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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


第一階層【居住区】誰もいない街
死してなお、守りしもの

橘真斗

 ここいら居住区は、タクトニム連中も少なくて、安全な漁り場だといえる。まあ、元が民家だからたいした物は無いけどな。
 どれ、この辺で適当に漁って帰ろうぜ。
 どうせ、誰も住んじゃ居ない。遠慮する事はないぞ。
 しかし‥‥ここに住んでた連中は、何処にいっちまったのかねぇ。
 そうそう、家の中に入る時は気を付けろよ。
 中がタクトニムの巣だったら、本当に洒落にならないからな。

〜暗礁〜
「ここが、噂の防空壕かいな……ほんにボロやなぁ」
 愛機である【ムーンシャドウ】のコックピットから防空壕を見てアマネ・ヨシノ(0637)はつぶやいた。無意識にスティックを握る手に力がこもる、少し湿り気が強い。
 先日のことだ。酒場にいるとき、たまに話していたにーちゃんがここの噂を確かめようとして出て行き、消えていった。
『レーダーには何も映っていないし、熱戦暗視カメラにも反応はないから、ステルスで潜んでいるってことは、ない、みたいね』
 音声端末からは今回の相棒(バディ)であるスノウ・ファーノ(0753)の途切れ途切れの声が聞こえてきた。ジャミングされているわけではないので、怖いのかもしれない。
「ドイツ第三帝国の落ち武者やから、どれも反応せんかもしれんな〜♪」
 けらけらと楽しそうに笑ってアマネは少しづつ防空壕の壁などを調べていった。
 するとひとつの端末を見つけた。アマネが降りて近づくと、その端末は起動した。
『ウェルカムトゥ【ラストバタリオン】……』

〜事実〜
『たしか、ドイツ第三帝国の最強歩兵部隊のことだったかな……あまり軍事には詳しくないからわからないけど』
 スノウはまゆをせばめて、右のこめがみをかいた。
「それなら、WW2のドイツ軍の格好をした人影っていう落ち武者の噂は
これのことみたいやね……。 外に出歩いているとなるとシンクタンクの可能性が
高いか」
 アマネがむぅと唸りをあげて答えた。ただのアトラクション用シンクタンクが犯人なら、戦闘能力はないはず。
 なら、どうして屈強のビジターが行方不明になるのか……。
 考えがまとまらないままのアマネを放っておくかのように端末はアトラクションの説明を述べていき、最後にこう締めくくった。
『最奥のヒトラーの宝と、連れ去られた仲間をもとめて、戦い抜け! Good Luck!』
 ゴゴゴゴという地響きとともに壁がギィギィと開き中へ進む通路が現れた。
「消えた人らはこの中につかまっとると……そういうわけやね」
 防空壕の入り口とは違った暗さを感じて、アマネは通路をにらんだ。
『機械が悪事を働くなんて……でも、それならとめなくちゃ』
 スノウも先ほどまでの不安げな表情が消え、凛とした顔で通路をみた。
「MSじゃあ入れへんし、うちらだけでいけるところまでいこか」
 了解とスノウは応じて、それを合図に二人は捜索の準備を整えていくのだった。

〜潜入〜
「こりゃぁ、完全にお化け屋敷やね」
 ペンライトで周囲を照らしつつ、アマネを先頭に中を進む。もともとはコースター系の体感アトラクションだったのだろう。今歩いているのはところどころ飛び出して脅かしていただろう人形の成れの果てが屍となってたたずんでいた。
「かわいそう」
 スノウは壊れた機械に撫でてそっと呟いた。アマネが見るにその表情は哀れみが漂っていた。
「ねーさんは機械が本当に好きなんやね」
 スノウの行動を見てアマネは思う。自分も確かに機械が好きではある。だけど、それは愛情というよりは利用できるオモチャとしてである。エスパーであり、生まれたときから機械をさわり、操ってきた。それが当然だったから、今のスノウのような想いがもてないのかもしれない。
 そうこうしているうちに、アトラクションの奥へ到着した。そこは鋼鉄の扉で閉じられ、IDを入力するテンキー端末がついていた。旧式のテンキーではあるが、ハッカーのアマネにはそんなことは障害にならない
「さっさと解除しよっと」
 ピッピッピッとタッチペンを自分のモバイルのディスプレイ上で動かし、できたプログラムをテンキー端末につないだ。
『ID入力完了……最終防衛プログラム、起動』
 端末からマシンボイスが流されると室内が息を吹き返したかのように光に満たされていく。アラートサイレンが鳴り響き、遠くでガシャンッと扉が閉まる音が聞こえてきた。
 そのとき、スノウはパウダーマガジンとリンクさせているレーダーをモバイルで見た。
「はめられたみたいね」
 そのモバイルのディスプレイをアマネにみせる。
 そこには光点が集まり、こちらに迫ってくる姿がうつっていた。

〜襲撃〜
 ピカッ!
 不意にライトが二人を照らし、すぐさま銃弾が二人に降り注いだ。
「か弱いレディーに向かって何するんや! ヒトでなし! 鬼! 悪魔!」
 ありったけの罵声をアマネは襲撃してきた人影に浴びせた。
「ハイル・ヒットラー! ジークライヒッ!」
 銃弾が小雨から嵐のように降り始めた。
「きゃっ、ちょっとどうするの?」
 アマネたちは物陰に隠れながら来た道を折り返していく。壁や床が銃弾の雨に打たれ、無残にも砕かれていく。
「うちがマシンテレパスで混乱させるさかい、ねーさんは先に走って扉を解除してくれへんか?」
「えっ!?」
 アマネの急な提案にスノウは硬直した。一度目を閉じ一息ついて、アマネを見つめてくる。
「それって、アマネさんが囮になるということよね? それには応じられないわ」
 銃声が鳴り響くなか、アマネの手を握ってスノウは諭した。
「せやけど、それしかない……ほかに戦闘特化で突破できる仲間がおらへん」
 スノウの手を払いながらアマネはマシンテレパスを発動させた。
《防衛プログラムにアクセス、隔壁を第一層より解除開始》
 口から出てくるのは感情のこもっていない声、今アマネはヒトの姿をしたコンピューターと化している。
「わかったわ、だけど……アマネさんを置いてはいけない」
 答えないアマネをおんぶする。慣れない重量が背中からスノウを押しつぶそうとかかる
「ちょっと、重いかも。でも、そうはいっていられないよね」
 銃弾のやむタイミングを見計らって物陰物陰に隠れながらスノウはアマネを背負って入り口へと戻っていく。

〜脱出〜
 いくつかの銃弾が頬や服を掠めた。白衣に血が滲むが、後ろのアマネに当たっていなければいい。アマネを支える腕がしびれて脚ががくがくと振るえだす。
(もう少し、体鍛えないといけないかな)
 壁などで銃弾をやり過ごす時間が増え、進む距離が短くなっていく。アマネはいまだよくわからないプログラム用語を寝言のように口から出している。
 多くの足音が近づいてくる、その音はどんどん増えていき、スノウの足音を銃声と足音が打ち消してくる。
「はやく、でぐち……ま……でっ!」
 はぁと息を吸って、壁に隠れようと駆け出した。がっと足元に銃弾が跳ね、躓いた。
「うぅっ!?」
 アマネを傷つけないように地面へと滑り込んだ。目の前の壁からは光がわずかながらもれている。出口だった。
 ザッザッザと足音が近づき、スノウとアマネを取り囲んだ。カシャンと銃弾を入れ替える音がしたかと思うと10人ほどのWW2のドイツ軍人の格好をしたタクトニムが、スノウとアマネを取り囲んだ。
「ハイルヒットラー!」
 マシンボイスで高らかに叫びを上げると引き金に指が伸びる、スノウは背負っていたアマネをかばうように抱きしめる。
「!」
 しかし、いくら待っても銃声も痛みもスノウを襲ってこなかった。
「なんとか、間に合ったようやな……」
 アマネがゆっくりと目を醒ました。少し、やつれた顔でスノウを見上げた。
「心配させすぎだよ、とにかく脱出して敵をたたかないと」
 はぁとスノウはため息をついて、動かなくなったドイツ兵の間を抜けて扉の外へとでた。

〜決戦〜

 外に出ると、そこには指揮官らしいカラーの違う軍服を着たラストバタリオンがたっていた。
「ジィィク、ライヒッ!!」
 ざっと右手を上げて叫ぶとドイツ兵が背後から出てきた。
「ちっ、もうひとつ制御系があったんかいな……ねーさん、MSで迎撃するで!」
「了解」
 二人はラストバタリオンが隊列を整える前にすばやく乗り込み、起動させた。指揮官が細工しているかもしれないと思ったが、どうやらそういう能力はないらしい。
 まくまでも直接攻撃をするしかない、アトラクションなのだ。
「相手はシンクタンクや、遠慮はいらへんで!」
『わかったわ』
 二体の巨人の目に光が宿り、動き始める。ムーンシャドウがレーザーで敵を焼ききっていく。血が噴出すかのようにオイルが飛びちり、ぐしゃりと上体が崩れ落ちた。
『いやな気分ね』
「そんなこと、言ってられへんやろ」
『増援が出る前に片付けましょう!』
 パウダーマガジンのオートライフルが唸りを上げた。タタタタンッと軽快に銃弾が射出される。
「ラストバタリオン!!」
 指揮官が再び右手を手刀にして上空へ掲げて叫ぶと、兵士もそれに従い復唱した。
 すると銃弾が急激にさびて、カランコロンと地に落ちた。
『うそっ!?』
 スノウの叫びがアマネのコクピットにまで響く銃弾が20mmの銃弾の雨は虚しく地に転がった。
「厄介な能力をっ!」
 もともとアマネは近距離レザーしかもっていないのでそんなに気にはならないが、ディスタンをベースにしたスノウのMSだと装備の8割が役に立たなくなる。
 そうこうしているうちに敵の増援が到着、対戦車ライフルで砲撃が始まった。
 ズドォンッという大きな砲撃と衝撃アマネとスノウに襲い掛かかる。兵士がちょろちょろと動き、こちらの背後や間接部を狙ってくる。
「くぅ!?」
「あっ!?」
 シェイクされるような振動が伝わってきた。対戦車砲はさすがにMSを破壊するほどではないが、こうもちょろちょろされては動きづらい。
「なめたことしてくれるな、だけど機械なら、これはどうや!!」
 そういうと、アマネはムーンシャドウのスタンフォード機関を使ったECMを作動させた。キィーンという高い音が鳴ったかと思うと、ラストバタリオンの動きが鈍くなった。
「いまや、ねーさん。一気に片付けて!!」
『了解! パウダーマガジン、フルファイヤ!!』
 パウダーマガジンに搭載された全ての火器が火を吹き、ラストバタリオンを全滅させていった。

〜結末〜
「ヒトラーの宝ってなんだったんだろう?」
 一仕事を終えて帰えろうとしたとき、助けたビジターがふとつぶやくスノウに近づいてきた。
「あの奥にあったそれらしいものはこれみたいだぞ?」
 渡されたのはヒトラーの著書「我、闘争」の初版直筆サイン入りだ。旧世代のものでありながらかなりいい形で残っている。
「これがお宝……これのためにあれだけのシンクタンクを作った人がいるだ」
 初版本を丁寧にひらくと、埃っぽいにおいがスノウの鼻を突いた。
「うぅっ、けほっけほっ! あ、これは……」
 開いたページにはさがっていた栞。そこには誰かの名前が書いてあった。持ち主のかもしれない。少しぼろぼろになった栞の文字を読んでいく……。読み終えたとき、スノウは目を見開いた。
「これは、叔父さんの名前……おじさんが、あのシンクタンクをつくったというの?」
 スノウの問いに誰も答えてはくれなかった。




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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名
【0637】アマネ・ヨシノ (あまね・よしの)
【0753】スノウ・ファーノ (すのう・ふぁーの)

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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、ありがとうございました。遅くなってすみません(汗)
今回もいろいろと試行錯誤をして作ってみましたがいかがでしょう?
勝手ながらスノウさんの設定を使ってみたりしました。だめであれば、書き直しますので
遠慮なく、リテイクしてください。

この二人は仲のいい姉妹のような感じで動かせて楽しいです。
またの発注、リクエストなどお待ちしております。

それでは、またお会いできる日まで