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都市マルクト【整備工場】オーバーホール
ライター:有馬秋人
装備の手入れは生き残りの必須条件だ。いざって時に、武器が壊れてましたじゃ、命が幾つあっても足りないからな。
だが、素人が弄り回してたんじゃあ、限界もある。たまには、本職に見てもらうのも必要だ。
それに、整備や手入れですまない、ぶっ壊れた装備は本職に修理してもらわなきゃならん。
サイバーなんて、傷一つ直すにも修理が必要だし、年に一回はオーバーホールが必要だって言うじゃないか。戦場じゃ頼もしいが、私生活じゃ大変だな。
さて、整備工場へ行こうか。あそこで、装備の修理や整備をやってもらおう。
* * *
この思いが伝わっていないのは気付いていた。
だから、近づけない。
名前を呼んで欲しいのに、相手はけしてこの身の名を呼ばず、別の記号を叫ぶ。
囁きでもいいのに、声高に言って欲しいなんて思っていないのに。ただ、そっとでもいいから笑顔で呼んで欲しいだけだ。
世界の中心は相手だけだ。世界は相手だ。自分の世界は、全て相手を基本にして構築されている。自衛と同じくらい本能に根付いているのは、守りたいという切望。
傷ついて欲しくない、悲しんで欲しくない。笑っていて欲しい、そして少しでいいから、その笑顔を自分にも見せて欲しい。それだけだ。それを思うだけで生きていけるし、強くもなれる。
だけど会うたびに、相手は痛みを耐えるような顔をして。
どうしていいのかわからなくなってしまう。
エノア・ヒョードルは慣れない義体で鉄材の山に座っていた。いつでも飛び出せるよう片足を立てて、見据えるのは見慣れた義体。過日受けた破損が少しずつ消えていくのを黙ってみている。ある程度までなら自分で治せもするが、ここまで壊れたのは久しぶりで技師に頼むしかなかったのだ。
消えていく傷を見るということは、自らの義体を観察している事とイコールで、どうしたってその姿形を確認することになっていた。兵藤レオナそっくりに作られた、エノアの体。自分だと分かっていてもあの姿に近しいと思うだけで怪我が出来なくなる。レオナ自身の義体はどうだろう。きちんと整備を受けれただろうか。置き去りにしてしまったけれど、あの抹殺対象たちはきちんと連れて行ってくれただろうか。
いつもであればそこまで確認して離れたのに、義体の破損状態の悪さに直後の離脱しか選べなかった。それが酷く苦い。無意識に握っていた拳を解き、何気なく視線を転じたエノアは目を見開いた。見覚えのないオールサイバーがひょこひょこ近づいてくるのが見えたからだ。近づいてる、ではある。けれどそれ一直線ではなくて、物見遊山のこどく視線を揺らし、あちらこちらに顔を突っ込んでいるような動き方で。
「レオナ?」
全く違う容姿なのに何故かわかってしまった。オーバーホール中で代用義体に入っているのだろう。いつもは全く違う姿形で別人そのものだ。それでも分かるのはいつも見ていたからから。
躍動感のある足取りと、働く技師たちと会話して、見せた屈託のない笑顔。それが決定打。
義体が変わってもあの笑みだけは変わらない。太陽のように周りを明るくしてくれる。惹かれる、心躍る、満面の笑顔。
ぼうと見ていたエノアは鉄材の一つが転がる音に我に返ると、自分も一つの鉄材だというような動きで滑り降りる。そのまま自らの義体のあるスペースに移動して、技師に修復に必要な時間を問う。半端でもいいから動かしてもよいかと言う問いかけに、否定を示され目を眇めた。ここでこの技師を殺して出て行ってもよいが、今後何ががあったときに技師たちに逃げられるのは困る。そして相手と同じように自分も代用の義体だ。上手く誘導できればばれずに済む。
何よりも。
「少しは、近い」
傍に居られる。たとい少しの時間でも。
僅かな時間で誘導プランを練ると、エノアは頷く。真っ直ぐにレオナによっていく。いつもであれば、気付いた相手は痛い顔をして自分の記号を怒鳴るけれど。顔を上げた相手は、焦がれていたあの笑顔で楽しそうに口を開いた。
「君だれ?」
「……」
「どうしたの、ここに居るってことは技師かな、でも体オールサイバーだよね。ッてことは、今メンテの最中?」
矢継ぎ早に問いかけられて、何から応えればよいのか分からなくなる。エノアは上手く動かない表情に苛立って、それでも次に言われた言葉に頷くのに成功した。
「ボク今すごく暇なんだけど、君は? 暇なら遊ぼうよ」
「……ああ」
零した声と同時に頷けば、相手は零れるような笑みを見せてくれた。嬉しくて。
「エノア。エノア・ヒョードル」
淡々とした声音で名を名乗った。気付かれるかもしれないという刹那の危惧はすぐに払拭される。
「ボクはレオナ。兵藤レオナだよ。なんかボクたちの名前似てるね」
いい名前だよと首を縦にする姿に、よく分からない感情がこみ上げたが、不快ではなかった。
これは本当の肉体ではない。それは確かにそうで、その気になってしまえば全てを変えてしまえるものだ。オールサイバーにとっての肉体論は個々で変わってしまう。ただ厳然たる事実として外観だけで個人を特定すると足元を掬われる可能性があるということだ。思い切ってしまえば全てを変えることが出来るのだから。
ヒカル・スローターは目の前の義体を凝視せずにはいられなかった。保存状態は悪い。破損している箇所が目立つ。額の裂傷なぞ人工皮膚が完全にめくれていた。もし刃物で被った傷であったなら、そぎ落とされていたかもしれない。そんなことを思わせる義体だった。
どこからどう見ても、それはレオナそっくりの外観で。そのレオナの義体自体が正反対の場所でオーバーホール中だ。これではない。全く同じ容貌の義体が存在していると知っている。この世界でたった一つだけ、寸分違わず同じ造作、同じ外見、同じ容姿のオールサイバーが存在している。これが、それだというのだろうか。ヒカルが真横に立っても反応を示さないところから考えるに、存在自体は代用義体でこの場を離れているのだろう。周囲に害意がないことから、この近辺にもいないとわかる。
「解せない」
ぽつ、と零された言葉は冷静で。激情なぞない。ヒカルの視線は丁寧に上から下まで観察していた。
「あのノスフェラトゥが何をしてこうも傷ついておる」
仲間数人がかりでもここまでの怪我を負わせることは出来ていなかった。戦闘能力がずば抜けているのは確認せずともわかっている事実だ。しかもこのタイミングで。
パズルのピースのようだ。まだ何かが足りていない。無断で飛び出したレオナ。返り討ちにあったと思しき怪我。けれど敵は倒れていた。レオナのブレードで。ブレードは倒れるレオナの横に落ちていた。いな、置かれていた。置いたのは誰だ。レオナは倒せなかったと言っていた。では倒したのは誰だ。
このタイミングでこの義体がここにある。
この事態をどう解釈したらよいのだろう。ただの偶然と片付けるべきか否か、いやこれが偶然であったとしても必然だったとしても、だ。
自分はこの義体を処分してしまうべきだろうか。
この一点に全てが集約されている。
見下ろすヒカルの目が狭まり、氷塊のごとき光が宿る。星霜のように凍えて暗く、冷静に過ぎる眼差し。
「………」
逡巡する時間は長いようで短いようで、呼吸を何度数えた頃合なのか。ヒカルの手が銃把を握り、ゆっくりと引き抜き義体にポイントする。呼気を一度、吸気を一度。瞬きを一度。暗転する世界にしたがって、もう一度息を吐き出す。
「私の仇であるなら、迷いはせん」
自分の仇であるならば、これほど迷わなかっただろう。抜け殻に用はない。これが相棒の仇だと思うからこそ、銃を抜かずにはいられなかった。いまこの場で体を砕いてしまえばよいのではないかと思ってしまう。相棒をみすみす危険に晒したい人間がいるはずもなくて。
ヒカルは鮮やかな手つきで銃を仕舞うと、義体から離れた。距離をとる足取りに躊躇いはない。いつかどこかでこの選択を後悔する時がくるかもしれない。悔いるのはその時でいい。
そう決めたヒカルは目の中に残っていた凍える星の名残を消し去って、元気すぎて義体から追い出されてしまった相棒探しを再会する。原因だった地点から離れるつど体温が平常値に戻っていくような感覚だ。さて、と現在の相手の姿を思い描きながら見回すがそれらしい姿はない。あの中身であの外見ならば確実に目立つと踏んでいたのだが、いったいどこまで行ったものやら。
がり、と親指で額を掻いていると温和な声がかけられた。
「あら、レオナさんは」
「義体の方か?」
「義体の方?」
どこか人を落ち着かせる声音だ。その持ち主は小首を傾げてしまった。ヒカルはああと頷いて、声の主である瑠璃垣和陰を見る。
「少し目を離した好きに技師の逆鱗に触れるようなことをしたらしくてな、代用の義体に移されて追い出されよった」
「…らしいわね」
あらあらと困っているようには見えない笑顔で首肯する。
「すまんが捜索の手伝いを頼めるか」
「いいわよ、外観データを頂戴」
和陰は乱雑につまれていたブロックの上に携帯していたPCを広げる。ヒカルは同じシリーズだと技師に見せられたデータを思い出しつつ口にするが、全てを言い終えたあとに一拍おく。
「どうだ」
「こういうレオナさんもいいかもしれないわね」
「本当にそう思うか?」
「ええ」
薄気味悪そうなヒカルとは対称的に、和陰は僅かも怯んだ様子がない。思い描いているのか実に楽しそうにキィを弾いた。
「………私はさほど見たいとは思わんがな」
長い髪をリボンで飾って、レースやらフリルやらが似合うようなお嬢さん的容姿なのに、中身がレオナ。どれだけ義体を酷使する動きをしているのか、想像するだに怖ろしい。ギャップのあまりに外見に夢見た人間が激しく落胆すること請け合いだ。それともマニア受けするだろうか。
「ああ、服装はカーゴパンツにタンクトップだ」
「せっかくだから着飾ればいいのに」
「無茶を言うな」
「そうかしら」
ヒカルは無理だともう一度付け足すと、視界の隅にかかった存在に視線を転じた。
「レオナが仮の義体で出て行ったって聞いたけど、どこなんだ」
「おぬしも来たか」
「こんにちは」
ヒカルが腕を組み、和陰がにこりと挨拶する。露骨に問いかけを無視された形だが、アルベルト・ルールは特に怒りを感じたようすはなく、挨拶の言葉を返す。
「まだ見つかっておらん。そっちはどうだ」
「てっきりヒカルと一緒に追い出されたと思っていたからまだ探してない。探そうか」
「ああ、頼む。全くあやつは…この間で懲りたかと思えばすぐこれだ」
なんとのためにあの幼馴染が怒ったと思っているのか。できることならレオナを甘やかしたいだろう相手が、だ。
不機嫌に歯をかみ合わせるヒカルに、アルベルトは肩を竦め、和陰は微苦笑を零す。大人しくしていろと言われて大人しくしてくれるのならば、自分たちはここまで惹き付けられはしない。無謀でも活き活きと動き回っているレオナだから、彼女らしいと思うのだし、手助けしたいと思わせるのだ。
和陰のPCを覗き込んだアルベルトは、打ち込まれた外観データに口笛を吹く素振りを見せる。
「抱き心地ちよさそう」
「おい」
ヒカルが半眼になってアルベルトを睨むが、さほど気にした様子もないアルベルトが撤回することはない。
「居そう?」
ヒカルの冷たい視線に構うことなくキィを叩く和陰に問うが、和陰は唇に指を一本当てて、明確な答えを返さない。
「この付近には、いないみたい。技師さんたちが個々でつけているカメラのネットワークを借りたのだけど、何箇所かは手ごわくて映像もらえなかったわ。だから、いない「みたい」なの」
「俺がやってみてもいいか?」
「ええ、お願い」
和陰とアルベルトの方法は違う。前者が圧倒的に技術なのに対し、後者は能力だ。どちらが有利とか不利とか、どちらが優れるとか劣っているとかいう事でなく、適材適所と言う言葉がしっくりとくる。
無駄口をぴたりと止めて、集中しているアルベルトを邪魔しないように離れた和陰は同様にしているヒカルを気付いて微笑む。
「心配よね」
「全くだ」
否定するかと思えたのに、あっさり頷かれて少しだけ驚愕がある。けれど上手くその驚きを隠して、アルベルトの探索が終わるのを待つヒカルの肩に手をおいた。
「大丈夫よ、レオナさんだもの。何があっても切り抜けられるし、何も起こらないわ」
オーバーホールの点検中に何かが起こるなんて確率は低いだろうと宥められて、ヒカルは喉までこみ上げた言葉を戻すのに必死になる。今先ほど、見かけた義体の存在が不安と懸念を噴出させているのだと、怒鳴りたくなる思いを塞いでしまう。確たる理由を提示しない、できない不安は杞憂にしか映らない。それが分かっているのから、じっと唇を噛むに止めた。
近くでヒカルが葛藤している間、アルベルトもまた葛藤していた。見慣れた姿ではないものの、くるくるとよく動く表情からレオナはすぐに見つかっていたからだ。けれどその近くにあるもう一つの義体が、アルベルトに発見の声を上げさせるのを躊躇わせていた。あの表情の乏しさが気になるのだ。レオナとは対照的にさほど動かない唇。けれど目だけは必死になってレオナを見ている。言うことをじっと聞いて、話の合間に浅く首肯して。どこか、満足そうに、幸せそうに近くに座っている。逸れていた子どもが親しい友だちに会えたときのように、縋るような様子で。
アルベルトは不意に浮かんだ考えを打ち消して、無理に笑みを浮かべた。馬鹿げているかもしれない。あれがエノアであるという証拠はどこにもないのに、どうしてだか直感してしまった。間違いかもしれない、あっているかしもれない。間違っているならいいが、もしもあたっていたのなら、この二人を連れて行くのは不味い。エノアにレオナを害する意志が少しでもあるのならアルベルトとて躊躇いはしなかったろう。けれど、あの様子では害意なぞ微塵もなく。
「アルベルト?」
「どうかしたの?」
停止している理由が集中のためだけではないと気付いた二人に声をかけられて、漸うと息をついた。
入れ違いになるかもしれない。そうなら何も問題ないだろう。
話題は取りとめもなく続いていた。レオナの身の周りの騒動から始まり、幼馴染や恋人未満の優しい相手のこと、怒ると怖いけど頼りになる相棒のこと、それだけでなくて。此処で出会った色々な人たち。
他愛のない事件のことや、日々のこと。口げんかしたり悪戯が過ぎて追いかけられたり、目まぐるしく変わる日々にどれだけ幸せを覚えているかということ。
レオナのそんな話題を相手は言葉少なに聞いていた。どういうタイミングだったのだろう。それまで楽しそうに話していたレオナの表情が一転して強張る。エノアが訥と投げた言葉が切欠だったのかも知れない。
生きるのは楽しそうだな、と。心の底から思って、うきうきしている相手を見るのが嬉しくて口にした言葉。それがレオナを固まらせた。
「……ああ、楽しいかもしれない」
冷えた声だ。エノアは急激な変化に戸惑って、相手を覗き込む。そんなエノアにやんわりと笑んで、レオナは立ち上がる。見下ろす。
「楽しいよ。楽しい。でもボクは……」
声が掠れていた。
問いかけられて不意に意識が覚めたのだ。現実を見ろというように。無意識に下層にしまいこもうとした記憶が、揺り起こされて急浮上する。
大切なものは増えていく。この両手で抱えきれるかどうかも分からないまま、守りたいものはどんどん増えていって、このまま立ち止まらずに居られるかどうか不安になることもある。
心の真ん中。魂を薄皮一枚剥いだ内側、そんな、隠れているけれどすぐに知覚できる位置にある、混沌とした復讐の炎は消せないのに、その衝動に身を任せるだけではもうダメな気がして。
守りたいと思うのは本当だ。大切だと思うのも本当だ。優しくされるたび優しくしてあげたいと思う。自分の無理無茶に付き合ってくれるたび、嬉しくなる。同じ時間を共有する存在が居ることを幸せに思う。培っていく時間が増えれば増えるほど、その断絶が怖くなる。怖くて足が竦む思いに駆られることもあるけれど、やっぱり嬉しくて傍で騒ぎたいとし一緒になって遊びまわりたい。
その思いに嘘なんてないのに、思い出すたびに心が冷える。
激情の炎が怨嗟に膨れ上がる。
マイナスの熱量が感情を凍結して砕いて壊す。
全てはたった一つの言葉に集約されていた。
口にする時はいつだって万感の思いが込められている。
善も悪もなく好いも厭もなく、中庸でもなく、全てが混ざり混ざって形を成している。そんな感情が込められている。たった一つの名前。
その言葉を取るか、仲間を取るのか、どうしたって天秤にかけてしまう。仲間の安全を考えるならば、言葉を捨て去るしなかい、そんな気がしてならない。
ノスフェラトゥ。
幾度呟いたことだろう。幾度叫んだことだろう。明けても暮れても寝ても覚めても。義体の軋みを感じるつど、生身ではないという実感を得るたび。
あの存在を思わずにはいられない。それだけが全てになる。
無言になったレオナを見あげていた相手が、口を開く。
「笑って欲しいだけだった」
唐突な言葉が自分に向けられたものかと焦り、我に返ったレオナだが、エノアの表情にすぐ真面目な顔をしてしゃがむ。
「守るのがこの自分の存在意義なんだ……傍に居られなくても、笑っていてくれたらいいと思っていた」
少しだけ長い言葉。その中に込められた切ない感情に気付いて、レオナは手を伸ばした。そっと頭を撫でる。頬は乾いていて涙が流れる様子は欠片もないけれど、表情は一定のままで歪んだりすることはなかったけれど、酷く苦しんでいる気がして。慰めてあげたいと思った。
エノアは髪を滑っていく手の感触に、ほんの少しだけ目を緩める。
「だけどどうしてかな、レオナの話を聞いていたら、それだけじゃ足りなくなった」
レオナの傍に居て笑って欲しい。はしゃぐその傍に居たい。近く近くちかく。手を伸ばせばすぐ届く距離で。手を伸ばしても届かないのはもう嫌だ。
もう、と言葉を留めたエノアの髪を撫でて、レオナは柔らかく笑んだ。今日はじめてあった相手が誰を指してそういっているのは全く分からない。けれど、切実な思いだけは伝わってくる。
「いつか、伝わるといいね。君の想いがさ」
エノアははっと目を見張り、すぐに閉じて頷いた。伝わるといい、たとい今伝わらずとも。いつか。この相手に伝わるといい。
「……傍に居たい」
「うん、そうだねぇ」
自然に零れた言葉はやはり相手に伝わらなかったけど、エノアは落胆せずに頷いた。撫でてくれていた手をそっと外して、見晴らしのよい工場すみから立ち上がる。自分のオーバーホールはそろそろと終わる頃だろう。時間稼ぎは済んでいる。それに、これ以上は間違いなく、この相手の周りを賑やかにしている者たちが探しに来るだろうから。
今はまだ、居られないけれど。
「行く」
「うん、そっか」
また会おう、そう手を振るレオナに、エノアはゆるりと笑みを浮かべて見せた。
2006/06/..
■参加人物一覧
0536 / 兵藤・レオナ / 女性 / オールサイバー
0540 / 瑠璃垣・和陰 / 女性 / エキスパート
0541 / ヒカル・スローター / 女性 / エスパー
0552 / アルベルト・ルール / 男性 / エスパー
0716 / エノア・ヒョードル / 女性 / オールサイバー
■ライター雑記
前回からの引き続きです。有難う御座いました。
どうにもスポットライトはエノア嬢に当たっているようです。いえ、ええと。
それぞれの思惑が綺麗には反映できなくて申し訳ないです。もっと精進したいと思います。頑張ろう。
この話が僅かでも娯楽となりえましたら嬉しく思います。
今回はご注文有難う御座いました。
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