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<アナザーレポート・PCゲームノベル>


ロジック:ただ、金庫を開けば良い。

□Opening
「やぁ、いらっしゃい」
 いつものように、暗い部屋を奥へと進んだ。そして、いつものように、ジャッジが笑いかけ軽く挨拶を交わす。
 しかし、若干いつもと違う気がして、ジャッジの後ろを見据えた。
「ああ、これね、金庫を導入したんです、ポイント表の管理にね」
 ポイント表……、それは『サイレント・パズル・ドア』にいつも飾られているはずのポイント表では無いのか? それを、何故、金庫を導入する必要があるのか。
 しかし、ジャッジは静かにほほ笑むだけ。
 金庫には、赤、黄色、緑、青、紫のダイヤルが付いており、数値は1〜5まで設定できるようだ。
 さらに、よく金庫を見てみると、何やら張り紙がしてある。

★ダイヤルを順番通り、数値を正しく設定しなければならない。
★ダイヤルの数値は、一つずつ違う。
★黄色は4番目に設定する。
★2番目のダイヤル数値は2。
★5番目のダイヤル数値は1。
★青は最初にダイヤルを設定し、数値は緑より1多い。
★赤の数値は4。
★紫の順番は2番目ではない。

 これは、つまり……。
「そうです、ポイント表を見るためには、このパズルを解かなければならない」
 ジャッジは、ただ静かに微笑み、金庫を一撫でした。
「ね? この部屋にふさわしい金庫でしょう?」
 そして、最後にジャッジの瞳が挑戦的に光る。
 あなたは、この金庫を開ける事ができるか?

□01
「初めまして、ジャッジさん」
 さて、暗い部屋の奥、カウンター越しにジャッジと向かい合ったのはスィーリン・ハルシャ。静かに椅子に腰を下ろし、口元にだけ笑みを浮かべジャッジを見る。
「お噂はかねがね聞いているわ」
 その言葉に、ジャッジはにっこりと笑顔を作り、有難うございますと静かに返事をする。
 スィーリンは、それからちらりとジャッジの手元にある件の金庫を確認し、片腕で頬杖をついた。
「ジャッジさんの思考を読めば答えは簡単にわかるけど……」
 そうなのだ。
 答えはすぐそこ、ジャッジの胸の中に有る。
 そして、スィーリンにとっては、それを見る事など造作も無い。
 ジャッジは、それを感じたのか、はっとした表情で後ずさる。その様子に、スィーリンは、くすりと笑みを漏らし肩を揺らした。
「ああ、そんなに警戒しないで、もちろんそんなつまらないことはしないから」
 片手で、ジャッジを呼び戻す仕草。
「こういうことはフェアに勝負しなくっちゃね」
 スィーリンの明るい声に、ジャッジはようやくほっと息を吐き出した。
「それでは、答えを聞かせてください」
 そして、求められるパズルの回答。スィーリンは、すうと気を引き締め、口の端を持ち上げた。

□02
「まずは提示されている条件でわかる場所から埋めていくわね」
 丁度、テーブルの上に適当なメモ帳を見つけ、すらすらとスィーリンは提示されている条件をまとめて見せた。

 ★1:青・?/2:?・2/3:?・?/4:黄・?/5:?・1

「見て、数値が4の赤は、三番目にしか入らない」
 スィーリンは、書き出した条件の上をなぞりながら説明をし、三番目をとんとんと叩いた。つまり、一番目は青と決まっている、二番目の数値は2。同様に、四番目・五番目もそれぞれ条件が定まっているので、ダイヤルの色と数値がセットになって入る場所は、三番目しかないのだ。
 頷くジャッジを横目に、スィーリンはさらに決定した条件を書き足す。

 ★1:青・?/2:?・2/3:赤・4/4:黄・?/5:?・1

「次に、緑より1多い青の数値、これは3になるわね」
 言いながら、既に決定している2、4、1の数値を指差し、青の隣に3を書き加えた。ちなみに、赤が4と決まっているので、緑よりも1多いと言う条件を考えると、青は5では無い。もし、青を5とするなら、緑が4になるが、4は既に赤と決まっているからだ。

 ★1:青・3/2:?・2/3:赤・4/4:黄・?/5:?・1

「自動的に、青より1少ない緑の数値は2となり、数値が2の二番目は緑になる」
 スィーリンは、呟き、すらすらとメモを埋めて行った。

 ★1:青・3/2:緑・2/3:赤・4/4:黄・?/5:?・1

「あとは余った部分を埋めるだけ」
 つまり、数値が空欄なのは、四番目の黄色のみ。これには、まだ出ていない5を当てはめる。同様に、五番目の色は紫に決まる。

 ★1:青・3/2:緑・2/3:赤・4/4:黄・5/5:紫・1

 最後に、スィーリンは出来あがったメモをひらりと持ち上げ確認し、そのままジャッジに手渡した。すなわち、スィーリンの回答は示された。

□03
「お疲れ様でした、いかがでしたか?」
 ジャッジは、答えを示したスィーリンに微笑みかける。スィーリンは、ふ、と一つ息を漏らし口元に笑みを浮かべた。そのスィーリンに向かい、ジャッジはすっと紙を一枚取り出した。
「では、僕のほうで用意した表を見てください」

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃赤|黄|緑|青|紫┃01|02|03|04|05┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃一┃×|×|×|○|×┃×|×|○|×|×┃
 ┃二┃×|×|○|×|×┃×|○|×|×|×┃
 ┃三┃○|×|×|×|×┃×|×|×|○|×┃
 ┃四┃×|○|×|×|×┃×|×|×|×|○┃
 ┃五┃×|×|×|×|○┃○|×|×|×|×┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛

 スィーリンは、その表を確認し軽く頷く。
「おめでとうございます、正解です」
 ジャッジも、彼女の正解を、心静かに祝った。

□Ending
「ヒントががあとひとつ少なくても解ける問題だと思うわ」
 全てが終わり、スィーリンは開かれた金庫を見て呟いた。ジャッジは、その言葉に、驚いたようにあらためて問題文を見つめる。
 それから、何度か頷き、唸り、ポイント表を片手に微笑んだ。
「なるほど、僕もまだまだ、スマートな問題作りを課題にしなければならないようですね」
 ご指摘有難うございます。
 ジャッジはそう言いながら、丁寧に頭を下げる。
「それほど深刻になるものでもないけどね」
 スィーリンは、その馬鹿丁寧な物腰に、ちょっとだけ笑いたくなる。
 口元を隠すように両腕で頬杖をつき、ジャッジのポイント表を待った。
「では、正解ポイント、特別ポイントをスィーリンさんに付加します」
 見ると、パズル・ドア・ポイント表にはいつの間にかスィーリンの名前も並んでいた。隣に、真新しいポイントが二つ並んでいる。
 それを確認し、スィーリンは今度こそ、にっこりと微笑んだ。
<End>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス 】

【 0782 / スィーリン・ハルシャ / 女性 / 25 / エスパー 】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、ライターのかぎです。この度は、ジャッジのパズルへお付き合い頂きましてありがとうございました。
 納品確認後、ジャンクケーブ内『サイレント・パズル・ドア』のポイント表も更新致しますので、ご覧下さい。『サイレント・パズル・ドア』では、またの挑戦をお待ちしております。

■スィーリン・ハルシャ様
 はじめまして、初めてのご参加有難うございます。そして、見事正解おめでとうございます。パズルは、いかがでしたでしょうか。簡単過ぎましたか? 作中で、ジャッジは表を持ち出しましたが、本当はスィーリン様の解き方の方がスマートで早いですよね。
 それでは、また機会がございましたら、よろしくお願いします。