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<PCパーティノベル・セフィロトの塔>


ブラジル【アマゾン川】楽しい水辺遊び

メビオス零

【オープニング】
 赤道直下のブラジルは暑い。セフィロトの中は空調が効いているけどな。まあ、たまには水遊びってのも悪くはないわな。
 外国人には茶色の水で泳ぐのは抵抗があるかも知れないが、こっちの人間は気にせず泳いでいる。泳がないにしても、釣りだとか何だとか、色々遊べるだろう。
 ああ、ピラニアとかも普通にいるが、あいつ等は血を流してでもいないかぎり、襲いかかっては来ない。むしろ、人間様の方が奴らを食いまくってるくらいだ。生肉を餌にしたら、面白い様に釣れるぞ。針から外す時、指を噛まれない様に注意は必要だけどな。
 そうそう、体内に潜り込んで中から食い荒らす、カンディルって魚がいるから、絶対に裸で泳ごうなんて考えない事だ。いいな?




〜ポロロッカに飲まれて‥‥〜

 ポロロッカとは、海からアマゾン皮へと向かってくる大波のことで、海嘯と呼ばれる現象である。
 通常はアマゾン川から海へと流れる水は、満潮で押し寄せる海水によって押し戻され、波となって川へと戻っていく。その波の高さは5mにも達し、大波は川の流れを飲み込んで、時速65kmの速度で逆流し、800kmの内地にまで至るものもある。
 大潮に由来するため、大小様々ではある。しかし月に二回起こる現象の中でも、特にアマゾンでの雨期に当たる春‥‥おおよそ三月から四月頃には大きな波が起き、これは大海嘯と呼ばれ、600kmの内陸にも洪水や海水の氾濫による甚大な被害がもたらされる場合がある。
 ‥‥好事家の中にはこの高波に乗ってサーフィンなどに興じる者もいるが、元々川の氾濫に乗っているような物なのだ。当然のように、ジャングルのあちこちから運ばれてきた草木の残骸や不法投棄されたゴミにボードを取られ、運がよければ数十メートル流された末に救出され、そうでなければ行方不明となって、ジャングルの中に消えていくことになる。
 と、以上のことを持って、このように本来“災害”として認識されるようなもので遊びに興じることは、決して良いこととは言えないだろう。
 勿論入念な準備と下積みの練習を積み込んだベテランならば許されるだろうが、少なくとも、普段何となく出来ているから大丈夫だろうとか、軽い気持ちでして良いことではない。
 ‥‥‥‥良いことではないのに‥‥‥‥

「げほっ、こほっ、きゃふん!」
「あー、もう。だから無理だって言ったのに」

 そんなよくないことをしていた白神 空は、沈みかけていた所を祈祷師の少女に引っ張られ、運良く救出されていた。

「この波の入るなんて自殺行為ですよ。泳ぎに自信があるって言ってましたけど、ここで泳げたら人間じゃないですよ」
「ケホケホッ‥‥そ、そうかもね。でも、もしかしたら人間じゃなくても無理かも‥‥」
「?」

 空は、船上で待ち構えていた少女‥‥祈祷師の少女の妹(以下、妹さん)の冷たい台詞に返答しながら、ヒリヒリと痛む脇腹を撫でさすった。
 ‥‥この日、空は、アマゾンの河口で起こるポロロッカと呼ばれる海嘯の観光に訪れていた。
 普段マルクトに住んでいる空は、あまり外に出ることはない。
 仕事(?)のあるセフィロトは塔の中にあるし、外に出るとしても大体が祈祷師の少女に会いに行っているか、ジャングルで狩りをしているかである。
 いつでも行ける地元と言うこともあって観光の類をしてこなかった空は、近隣の村々との付き合いもようやく終わりを迎えた祈祷師の姉妹を連れて、こうしてアマゾン川にまで観光に訪れていた。
 勿論賃料‥‥‥‥村の中心人物の一角である祈祷師姉妹の貸出料金として盛大な量の食料を要求されのだが、それで怯む空ではない。三日ほどの時間が掛かってしまったが、見事に食料を集めきり、有無を言わさずに連れ出したのだった。

(お姉様。泳ぎ、自信があったんじゃないですか?)
(そうなんだけど‥‥変身すれば大丈夫かなぁ、って思ったのは甘かったわ)

 空を介抱しながらヒソヒソと話し掛けてくる祈祷師の少女に小声で答え、空は自分を薙ぎ倒していった木々が流れていく光景を眺めて、感嘆の声を漏らしていた。
 休暇がてらに観光案内を買って出てくれた姉妹に良い所を見せようと、面白半分で海嘯の中に入ってみた空は、自然を侮っていた自分の迂闊さを痛感させられた。
 川を遡る逆流ならば、それほどの速度にはならないと思っていたのだ。が、結果は激流に飲まれそうになり、やむなく水の中に潜って【人魚姫】に変身する羽目となった。
 ‥‥‥‥しかしそこにも予想外の罠が待ち構えていた。
 元々アマゾン川の水は、土を含んだ黄土色をしている。海から近い河口付近でも、ほぼ同様の条件である。視界は最悪。そんな状況下では流されてくる倒木や草の類を避けきることも出来ず‥‥‥‥流れてくる倒木に激突。這々の体で船に戻ったのであった。

「参ったわね。こんなに激しい流れだと、船の上で(あんなこと)や(こんなこと)をしてて船がひっくり返った時に助けられないわ」
「やっぱりそれが目的なんですか!?」
「それに、かなり激しそうですね‥‥ポッ」
「そこ! 赤くならないで!」

 祈祷師の少女が、恥ずかしそうに頬を赤く染めて空に視線を送る妹にストップをかける。しかし妹の方はどこ吹く風か、姉の言葉などあまり聞いていないらしく、空に向けてチラチラと熱視線を送っていた。
 どうやら、以前空によって(あんなこと)や(こんなこと)をされた時から目覚めてしまったらしく、あれ以降隙あらば姉の目を盗んで空に近付こうとしてくる。
しかし、姉の方は‥‥

(うーん、懐いてくれたのは嬉しいんだけど‥‥その分お姉さんの方がガードに入っちゃってるわね。保護者モードかしら。悪い事じゃないし、解除するのも悪いかな?)

 空は、自分に熱視線を向けてくる妹さんと、間に割って入るように立ちはだかっている姉を見つめ、思い悩んでいた。
 一月末‥‥‥‥村に泊まり込んでいた空は、挨拶回りや神事に奔走する祈祷師の少女(姉)に放ったらかしにされた孤独感から、ついついその妹さんにまで手を出してしまった。
 その後、現場に現れた祈祷師(姉)を“遊び”に加えて数時間を過ごし‥‥‥‥祈祷師(姉)によって、村から追い出されるような形で出されることになった。
 空には、姉の方に嫌われたわけではないと言う確信があった。
 これまでの付き合いからの経験というのもある。しかしより明確なのは、それ以降にも出入り禁止になるわけでもなく、これまで通りの付き合いはさせて貰っていたからだ。
 年末までの付き合いに戻ったと言えば分かりやすいだろうか。
 妹さんに会う前までの状態に、強引に戻されたのだ。それまで妹に会うことが一切なかった空は、村に訪れても、妹さんに会うことは出来なかった。
 年端の行かない少女に手を出した、と言うこともある。面会謝絶で済んだのならば、むしろ僥倖(ぎょうこう)だろう。
 ‥‥しかし、空にとっては、その僥倖ですら酷く残念に思えた。
 せっかく一夜を共にした妹さんとの関係を、このまま会えないままに終わらせてしまうのは勿体ない。
 そう考えた空は、村の者達の様子を窺い、作戦を練り、激しい交渉戦の末、今回のデートに漕ぎ着けたのだ。残念ながら、姉のガードが堅くて妹さんには思うように接触出来ていないが、姉の方が空を独り占めするために行っている行為(にも見える)だと思えば、空にとっては悪い気はしないものだった。

(苦労してデートに誘った末に待っていたのが、姉妹による私の取り合いかぁ‥‥ああもう! 私ってこんなに幸せで良いのかしら?)

 幸せそうに姉妹の攻防戦を見つめる空は、睨み合いの構図に入った姉妹を眺め、頬を弛緩させていた。

「‥‥姉さん。白神さんが、また何か変なことを考えています。取り押さえた方が‥‥」
「え? あ、ホントだ。まるで子猫を愛でる蛇のように弛緩した顔を‥‥だ、ダメですよ? こんな人目のある所で変なことをされたら‥‥‥‥この子だけでも許して下さい!!」
「あれ? もしかして私って、犯罪者扱いされてるの!?」
「男だったらアウトでしょ? 白神さんの場合」

 自分を指差し、声を上げながら祈祷師の姉に詰め寄ろうとした空に、妹さんが冷静に指摘する。懐いていても、言いたいことはキッパリと言ってしまう性格は変わらない。姉の方も妹の言い分には賛成しているらしく、コクコクと頷いて空の方を向き、今度は空を押し止めるような態勢を取った。
 その間空は、二人の認識を改めさせようと言葉を選び、否定材料を記憶の中から呼び起こそうとして‥‥ガックリと膝をついた。
 思えば姉妹の二人とも、関係を持った切っ掛けは、空の方から押し倒していたのだった。
 それも半ば‥‥以上に強引に。
 当時の状況を思い起こした末に反論の余地がないと言うことに気付いた空は、船の床に両手をついて、膝の折れた体を何とか支えていた。

「そんな目で見られてたの‥‥うう、反論が出来ない自分が悲しいわ」
「大丈夫ですよ、白神さん。私はあなたを見捨てたりはしません。どこまでも付いていきますから」

 姉の警戒が自分から空に移った隙を突き、妹が姉の横を擦り抜け、空にピタリと張り付いた。

「ありがとう‥‥でも、あなたとの仲は、お姉さんには許されていないのよ?」
「大丈夫ですよ。姉さんだって、結局は白神さんからは離れられないから今日も───」
「こら! なに言ってるのよ! 私は別に‥‥その、離れられないから来たとか、そう言う事じゃなくて! あなたが心配で付いてきたって言うか‥‥別に良いでしょ!? 何で笑うのよ!」

 祈祷師の少女の声が、船上で響き響き渡る。
 その様子を眺めていた空と妹は、込み上げてくる笑みを押さえることもせず、海嘯の騒音に負けないほどの笑い声を上げていた‥‥‥‥







「はぁー‥‥これ、泳ぐことは出来ないの?」
「泳ごうとして流されかけた人の言う事じゃないですよ。もう退屈になったんですか?」

 退屈そうに声をかけてくる空に、祈祷師の姉はそう答えた。
 河口付近で一頻り笑ったあと、空達は波に乗り、本来ならばアマゾン川であろう場所にまで入り込んでいた。
 波となって押し寄せる潮流は、普段は見慣れたジャングルを一変させていた。
 地面は余す所なく水浸しとなり、木々は水に埋もれ、普段駆け回っているジャングルの面影はなくなっている。動物たちの姿も何処かへと消えていて、普段の喧噪の代わりに波があちこちにぶつかる騒々しい音で満ちていた。
 普段、塔の中に閉じこもっている者にとってはなかなかにお目にかかれない光景だろう。
 しかしそれも、何時間もの間船上で見続けていれば、さすがに飽きてくる。
 ましてや“強制的に見せられていれば”尚のことだ。

「でも、泳ぎでもしないとこの状況は変えられないんじゃないかしら?」
「そう言う状況にしたのはお姉様です。船の上で、暴れないで下さいよ」
「うふふ。それにしても、この子の寝顔は可愛いわね♪」
「ちょっと、誤魔化さないで下さい」

 ジトッと半眼で睨んでくる祈祷師の少女から目を逸らし、空は膝の上で気絶している妹の髪を撫でながら、どこかに船を付けられる場所はないかどうかを探していた。
 ‥‥河口で一頻り笑った空と妹は、そのまま祈祷師の姉をからかって遊んでいた。
 妹の前ではお姉さんモードでいたいらしい祈祷師は、空に甘えている妹を何とか引き剥がそうと手を伸ばしたのだが、空と妹は協力して前後左右、あらゆる場所に素早く移動し、姉の手をかいくぐっていたのだが‥‥
 不安定な船上で、そんな事をしていれば結果は見えている。まして、空達が乗っている船は、インディオの村から持ってきた小さな船で、搭乗している人間が動けば船もバランスを怪しくさせるような物だった。

「ひやぁ!」
「あっ! っと!!」

 それぞれが動きを止めて、バランスを崩した船を安定させようと息を潜める。
 しかしそれも遅く、グラグラと揺れ動く船の振動と傾斜によって、もっとも身軽な妹さんが川の中へと投げ出された。

「妹さん!」
「お姉様なにを!」

 咄嗟に、投げ出された妹さんに手を伸ばし、身を乗り出す空。
 不安定に揺れる小舟。乗り出された体。体重移動。激しい川の上。トドメとして空の手に掴まり、更に船の縁に掴まる妹‥‥
 ここまで条件が整ってしまえば、ひっくり返るのも道理だった。

「‥‥もしあの時、川に流されていたら、どうなってたと思ってるんですか?!」
「うーん、死んでたかも知れないわね。でもあれよ。ほら、偉い人も言ってるでしょ? “歴史にもしもはない”って」
「格好良いことを言ってるつもりかも知れませんが、そのもしもの確率はまだなくなった訳じゃないんですよ。それに、一度ひっくり返った所為で船を漕ぐためのオールや繋ぎ止めるためのロープとかも、流されちゃったんじゃないですか!」

 祈祷師の少女が、呆れと嘆息混じりにそう言い、観念したように船の上に座り込んだ。
 ちなみに、妹は船がひっくり返った時点で気絶した。素早く人魚姫に変身した空が船をなおし、二人を救出して船に戻ったのだが、それから目を覚ます気配はない。
 空は周囲に船や人の気配がまるでないことを確認すると、次に妹さんの頬をつつき、気絶したままであることを確認した。

「‥‥うん。でも、船を諦めれば、結構簡単に脱出出来たりして‥‥」
「‥‥‥‥‥‥え?」

 ボソッと呟いた空の言葉に、軽く絶望感など抱き始めていた少女の顔が上がる。
 対する空は、ポリポリと頬を掻きながら言いにくそうに目を背け、どうした物かと空を見上げた。

「空飛べば、脱出ぐらい出来るわね」
「‥‥‥‥」
「周りに人は居ないし、あなたには変身出来ることはばれてるし。妹さんは寝てるし‥‥‥‥条件は揃ってるわね」
「‥‥‥‥で、何で今まで言わなかったんですか?」

 プルプルと体を震わせながら、祈祷師の少女が立ち上がる。
 空は目だけでなく顔も背けながら、頬を微かに赤く染めて口を開いた。

「濡れた服って‥‥すごく扇情的なのよね。あなた達の場合獣の皮で作られてるから、透けないのが残念なんだけど」
「そんな目で見ていたんですか!?」

 空の返答に体から力が抜けたのか、祈祷師の少女はガックリと膝を着いた。
 空はそんな少女に笑いかけながら、妹さんをゆっくりと横たえ、気付かれないように気配を殺して祈祷師の少女ににじり寄った。
 そうして十分に間合いが詰まった所で‥‥空は少女の肩に片手をかけ、もう一方の手を少女のどうに回して力を込める。

「はい。隙有り」
「はい? え? はっ!?」

 グルン! と、少女の体が回転した。
 背中から倒される少女。空はその少女に覆い被さると、少女の両手を素早く掴み、頭上に挙げさせて拘束して両の足を絡ませた。
 ‥‥空のもっとも得意なポジション取りのパターンである。
 もっとも、こんな狭くて不安定な場所でも行える辺り、かなりの修練を積んだ熟練の技ではあるのだが‥‥
 これから空に何をされるのかを察した祈祷師の少女は、声を上げそうになった所で口を塞がれた。

「声は立てない方が良いわよ。妹さんが起きたら、大変でしょ?」
「んーーーー!!」

 デートが始まって以来最高の笑顔を浮かべる空に、祈祷師の少女が声にならない抗議をあげる。
 ‥‥しかし当然ながら、それは誰にも聞き入れられることなどなかったのだった‥‥‥‥








ちなみに翌日────
 インディオ村にて──────

「ねぇ、お姉様」
「なに? “様”付けなんて、何を企んでるのよ」
「えっと、あのね。昨日、私が眠ったフリをしている間のことなんだけど──」

 なんて会話が行われた末、以降は妹さんと空が自由に会えるように取り計らわれたらしいのだが‥‥
 空がその真相を知ることはない‥‥






☆☆参加キャラクター☆☆

0233 白神・空




☆☆あとがき☆☆

 いつもありがとう御座います。メビオス零です。
 さて、突然ですが‥‥残念なお知らせがあります。
 やはり‥‥かなり以前からいろいろな描写をしてきたのですが‥‥その‥‥‥‥
 これまでの“色”の描写が、少し危険な空気を発し始めました。
 解りやすく言うと、これまでのがギリギリ過ぎた、と言うのもあり、これからは少し控えめになると思います。百合描写。むぅ、難しいものですなぁ。本気で書いたら凄いことになっちゃったから、アレでも結構自重してたつもりだったんですけどね。
 と言うわけで、今回は押し倒したところで終わっています。何かと物足りないと思われるでしょうが、これからもう少しずつ‥‥範囲を広げていきますので、どうか見捨てないで下さいませ。
 では、またいつもの‥‥

 いつもご発注、誠にありがとう御座います。
 今回のシナリオはどうでしたでしょうか? 今回のシナリオはインディオ村ではなく外のデート編ですが、楽しめましたでしょうか?
 ポロロッカ‥‥前にテレビで見たことはありましたけど、アレって凄い範囲に広がるんですね。調べてみて驚きました。サーフィンしてる場合じゃないですよね(笑)。
 シナリオに対するご不満、ご指摘は、またファンレターとして送って下さると幸いです。そしていつも送って頂いて、誠にありがとう御座います。
 またのご依頼を頂けたら頑張らせて頂きます。最近はトラブル続きで参っていたので、今度こそ‥‥何とかなりたい。なってくれぇ‥‥
 では、改めまして‥‥今回のご発注、ありがとう御座いました(・_・)(._.)