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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


第一階層【オフィス街】逃げろ!

戦慄のデスローラー!

橘 真斗

【オープニング】
 おい、下手な所に触るなよ。ここは、元々会社関係のビルなんでな、セキュリティシステムが完備されていたらしいんだ。
 もっとも、長い間放っておかれたせいで、たいがい壊れちまってるんだが、時々セキュリティがまだ生きてる事が‥‥
 て、鳴り始めたな。お前か?
 まあ良い、逃げるぞ。この警報に呼ばれて、すぐにタクトニムがうじゃうじゃやってくるって寸法だ。
 良いから走れ! こうなったらもう、部品回収なんて後回しだ。敵はもうすぐ其処まで来てるぞ!


〜静寂〜

「楽勝、楽勝」
 兵藤レオナ(0536)はびゅっとMS用高周波ブレードについた、TT―シンクタンク―のオイルを払った。
「人喰い館といわれているのは本当なのか?」
 アルベルト・ルール(0552)はバイクのハンドルにひじをかけながら
 助けなくても平気な相棒(バディ)に向けてつぶやいた。
「噂ってのは意外とあてにならないもんだねー」
 レオナはブレードを背中に担ぎなおし、アルベルトが乗っているバイクの後部座席にまたがった。
「いや、本当らしい。ここらには志半ばで倒れた霊がうじゃうじゃいるやがるぜ」
 炎でできた剣を収めつつ、伊達剣人(0351)は自分のバイクに乗り出す。
「お宝あるといいね〜」
「あまり期待しないほうがいいと思うぞ……」
 レオナはアルベルトの腰にゆっくりと手を回し、アルベルトはエンジンをかけた。
「二人乗りいいねぇ、俺も恋人とかを乗せたいぜ、まったく」
 先に走りだす二人を見て、伊達はボヤくことしかできなかった。
 
 
〜疑惑〜

 人食い屋敷の中を二台のバイクが走る。
 明かりのない廊下をヘッドライトが照らし、朽ちた絨毯をタイヤが削る。
 その間にも、雑魚TTがでてくる。
 だが、アルベルトバイクで走りつぶす。
 レオナはすれ違いざまにブレードで切り裂いた。
 伊達にいたっては銃で撃ちもらしを倒すだけだった。
「MSで入れたら楽なんだけどなー」
「今でも十分楽だろ?」
「おかしいな、霊の話ではもっと凶悪な敵がいるって話だったんだが……」
 霊に小ばかにされたのかと伊達は思い、思いをめぐらせる。
 そうこうしているうちに、一階部を走り終え、館のホールのあたりまで戻ってきた。
「宝もないし、雑魚ばかりだし……とっとと帰ろっか」
 レオナがつまんないと言いたげな顔をしてアルベルトの顔をのぞいた。
「あ……ああ、そうだな」
 ドキッとする彼女の表情にアルベルトは一瞬言葉を詰まらせた。
「どうしたの?」
「な、なんでもない、帰るぞ」
 首をちょこっとかしげるレオナに対して、顔を背けつつアルベルトは無駄にアクセルを噴かす。
「くたびれ儲けだぜ、酒場で飲むか気晴らしに」
 伊達も続き、玄関へバイクを向け、駆け抜けようとした。
 そのときだった。
 ズガガガンと地響きがなり、床が崩れ落ちる。
「何っ!?」
 崩れていく床。
 だが、床と思っていたそれは擬態をするTTだった。
 朽ちた床が機械に変わり、あり地獄のように広がって、3人を奈落へといざなった。
「ただで、落ちるか!」
 アルベルトが意識を集中させる。2台のバイクがPKにより壁を地面にするように張り付く。
「このまま駆け下りる! レオナ、しっかりつかまってろ!」
「くそったれ、波のように小型のTTが追ってくるぞ!」
 壁を垂直に駆け下りだす2台のバイク。それを崩れた床となっていたTTが津波の用に動き襲ってきた。
「俺はバイクを制御する以外もできるが、この先何があるかわからん。伊達、迎撃頼むぞ!」
「いわれなくてもそうするさ!」
 バイクを自動操縦に一時切り替え、特殊弾へ入れ替える。
 そして、自分の霊力をその一発へ込めた。
「ったく、イェソドで見つけた貴重品だが仕方ない。増幅させて、一気に潰すぜ! くたばれぇっ!」
 両手で銃を支え、迫りくる波へ体を向けると、伊達は引き金を引く。
 いつもの青い光が一波の中央へ吸い込まれて、風船のように一気に膨らんだ。
 ドドドォォンという爆音と熱い爆風が2台を襲いだす。
 残骸をさけ、音よりも風よりもはやく2台は駆け下りていった。
 
〜襲撃〜
 
「オフィス街の地下か?」
「構造をみると、下水施設のようだな……」
 バイクで駆け下りると、広い空洞へたどり着いた。
 伊達がハンドライトで照らすとそこに広がっていたのは枯れた下水道のようなところ。
 高い天井に汚れた壁。
 壁にはところどころに円形の穴があいている。
 足場は広く、埃と残骸がたまっているだけな場所だ。
「未開の場所ならお宝とかあるかな?」
「どうだろうな……さっきの地震とかも気になる」
 レオナはアルベルトのバイクから降りつつ、周囲をぐるりと見回した。
 暗視センサー、望遠レンズがレオナの脳に情報を与えるが、特に変わったものはない。
「お宝っぽいものはないね……」
「脱出口もか?」
「脱出口は……見当たらな、あった! ここから10ブロックくらい先にスロープみたいなのがある」
 レオナのサイバーアイが闇の奥のスロープを探りあてる。
「バイクはまだいけそうだ……走りぬけようぜ」
 アルベルトと伊達はバイクのチェックを済ませ、アクセルを鳴らす。
 アクセルのブォォォンという音が3つ響いた。
「今、ひとつ音が多くなかったか?」
 伊達が不安になり、周囲を見回す。
 あたりは静寂が広がっている。
 再びエンジンをふかす。
 ブロロロロンと音が重なる。
 そして、ガガガガガと地響きが続いた。
「地震?」
「いや、敵だっ!」
 ゆっくりと光の中に現れたそれは、巨大なローラー。
 4mくらいはあろうかというローラーが上下に動きながら迫ってきた。
 バイクを走らせながら、後方からせまり来るローラーに攻撃を仕掛ける。
 伊達のソニックブーム、アルベルトのバイクに搭載されたマシンガンが唸る。
 だが、キィンという軽い音と共にそれらははじかれた。
「複合装甲に対ESP装甲か? 面倒だな……」
「霊たちがいっていたのはこれか……。 こんなものはTRPGの中だけにしてほしいぜ!」
 ブルルルと乾いた下水道をバイクが走る。
 バリバリと壁を削りながらローラーは迫る。少しずつではあるが、バイクとローラーの間隔が狭くなる。
「追いつかれちゃうよ〜」
「これでも時速200km近いんだぞ! いったい、どんな構造してるんだよあいつはっ!」
 レオナの声にアルベルトがいらだちの声を上げ、弾の切れたマシンガンをボディESPでぶつける。
 飴細工のようにぺしゃんとなり進んでくる。
「もうすぐスロープだよ!」
 レオナのいうとおりスロープがすぐ見えた。
 バイクがぎりぎり入れる高さの穴へ入り込み
 そこから続くスロープを2台のバイクは駆け上った。
 電力室のようなエリアに飛び出して、キュキュッと2台はとまる。
 ズドォンという音と振動がエリア全体に広がった。
「逃げきったか?」
「そうらしい……?」
 ふぅと息をつくアルベルトと伊達。
「いや、何かくるよっ!」
 レオナが二人の安堵を止めた。
 ズガガァンと床が壊れ、ローラーが這い上がってきた。
「くそ、バイクを捨てて逃げるぞっ!」
 アルベルトがバイクを捨て、それをボディESPでローラーへぶつける。
「しかたない、高かったんだけどなっ!」
 伊達も自分のバイクをぶつける。
 ドォンと水素電池が爆発し、衝撃が再びエリアを揺らす。
 それでも、ローラーの回転音はとまらない。
 動かない機械を潰しながら、迫ってくる。
「しゃれにならないぜ」
 火の聖剣から火炎弾を撃ちながら、狭い施設の中を走り出す伊達。
「こうなったら、ブースターを使うね」
 レオナが後ろを向き、前の出口を確認して頷く。
「レオナに無理してほしくないが仕方ないか……」
 周辺のものたちをPKで壁にしていくアルベルトは舌を撃つ。
「二人とも、いくよ」
 華奢に見える体が男二人を軽々と持ち上げて、短距離走の体勢に入った。
 ぐっと足に力をいれ、そして出口までの距離と出力を計算。
 後方から迫る敵の速度を入れて、出力を設定する。
 ヒュッゥゥゥンと彼女の体から、エネルギーがたまる音がした。
「れでぃ〜〜〜、ごぉぉっ!!」
 腰を上げて、左足で床を蹴った。
 バヒュゥンと銃弾のような音と共にレオナは外の世界へと抜ける風になる。
 出口を塞ぐ壁はアルベルトがあけ、そして閉じる。
 壁を伊達が銃で崩す。
 その作業は5秒ともかからないほどすばやかった。
 
 
〜帰還〜
「レオナ大丈夫か?」
 帰ってきてすぐ酒場の冷凍庫に入って涼むレオナにアルベルトはジュースを渡す。
「あ、ありがと〜久しぶりに熱がたまっちゃったよ〜」
「収穫は0だが、生きて帰ってこれただけでもよかったかな」
 軽くアルベルトはレオナにハグをしたあと酒場のテーブルへ戻る。
 テーブルでは伊達が酒のつまにみTRPGのルールブックを眺めていた。
「ああいう敵はゲームの中だけで十分だな。二度とお目にかかりたくない」
 伊達の目は真剣だった。


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┃登┃場┃人┃物┃紹┃介┃
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【整理番号(NPCID)】 PC名
【0536】兵藤・レオナ
【0351】伊達・剣人
【0552】アルベルト・ルール

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┃ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、ありがとうございました。
納品ぎりぎりです。すみません(汗)

改めまして、はじめましてー。橘真斗と申します。
久しぶりのセフィロトの注文でやり方をちょっと忘れてしまっていたことは
ここだけの秘密でお願いします(何)

ローラーから逃げるという王道をいろいろ自分なりに考えて再現してみましたがいかかでしょうか?
楽しんでいただけたなら、うれしい限りです。

次回も注文する機会があればよろしくお願いします。

それでは、また運命が交わるときまでごきげんよう♪