|
ブラジル【都市マナウス】休日はショッピングに
ライター:宮瀬 朝未
≪ Opening ≫
アマゾン川を下ってはるばると。長い船旅だったが、ようやくついたな。
ここがブラジルのアマゾナス州の州都だったマナウスだ。
審判の日の後の一時はかなり荒れたが、今はセフィロトから運び出される部品類の交易で、かつて魔都と呼ばれた時代の様ににぎわっている。
何せ、ここの支配者のマフィア達は金を持ってるからな。金のある所には、何でも勝手に集まってくるものさ。
ここで手に入らない物はない。欲望の赴くまま、何だって手に入る。
もっとも、空の下で思いっきりはしゃげる事の方がありがたいがな。何せ、セフィロトの中じゃあ、空も拝めない。
お前さんもたっぷり楽しんでくると良いぜ。
≪ 約束事 ≫
キウィ シラトはシオン レ ハイから貰ったお金をお財布に入れると、机の上にドンと書類の山を乗せたトキノ アイビスに視線を移した。
「買い物に行きたいと言っても、仕事はどうするんです?」
「えっと・・・でも、だって・・・」
書類の山に視線を移し、膝の上に置いた財布に視線を落とし、最後にトキノに視線を向け、再び書類の山に視線を・・・エンドレスで続く視線攻撃に、トキノが頭を押さえる。頭痛持ちのような顔をして軽く首を振り・・・キウィはそんな動作だけでトキノがマナウス行きを許可してくれることがなんとなく分かった。
「帰ってきたら仕事をすると約束できるんでしたら」
「約束しますっ!」
ふわふわとした長い真っ白な髪を揺らしながらキウィが満面の笑みでコクリと頷き、今まで机の隅っこで大人しくしていたウサギがピョンと膝の上に乗ってきた。
垂れた茶色い耳にそっと触れ、柔らかな背中を撫ぜる・・・
「トキノも一緒に行きません?」
「私も、ですか?」
「・・・迷子になるかも・・・」
ポツリ、キウィが呟いた一言は妙な現実味を帯びていた。
トキノの脳内で行くか行かざるかの葛藤が起こり・・・勝負を制したのは“行く”の方だった。
「子供達にプレゼントするお菓子も買いたいですし」
「そうですね・・・」
人工エスパー研究所所長のキウィは、ハロウィンパーティー用に子供達にお菓子を用意しなくてはならない。お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ『Trick or treat』の言葉を実行されてしまう。
一応の納得を見せたトキノに、キウィは密かに微笑んだ。
勿論、迷子になるかも知れないと言う理由もあながち嘘ではない。けれど、トキノを同行させる1番重要な部分はそこではない。子供達のお菓子だけではなく、ハロウィンの仮装用の衣装も買い揃えようとしているキウィとしては、荷物持ちがいないことは酷く辛い。荷物を持ってくれる人材を確保しておくのにはそれなりの意味があるのだ。
シオンから貰った・・・正確に言えば、巻き上げたと言っても過言ではない・・・お金のおかげで財布は大きく膨らんでいるし、トキノと言う人足も確保した。
キウィはマナウス行きを楽しみにしながらその日、トキノに言われるまま数個の仕事を片付けた。
≪ 買物日和 ≫
「やっぱり、マナウスは風が気持ち良いですね」
ナンナ トレーズが靡く前髪に目を細めながらそう言い、高く澄んだ空に両手をつき上げる。
「まずは朝食でも食べませんか?お腹空きました・・・」
キウィがお腹を押さえながらそう言い、朱 瑤がその言葉にゆっくりと頷く。
大通りを真っ直ぐに歩き、洒落た看板を出した小さな喫茶店の前で足を止めるとオープンテラス部分のテーブルに腰を下ろす。真っ白なテーブルの端にチョコンと立ててあるメニューを取り、各々が食べたいものを探そうと二つ折りにされたメニューを開き・・・
「紅茶で」
ただ1人、メニューに手を伸ばさなかったトキノがそう言って、長い足を組むとそっぽを向いてしまう。
「トキノ、何も食べないんですか?」
眉根を寄せて『えーっ』と言う抗議の視線を向けるキウィ。
「そうですよ。何も食べないなんて体に悪いですわ」
ナンナがメニューの上に細い指を滑らしながらそう言って、自分はサンドイッチと紅茶を頼むとパタンとメニューを閉じた。瑤も暫く考えた後でナンナと同じメニューに決め、キウィがあれこれと考えた末に結局全員同じものを注文することになった。紅茶だけと言っていたトキノだったが、キウィに押し切られる形でサンドイッチも注文したのだった。
人がまばらな喫茶店なだけあって、注文した品はすぐにテーブルの上に並べられ、やけに熱い紅茶に息を吹きかけながらナンナが上目遣いでキウィとトキノを交互に見ると薄っすらと色を入れた唇を薄く開けた。
「これからどうしましょうか?ハロウィンの衣装を買いに行くと言っても、他にも色々とそろえなくてはならないものもありますでしょう?」
「他にも、ですか?」
卵の入ったサンドイッチを頬張りながら、キウィがナンナの言葉に首を傾げる。
ハロウィンと言えば、仮装をしてお金をせしめ・・・じゃなく・・・仮装をして、お菓子をせし・・・貰う、日だ。
「ハロウィンと言えば、魔除けのイベントですし・・・とにかく、重要なのはカボチャの数ですわ」
「カボチャ?」
ジャック・オ・ランタンにするカボチャの事を言っているのだろうが、それにしたってカボチャの数に決まりでもあったのだろうか?
首を傾げるキウィ以下、トキノと瑤にナンナが力説する。
「多ければ多いほど、カボチャはその役割を果たすのですわ!」
グっと右手に力を入れるナンナ。
「そうなんですか?それじゃぁ、カボチャはたくさん買いましょう」
キウィがニコニコと微笑みながらそう言い・・・結局どんなに買っても持つのは自分ではないので、あまり困ることはない。
サンドイッチを綺麗に食べ終わると、ここは自分が出すからと言ってキウィがお金を払い、一同は雑多に品物が並ぶお店の中へと足を向けた。
色とりどりの衣装を見ながら、瑤が困ったように視線を左右に揺らす。
ハロウィンの衣装を買いに行くと言う事でついてきたは良いが、ハロウィンなんて初めてで、どんな衣装を着たら良いのか分からない。
その隣ではナンナが鼻歌交じりに衣装を手に取り、鏡の前で自分にあった衣装を探している。
大きなウィッチハットにはウサギの耳がついており、杖の上部にはオレンジ色のジャック・オ・ランタンのミニチュアがついている。
ワンピース型の衣装は胸の部分に赤いリボンがついており・・・ナンナは満足そうにそれらを持っていたカゴの中に入れると未だに決めかねている瑤に視線を向けた。
「どうしました??」
「・・・いや・・・いまいち、どんな服が良いか・・・」
分からない、そう続くはずだった瑤の言葉はややハイテンション気味なキウィの言葉に遮られた。
「これなんかどうですか??」
煌びやかな王子風の服を持ってこられ、瑤がブンブンと首を振る。
胸元にこれでもか!とあしらわれたレースは、さながら甘い生クリームたっぷりの苺のショートケーキを思い出す。ねっとりとした甘さ、口の中でなかなか溶けない生クリームの後をひく味・・・考えただけでも胸がムカムカしてくる。
「それはどうかと・・・せめてこちらの方が・・・」
トキノのそんな言葉に、顔に縦線を引いて固まっていた瑤が天の助けとばかりに顔を上げ・・・あまり変わらない王子服を押し付けられ、どんよりとした影を背負って俯く。
確かに、フリルの数は激減した。
キウィの持ってきた王子服は、うっかり寝巻きにしてしまったならばフリルで窒息してしまうかも知れないと言う危険性を持っているのに対し、トキノの持ってきたものはこれを着て大通りを歩いたならば通りの視線は君のもの!と言うくらいの威力しか持っていない。
簡単に言えば、まだ着ていても不自然は・・・不自然は、ない、と、思う・・・ヨ?と言うくらいのものなのだ。
「あの、もっとこう・・・別なものは・・・」
折角持って来てもらったものを無下に断るわけにもいかず、かと言ってコレを着るわけにもいかない。そもそも、構造がどうなっているのか不思議でならない。ボタンはどこ!?どこから着るの!?と言うレベルだ。
「あら、お2人ともダメですよ」
2人が来たからもう安心と思い、自分の衣装探しに再び思考を戻していたナンナがキウィとトキノが持ってきた衣装を見て軽く首を振った。
「ハロウィンは魔女とか悪魔とか、そう言う仮装をするんです。んー、でもそうですね・・・・このフリルを生かして、ちょっとシャツを赤く染めてドラキュラ、なんて良いかも知れませんね」
「いや・・・だから・・・」
「あっ!こっちに悪魔の羽根がありますよ!」
瑤の言葉を遮って、キウィが小さな黒い羽根を持ってくるとペタリと瑤の背中に当て、トキノが妙な気をきかせて角のついたヘアーバンドと尻尾を持ってくる。ナンナがいそいそと他の売り場を回り、黒いシャツと半ズボンを持ってくると瑤に手渡し、試着室へと引っ張っていく。
「あの・・・?」
「大丈夫です、きっと似合いますから」
ナンナが柔らかい笑顔でそう言い・・・そう言う事を言いたいのではないと反論しかける瑤をそのままに、真っ白なカーテンをシャーっとひいてしまった。
・・・これは着替えないわけには行かない。
あまり気乗りしないながらも、ノロノロと悪魔衣装に身を包むとカーテンを開け・・・
・・・再び閉めた。
今、目の前で起きた事をもう一度思い返してみる。
カーテンを開ける→ナンナが微笑んでいた→キウィがニコニコと笑っており、その隣ではトキノが山のような荷物を抱え込んでいた。さて、その手に持たれていたものはなんだったのか、もう一度よく思い出してみる。
真っ白な包帯、狼のような着ぐるみ、その他色々・・・
「さ、どれが一番似合うのか決めましょう」
「そうですね!」
そんな明るい声とともにカーテンが開き・・・何故か妙な闘志を漲らせているナンナとキウィによって、瑤はその後小一時間ばかり着せ替え人形にでもなったかのように次から次へと衣装を試着していったのだった。
わいわいと楽しそうに着せ替えをして遊んで・・・いや、瑤に似合う衣装を探している一団から少し離れた位置で、シオンは成り行きを見守っていた。
キウィが出かけると言う事で、入ったお金の8割近くをお小遣いとして渡してしまった超親バカのシオンは、キウィが心配だと言う事でこんなところまで後をつけて来ていた。
本来ならば今日は仕事が入っているはずだったのだが・・・
仕事に向かう途中、可愛いキウィが強面のお兄さんにからまれたらとか、もしも食べつけないものを食べてお腹を壊したらとか、道端に落ちていた石に躓いて転んで怪我でもしてしまったらとか、色々と考えているうちに悪い方へ悪い方へと思考は向かい、いてもたってもいられないほど心配になってしまい、仕事をキャンセルして急遽キウィ一行の後を追うことになったのだ。
筋金入りの親バカだ・・・
こっそりと後をつけて見つからないように陰から見守ることにしたシオンだったのだが・・・
実のところ、キウィには思いっきり気付かれていた。
ただ、子供の優しさとしてそのことはあえて気付かないフリをしてあげていた。
まぁ・・・簡単に言ってしまえば無視だ。
「トキノ、トキノ!これどうですか?」
ニコニコとトキノに笑顔を振りまきながら、右手に持った狼耳のついたヘアーバンドを差し出す。既に自分の頭には兎耳のヘアーバンドが装着されており、ピョコンと天に向かって立ち上がっている耳は可愛らしい。
「いや・・・」
「ほら、トキノも被ってみてください!」
ぐいっぐいっ!と袖を引っ張られ、屈んだ隙にスチャっと頭の上に乗せられる狼耳。
「これは・・・通信機能つき、なんですか?」
「そうですよ〜?」
キウィの声が2重に聞こえた。
1つは空気を介した直接の音で、もう1つは通信機を介しての音だ。
トキノが頭からヘアーバンドを取り・・・その腕をグイグイと引っ張っていくキウィ。
「今度は何ですか?」
「あっちの店で、トキノに似合いそうなマントを見つけたんです!」
キラキラとした笑顔を振りまくキウィ。兎耳のせいでなおさら可愛らしく見えるのだが・・・指差す先には兎の耳をつけた人は入店不可と言われ、たたき出されてしまいそうな高級ブランド店だ。
扉を押し開け、悠々と中に入っていくキウィ。
店員と思しき人が、一瞬だけキウィの頭の上に乗せられた真っ白な耳に目が点状態になっていたが、すぐに気を取り直したように表情を戻すと少し離れた位置で控え目に2人の様子を見守っている。
口を出しすぎず、かと言って困った時にはそっと出てきて対処してくれる・・・初老の紳士風の店員男性は接客の重要な部分をよく理解しているようだった。流石は高級店だ。売る品物に見合うだけの接客もサービスとして行っているのだろう。
「これです!」
キウィが差し出したのは肩の部分に控え目な模様の入った黒のマントだった。縁が白くなっており、上質な生地らしく手触りは滑らかで気持ちが良い。
――――― ただ、やはり高級店。値段は普通のマントと桁が違っている。
「どうです?」
「良いとは思いますけれど・・・」
なにぶん値段が張る。煮え切らないトキノの態度にキウィが絶対に似合うからと断言し、買ってあげるとまで言い出したのだった。流石に買ってもらうのは気がひける値段なだけに断りを入れるのだが、キウィも引き下がらない。
・・・・・・・・先に折れたのはトキノの方だった。
「絶対、似合いますよ♪」
天使のような笑顔でそう言われ、手渡されたマントにほんの少しだけ・・・・ほわっと温かいものが胸を掠める。
・・・勿論、キウィがこっそりと『後で給料から引こー』と、思っていることなどこの時のトキノには知るよしもなかったのだった。
≪ 迷子捜索 ≫
気付けば大量の荷物を持たされており、トキノはどうしてこんなことになったのかと首を傾げながらも手渡されていく荷物を黙々と持って歩いていた。
「それにしても、ドラキュラってなんですか?」
右手に提げた袋の中に入っている衣装を思い出しながら、瑤が軽く首を傾げる。
こう言うことはナンナに聞いた方が一番早そうだと思ったからこそ、視線は数歩前を歩くナンナの背中へと向けられていた。
「ドラキュラは、人の血を吸ってその命を奪う、または自分の同族にしてしまう恐ろしい生き物なんです。吸血鬼・・・と言った方が正しいかも知れませんね。ドラキュラは吸血鬼一般を表す言葉としても使っていますけれども・・・」
「吸血鬼・・・血を吸う鬼・・・僵屍みたいなものかな・・・」
瑤が自分なりに吸血鬼のイメージを固め、コクリと頷く。
カボチャを大量に買ったナンナの隣、大きな荷物を抱えて歩いているトキノ、そして・・・
「あれ?」
数歩後ろを歩いていた瑤だからこそ気付けた違和感が、そこにはあった。
「キウィさんは・・・」
「あら?トキノさんのお隣にいらっしゃいませんでしたか?」
「いえ、ナンナさんの隣にいるとばかり・・・」
その場にいたのは、ナンナとトキノと瑤だけだった。兎の耳をつけたキウィは忽然と姿を消していたのだった。
「あれ・・・・・・?」
3人は道の真ん中で呆然と立ち尽くすと、いつキウィがいなくなってしまったのか、記憶を探り始めた。
一方、柱の陰からキウィを見守っていたシオンはと言うと、突如として姿が見えなくなったキウィを探してマナウスの町を走り回っていた。
顔は青ざめており、たまたま肩が接触して倒れてしまって女性に謝罪を述べて手を差し出すと、逆に大丈夫ですか?と聞かれてしまうほどシオンの顔色は悪かった。
その頭の中を巡っている単語はたった2文字の言葉だった。
『 誘 拐 』
見るからにお金の持っていそうなキウィ一行は、先ほどから柄の悪そうなお兄さんに絡まれそうになっていた・・・のだが、親バカシオンは可愛いキウィになにかあっては大変と、キウィ一行に近づく前に素早く路地裏におびき寄せて片付けていたのだった。
それなのに・・・まさか自分の目の前でキウィが誘拐されるなんて・・・
いくら捜しても見つからないキウィに、ナンナと瑤は焦る心を抑え切れなかった。
もしもこの街中でキウィが怖い思いをしていたら?なにかあったとしていたら?
「本当に・・・どこに・・・どこに、行ってしまわれたのでしょう」
ナンナが目を伏せ、長い睫毛が頬に薄っすらと影を落とす。
「もう、あれしか・・・」
トキノが何かを思いついたようにそう呟き、苦虫を噛み潰したような顔をして目を伏せると思い直したように顔を上げ、首を振る。そして再び苦虫を噛み潰したような・・・
「あれとは、なんです?」
瑤の言葉に、両手一杯にぶら下がった袋の中からふわふわとした茶色い物体を取り出す。
ファンシーな狼の耳・・・つき、ヘアーバンドだ。
「あの・・・トキノさん?」
「これは、通信機なんです」
こんな大事に何をしでかそうとしているのかと言う非難の視線に、トキノが慌ててそう言う。
それならば直ぐにでも連絡をとったほうが良いと言う正当なナンナと瑤の意見に、トキノの視線が揺れる。
ためらい・葛藤・躊躇・・・・・・そして、諦め・・・・・・
すちゃっと勢い良く頭の上に乗せ ―――――――
「トキ・・・。 ・・・・・・・!!!!!!!」
突然細い路地から飛び出してきた男性は、トキノの姿を見ると突然大声で笑い始めた。
「あはは!!あ・・・ははははっ!!!な、なんだソレ・・・ははははははっ!!!!!」
お腹を押さえ、トキノを指さして笑うシオン。今にも地面に倒れて転げまわりそうな大爆笑に、ナンナと瑤も堪えていた笑い声を控え目に洩らす。・・・あくまで、クスっと言うくらいの控え目な調子だったが・・・。
「はぁ・・・それよりトキノ!キウィはどこに行ったんだ!?」
大爆笑の余韻すらないほどにスパっとした切り替えで、シオンが真顔になるとトキノに詰め寄る。
「あの、シオンさん・・・キウィさんはいなくなってしまわれたようで・・・」
「そうなんですか?」
「えぇ・・・わたくし達がついていながら・・・」
シュンと肩を落とすナンナに、柔らかい笑顔を向けるとその肩をポンと軽く叩く。
「気に病まないで下さい。悪いのは・・・トキノ!お前がついていながら・・・」
トキノと仲の悪いシオン・・・軽いやり取りの言い争いはいつしか軽い乱闘へと発展し、ナンナと瑤が止める間もなく近くにあった壺を派手に壊し、洋服を売っているお店の扉を破壊する・・・
「ちょっとアンタ達!!なにやってんのよっ!!」
店の中からキンキンと甲高い声をした女性が出てくると、乱闘をしているトキノとシオンの頭を軽くはたき、その背中を蹴っ飛ばした。
長い髪を頭の高い位置で結び、上品な白のワンピースを着た女性の突然の力技に、トキノとシオンがつんのめってその場にベシャリと倒れ込む。
「す・・・すみません」
「申し訳ありません・・・」
一気に冷静になったシオンとトキノが女性に謝罪の言葉を述べ、壺と壁を弁償すると言い財布を開け・・・ペコペコと頭を下げながらその場を後にする。
「トキノさんもシオンさんも、お怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫です」
「えぇ」
ナンナの気遣いに2人が頷き・・・まったく同じタイミングでの言い出しで重なった声に苦々しい表情を浮かべる。
「あの、それで・・・通信機は・・・」
瑤の控え目な主張に、トキノが頭の上にチョコンと乗った可愛らしい狼耳を触り、シオンが再び競りあがってくる笑いをなんとか飲み込むとキウィを早急に見つけるようにと言葉を向ける。
「これで、見つかりますよね?」
「えぇ。おそらく・・・」
≪ Ending ≫
キウィの言い訳としては、迷子になったと言う事だったのだが・・・
実際は隠密行動でこっそり抜け出して資金調達の為にカジノへと足を向けていたのだった。
勿論大勝し、懐がホクホクになったところでトキノからの連絡があった。
・・・あれだけ捜したのに見つからなかったなんて、きっと行き違いになったりしていたのでしょうと言うナンナの言葉で一応の決着を見せた今回の騒動だったが、シオンもトキノもどこか釈然としない気持ちだった。
キウィ捜しでクタクタになった足を休めるために入った喫茶店で、同じテーブルに向かい合わせに座り、目の前には全く同じ色をしたカップに、全く同じ飲み物・・・犬猿の中であるにも関わらず、何故だか今日は偶然の一致が多い。
「それにしても、色々買いましたねぇ〜」
まだメニューを決めかねているキウィがそう声をかけ、早速買って来たカボチャに目や口をつけているナンナと瑤が顔を上げる。
鋭いナイフでくりぬいたカボチャの中身は別に買った真っ白なボウルの中に入れ、これで後で何かを作るらしい。
せっせとくりぬくナンナの隣では、細かい作業が苦手な瑤が悪戦苦闘している。
・・・今にも目と口がくっつきそうな勢いだ・・・
こうなれば力技・・・と、ESPで強引に穴を開けてみる・・・
「うーん・・・うーん・・・どうしましょう・・・」
既に全員の注文したものが目の前に置かれている中で、未だに注文が決まらないキウィ。
刻一刻と過ぎていく時間と、だんだんと減っていくテーブルの上に並べられた紅茶やケーキに、キウィは1つの決心をするとパタンとメニューを閉じ、店内をウロウロとしていた店員さんを呼ぶととんでもない事を口走った。
「メニューに書かれたデザート、全部お願いします」
「ぜ・・・全部、ですか?」
「はい♪」
男性がいそいそと厨房へ引っ込み、出来上がって冷蔵庫に入れられていたであろうデザートを次々に持ってくる。小さな丸テーブル1つでは乗り切らず、隣のテーブルも持って来て・・・
「皆で食べましょう」
そう言って、店員さんに人数分のお皿とスプーン、フォークを頼むと少しずつ全種類をお皿の上に乗せていく。
甘くて美味しいデザートの数々は、色鮮やかで・・・・・・
ゆっくりと堪能した後、笑顔で会計をシオンに渡し、全額払えきれずに皿洗いをしなければならなくなったシオンは、それから数日マナウスの町の小さな喫茶店で働かなければならなかったのだった・・・・・・。
≪ E N D ≫
■━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━□
0347 / キウィ シラト / 男性 / 24歳 / エキスパート
0289 / トキノ アイビス / 男性 / 99歳 / オールサイバー
0375 / シオン レ ハイ / 男性 / 46歳 / オールサイバー
0579 / ナンナ トレーズ / 女性 / 22歳 / エスパー
0614/ 朱 瑤 / 男性 / 16歳 / エスパーハーフサイバー
■━┳━┳━┳━┳━┳━┓
┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━□
この度はご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
ハロウィンのお買い物・・・と言う事で、ほのぼのとした雰囲気で執筆いたしました。
和やかなお買い物風景を描けていればと思います。
キウィさん
初めましてのご参加まことに有難う御座いました。
途中でカジノに行ったり、最後にはシオンさんにお会計を渡したりと無邪気なキウィさん。
どんなことをしても、きっとその無垢さで全て許されてしまうのだろうなぁと、思いました(笑)
そんな可愛らしい雰囲気を損なわずに描けていればと思います。
トキノさん
初めましてのご参加まことに有難う御座いました。
キリっとした印象を受けたトキノさんでしたが・・・結構貧乏くじを引かされているような・・・
荷物持ちや狼耳、ご苦労様でした♪
約束通り、キウィさんがお仕事を片付けてくださる事をお祈りしております。
シオンさん
初めましてのご参加まことに有難う御座いました。
親バカ・・・素敵な響きです(笑)
キウィさんが大好きで大切で・・・そんな雰囲気が少しでも描けていればと思います。
喫茶店でのお仕事、頑張ってください♪
ナンナさん
初めましてのご参加まことに有難う御座いました。
優しい雰囲気で、すこーし天然な印象を受けるナンナさん。
沢山のカボチャを前に頑張るナンナさんの様子を想像し、思わず顔が緩みました(苦笑)
ナンナさんの雰囲気を損なわずに描けていればと思います。
瑤君
初めましてのご参加まことに有難う御座いました。
クールな方かな?と思いきや、可愛らしい方で思わず力が入ってしまいました(笑)
お買い物中は着せ替え人形のように・・・そしてジャック・オ・ランタンは力技・・・素敵です♪
瑤君を可愛らしく、そしてちょっぴりクールに描けていればと思います。
それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。
|
|
|