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ロジック:階数と枚数
□Opening
さて、ジャッジの前に赤、青、白、黒、緑、紫のタオルが並んでいる。
彼は、それを面白そうに何枚も重ねていた。
「やあ、こんにちは、え? 何をしているかって?」
そうだ。
暗いこの部屋で、そのカラフルなタオル達が少しだけ異質だった。
ジャッジは、ふふと微笑むと、手を止めカウンターに頬杖をついた。
「引越しのお手伝いです、隣に越してきた方から、タオルをどの階にどれくらい配れば良いかって、相談を受けたんですよ」
そして、丁寧に折り畳まれたタオルを撫で、ああそうだと呟いた。
「うん、実際とは違うんだけど、こうやって条件をつければこれもパズルだね」
そして、ジャッジの瞳が挑戦的に光る。
この条件で、このパズルが解けるかと挑戦しているのだ。
さて、貴方は、どう解くか?
★一〜六階に配るタオルの数は一〜六枚。全て違う枚数・違う階に配る。
★赤は三階に配る
★黒は一階か二階に配る。枚数は一枚でも四枚でもない。
★緑は二枚、白は三枚配る。
★紫は六枚ではない。
★一階には三枚配る。
★二階に配るのは一枚ではない。
★五階には六枚配る。
★六階に配るのは一枚でも二枚でもない。
□01
アデリオン・シグルーンは、ゆっくりとその部屋を横切った。そこここでざわざわと小さな囁きが聞こえているが、不快なものではない。何故ならこの部屋にはパズルしかなく、それこそが、この部屋の理由だから。
部屋の奥にはカウンターが有り、そこでにこやかに微笑む青年がアデリオンを待っていた。
「……、こんにちは」
ゆっくりと椅子に腰を下ろすと、アデリオンの来訪を待っていたかのようにジャッジが挨拶をした。その言葉に、アデリオンもふっと笑みを漏らし両腕を組んだ。
「こんにちは、お邪魔します」
目の前には積み上げられた色とりどりのタオル。
これが、今回のパズルの象徴。
そのタオルをジャッジが撫でる。それは、どこかアデリオンを挑発しているように感じられた。アデリオンは、それの意味するところを理解している、いや、この部屋に足を踏み入れた時からそれは決まっていた。
「パズルの内容は分かって頂けましたか?」
その言葉には、肯定の頷きで返す。
「では、貴方の回答を提示してください」
少し身を乗り出したので、アデリオンの長い髪が緩やかに揺れた。
□02
「これは、表を作ってしまえば簡単なんですよね」
備え付けのメモ用紙とペンを手繰り寄せ、アデリオンはゆっくりと説明をはじめた。
「三つ以上の項目ですから、少し面倒な図になりますが……」
そして、丁寧に線を引き、表を作って行く。
「この場合、色と階と枚数の三つの項目に分けられますから、二項目づつ、たとえば縦軸を階と枚数、横軸を色と枚数、という感じで」
それは、長方形の表では無い。
重なり合う項目の表が三つ配置されたと言う感じだった。
「縦軸と横軸の項目で、かぶらない項目がひとつだけの表を作るのがポイントです」
言いながら、アデリオンが書き上げた表は以下の通り。
→横軸:色、枚数
↓縦軸:階、枚数(英数字:階数、漢数字:枚数)
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┿━┫
┃01┃□│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
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┃02┃□│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃03┃□│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃04┃□│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃05┃□│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃06┃□│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃二┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃三┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃四┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃五┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃六┃□│□│□│□│□│□┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┷━┛
太枠で囲まれた部分は、二項目が交差する表になっており、それが三つあると言う事になる。
「これで、条件に照らしてマスを埋めれば、自然と答えは出ます」
そう言って、完成した表にアデリオンは、○と×を書き始めた。
まずは、提示されている条件、
★赤は三階に配る
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┿━┫
┃01┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃02┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃03┃○│×│×│×│×│×┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃04┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃05┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃06┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┷━┛
確定した部分以外には×印を書き入れ、同時に可能性を消して行く。
★黒は一階か二階に配る。枚数は一枚でも四枚でもない。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┿━┫
┃01┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃02┃×│□│□│□│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃03┃○│×│×│×│×│×┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃04┃×│□│□│×│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃05┃×│□│□│×│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃06┃×│□│□│×│□│□┃□│□│□│□│□│□┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃□│□│□│×│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃二┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃三┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃四┃□│□│□│×│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃五┃□│□│□│□│□│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃六┃□│□│□│□│□│□┃
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ちなみに、黒の条件『一階か二階に配る』は、三〜六階ではないと言う事になるので、その部分に×を書き入れた。
★緑は二枚、白は三枚配る。
★紫は六枚ではない。
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┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
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===========================
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃□│□│×│×│×│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃二┃×│×│×│×│○│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃三┃×│×│○│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃四┃□│□│×│×│×│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃五┃□│□│×│□│×│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃六┃□│□│×│□│×│×┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┷━┛
★一階には三枚配る。
★二階に配るのは一枚ではない。
★五階には六枚配る。
★六階に配るのは一枚でも二枚でもない。
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┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┿━┫
┃01┃×│□│□│□│□│□┃×│×│○│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃02┃×│□│□│□│□│□┃×│□│×│□│□│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃03┃○│×│×│×│×│×┃□│□│×│□│□│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃04┃×│□│□│×│□│□┃□│□│×│□│□│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃05┃×│□│□│×│□│□┃×│×│×│×│×│○┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃06┃×│□│□│×│□│□┃×│×│×│□│□│×┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┷━┛
ここまでで、できあがった表を見る。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┿━┫
┃01┃×│□│□│□│□│□┃×│×│○│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃02┃×│□│□│□│□│□┃×│□│×│□│□│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃03┃○│×│×│×│×│×┃□│□│×│□│□│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃04┃×│□│□│×│□│□┃□│□│×│□│□│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃05┃×│□│□│×│□│□┃×│×│×│×│×│○┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃06┃×│□│□│×│□│□┃×│×│×│□│□│×┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┷━┷━┷━┷━┷━┛
┃一┃□│□│×│×│×│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃二┃×│×│×│×│○│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃三┃×│×│○│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃四┃□│□│×│×│×│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃五┃□│□│×│□│×│□┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃六┃□│□│×│□│×│×┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┷━┛
後は、矛盾が出ないように項目を埋めていくだけだ。
例えば、三階に配る赤のタオルの項目では、二枚と三枚に×印がついているので、三階の二枚と三枚にも×印を書いていくと言う寸法。同じように、五階に六枚配るので、五階に×がついている赤と黒は六枚では無い。
アデリオンは、プログラムを組んで行くように、さらさらとペンを走らせる。
「答えは、一階が白色を三枚、二階が黒色を一枚、三階が赤色を一枚、四階が緑色を二枚、五階が青色を六枚、六階が紫色を四枚、ですね」
こうして、アデリオンの答えは示された。
「基本的に考えることが好きなので、こういうことはすごく好きですよ」
答えを聞くジャッジに、アデリオンは微笑んで見せた。
□03
「お疲れ様でした、有難うございます」
それまでじっと黙っていたジャッジは、がさりと手元からそれを取り出した。
「僕も、表を作ってみました」
いつの間に用意したのか、ジャッジの取り出した表に、答えが示されている。
┏━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┯━┓
┃★┃赤│青│白│黒│緑│紫┃一│二│三│四│五│六┃
┣━╋━┿━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┿━┫
┃01┃×│×│○│×│×│×┃×│×│○│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃02┃×│×│×│○│×│×┃×│×│×│×│○│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃03┃○│×│×│×│×│×┃○│×│×│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃04┃×│×│×│×│○│×┃×│○│×│×│×│×┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃05┃×│○│×│×│×│×┃×│×│×│×│×│○┃
┠─╂─┼─┼─┼─┼─┼─╂─┼─┼─┼─┼─┼─┨
┃06┃×│×│×│×│×│○┃×│×│×│○│×│×┃
┗━┻━┷━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┷━┛
「答えは、一階白三枚、二階黒五枚、三階赤一枚、四階緑二枚、五階青六枚、六階紫四枚ですね」
表を指でなぞる。
アデリオンは、その時、はっと口元を押さえた。
□Ending
「ええ、そうなんです、表は完璧でしたが……」
ジャッジは、残念そうに手を広げた。
「……、うっかりでしたね」
アデリオンも、残念そうに微笑む。
先ほど、自分は何と答えたのか。そう、『――三枚、二階が黒色を一枚、三階が赤色を一枚――』と、言い間違えたのだ。
それでも、示された答えを覆す事はできない。
ジャッジは、ポイント表を広げて静かにこう告げた。
「ポイント表にお名前を記載しましたので、またの挑戦をお待ちしています」
それはそれで仕方が無い。
アデリオンは、静かに席を立った。
<End>
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス 】
【 0585 / アデリオン・シグルーン / 男性 / 27 / エキスパート 】
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■ ライター通信
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□
こんにちは、ライターのかぎです。この度は、ジャッジのパズルへお付き合い頂きましてありがとうございました。
納品確認後、ジャンクケーブ内『サイレント・パズル・ドア』のポイント表も更新致しますので、ご覧下さい。『サイレント・パズル・ドア』では、またの挑戦をお待ちしております。
■アデリオン・シグルーン様
はじめまして、初めてのご参加有難うございます。他が完璧でしたので、きっと根本的にはパズルをきちんと解いてくださったのだと思いまして、あのようにさせて頂きました。ジャッジとのパズルはいかがでしたでしょうか。
それでは、また機会がございましたら、よろしくお願いします。
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