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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【都市マナウス】休日はショッピングに
嗜好品から……まで

ライター:高原恵

 アマゾン川を下ってはるばると。長い船旅だったが、ようやくついたな。
 ここがブラジルのアマゾナス州の州都だったマナウスだ。
 審判の日の後の一時はかなり荒れたが、今はセフィロトから運び出される部品類の交易で、かつて魔都と呼ばれた時代の様ににぎわっている。
 何せ、ここの支配者のマフィア達は金を持ってるからな。金のある所には、何でも勝手に集まってくるものさ。
 ここで手に入らない物はない。欲望の赴くまま、何だって手に入る。
 もっとも、空の下で思いっきりはしゃげる事の方がありがたいがな。何せ、セフィロトの中じゃあ、空も拝めない。
 お前さんもたっぷり楽しんでくると良いぜ。

●都市マナウス
 古来より、人々の集まりし地が栄えることは当然の流れである。それはここ、南米ブラジルの都市であるマナウスも決して例外ではない。
 『審判の日』以前、ここはアマゾナス州の州都として賑わっていた。『審判の日』以降、一時的にかなりの荒れ具合を経たけれども、現在はまた以前のごとき賑わいと、一応の平穏を保つようになっている。
 そうなったのにはもちろん、セフィロトの塔の存在がある。セフィロトから運び出され流れてくる部品類などの交易によって、都市としての息を吹き返したといっても恐らく過言ではないはずだ。
 南米の主たる支配層、すなわちマフィアたちにとってこの状況は崩したくないものである。大袈裟かもしれないが、ある意味宝の山を握ったに等しいとも言える。ゆえに現状を維持するため、それなりの平穏がもたらされることになる訳だ。無論、目に見える範囲での話。裏や水面下では……まあ、改めて説明するまでもないだろう。
 上の方の思惑はどうあれ、生き返った都市がこの地に存在することはまぎれもない事実であるのだから。

●高い空の下で
 高い高い、空が限りなく広がっていた。今日のマナウスは快晴とまではゆかないが、雨の心配をしなくてもよい天候であることは誰の目にも明らかだった。
「…………」
 何気なく空を見上げた青年――龍堂冬弥はふと足を止めて、しばしそのまま無言で空を見つめていた。
(こうしてゆっくりと空を眺めるのは、いつくらい振りのことだ?)
 自身に問いかける冬弥。ビジターとして活動しているセフィロトには空はない。こうして外へ出てくる機会でもなければ、長期間空を見ないことなんてざらだ。
「ちょお、何やっとんの。急に足止めてぼーっとして」
 冬弥の前から女の子の呼びかける声がした。呼びかけるというか、窘めるといった方がぴったりくるかもしれない。その声に冬弥の思考は中断される。
「……何でもない」
 とだけ冬弥は答え、目の前に居るちょっとお洒落に着飾った少女――アマネ・ヨシノに目を向けた。
(それにしても、化けるものだな)
 今のアマネの格好は、冬弥が普段セフィロトで目にしているそれとはまるで違う。街への遠出であるからだろうか、いつものつなぎを脱ぎ捨て女の子らしい衣服に身を包み、おまけにポニーテールの髪まで下ろしている。どこかのお嬢様と言っても、ある程度通用するのではなかろうかと思える姿であった。なお余談であるが、一説には出かけにセフィロトでこの姿のアマネを見た何人かは『馬子にも衣装』と思ったとか思わなかったとか。
 さて、何故にこの2人がマナウスに居るのか。そもそもは、冬弥が買い物のために訪れようと考えていたことが発端だ。だがしかし、冬弥はあまりマナウスには詳しくなかった。そこでガイドを買って出たのがアマネという訳である。
 2人は今、アマネの先導で露店街へ向かっていた。冬弥の買いたい物を聞いて、そこがいいだろうとアマネが考えたのだ。冬弥が探しているのはいわゆる嗜好品の類、詳しく言うなら煙草を求めていた。
「物はそこにあるんだな?」
 前を歩くアマネへ尋ねる冬弥。
「あるって。ま、出所はうちもよー知らんけどな」
 さらりと答えるアマネ。
「……多少値が張ってもいいんだぞ」
 冬弥が念を押すように言ったが、アマネは笑って受け流す。
「けど、同じ質なら少しでも安い方がええやろ?」
 当たり前だ。まともな品であって質が変わらないのなら、安価な方が誰だって嬉しい。
「ええからうちに任しとき。それより……」
 アマネがくるりと冬弥に身体を向けた。
「出かけにも言うたと思うけど、あんさん、今日はうちの叔父さんということにしといてーな。な?」
「ああ、覚えてる」
 分かったとばかりにアマネに答える冬弥。出かけにそれを言われた時、何のためにかと一瞬考えたが、特に不都合がある訳でもなく、冬弥はそれを受け入れた。別段、とやかく聞くようなことでもないだろう。
「ならええねん。さ、こっちやから」
 アマネはにこっと笑うと、再び前を向いて歩き出した。冬弥もまたその後をついて歩いていった。

●各々が買い求めしは
 少しして到着した露店街の中の、とある露店にて冬弥は真剣な眼差しを向けていた。その対象となる物は、言うまでもなく煙草だ。
 無作為に抜き出した1箱の煙草から、1本取り出してあらゆる角度からチェックを行っていた。
(葉はしっかり詰められていて、巻き方も悪くない。となると、残るは味か……)
 煙草1本を見つめ、そんなことを考える冬弥。すると露店の主人も察したか、マッチを取り出して見せた。吸ってみるか、そう言っているのだろう。もちろん冬弥はそうした。
 煙草の先端に火がつけられ、すぅ……と冬弥は吸い込んだ。口から肺へ、煙草の煙が満ちてゆく。ややあって、冬弥は満足げにふぅ……と白い煙を吐き出した。
「もらおうか。可能なら、あるだけ全部だ」
 どうやら冬弥の嗜好に合う味だったようだ。もとよりカートン単位で大量購入するつもりだった冬弥は、予算の許す限り買い占めることにした。
 アマネが間に入って露店の主人と交渉する。結果、結構な量の煙草を冬弥は買うことが出来た。あとで知ったことだが、同じ物をショッピング街で買うより単価2割ほど安かったようである。
「さて。俺の用事はこれで済んだが……」
 冬弥はちらりとアマネを見た。目が、そっちは何かあるのかと聞いている。そこで、待ってましたとばかりにアマネが口を開いた。
「ほんなら、せっかく来たんやし観光でもしてこか?」
「……じゃあ頼むか」
 別段冬弥に断る理由もない。かくしてアマネに案内されるまま、マナウスの主要な場所をいくつか訪れることとなった。
 そうやってマナウス内をあちこち歩き回っていた最中、ショッピング街にある1軒の店の前でアマネがふと足を止めた。
「あっ、ちょおここ寄ってってええかな?」
 アマネが指差したその店は、いかにも若い女の子向けの衣服や雑貨などを扱った店であった。別の言い方をするなら、男性にはちと入りにくい雰囲気のお店。冬弥も例外ではなかった。
「外で待っとってええよ」
 冬弥の心境を察したらしいアマネがそう声をかける。ならばということで、冬弥は店の外で待つことにしてアマネ1人だけが中へと入っていった。
 それから待つこと約15分、綺麗にラッピングされた箱を2つ抱えたアマネが店の外へと出てきた。
「お待たせー」
「重そうだな……1つ持ってやろう」
 と言って、箱を1つひょいと抱え持つ冬弥。見た目に反して、重さのある箱であった。
「何買ったんだ?」
 自然とそんな質問が冬弥の口を突いて出た。だがアマネは意味深な笑みを浮かべ、こうとだけ答えた。
「乙女の秘密やから内緒やで」

●裏事情
 その後2人は食事などを済ませて、セフィロトへの帰路へつくこととなった。帰りの船の出航を待つ間、アマネは今日のことを思い返していた。
(ほんま、渡りに船やったな)
 そっと冬弥に目を向けるアマネ。冬弥はサービスとしてもらった封の空いた煙草を堪能している最中だった。この分だと、サービス分の煙草はセフィロトに戻るまでになくなることだろう。
(……おかげでうちも、買い控えてた品物受け取れた訳やし)
 そのアマネの心の声が何を意味しているのか、もし先程の店の中に冬弥が一緒に入っていたのなら気付いていたかもしれない。
 実はあの時――アマネは店の裏口から1度裏通りへ出ていた。そこにあったのは、密かに営まれている1軒の怪し気な露店。アマネはそこを訪れ、ある物を受け取った。そう、店から出てきた時にアマネが持っていた2つの箱である。
 箱の中身が何であるかは、ここでは詳しく述べない。ただ、アマネの所持するマスタースレイブ『ムーンシャドウ』において中枢に近い部品である、とだけ言っておこう。その名を知る者なら分かるはず、それが部品から存在まで特殊な機体であることが。普通に考えて、個人が所有しているのは妙な話であることが。
 それが可能なのは大きく2つに分かれる。よほどの権力者か、かなりの犯罪者。アマネがどちらかであるかは――次の言葉から容易に想像出来るはずだ。
(用心したからか、追跡の手にも引っかからんかったし……)
 ほっと安堵するアマネ。観光と言ってあちこち歩いたのも、実は追跡者が居ないか確認するためであったのだ。
 何はともあれ、冬弥もアマネも今回のマナウス訪問で欲しい物を手に入れたことには違いはない。もっとも、その方向性は大きく異なるけれども。
 都市マナウス、ここは欲望の赴くまま何だって手に入る街である……。

【END】


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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名:クラス

【0668】 龍堂・冬弥:エスパー
【0637】 アマネ・ヨシノ:エスパー


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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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・『サイコマスターズ・アナザーレポート PCパーティノベル・セフィロトの塔』へのご参加ありがとうございます。本パーティノベルの担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・大変お待たせさせてしまい申し訳ありませんでした。ここに都市マナウスでの買い物の様子をお届けいたします。
・どちらも買い物ではありますが、都市マナウスの特徴がある意味よく出ている内容になったのではないかと思います。また露店の煙草の出所については、自ずと察せられるのではないでしょうか……。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またお会いできることを願って。