっては辛いものだったろう。
何か事情がある事ぐらい、2人には察しがついていた。
きっと、辛い何かがあったのだろう。
・・・。
ようやくプレゼントが出来た頃にはもう夜になっていた。
そして、街にはフラリと出ていってしまった母親、ジェミリアスを探しにアルベルト・ルールは出かけていた。
「ったく・・・何処にいったんだ・・・?」
「マイ、出来たじゃん!」
「ホント、ですか?」
「えぇ、綺麗に出来ているわよ、これで喜んで貰えるといいわね?」
聞き覚えのある女性の声。
そして、其処には放って置けない一人の女性の声も・・・。
急いで声の方へいってみると、其処にはレオナ、ジェミリアス、そしてマイがいた。
「アール!どうしたんだ、こんな所まで?」
「人探しだよ。・・・どこいったかと思ったらここにいたのか・・・」
「ふふ、ごめんなさいね。でも、面白いものを見つけてしまったから、つい協力してしまってこの時間よ」
「・・・?この匂い・・・アルベルト卿・・・?」
「ん?アールの事だったのか、アルベルト卿って?」
「は、はい・・・」
「マイ、まだ、カイルは見つからないのか?」
くしゃりとマイの頭を撫でながらアルベルトは問うた。
その瞬間、マイは少し暗い表情で俯いた。
これはどうやら見つかっていないようだ。
「まだ、カイルを避けてるのか?」
「そんな事・・・。カイルを探しているのは確かです。確かなんですけど・・・先にこれを貴方にお渡ししたくて・・・」
刺し出されたのは少し歪ではあるが蒼い星の石とビーズで彩られたミサンガであった。
アルベルトは目をぱちくりさせて、ミサンガとマイを交互に見つめた。
「貴方は、私の記憶がない間、私を守ってくださいました。そして、私の我侭につき会ってくださいました。だから・・・だから、これを。これだけは、貴方の手元に、と・・・」
「マイ、ありがとう。大切にするよ!」
「必ず、身に着けていてください・・・そのミサンガには・・・。・・・いえ、なんでもありません。・・・レオナ卿、ジェミリアス卿、ありがとうございました。おかげさまで助かりました」
「いいんだよ、別に♪アールもよかったね♪」
「そうね、私としては愉しめたもの。此方こそありがとう」
「マイ、キミはこれからどうするの?」
「私には探し人がいるので・・・これにて失礼します。貴方達にも、御加護がありますよう・・・」
「見つかるといいね、キミの探し人♪」
「はい・・・本当にそう願います。いやな予感がして、ならないから・・・」
「マイ、俺は何時でも手伝うからな?何かあったら・・・!」
「これ以上は迷惑はかけれません。・・・お別れの前に、私もアールと呼んでいいですか?」
「・・・あぁ、いいぜ」
アルベルトがそう言うと、マイはやんわりと微笑んだ。
まるでありがとうと言わんばかりの笑顔で。
「・・・それでは、レオナ卿、ジェミリアス卿、アール。・・・また何時か、お会い出来る日を・・・」
そう言い残すと、彼女は夜の闇へと消えてしまった。
テレポートしたのだろう。あの様子だとカイルの居場所は掴んでいるように見えるだろう。
「アルベルト、彼女は一体?」
「可哀想な子、とは言わない。ただ、放っては置けない子さ。・・・ミサンガ、大切にしないとな・・・」
「そっか・・・あの子、何か背負ってるんだね・・・」
「とりあえず私達も戻りましょう、寒いわ」
そう言うと、ジェミリアスとレオナは街の中へと歩きはじめた。
アルベルトも後ろを追うが、暫し立ち止まり彼女が消えた場所眺めて呟いた。
「マイ、また何時か会えるさ。あんな占い師の言う事・・・信じてないから、俺も・・・」
「いいの、レオナさん?あの子の事・・・」
「いいの、いいの!なんか事情あるみたいだしさ!」
「・・・そう。ならいいんだけれど、あの子には確かに女友達が多いけれど、あそこまで不思議な子は初めてだわ」
「・・・・・・?」
「嫌な胸騒ぎがするわ。・・・気の所為だといいのだけれど・・・」
夜空に一つ、流れ星が落ちた。
不気味なまでに静かな夜。
それは、嵐の前の静けさだという事を誰も知らない・・・。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
【0552】アルベルト・ルール/男/20歳/エスパー
【0536】兵藤・レオナ/女/20歳/オールサイバー
【0544】ジェミリアス・ボナパルト/女/38歳/エスパー
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、神無月鎌です。
この度は御発注、ありがとうございました。
こんな感じの文章になってしまいました・・・。
私のヘタレ具合、直りませんね・・・精進致します。
アルベルト、レオナ、ジェミリアスをうまく書けていたらいいのですが
少し不安です・・・。すいません、こんな短くて・・・(汗)
多分、次はカイル路線を出していくと思いますが
マイのもぼちぼちと出して行く予定です。
プレゼントを渡せた事でマイも満足したことでしょう♪
それでは、またお会い出来る日を・・・・・・。
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