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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


第2階層【食糧生産プラント】ホワイト・ノート

 フルーツ大作戦


 ライター:斎藤晃


【Opening】

 ブラジル北部アマゾン川上流域に聳え立つ高層立体都市イエツィラー。審判の日以後ロスト・テクノロジーを抱いて眠る過去の遺物は、もしかしたらその目覚めを静かに待っているのかもしれない。忘れられ続けた軌道エレベーター「セフィロト」に集う訪問者たちの手により、ゆっくりと。
 そしてこれは、決して安全とは無縁のその場所で繰り広げられる訪問者たちの日常と非日常である。




「……このメンバーで本当に大丈夫なのか?」
 ユーリ・ヴェルトライゼンは前を歩く笑顔たちに半ば以上不安を感じながら、この日5回目になる自問を無意識に口の端にのぼらせていた。
 ちなみに1回目は同居人、清音響に誘われて一緒に行くメンバーの名前を聞いた時である。その時は“このメンバー”ではなく“そのメンバー”だったが。2回目は“そのメンバー”が集合場所となっていた響のカフェ兼パブ『天宝鈴』に集まってきた時だった。3回目は準備万端で店を出発する時、4回目はヘルズゲートをくぐる時。
 そして5回目である。
 彼は今、第2階層への入口となる高速エレベータへ続く通路を歩いていた。これから、このメンバーでセフィロト第2階層【イェソド】へ行こうというのである。
 このメンバー。通称『砂の耳』と呼ばれるずば抜けた言語習得能力を持ち、またエスパーとしても強力な治癒力を持つ響を筆頭に、同じく治癒ESPを持ったエスパー、ナンナ・トレーズ。サイバーメンテナンスのエキスパート常盤朱里。そして本人は戦えると言い張るが見た目はジュニアスクールに入ったばかりみたいな子ども姫瑛。
 戦闘力という点で、これほど心もとない4人もあるまい。しかもみんなカラッポのリュックだの、大きなバスケットだのはしっかり持っているのに、誰一人武器を持っていないのだ。エスパーは場合によっては確かにそれ自身が武器になりうるが、瑛を除いて攻撃・守備共にそれに使えるESPを持っていないにも関わらず、である。護身用の武器すら持っていないのだ。
 響が自分を有無も言わせず誘った理由を奥歯で噛み締め、ユーリは哀愁など漂わせつつ「ふっ……」と自嘲の笑みをもらしてみた。
 大体、ヘルズゲートの中だって最近は随分タクトニムが減ったとはいえ、危険地帯である。ましてや最近、その到達を許したばかりという第2階層は殆どが未開の地。そんな場所に武器も持たず、目的がフルーツ狩りで遊びに行くなんて、正気の沙汰とも思えなかった。思えなかったのだが、止められなかった否は、自分にもなくはない。
 ユーリは、はぁ、と深い溜息を吐きだした。ナンナがそれに気付いて隣に並んで歩く。
「大丈夫ですわ、ユーリさん」
「ナンナお姉さまも、お兄さんも瑛が守るです!」
 ナンナとナンナの逆隣に並んだ瑛がユーリと同じ目の高さで握り拳を作ってみせた。まだ子どもの瑛は、ずっとESP飛行でふよふよと宙を浮いて移動しているのだ。
「はあ」
 その笑顔が更に自分の不安を掻き立てる事彼女たちは気付いているのだろうか。
 そうしてこの日何度目かの溜息を吐いたとき、通路の奥から銃声が聞こえてきた。
 何事かと少なからず5人に緊張が走る。早速突っ込んでいこうとする瑛をナンナに預けて、ユーリは通路の先のホールへと走りだした。
 通路の突き当たりにエレベータホールがある。そこでは丁度圧倒的な火力による一方的な銃撃戦が始まったところだった。
 高さ約4m。8本足の蜘蛛型の下半身に、多腕の上半身、9つの目を持つ大型のシンクタンク。それが持つバルカン砲から放たれる弾丸の嵐に、1人の男が1人の女を抱きかかえるようにして、ホールから通路へと飛び込んできた。
 ユーリは一瞬身構えてから、男の見知った顔に緊張を解く。
「まぁ、シオンさん」
 ナンナが笑顔で男に声をかけた。黒のレザーに身を包んでシオン・レ・ハイが笑みを返す。
「あれは、一体?」
 ユーリが尋ねる。
「この高速エレベータを守るゲートキーパーのようです。どうもパスカードとやらが必要で、止めたんですが……」
 シオンがたまたまここへ訪れると先客である女性がゲートキーパーにパスカードの提示を求められているところだった。持っていないと答えた女に、ゲートキーパーは撤退を指示。それを無視して通ろうとした彼女に、奴は容赦なくバルカンを構えると、問答無用で制圧射撃を始めようとしたのである。それにシオンは慌てて高機動運動で彼女を担いで退避したのだった。
「この通りです」
 シオンは抱えていた女性を下ろして、肩を竦めてみせた。
 その傍らで草原を思わせるような鮮やかな緑の髪に青い目をした女が、足下の埃を払って顔をあげた。
 その姿にユーリは思わず開いた口の塞ぎ方を忘れてしまう。
「まぁ、可愛いお洋服ですわ」
 ナンナが言った。
「わたくし知ってます。これ、水兵さんのお洋服ですわね」


 【セーラー服:セーラーカラーを使った制服。セーラーカラーは元は水兵の制服の襟に使われていた。風の強い海などで音や話し声などを聞きとりやすくしたものである】


「永遠の美と結婚を約束するという珍種の果実があるって聞いたの」
 と、藤田あやこが真剣な面持ちで言った。そのために彼女は第2階層へ向かうらしい。
「そんな果実、聞いたことありませんが?」
 響が首を傾げて朱里を見た。
「わ…私もです……」
 朱里が、人見知りなのか恥ずかしげに顔を俯けたまま頷いた。小柄で可愛い。ちょっと和風テイストが入ったゴスロリがこれまたよく似合う。何となくあやこのコンプレックスを刺激する少女であった。
 だが―――。
「まあ、永遠の美と結婚ですって? わたくし是非見てみたいですわ」
 ナンナが空を思わせるような澄んだ瞳をキラキラと輝かせて言った。その目線が自分とあまり変わらないことに、あやこは目を見張る。ナンナはあやこより5cmほど低かったが、ヒールを履いていたので、動きやすいスニーカーを履いていたあやこと変わらなくなっていたのだ。しかしナンナは別段その身長を気にしている風もない。
「…………」
 理系ゆえに時々男みたいな性格と言われる事を気にしているあやこだったが、医者見習いであるナンナもある意味理系なら、理系のせいにするのはよくないのかもしれない。
「瑛も見てみたいです」
 背はそんなに高くないはずなのに、あやこと同じ目の高さで瑛が言った。
 気付けばここにはあやこが見下ろして話す相手が1人しかいなかった。自分を軽々と抱えあげたシオンも背が高い。自分の長身をこんなにも気にせずにすむのは、ここがセフィロトの塔という特殊な空間だからなのだろうか。
「どうせフルーツを採りに行くところなんですもの。それも一緒に探しましょう」
 ナンナがお気楽に言った。
 それにユーリは何となく視線を彷徨わせ、やがて助けを求めるようにシオンを見やる。
「しかし第2階層に行くにはパスカードが必要みたいですよ」
 シオンが言った。
 高速エレベータに乗り込むにはパスカードが必要であり、それがなければゲートキーパーと一戦し勝利するしかないのだ。
 ユーリはエレベータホールの方をそっと覗き見た。8本の腕にそれぞれバルカンやらレーザーガンなどを持っている。恐らく、それ以外にも大量の武器を隠し持っていることだろう。勝てる見込みは限りなく0に近い。しかしその状況をどこまで理解しているのか、相変わらずナンナはおっとりしている。
「まぁ。エレベータに乗るにはパスカードが必要なんですの?」
「あんなの瑛がばばばってやっつけちゃうよ」
「でも、ゲートキーパーは抗ESP樹脂の装甲を持っていますよ」
 意気込む瑛にシオンが言った。
「ガーン」
「諦めるんだな、響」
 ユーリは響の方に手を置いた。そもそも“このメンバー”で行こうというのが無茶な話しだったのだ。
「あ、だ…大丈夫です。わ…私が、パスカード、持ってますから」
 おずおずと朱里がパスカード出して見せた。
「えぇ!?」
「何で……」
「譲ってよ!」
 あやこが朱里の手を掴む。
「こ…これは持ち主とカードが一致しないと使えないので、ゆ…譲る事は出来ませんが、パーティーの1人が持っていれば、も…持っていない人も通してくれるんです」
 朱里が答える。
「では、皆さんに同行させてもらってもいいですか? その代わり、タクトニムや力仕事は引きうけますから」
「は…はい」
 願い出たシオンに朱里が頷いた。
「私も!」
 あやこが手を挙げる。
「まぁまぁ、当然ですわ。一緒に、永遠の愛と結婚を約束してくれる果実を捜しましょうね」
 ナンナがあやこの両手をとって、しっかと握る。あやこは強く頷いた。
「では、みんなで参りましょう」
「……まぁ、戦闘要員が増えたし、いっか」
 ユーリがやれやれと息を吐く。響が良かったね、と笑った。
 ゲートキーパーにパスカードを提示しながら7人がエレベータへ歩き出す。
「ところで皆さんはどこへ行くところだったんですか?」
 ふとシオンが尋ねた。
 恥ずかしそうに俯いてしまった朱里の代わりに響が答える。
「第二階層に食糧生産プラントというのがあって、そこへ果物を採りに」
「い…行った事はないんですけど……」
 朱里が付け加えた。
「それなら、浄水プラントから回る事をおススメしますよ」
 突然、背後から声がした。一同が振り返る。
 そこに立っていたのは、長い黒髪に毛先の白が印象的な、赤い服を纏った男だった。腰に二本の刀を佩き対戦車ライフルを背負って、両手にはアタッシュケースを提げている。
「トキノさん……」
 朱里がその名を呼んだ。トキノ・アイビスはチラリと傍らのシオンを見やって嫌そうな気配を眉間のあたりにのせたが、すぐに朱里に向き直ってあくまで泰然と言った。
「ちょうど良かった。常盤さんに渡したいものがあったんです」
 トキノはそう言って朱里の前に左手のアタッシュケースを置いた。
「ストーカーさんですか?」
 シオンがシレッと突っ込むのに、トキノは一瞬ムッとして睨んだが、すぐに穏やかな眼差しを朱里に向ける。
「危険物ですので取り扱いには注意してください」
「そんな危険物を彼女に渡してどうするんですか。それは私が預かりましょう」
 トキノが再び眉尻を上げる。相変わらず2人は犬猿の仲らしい。しかし朱里はそんな2人に気付いた風も無く、アタッシュケースに手を伸ばした。
 それをすっと横からシオンが取り上げる。
「フルーツ狩りにはただの荷物ですから、私が持ちましょう」
 力仕事は自分の仕事です、と主張するシオンに朱里は「あ…はい。お…お願いします」と答えた。朱里がそう言った以上、アタッシュケースの取り扱いについてトキノがダメだし出来るわけもなく、彼は不愉快そうに視線をそらせただけだった。
「な…何だかわかりませんが、あ…ありがとうございます」
 朱里がトキノに頭を下げる。
「いいえ」
「あ…それと、この前も……」
 トキノは少しだけ困ったように首を傾げた。
「私は何もしていませんよ」



   ★



「そういえば、あなたは第2階層の事をご存知なんですか?」
 総勢8名が高速エレベータに乗り込んだところで、響がトキノに向かって尋ねた。
 ドアが閉じて高速エレベータは音もなく動き出す。
「えぇ。食糧生産プラントは第2階層外周をぐるりと囲むように存在しているので、かなり広いですよ。フルーツを採りに行のであれば、第2階層中層北部にある浄水プラントから回るといい。あそこには下水の沈殿物を処理して肥料に加工する施設があって、そこから生産プラントに送られているので、そのパイプラインを辿れば、迷う事なく植物栽培エリアに辿り着けるはずです」
 トキノが言った。
「その植物栽培エリアという場所には、どんな果物があるのかしら?」
 ナンナが期待に満ち溢れた目をトキノに向ける。
「植物栽培エリアには、熱帯棟、温帯棟、冷帯棟といった具合に建屋が分かれていて、世界各地の植物が入手可能なようになっていますよ」
「え? 世界各地の植物!?」
 響は思わず目を輝かせていた。ここではやはり入手困難な食材というものが多数ある。もちろん入手不可能な食材も多数ある。それが、世界各地の食材を一手に入手できるかもしれないというのだ。うまくすれば無料で。
 しかしともすれば、持ってくるリュックは少し小さかったかもしれない、と思わないでもない響だった。こんな事なら、ユーリ君にも武器だけでなく、リュックやバッグや、どうせなら台車なんかも持たせておくんだった、とユーリを見やる。
「?」
 響の視線に気付いてユーリが首を傾げのに、響は盛大な溜息を吐き出した。
「…………」
「まあ、でしたらドリアンもありますの?」
 ナンナが尋ねる。
「あると思いますよ。たぶん、熱帯棟ではないですか」
「桃は? 桃は?」
 瑛が尋ねる。
「それは温帯棟ではないでしょうか」
「温帯棟から行こう!」
「熱帯棟から行きましょう!」
 ナンナと瑛が同時に言って、二人で睨みあった。どっちも譲れないという顔をしている。
「永遠の美と結婚を約束してくれる果実はあるかしら?」
 あやこが尋ねた。
「は?」
 トキノが思わず口の塞ぎ方を忘れる。どう返していいものかわからず、視線が何となくユーリの方へ動いた。それは一体どんな果実。
「それよりタクトニムは?」
 一応、戦闘要員として連れてこられたユーリが口を挟む形で尋ねた。
「恐竜がいます」
 トキノが真顔で答える。
「は?」
 今度はユーリの目が点になった。
「ビーストと呼ばれる獣系モンスターです。体は大きいものが多く、銃の弾は弾く、ナイフは刺さらない、ボディESPを使ったエスパーより俊敏に動く、ナイフより鋭い爪を持っている、のが特徴です」
「…………」
「ベースになっている獣によっては群れで生息している可能性もあるので、とにかく会ったら逃げる事をおススメします」
「……そうか」
 ユーリは視線を彷徨わせた。
 もしかしたら、とんでもないところに連れてこられたのかもしれない。サブマシンガン、持ってきて良かったな、などと使えそうな武器を脳裏でピックアップしながらユーリはその日6回目になる言葉を無意識に吐き出していた。
「……このメンバーで本当に大丈夫なのか?」
 5回目呟いた時よりは、格段に戦力があがっているし、経験者もいる。しかし不安は一向に収まる気配をみせないユーリであった。


 やがてエレベータは音もなく止まり、扉が開いた。
 エレベータを出ると、小さなフロアがあって、コンソールパネルなどが並んでいる。
 そこでパスカードを持っていなかった者達が、専用のパスカードを発行してもらう。それを終えると8人はその扉の前に立った。
 扉が開く。
 そこに広がっているのは、目を疑うような密林だった。
 銃を構えていたあやこは暫し呆気にとられて銃を下ろした。
「まぁ、トキノさんの言う通り、すぐ着きましたわね」
 ナンナが笑顔で飛びだした。
「一番最初は温帯棟って言ったのに」
 ぷりぷりと頬を膨らませながら瑛も出て行く。
「あ、いけません! ナンナさん! 瑛さん!!」
 慌ててトキノが2人を追いかけた。
「トキノさんの話しだと食糧生産プラントって浄水プラントの先じゃなかった?」
 響が首を傾げながら出る。
「ああ、まさかこれが浄水プラント……じゃないよな」
 ユーリが後ろを振り返りながら言った。そこにあるのは狭いエレベータホールのはずである。
「あ…あそこ……」
 朱里が何かの実を見つけて指を差す。
「何だろう。こんなのは見た事ないですね」
 そこになっている赤い実をまじまじと見ながら響が呟いた。
「こんな事なら毒味係でも連れてくるんだったな」
 ユーリが肩をすくめる。
「私が食べてみましょう」
 シオンが進み出た。彼は生身の人間ではなくオールサイバーである上に貧乏なため、いろんなところに欠陥があったが、きちんとした味覚を有し毒味も出来るのだった。一口食べる。へびいちごのような食感と味がした。
「これならジャムを作れそうですよ」
 シオンがそう言って笑顔で響らを振り返った。
「へぇ。じゃぁ、採って……」
 言いかけた響の言葉がそこで止まった。顔が見る見る内に蒼褪める。
「? どうしました、響さん」
「……後ろ……」
 朱里が言うのとあやこの銃が火を噴いたのとはどちらが先だったか。
 シオンが後ろを振り返った。
 白い大きな蛇が頭を吹っ飛ばされて枝に垂れ下がっている。
 しかしそこで安堵している状況でもなかった。
 蛇は1匹ではなかったのだ。
「響、朱里、走れ!!」
 2人を庇うようにしてユーリが言った。
「どっちに!?」
「後ろは私が」
 シオンの言葉にユーリが走り出て二人を先導する。
 トキノが迷子になられると困るとばかりにナンナと瑛を両脇に抱えて立っている方へ走り出た。
「蛇だ」
 ユーリの言葉にトキノがこちらです、と走りだす。
「浄水プラントへ逃げ込みましょう」
 やはりここはまだ食糧生産プラントではなかったのか。食糧生産プラントから溢れ出た植物が繁茂しているだけだったのである。
 そうしてトキノの案内で、総勢8名は浄水プラントに駆け込んだのだった。



   ★



 浄水プラントは比較的閑散としていた。
 第二階層にある5つのプラントの中では、空気浄化プラントに次いで2番目に安全な場所である。比較対象が比較対象なだけに、安全と呼べるかははなはだ疑問であるが。
 途中、たぶん烏あたりをベースにしていると思われるプテラノドンみたいなモンスターに襲われるハプニングもあったりしたが、何とかそれをかわして8人は無事、植物栽培エリアへとやって来た。食糧生産プラントの中では食肉生産棟が最も危険であり、それに比べればマシな場所である。
 一応トキノとシオンが辺りを窺いタクトニムが近くにいない事を確認してから、迷った時の集合場所としての簡易拠点地なるものを作った。
「肉食植物に気をつけてくださいね」
 そんなトキノの中尉を胸に面々は気付けば二手に分かれていた。


 温帯棟に入ったのは朱里と響とユーリとシオンだった。そんな4人の目の前に広がったのは。
「うわぁ、イチゴ畑ですよ」
「う…うん」
「イチゴジャムにしちゃうには、ちょっと勿体無いかもね」
 呟きながら響は大きく熟れたイチゴを1つ摘まむと水をかけてユーリの口元へ差し出した。
「はい、ユーリ君」
「ああ」
 促されるまま、反射的に口を開けてしまう。その中へイチゴが押し込まれた。
「どう?」
 咀嚼しているユーリの顔を覗き込むようにして響が尋ねた。
「甘くて旨いな」
 答えたユーリに、響は笑顔で朱里を振り返る。
「食べても大丈夫そうですよ、朱里さん。イチゴ狩りしましょう」
「はい」
 朱里も笑顔を返して、イチゴ畑の中央に立つ。そちらへ足を進めかけた響の背をユーリが「おい」と呼び止めた。
「お前今、俺で毒味しなかったか?」
「ユーリ君の気のせいですよ」
 シレッと笑顔を返して響は朱里の方へ走っていくと2人でイチゴを狩りを始めた。
「気のせい……ね……」
「ユーリ君も早く摘むの手伝ってくださいよ」
 急かす響にシオンがユーリを促す。
「私は見張りをしていますので、ユーリさんもイチゴ狩りをどうぞ」
「あ…ああ……」
 そうして綺麗なものはその場で軽く洗って食べたり、熟れすぎたものはジャム用に採り分けたりしながら、3人はイチゴ狩りを楽しんだ。
 シオンも見張りをしながら、時々イチゴを摘んだ。


 その頃、ナンナと瑛とあやこは、トキノを護衛に熱帯棟に迷い込んでいた。
 パインやマンゴーなど南国のフルーツがたくさん生っている。
「ドリアンさん。ドリアンさん」
 今にもスキップを踏みそうな足取りでナンナはたくさんある他のフルーツには脇目もふらずどんどん進んで行っていた。
「永遠の美と結婚…、永遠の美と結婚…」
 ナンナの後をあやこは周囲に鋭い視線を走らせながら歩く。
 桃のある温帯棟へ行きたかった瑛が、何となくふてくされた顔であやこに声をかけた。
「その果実はどんな形ですなの?」
「前から見ると丸くて、横から見ても丸くて、上から見ると四角なんですって」
 あやこが振り返りもせず答えた。
「…………」
 想像してみたが、瑛にはまったく想像がつかない。言った当の本人もよくわからない顔をしている。
 するとトキノがプラスティック爆弾用の粘土で器用にその形を作ってみせた。
「恐らくそれはこんな形だと思いますよ」
 トキノが手の平にのせたそれを、2人は足を止めてマジマジと見た。丸くて丸くて四角い。
「何色?」
「情熱の赤?」
 何故か疑問形に首を傾げながらあやこが言った。
 丸くて丸くて四角いそれが赤くなったのを想像してみる。
「大きさは?」
「手の平サイズ?」
「どんなのでしょう…楽しみなのです」
 などと3人が話している間に、前を歩いていたはずのナンナの姿はなくなっていた。
「私が捜してきます」
 と、走りだしたトキノを見送って、2人だけでは心もとないあやこと瑛は、温帯棟にいる朱里たちと合流する事にした。
 だが、その朱里は、響たちとはぐれてシオンと2人で熱帯棟へ訪れていた。


 一方ナンナは、誰に似たのか別に誰かに似ていなくとも、充分に嗅ぎ取れる臭いに誘われるようにドリアンを見つけていた。
「見てください、皆さん! あら? 皆さん」
 そこで初めてナンナは自分がみんなとはぐれてしまった事に気がついた。
 ナンナはしっかりとドリアンを2つ採ると大きなバスケットに大事そうに仕舞いながら、元来た道を戻ることにした――つもりだったが、天性の方向音痴をフルに発揮してみんなとも簡易拠点地とも違う方へと歩き出していた。
「あ…あれ、ナンナさん……」
 一番最初にナンナを見つけたのは朱里だった。
「おや、他の皆さんは?」
 ナンナが1人なのに気付いてシオンが尋ねる。
「皆さん迷子になってしまったみたいなんです」
 ナンナが困ったように首を傾げた。
 他の3人が聞いたら断固抗議したかもしれない言いようである。
「い…一緒に行きましょうか」
 朱里がナンナを誘って、3人でトロピカルフルーツ狩りを始めることにした。
 そこへ程なくしてそこへトキノがやってくる。
「ナンナさん。こんなところに……」
 そう声をかけて、傍らのシオンに気付いたトキノは嫌そうに顔を歪めながら、いたんですかと続く言葉を飲み込んでいた。
「はい。良かったですわ。皆さんは?」
 ナンナが尋ねる。
「あやこさんと瑛さんはれいの果実を探しに、温帯棟の方へ行きました。朱里さんたちと合流すると言ってましたが……」
 そこで辺りを見回す。そこにはナンナの他に、朱里とシオンしかいない。あやこと瑛とは入れ違ってしまったのだろうが。
「そういえば、響さんたちは?」
「と…途中まで一緒だったんですが」


 その頃、響とユーリは―――。


「わぁ、見てください、ユーリ君。わさびですよ」
 響が小さな池を見渡しながら言った。
「ああ、そうだな。わさびだな」
 ユーリが半ば以上、投げ遣りに相槌を打った。
「やっぱり持ちきれそうにないですね」
 主目的はフルーツ狩りだったはずなのに、途中からフルーツトマト、プチトマト、茄子、レタスと少しづつ脱線していった響なのである。
 世界各地の食材集め体勢に入ってしまっていた。椎茸、まったけ、トリュフ、きくらげ。
 そしてわさび。腰を下ろして、2本3本と手を伸ばす。
「食糧加工プラントの方に行ったら、そば粉とかもあるのかなぁ……」
 ぼんやり呟いた響にユーリは視線を彷徨わせた。
「そば粉でジャムが作れるのか?」
「ああ、そうでした」
 主目的を思い出して響が立ち上がる。すっかり食材採りに夢中になってしまっていた。
 それからふと辺りを見渡す。
「あれ? 朱里さんたちは?」
「トマトの辺りではぐれたよ。ま、向こうにはシオンがいるから大丈夫だろ」
「……では、そろそろ私たちも戻りましょうか」
「ああ、そうだな」



   ★



 響たちがまだ温帯棟にいるのなら、瑛とあやこは大丈夫だろう、という事で4人はさっそくトロピカルフルーツ狩りを再開した。
 銃声が2つ連なって、ヤシの実が2つ落ちてくる。
「わぁ……」
 朱里とナンナがヤシの実を1つづつ拾い上げた。
「あ…ありがとうございます」
 朱里がトキノに頭をさげる。
 シオンは何も言わずそれを見ていた。普段の彼なら銃で果物を撃ち落そうとしただけで突っ込むだろう、それが対戦車ライフルであるにも関わらず、何も言うどころか、何故かニコニコとしている。それをトキノは気味悪げに見やった。新手の嫌がらせかもしれない。
 しかし朱里たちの手前、自分からけしかけても仕方がないので、実際にはないが胃のあたりにストレスを溜め込みつつ、穏便にやり過ごすトキノであった。
「向こうにバナナもありましたよ」
 シオンが朱里たちを誘う。
 トキノは何となく視線をそらせた。バナナにはいい思い出のない彼である。3人がバナナを採っているのを遠目にタクトニムの接近を許さないようトキノは周囲に気を配る事にした。
 時々手持ち無沙汰に見た事もない色や形の果実を見つけては銃で撃ち落して回収した。うっかり蜂の巣を撃ち落して酷い目にあったりもしたが、所詮刺されても彼の体はオールサイバーである。
 やがて朱里とナンナがバッグからはみ出すほどのフルーツを抱え、シオンを連れて戻ってきた。
 それを見たトキノが言う。
「たくさん果物も採れたようですし、では、そろそろ戻ってお茶にしますか」
「はい」



    ★



「桃さん……」
 瑛がふよふよと飛びながら木に生っている桃をもいで頬ずりしていた。それをあやこが見上げている。瑛は持てるだけの桃を採って降りて来た。
「何とかの果実ってどこにあるんでしょう。あっちは赤いけど林檎みたいなのです」
 瑛が言うのにあやこも腕を組んで首を傾げた。
「そうねぇ……」
「もう少し捜してみますか」
 と2人が歩き出そうとした時、りんご園の向こうから声が届いた。
「あれ、瑛さん?」
「あ、響お兄さんにユーリ君」
 瑛が言う。
「何で俺だけユーリ君?」
「響お兄さんがそう呼んでるからです」
 瑛は胸を張って答えた。
「…………」
 納得のいかない顔を明後日に彷徨わせるユーリの隣で響が可笑しそうに笑いを堪えた。
「あっ!!」
 突然、あやこが響の手に持っている枝に気付いて声をあげた。
「うん?」
「それ……」
「あ、まるくてまるくてしかく?」
「え? なに? これ?」
 響が手に持ってる枝を掲げて見せる。枝の先に実が付いていた。
「微妙にまるくないような気もするけど、ちょっとかなり形は似てるかも?」
 トキノの作った粘土と比べながらあやこが言った。
「赤というより朱色です」
 瑛が指摘する。
「それ、どこで?」
 あやこが響に尋ねた。
「どこだっけ?」
 響がユーリを振り返る。確かトマトの後茄子を採ってその先のレタス畑を越えて、それから雑木林に入ってきのこ類が豊富で―――思い出せない。
「欲しいならあげるけど」
 響がそれをあやこに差し出した。
「ありがとう!」
 あやこがそれを受け取る。瑛が覗き見た。
「これが、何とかの果実?」
「かもしれないわ」
「今から拠点地に戻るとこだけど」
 ユーリが2人に声をかけた。
「はい。じゃ、戻るのです」
 瑛が言ってあやこと瑛は満足げに歩き出した。
 その背を暫し不思議そうに首を傾げながら見送って、響は傍らのユーリに声をかけた。
「……ほおずきがそんなに欲しかったのかな」
「みたいだな」
 肩を竦めてユーリと響は2人の後に続いたのだった。



   ★



「ここは危ないので、持ち帰ってゆっくりジャムを作りましょうね」
 と言っていた響は、その光景を見て愕然とした。
 並べられたカセットコンロの上では鍋がぐつぐつと煮立っている。
「ど…どこまで行ってたんですか?」
 朱里に声をかけられても、暫く声が出せないほどの驚愕に、意識を手放しかけていた響の体を支えて、ユーリが代わりに言った。
「もう、ジャム作り始めちゃったんだ?」
「はい」
「…………」
 いくつも並んだ鍋の前ではトキノが怪しげな何かを鍋に入れ込み木べらでかき混ぜていた。どうやって採取したのか肉食花の蜜なども混ぜ合わせている。
 その隣ではドリアンジャムを作るべくナンナが奮闘していた。
 瑛は、誰が用意したのかキャンピング用の折りたたみテーブル&チェアーに腰を落ち着け桃を広げていた。
 あやこもその向かいに座ってほおずきを弄っている。
「お茶が入ったのでいかがですか?」
 シオンがユーリと響に紅茶とパンの乗ったトレーを運んできた。
「お昼ごはんにと思って今朝焼いたパンなんですが、丁度良かったです」
 と言って、パンにジャムをのせて差し出す。
 美味しいですよ、と付け加える朱里に、響は1つ溜息を吐き出した。しかし、喉も乾いているし歩き回って小腹がすいていた事も手伝って、紅茶を受け取ると一啜り、喉を潤してから、ジャムののったパンを食べてみた。
「このジャム……」
「ピタンガがたくさん採れたのでジャムにしてみたんですが、いかがですか?」
「美味しい。レシピ教えてくれますか?」
「はい、いいですよ」
「やった」
 結局、危険よりもそっちなのか。
 そうしてシオンと響がピタンガジャムレシピで話が盛り上がるのに、ユーリはやれやれと息を吐いて紅茶を飲んだ。
「朱里って思ってたより、行動力あるよな」
「え……?」
「こんなとこでティーブレイクしたり、専用パスカードも持ってたし」
「……皆さんのおかげ……」
 言いかけた朱里がそこで言葉を切った。
 彼女が目をこれ以上ないくらい大きく見開いている事よりも、背後のカサカサという音にユーリは身構える。
 今までタクトニムと殆ど遭遇しなかったのが奇跡みたいなものだったのだ。きたか、ビースト。
 ユーリは振り返った。
 振り返った瞬間、固まった。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 朱里の悲鳴に皆が振り返る。
 ナンナは顔を蒼褪めさせながら、こっちに来ないでとばかりに手元にあるものを次々と投げ始めた。
 お兄さんは守ってあげます、なんて言っていた瑛も固まって動けなくなっている。
 銃を構えたあやこも、生理的嫌悪感に半ばパニックに陥ったのか、引鉄を引いても殆ど当たらなかった。
「頑張れ、ユーリ君!」
 響が朱里の腕を引っ張って安全そうな場所へ移動しながらユーリに声をかけた。
 飲食店勤務の響にとって、それは天敵中の天敵であった。何としても退治してもらいたいそれ―――汚いところが大好きで、カサカサと物音をたて、時に生ゴミを漁る。黒光りした茶色の羽で突然飛び上がっては人を襲う、忌々しき奴。
 ゴキブリをベースにしたモンスター、通称ボキちゃん。
 平均体長1m60cm。2本の触覚は高周波ウィップで鋼もバターのように切り裂く。
 しかし奴の恐ろしさはそんなものではない。小さくたって悲鳴をあげたくなるような嫌悪感の固まりみたいな外見であるのに、それが更に巨大化しているのだ。
 地球上最も強い生命力を持っているだろう。1匹見たら30匹。
 甘い香に誘われてやってきたらしい。
 出来れば触りたくない、とユーリは思った。鋼糸などは使えないのではなく使いたくない感じだ。その効き目は果てしなく謎だが、殺虫剤や虫除けを持ってくるんだったと真剣に考えながら、ユーリは静かにサブマシンガンを構えた。
 トキノは対戦車ライフルを構えている。
 シオンだけが冷静にトキノの作ったジャムをボキちゃんに向かって投げつけていた。
 香だけは甘い。
 しかし、ボキちゃんはトキノのジャムを舐めた瞬間、仰向けに転がった。
「…………」
「さすがです」
 実際には出ていない額の汗を手の甲で拭って見せながら、シオンが清々しい笑顔で言った。
「…………」
「ホウ酸だんごも顔負けです」
 シオンは言いながらトキノの作ったジャムを周囲にばら撒き始めた。
「『ボキちゃんころり、ボキンジャム』です」
「まぁ、ボキちゃんはジャムが苦手ですの?」
 ナンナが言って自分の作ったジャムも早速ばら撒こうとする。
「勿体無いよ。あれは彼が作ったジャムだから……」
 そう言ってナンナのジャムを覗き込んだあやこは、そこで口を噤んだ。
 見た目も臭いも最早ナンナのジャムは人外の食べ物と化していた。宗旨替えして。
「手伝うわ」
 そう言ってあやこもナンナのジャムをバリケード代わりに辺りに撒きはじめた。しかしドリアンをベースに作られたジャムは見た目以上に臭いが凄まじい。先ほどまでは蓋を閉めて煮詰めていたからあまり気にならなかったが、蓋を開け、更に周囲に撒いたら、辺りは一気にドリアンの臭いでいっぱいになった。
「鼻がもげるのです」
 そう言って瑛がエアーPKで辺りの空気を浄化し、竜巻のようなバリケードを内側に作った。
「これで安心なのです」
 むしろ最初からそうしていれば、タクトニムも近づけなかったのでは。
「では、ティータイムの続きにしましょうか」
 シオンが紅茶を淹れなおす。
 自分のジャムをボキころりに使われて不満げなトキノは椅子に座るとふてくされたように頬杖をついた。
 ユーリが何かを諦めたようにイスに腰をおろす。何だかいろいろ疲れていた。
 響が、シオンのパンにジャムをのせてみんなに取り分ける。
 瑛が桃を切り分けた。
「そういえば、アタッシュケースの中身って?」
 ふと思い出したように朱里が、トキノから貰ったアタッシュケースを見やった。それからトキノを振り返る。
「開けてみてもいいですか?」
「気をつけてください」
 朱里からふいっと視線をそらせてトキノが言った。
「私が開けましょう」
 そう言ってシオンがアタッシュケースを開ける。これでもかと厳重に封印されたそれをシオンは丁寧に開いていった。
 中に入っていたのは1枚の紙切れだった。
 しかしその紙切れはシオンにとって凄まじい破壊力を持っていたらしい。
 真っ白な灰になっているシオンの脇から朱里がそれを覗き見た。
 1枚の紙切れを取り上げると、喜色満面でトキノの元へ走る。
「あ…ありがとうございます」
 トキノはやっぱり嫌そうに顔をそむけただけだった。朱里からではなく、恐らくはその胸に抱かれた紙切れと目を合わせたくなくて。
「響さん!」
 朱里は響の元へ駆け寄ると、その紙切れを彼に見せた。
「あ、復活するんですね」
 紙切れを見て響が笑みを返す。
「まぁ、何ですの?」
 ナンナが顔を出した。
 瑛とあやこも紙切れを覗き込む。
 そこにはうさ耳を付けたメイド服姿のおやじが満面の笑みで写っていた。

『 うさ耳おやじメイド喫茶新装開店!
(追加項目:セキュリティ強化、店内に武器等持込禁止<出入口でお預り>、料理教室もあり) 』

「料理教室もあるんですね」
「まぁ、素敵ですわ」
「今度みんなで行きましょう」
 盛り上がる朱里たちとは裏腹に、まだ遠くへ行ったまま帰ってこないでいるシオンの肩を、ユーリが元気付けるように叩いた。
「いろいろと懲りないよな」
 敢えて誰が、とは言わなかった。
 もしかしたら自分もなのかもしれない。
 懲りて一歩を退けば、それだけでビジターではいられなくなる。
 大丈夫。何とかなる。何とかする。
 それは無責任だけど―――。

 ビジターは好奇心と行動力と、それからほんのちょっとの無鉄砲を携えて冒険を求めて突き進む。
 そうでなければセフィロトの訪問者なんてやってられないのだ。





【大団円】

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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【0659】常磐・朱里
【0204】ユーリ・ヴェルトライゼン
【0266】清音・響
【0289】トキノ・アイビス
【0375】シオン・レ・ハイ
【0579】ナンナ・トレーズ
【0677】姫・瑛
【0812】藤田・あやこ

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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 ありがとうございました、斎藤晃です。
 楽しんでいただけていれば幸いです。
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