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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【密林地帯】インディオ村



ライター:有馬秋人



アマゾン流域の密林地帯には、昔ながらの暮らしを続けているインディオの村が幾つもある。
インディオは凄いぞ。あの審判の日と、それ以降の暗黒時代、高度なテクノロジーを持ってた奴らがバタバタ死んでいった中、インディオ達は何一つ変わらない生活を送っていたというんだから。
本当に学ばなければならないものは、インディオの元にあるのかも知れないな。








* * *








悪魔の棲む土地という言葉をきいて、哀しくなった。
そこは確かに自分が住んでいた場所なのに、今はもうそんな記憶は過去に追いやられているのだから。
守久もいい気がしないのか渋面で。それに少しだけ助けられた気がした。
この場所に思いいれがあるのは自分だけではないのだと伝わってきて。思い出すのは研究所を抜け出して遊びまわった記憶だ。祭りがあるから行こうと誘われて、約束して、果たすことが出来なかった。苦い思い出。

「レオナ?」

黙り込んでいたレオナに、守久が首を傾げていた。慌てていつものように振舞うと、訝しい顔をしても頷く。

「なんでもないよっ」
「そっか? ならいいけど」

レオナの少し前ではアルベルトと伊達が、打ち合わせをしている。目の前の建物に入るにはレーダー代わりの人間が必要で。それも、今回は少し特殊なレーダーが入用だ。その為に二人はPCを間に挟んで話し込んでいた。

「まだかな」
「どうだろうな、その辺りのことは俺にはさっぱりだ」
「ボクにもさっぱり」

辟易、と顔に書く様が面白いのか、守久はくすくす笑って頷く。

「に、しても、だ。お前がここに来るなんて随分な心境の変化だな」
「んー、なんかねぇ。最近どーにもどこぞの誰かがボクに隠れてボクのために暗躍している
節があるから、少しは努力してみようと思ってさ」

「暗躍……否定し難いな」
「確かにあいつはボクと真面目に戦っていないっていうか、本気じゃない気がしていたし。
話で聞くときと自分で戦ったときの感触が少しずれるんだ」
いつも。
そう静かに口にしたレオナに、守久はなんともいえない顔をする。レオナ当人ではないため、細かな感覚まで分かれない。

「分からないから、分かりたいと思うよ」

その為に振り出しであるこの地に来たのだ。全ての始まりであるあの研究所に。

「分かりたいから、ここに来た、か」
「そ。まっさかこの村の近くにあるとは思わなかったけどね」
「しかも「悪魔の棲む土地」呼ばわりか」

以前、レオナが記憶喪失になって彷徨っていた場所がこの辺りだった。記憶のないレオナを助け、世話をしていたのがこの近くにあるインディオの村。それが偶然だったのか違うのかはもう判断できない事柄だった。

「……遅い」

レオナと守久が微妙な空気を作り出して黙っていると、ぽつりと言葉が転がされた。発言主はレオナの背後にぴたりと張り付いている、レオナとよく似た雰囲気の者だ。顔の上半分が隠れるバイザーをしているせいで造作は分からないが、体つきがよく似ていてた。先日あったばかりの相手だが、レオナが「自分探しの旅に出ようと思うんだ」と話し出すと酔狂にも付き合うと挙手したツワモノで。

「エノア?」
「ああ、あれか」

レオナが振り返ると先の声が嘘のように黙り込んでいる顔がある。守久はアルベルトと伊達に目をやって、確かにそろそろ動かないと不味いとぼやいた。
時間制限がかかっているのは、人助けのためだった。
研究所の位置を特定しながら村についたレオナは、そこで自分の目的地の正確な場所を知り、またその場所に行った村の子供が戻ってこないと慌てる大人たちと遭遇した。
悪魔の棲む土地は、誰も近づかない。その場所あるはずの施設も朽ちるに任せているのだろう。確かにインディオらにとって、あの施設に眠っているものは不要どころか害で。その判断を責めるものはいなかった。

「伊達、まだか」
「ああ待たせたな」

守久の科白に顔を上げた伊達が、アルベルトと更に幾つか言葉を交わし、頷くと会話を終わらせる。
会話が終わる瞬間、二人の視線がエノアに向けられたがレオナも守久も気付かず、気付いただろうエノア自身は歯牙にもかけていない。

「んじゃいくか、今回の俺は情報収集に励むぞ」
「わーい期待してるよ!」
「で、伊達が拾った情報は俺が直接データ化するから、何かあったら伊達じゃなくて俺に聞けよ、レオナ」

霊という概念をどう位置づければいいのか分からないが、伊達がその力を使って死んだ人間の意識、あるいは意向を知ることができるのは周知の事実だった。それに大いに期待していると応援するレオナにアルベルトはにっと笑いかける。

「アールに?」
「俺がテレパス中継するからさ」
「へぇ、便利だねぇ」

本気で感心しているレオナの後ろで、エノアも無言で頷いていた。オールサイバー二人にとって、この領域は未知数だ。
伊達と守久が先行し、そのあとをレオナとエノアがついていく。アルベルトは必要に応じて隊列を前後させている。インディオの村で聞いたとおりの方向に進んで暫くたった頃合に、緑に埋もれるように存在する建物が見えてきた。

「ここが、悪魔の棲む場所、か」

そしてレオナが住んでいた場所であり、守久が足しげく通っていた場所。

「思ったより壊れていないな」
「そーだね。なんかやっぱりあの時のあとがまだ残っているのが……」

妙にやりきれない。割り切ったはずなのにどこか息苦しくて、レオナが喉元に手を当てる。それをバイザー越しに見守るのはエノアだ。エノアにとってもここは始まりであり、レオナとの齟齬が生まれた場所でもある。今回のことで少しは何かが分かるだろうか。レオナを守るためにいるのが自分の存在意義なのに、どうしてだか敵対されるのは気分が悪い。
顔の半分が隠れている為だけではなく、感情が読みにくい顔でエノアは一歩に先にでる。

「あ、おい」

守久が追いかけると、エノアはぴたりと立ち止まる。正面玄関と思しき入り口が半壊状態で残っていた。煤がついているのは、炎上の名残だろう。可燃性の建材で作られていなかったのが良かったのか、建物という形状は損なわれていない。

「っと、ここから入るのか?」

守久が振り返る。無意識に喉を触っていたレオナは我にかえり、考え込む様子を見せる。

「確か、ここからが居住区で…研究区はこの奥、かな。直通の入り口はよく覚えていないから、ここから入って突っ切ったほうが確実だよ」
「んじゃこっから入るとして、よっと」

半壊していたドアを無理に外して落とす。子供であれば隙間からくぐれたろうが、流石に守久らには無理で。

「まぁチビじゃりならここからも入れるだろうけどな」
「じぁ子供たちはここから入ったのかな」

守久のぼやきにレオナが合いの手を入れる。幼馴染の気の置けない会話を尻目に、エノアは一定距離以上は離れまいとくっついている。その後ろをアルベルトがどうしたものかとついていて。そして一人黙り込んでいる伊達に気付いた。

「……どうかしたか」
「伊達?」
「誰かいた?」

先行者の問いかけに、伊達は顔を顰めて手を振る。この建物に一歩踏み込んだとたん、反響音のような声が聞こえていてあまり気分がよくない。

「誰か、というより…いや、いるんだが、面倒だな」

まともな意志が汲み取り難い、そう付け足すとあらぬ方向を睨む。アルベルトが興味津々と顔に書いているレナオの肩を叩く。

「見たいなら中継するけどどうする」
「…う、慣れてる伊達があんまりいい顔しないってのを見るのはちょっと嫌かも」
「だな」

及び腰になっているレオナに守久も同意した。アルベルトはくつくつ笑って、未だ顔を顰めている伊達に目を移した。

「伊達、どうなんだ」
「テレパスはどうした」
「いや俺もあんまり見たくないなぁ、とか」
「……ったく」

こめかみを揉みながら伊達は溜息を一つつく。

「霊はいる、な。ただ、まともな意志が汲み取れない……痛み、とかそういう感情主体の想念が強いんだな。まぁ霊ってのは概ねそんなもんだが、ここにいる奴らは半端じゃない」

頭が痛いと渋面を崩さない伊達に、レオナと守久は顔を見合わせた。それはやはり、あのときの霊なのだろうかと問うことは出来なかった。伊達にその判断は難しいだろうし、霊から直に聞きだせると入っても、その霊自体がまともにことを話してくれないのなら仕様がない。
通路を進みながら、伊達の視線があちこちに移動する。そのたびにダメだとか呟く。

「まともな死に方をしなかったのかここの奴らは……」

伊達の目に見える景色はきっとレオナたちとは違っている。過去の幻影でも見てるかのようにだぶっているラインがある。壁に染み付いた感情のように人型が浮き上がり、痛みを訴える。何かを叫ぶ。その何かの行くつかは分かっているが、伝えていいものか迷う単語だ。親しい者だろう名前。そして、ノスフェラトゥという名称。ちらりとレオナの後ろにへばりついているエノアを見る。鈍いのか難なのか、上半分を隠しただけで幼馴染コンビは誤魔化されているが、伊達は一度まみえたレオナの仇敵だろうと当たりをつけていた。先ほどアルベルトと意見を交換した際も一致した見解だった。このエノア・ヒョードルというオールサイバーは、間違いなくノスフェラトゥだろう、と。ただその意図が読めないのと、アルベルトの提案で現状を観察するに止めている。
無差別に耳に入る霊の絶叫をシャットアウトして一息ついた伊達は、気を取り直してまともな思考を保っている霊を探すべく歩き出した。が、伊達を追い越して先に進んでいた一行が立ち止まっている。

「どうした」

そう、問いかけた伊達は、エノアの視線に立ち止まる。エノアは手を出しかねているかのように、戸惑いの滲む目をしていた。
立ち止まった先で、レオナが、顔を強張らせていた。

「レオナっ、おい!」
「落ち着け」

アルベルトと守久が両脇から支えるが、オールサイバーの重量だ。少しきついのだろう。埒が明かないと舌打ちした守久は、アルベルトに合図してレオナの体を床に落とす。足からゆっくりと横たえるように倒すと、壁に背を凭せ掛けた。
正面にしゃがみ、幼馴染の顔を覗きこむ。

「レオナ、レオナ…しっかりしろ」

漸うと声が届いたレオナが瞬きを繰り返す。顔を手で覆って、呻くように声を出した。

「……ごめん」

ゆっくりとした手つきで、守久がしゃがんでいるあたりの床を押す。

「ここで、死にかけたんだ………ボクは」

今、急に思い出して、思考が停止したと力なく笑う姿だ。絶句した周囲を他所に、守久は息をつめながらもただ頷く。それは、レオナにしか越えられない壁なのだ。セフィロトの塔に来るものは大抵が何かしら過去に痛みを抱えていて。そしてどんな痛みでも、抱える本人にしか越えられないのだ。
レオナが落ち着くの待つ周りを他所に、エノアがすいっと動いた。アルベルトが追うが移動距離は僅か数メートルだった。その隣室に続くドアの残骸をエノアは片手で押しのける。

「エノアっ」

何をするつもりだと怒鳴るアルベルトだが、すぐに前言を返して自分も残骸を押しのけるのを手伝った。

「大丈夫か?」

壊れていたドアの下から出てきたのはインディオの子供だ。自失していたレオナも子供が発見された事がカンフルになったのか、立ち上がり駆け寄ってくる。

「アール」
「意識はない、けど。ま大丈夫だな」

怪我はないしどこかに打った様子もない。ドアが倒れてきてびっくりしたって所だろうと辺りをつけたアルベルトは、伊達と守久を手まねきする。

「どっちか背負ってくれ」
「んじゃ俺が」

守久があっさり了承し、伊達の手を借りて子供を背負う。

「呑気に気絶できていたってことは、敵はいないみたいだな」
「だな」

辺りを確認しながら判断を下したアルベルトに、伊達も同意をしめした。相変わらず霊の声は混迷しているのか顔は渋面で。子供を背負った守久とレオナは、その存在に気付いたエノアに賞賛の声を上げていた。
呑気な、と呟きかけた伊達はすぐに声を殺して科白の意味を外に漏らさない。その代わりに通路の先を示した。

「分かれ道はどうする」
「とりあえず研究区に行って…、ああレオナ、研究区はどこから行くんだ」
「んー、この辺りからグレイゾーン、かな。ボクが来ても怒られないゾーンだったし。研究区はこの先全部」
「分かれ道になってるけど」

その辺りはどうなんだと問われ、レオナは困り顔になる。

「ちょっとわかんないや。あんまり入り浸ると怒られたんだよ」

当てにならなくてごめんと言われ、アルベルトは慌てて首をふる。

「いや、人数あるから二手に分かれればいいだけだし」
「まぁ二手に分かれるのはいいとして、組み合わせてとしちゃどうするよ」
「俺と伊達は別がいいだろうな」

アルベルトなら周囲を警戒するのは容易いし、伊達は周りの霊の状態で判断できるだろう。

「龍樹は戦力外だしなぁ」
「ちょっと待てレオナっ、俺がどうして!」
「子供背負いながらどうするってゆーのさ」
「あ、なるほど」
「だからボクは龍樹とセットのがいい、けど……エノアはどうする?」

問いかけられた本人は、レオナをじっと見るばかりだ。ついていきたいのは山々だが、話しながらついていくのは難しいと悟ってしまってこの現状、と言ったところだろう。その間、伊達とアルベルトの間でまたまた視線の会話があり、特に攻防もなく決着する。

「じゃあ俺がエノアと右な、レオナは伊達と左っと」
「俺はカウント外かよ」

さらりと省略された守久が口を挟むがアルベルトは取り合わない。まぁまぁと宥められ流されあしらわれ、手際よく送り出されてしまった。
左に曲がったレオナたちを笑顔を見送ると、そのままの表情で立ち尽くしているエノアを呼ぶ。

「じゃ、行こうぜエノア」

レオナを追いかけたそうにしている様子をすっぱりと無視して進むアルベルトに、エノアも渋々ついていく。途中にある部屋を一つひとつ確認しながら進むアルベルトは、何気なく話し出した。

「顔を隠しても、まぁ丸分かりとまではいかないが、ばれてるぞ……どういうつもりレオナの前に出てきたんだ」

お前が恨まれていることは、よく分かっているんじゃないのか。ノスフェラトゥ。
さり気ない口調の問いだったが、エノアの目が狭まり、動きから隙が薄くなる。

「ああ、別に俺はお前の敵じゃないよ。だから殺気は抑えろって。ただどういうつもりなのかって聞いてるだけ」

今ここで自分を殺すことがプラスになるのか考えから実行しろよな、と笑うアルベルトに、エノアは構えていた拳を解いた。

「傍にいたいだけだ」
「レオナの?」

重ねた問いには返答がなかった。けれど、伝わるものはある。

「自分で言い出すまでは、黙ってるよ」

安心してくれ、そう告げられてどう返すべきかエノアが迷っていると、アルベルトの足が止まった。

「ラッキー、この部屋電源生きてるわ」

発電機が近くにあるのかな、とぼやきながら一方の壁全てを埋めている機材に手をつけた。わきわきと躍らせたかと思うと手早くスイッチを入れて行き、ずっと持っていたPCとコードで繋ぐ。
アルベルトが何の気なしに入り込んだ部屋は、不思議なほど原型を保っている場所だった。そしてエノアはその部屋に入ることに強い抵抗を感じて止まったままだ。本能に「入るな」と刷り込まれているかのように、強い制止の精神がある。その思いを振り切って、一歩ずつ中に入る。
アルベルトの見ている壁とは反対に、透明な円柱が設置されていた。こぽこぽと水音がたっている中には何かしらの水溶液が満たされていて、底に生き物らしき残骸が横たわっていた。
金属のプレートが貼付されていたが、数字が刻まれているだけで。

「破損してるから、全部は無理か」

データの吸出しをしていたアルベルトは、自分のPC内で細切れの文面を組み立てていく。そして眉根を寄せた。

「エノア、知っていたのか?」

突然の問いかけに、円柱から目を放したエノアが寄ってくる。「何を」とも言わず黙ってアルベルトのPCを覗き込んだ。そこに記されていた文面をざっと読み流し、硬い顔で頭を振る。

「そうか……レオナにも言うべき、だよな」

この事実をどう捉えたらいいのかまだわからないが、今手に入れた情報は、レオナにとって何かしらの価値があるだろう。それくらいの意味あると思えるものだった。
エノアはゆっくりと自分の手を眺め、握り締める。

「私が、レオナの……クローン体?」

そればかりか、エノアの補助脳として仕込まれたチップがセフィロトで発見されたオーバーテクノロジーの一種であるAIだという事実。

「機関、ね。何を考えて活動してるのやら…読めないな」

嫌そうに顔を歪めたアルベルトは、データを読み直す。AIは当初6枚保管されていたという、使用されたのは4枚。残り2枚はここではない場所に運ばれたようだ。

「機関が確実に2枚所持してるってことか」
「3枚」

自分を示しているということは、エノアが3枚持っているということだ。

「1枚が行方不明ってことか。一度全部のデータ統合した方がよさそうだな。レオナたちも何かつかんでるだろうし」

アルベルトは、この先にを一端確認して合流しようと提案し、エノアも浅く首肯する。指針が決まれば行動は早い。他にも、欠片でもいいからデータがないか探り、片付けはじめたアルベルトを他所に、エノアはゆっくりと水槽を振り返る。
今は何も浮んでいない水溶液が満たされた、たっぷりとした水世界。

「アルベルト」

呼びかけられて驚いて振り返る。

「レオナはどのくらいまでの過去を覚えている?」
「過去って……それは、本人に聞いたほうがいいだろうな。俺は確かにある程度の事情に精通してるだろうけど、レオナ本人じゃない」

その過去をどこまで話すべきなのか判断するのは、自分ではない。そう突き放して撤収作業を終えたアルベルトは部屋から出て行った。
エノアは黙然とした態度を取り直し、アルベルトのあとに続こうとするが、部屋を出る直前に振り返り、水槽をもう一度見あげる。
先の問いかけはこの場で起きたことに対してではなかった。上手く伝わらなかったのだけれど、エノアは違う意味で聞いたのだ。


レオナの記憶は、どこから始まっているのか、と。


間違えたという感想をちらとも出さず、エノアは無表情のまま、ついていく。

(もしも、記憶がかけているなら、ここより前がないのなら…レオナはおそらく………)

懸念となる思考を止めることが出来ず、オーバーヒートでも起こしそうなほど考え込む。危惧は危惧だと割り切るまで少し。そしてその危惧を誰に伝えるべきなのか、分からなかった。
目の前の相手に伝えるべきなのかもしれないし、自分が何とかするべきかもしれない。ただ、どうすればいいのかエノアにはわからない。
戦うために生まれてきたような者だからなのか、こういったことに対してエノアは非常に弱い。

「本人に、か?」

レオナ本人に言うべきだろうか。しかし、その危惧を知ったところで何があるというのだろう。突き当たりまでいったアルベルトが戻ろうと促すのを無言で承諾する頃合に、ようやく妥当といえる人物に思い至る。
あの時、この場にいた人物だ。レオナの相棒として傍にいる人物。抹殺対象ではあるけれど、レオナのためならば多少は構わない。それにあの相手は何かしら知っているはずだ。
こんな軍事研究施設に、子供がいたことを不審に思わなかったはずがないのだから。
見えてきた最初の分岐点で、すでに戻ってきていたらしいレオナが大きくを手を振るのを見ながら、エノアは軽く息を吐き出した。






2006/11/..




■参加人物一覧


0536 / 兵藤・レオナ / 女性 / オールサイバー
0351 / 伊達・剣人 / 男性 / エスパー
0535 / 守久・龍樹 / 男性 / エキスパート
0552 / アルベルト・ルール / 男性 / エスパー
0716 / エノア・ヒョードル / 女性 / オールサイバー




■ライター雑記

なんだか事態を余計にややこしくしたよーな気がしてなりません、が、楽しんでいただけると嬉しいです。
ご依頼有難う御座いました。
今回はあえて敵を出さない形で纏めてみましたが、如何でしたでしょうか。
気に入っていただけると嬉しく思います。