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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


「マスター! ちょいかくまえッ!」

とある街の酒場に、いきなり入ってきた黒服の男。
漆黒の髪に真紅の瞳という怪しさ爆発の男。

「よぅ、カイル! そんな慌ててどうしたァ?」
「どうした? じゃねぇっての! いいからかくまえッ!」

無理矢理押し入ったカウンターの下。
彼が隠れた後にどたばたと2人の女が入ってきた。

「オヤジ! ここに変な狐目の偉そうな男来なかったかッ!?」
「へ? カイルの事かい?」
「そう、その人ですわ! 来ませんでした!?」
「…一体何があったんだい、お嬢さん達?」

聞いた話。
簡潔に言うなればダブルブッキング。
しかも『デート』の。

「で、お嬢さん達はカイルを追ってるのか…」
「見つけたら絶対アタシの婿にするんだッ!」
「何を言います!? 私の婿に決まっているでしょう!?」
「…なんだ、大半アイツの自業自得かよ…」

酒場のマスターも呆れ顔。
片方の元気な娘はマオ。とても活発で武術に優れているお転婆娘。
もう片方はお嬢様で箱庭育ちのルーシェル。優しいのだが嫉妬深い。
対照的な娘2人をブッキングさせた事になる。

「じゃあ先にカイルを見つけた方が婿にする! 文句ないわね!?」
「えぇ、ありませんわ! 絶対に見つけてやるんですからね!」

乙女達が走り去った後。
ひょっこり顔を出すカイルを見て、マスターはジト目をおくった。

「やっといったか…」
「お前、自業自得じゃねぇか! そんなんでうちを巻き込むな!」
「仕方ねェだろ!? こうやって口説いて金稼ぐしか旅費がだな…!」
「お前が探してる女にバレても俺は弁護しねぇぞ!?」

ピキリと固まった。
そう、彼の相棒は女。しかも自分が「守りぬく」と約束した。

「ヤバイ…バレたら多分俺……こ、殺されるわ……」

カイルがそうしている間にも、町中にカイルの似顔絵いりの指名手配のような張り紙が貼られていった。

こうして、一つの街を巻き込んでのドでかい鬼ごっこが始まりを告げたのである…。


「結局アイツはなーんにも分かっちゃいないんだな、女心」

騒ぎを聞きつけて駆けつけたアルベルト・ルール。カイルの所業を聞いて遠い目をしていた。

「流石貴方の友達、といったところなのかしら?」

苦笑を浮かべるジェミリアス・ボナパルト。しかし今回は意外にも楽しそうに笑っていた。

「何で俺なのか分かりませんが、暇つぶしにはなりますかねぇ……?」

キリル・アブラハムは溜息しかつけない状態。ジェミリアスに言われてついてきたはいいが、その騒動は何とも青春に満ちたものだった為だ。

「とにかく、カイルを探さないとな。俺は運がよければそのルーシェルって子に接触してみるよ」
「それじゃ俺はマオさんですかね…あまり説得は…なんですが」
「じゃ、予定通りに頼むわね? ま、修羅場は大事という事で、やっちゃってもらいましょ?」

ジェミリアスの怪しい笑みに恐怖を覚える二人なのであった。


華やかな町の中。
其処に誰かを探している女性の姿があった。
アルベルトとしてもその女性が結構気になっていたのだが、彼女がルーシェルという確証はない。
しかし、話かけてみないとどうかも分からないのは事実。
だからナンパ法で攻めてみようと試みた。

「カイルを探しているってのは、君?」
「はい、そうですけれど……御存知なんですか?」
「俺も奴を探しているんだよ。俺、奴の友達♪」
「へぇ、お友達なのですか。それでは、彼の居場所とかは?」
「残念ながら。俺も探してるからさ」

苦笑を浮かべるアルベルト。
その答えを聞くと、ルーシェルも残念そうに溜息をついた。
友達であるというのだから知っていると思ったからだ。

「なんでカイルを探してるんだ?」
「其れは勿論。私の婿になって頂きたいのです」
「カイルの何処に惚れたんだ?」
「あのキリッとしたキツイ目。ワイルドそうじゃありません? それにあの鮮やかな動き…私、一度彼に助けてもらった事があるんですの」
「へぇ、あのカイルが人助けねぇ? でもアイツ、変な喋り方とかしてるじゃん?」
「まるで何処かの貴族様のようなお話の仕方だったのを覚えておりますわ」

嬉しそうに話すルーシェル。
そんな彼女に、カイルを諦めさせるのは少し心苦しいと感じるのだが彼には『彼女』がいる。
その為には諦めて貰わないと困る。っていうか困るのはカイルだから問題はないのだが。

「男なんて追い掛けると逃げるもんだよ。やっぱり最後は、本気で惚れた女の所に帰るもんだからさ」
「そうなのでしょうか? 確かに私達が探している間、カイル様を一度も見かけた人、いないみたいですし……」
「あいつには今危険な仕事に関わっているからな。ルーシェルにマジカイルが惚れているんだったらさ。そいつが終われば、戻ってくるだろうし。ルーシェル程の美人だったらさ、カイルより良い男が見つかると思うぜ?」
「あら、美人だなんて……でも、カイル様は本当に危険なお仕事を?」
「あぁ。かーーーーーなり危険な仕事だな」

アルベルトが少し真面目な顔になってそう告げる。
そうしておけば、少しは真実みが出るだろうから。

しかし、彼等の向かっている先はアルベルト達の集合現場なのであった。


一方キリルの方は少し手間取っていた。
何故ならそのマオという女性。
かなりのお転婆だったのだ。
それもそのはず。彼女は武術に優れている為、キリルが雇ったチンピラも激殺してしまった所為である。

「…なにはともあれ話すきっかけは出来ましたかね?」
「フンっだ! おとといきやがれっていうのさ!」

あっかんべーをしているマオに対し、キリルは溜息をついて彼女に近づいた。
そして、肩をトントンと叩くと振り向くマオにこう尋ねる。

「貴方がカイルを探してるマオさん?」
「そーだけど? アタシになんか用なの?」
「俺もカイルさんを探しているんですよ。まぁ、そんなわけで力になれるかも、と」
「そうなんだ? それは助かるねぇ♪ よろしくね」

マオがにっこりと笑った。
どうやら完全に信用したようだ。キリルにとっては好都合。
後は彼女を待ち合わせ場所につれていけばいいだけ。

「そういえば、マオさんはカイルさんが好きなんですよね? どんな所が好きなんで?」
「強いとこかな、やっぱり! アタシ、こう見えても武術だけは人一倍でさ。カイルの戦うとこ一度見た事あるんだけど、すっごくてさー!」
「それで好きになった、と?」
「うんうん! やっぱり強い女には強い男! これだよね!」

…好きな事ばかり言う。
カイルはそんなに強くないのに。
たった一つの存在には……。


「で、そろそろ観念したのかしら?」

ジュミリアスがカイルの首根っこを引っつかんで問いかけた。
カイルはプラーンとされたまま、小さく頷いた。
カイルはジュミリアスに見つかり、逃げ回っていたのだがどうやらキツイお灸をすえられたようだ。

「アイツの名前出すの…ヒドイ…」
「貴方が抵抗するからでしょ? 修羅場は一度ぐらい体験なさい!」
「だからってアイツの名前出していいわけないだろうが!?」
「マスターの話だと、貴方彼女を守りぬくって決めたんですって? そんな貴方がこんな事してれば、それは裏切り行為よね? 同じ女としては、赦せないわね」

ジュミリアスがきっぱりとそう言った時。キリルとアルベルト、それぞれがそれぞれの女性を連れて待ち合わせ場所へとやってきた。
彼女等はカイルを見つけるとカイルの傍まで全速力で走り寄った。

「カイル! やっと見つけたよっ!」
「どういう事か説明してくださいますわね!?」
「あー……説明する気力もないんだが…」
「きっちり説明してもらいます!」
「説明して貰えるまで、絶対に解放してやんないんだからね!?」

まるで説教されているような光景。
そんな三人を遠巻きで眺めながら、アルベルトは小さく呟いた。

「俺も絶対ああいうミスはやめよ……」
「大丈夫だと思いますけどね。アルベルトには嬢ちゃんがいるし、鉄槌もあるし」
「そうね、私がいる間は絶対にそういう事はさせないから覚悟するのね」
「まぁ、俺は多分しない。カイル見て勉強したし、普段はそんな事ないし……でもどうやってあのカイルを捕まえたんだ?」
「彼女の名前を出しただけよ。ただそれだけ♪」

同類哀れむというか。見殺しというか。
結局カイルは3日後ぐらいに無事解放されたとアルベルトの耳に入った。

因みにジュミリアスはカイルが逃げる際、『彼女』の事を延々と語り聞かせ、更には嘘まで並べて服従させたという。
勿論、『彼女』はこんな事になっているとは知らないし、聞かされてもいない。
…ジュミリアスに弱みを握られる結果になったのだった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)       ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】

【0552】アルベルト・ルール/男/20歳/エスパー
【0544】ジェミリアス・ボナパルト/女/38歳/エスパー
【0634】キリル・アバラハム/男/45歳/エスパーハーフサイバー
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■         ライター通信                    ■
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どうもこんにちは。神無月鎌です。
なんか今回ばかり変な感じに書いてしまい、反省です(汗)
ジュミリアスが完全にカイルイジメしている様を書きたかったのですが
どうも思考が足りなくてこんな形に…。

次こそは真面目に弄りシーン書かせて貰います!
精進第一…orz

それでは、またお会い出来る日を。