<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>
続・魔物の花嫁
●ぬいぐるみ来襲
真っ昼間の白山羊亭。そこに、白い熊のぬいぐるみが入ってきた。
「お客さん、暑くないのぉ?」
注文を取りに行ったルディアが聞く。
それは着ぐるみというものだと、ルディアは思ったようだ。春ももう盛りを過ぎたというのに、花見の余興でもあるまいし、と。
「ええと……」
少しおどおどした声で、まずぬいぐるみは野菜のスープを注文した。
そのとき口がちゃんとパクパクしているのを見て、ルディアは感心した。
「わあ、よくできてるわねぇ。耳とかも動いたりするの?」
そう言って、ぐいっと耳を引っ張る。
「痛っ」
ぬいぐるみは痛そうな声をあげた。
「えーと……? 劇団員さんとか?」
演技かなあ、と思ったらしい。
ぬいぐるみは、いいえと首を振った。
「あの、僕、チャーリーと言います。この姿は、仮の姿なんです。元の姿は、恐ろしいので……恐がられないように、姿を変えているんです」
はあ、とルディアは気の抜けた返事をした。ここには色々な客が来るが、やっぱりぬいぐるみは珍しい。
「実は僕、お嫁さんを探しているんですが、どなたか僕のお嫁さんになってくれる人はいないでしょうか?」
「……そうは言われても、ここは結婚相談所じゃないしねぇ」
そう言いながら、この街に結婚相談所なんてあったかしら、と考える。いや仮にあったとしても、熊のぬいぐるみの相談は受けてくれると思えない。
「本当の姿っていうので、お嫁さんを探すわけにはいかないのかしら?」
「そ、そんなことしたら、誰もお嫁さんになんて来てくれませんー……」
だばーっとチャーリーは涙を流す。余程、自分の元の姿が嫌いなのだろうか。
「贅沢は言いません! どなたか僕でもいいって方はいないでしょうか!?」
しかしこのままでは結婚相談所で仮に受けて貰えたとしても、相手が見つかるとは思えない。余程の大恋愛でもない限り、やっぱり普通は同族を結婚相手に選ぶからだ。
ルディアは店の中を見回した。
この難題に、知恵を貸してくれる者はいないだろうかと。
●再会
ルディアが珍客に困らされるよりも、少し時間は遡る。
その日翠藍雪が、以前に所縁のあったスイ・マーナオと白山羊亭で会ったのは偶然だった。昼時だったので単純に食事のために白山羊亭に足を向け、そしてその入口で、同時に扉に手をかけたのがスイだったというわけだ。
初めはまた、女性かと思った。その小柄な体を見下ろすと、向こうも藍雪を見上げている。どこかで見た顔だと思い返せば、先日ある自殺志願の男に関わった際に知り合った者の顔と同じであることは、すぐに思い浮かんだ。
スイはニッと笑って言った。
「よ、俺のことは憶えてるかい」
「憶えている」
藍雪も即答した。顔だけだったらどうかというところもあるが、この言葉遣いとセットなら、類似品はまずないだろう。
「まあ、こいつも縁だな。どうだ、一杯」
「昼間からか」
スイがくいっと手で杯を傾ける仕種をすると、藍雪は無表情かつ大真面目な顔で答えた。
「少しだけなら酒は薬だぜ。知らねぇのか」
スイは、ふふんと鼻を鳴らす。言われてみれば、と藍雪も思う。
「そうか、少しなら薬か」
スイは機嫌よく頷き、扉を押した。
「一人なんだろ。相席の方が店の嬢ちゃんも省スペースで喜んでくれるぜ」
「それもそうだ。では、一緒するとしよう」
というところで話がついて、二人は白山羊亭の扉をくぐったわけだった。
それからしばらくして。それはスイと藍雪のいるテーブルの上の酒瓶が、三本目になったときのことだ。
普段ならばどこが少しだけだと思うほどの量の酒精を、既に藍雪は口にしていた。これはスイが飲ませ上手だったからだ。気がつくと減っていたはずの杯が一杯になっていることが何度もあった。気がついただけでも一度や二度ではないので、気がつかなかった分も含めたらどれだけかわからない。
しかしそれも、段々どうでもよくなってきていた。酒精の魔力だ。
ただ注がれるままに杯を口に運んでいると、ふとスイが余所見していることに気がついた。
「何を見ている……? 好い男でもいたか」
ふざけていたつもりはない。スイの性別を失念していたわけではない、と藍雪は思う……が、実際のところは失念していたのだろう。酒というのは、そういうものだ。
スイは何を思っているのか苦笑いして、三本目の瓶の残りを口から覗き込んだ。まだ、瓶には酒がけっこう残っているはずだ。
「違ぇよ。てめえ、俺の性別忘れやがったか」
スイはそう言いながら、空いた藍雪の杯に琥珀色の液体を注いだ。
言われて、藍雪も自分の発言がいささか間違っていたことに思い至った。
「……ああ、すまん。そうだった。貴様も女顔だな。碧風もかなりのものだが、貴様も相当だ」
ここにはいない馴染みの顔を思い浮かべながら、この手の顔では間違っても仕方がないと考える。常からすれば論理も思考も大分怪しげだが、まあ事実から遠く離れたことでもない。
「碧風たぁ誰のこった」
と、スイがツッコミかけたところで、藍雪もスイが何に目を奪われていたのかに気がついた。この幾許かの遅れが、酒量の差だろう。
「少々、飲み過ぎたか」
藍雪は杯に口をつけつつも、見えているものが幻覚かどうかを見極めようと目を凝らした。ぬいぐるみが、同じテーブルの客と話をしている。
「あいつなら、マジでぬいぐるみだぜ。見えてるまんまだ」
藍雪の視線の先を追って、スイが言った。
「ほう……」
「あいつとは、ちぃと前に縁があったんだがな。もっとも、アレは本来の姿じゃねぇみてぇだが……おい?」
スイがそこまで言ったところで、藍雪は席を立った。
●結婚行進曲にはまだ早い
足元はまだしっかりしていた。酒場で行き交う人を上手く擦り抜けて、目指すところに向かえるぐらいには。
藍雪はチャーリーのテーブルを目指していた。自分とは違う種族であることは間違いないが、目指す先のぬいぐるみには元の姿があって、そしてあれが仮の姿であると言う。
藍雪は自分と同じように、本来と異なる姿に変化出来る種族というところに興味があった。龍に属する種族には人型と龍の姿を行ったり来たりする種がそこそこにいるが、けして絶対数の多い種族ではない。まして、今回は熊だ。龍ではない。
珍しさに心を惹かれたのはあるが、ストレートに行動に移したのは酔いが手伝ってもいただろうか。
その熊のぬいぐるみ……チャーリーは相席になった金髪の青年と話をしていたようだ。青年はルディアに体良くチャーリーの相談相手を押しつけられたようだったが、それでも見た感じは親身になって相談に乗ってやっていたようだ。
そしてそのすぐ手前まで近づいた時、チャーリーと背中合わせに後ろの席に座っていた者が、立ち上がった。
「本気で嫁を探しているのか?」
そのとき振り返ったのは、アルディナク・アシュレイという女だった。だった……ということが、後ろから追ってきたスイと藍雪と、そして当のチャーリーにわかったのは、少し後のことになる。
アルディナクの性別には、藍雪は少々迷った。男女のどちらでも通りそうな容姿だったので。凛々しい顔とスレンダーな体、そして微妙に憮然とした表情でぬいぐるみを見下ろしている。無表情と言うか無愛想と言うか……少々迫力のある風情だった。
「本当に本気なら、私が相手になってやってもいいが」
どうやら、女らしい。だがまだ、ぽかんとチャーリーはアルディナクを見上げている。
「あなたが……?」
「不満か?」
「いえあの、そんな」
チャーリーは半分怯え、半分慌てている。多分、アルディナクの偉容に気圧されているのだ。
そこに、横からすっと藍雪は近づいた。
「貴様、変化できる種族なのだそうだな」
突然横から声をかけたからか、チャーリーは見てわかるほど、びくぅっと飛び上がった。慌てて藍雪の方を向く。
藍雪には自覚はなかったが、そこでは目の据わった美丈夫が自分を見下ろしているわけで。背後のアルディナクと併せて、挟み撃ちだ。
「待ーて、逃げんな」
音もなく、スイはぐるりとテーブルを回りこんだ。そしてチャーリーの退路を塞ぎ、がたたと重い椅子を鳴らして立ち上がって唯一の逃げ場に後退ろうとしていたチャーリーの背後に立つ。そのまま、スイはチャーリーの太い首に腕を回した。
「ひゃあああ」
「変な声出すなよ、俺が悪役みたいだろが」
スイはチャーリーの首にかけた腕を、そのままぎゅっと締め上げてホールドする。チャーリーは驚いたようだが、苦しがりはしていないようだった。
「あっ、あなたは」
「いよう、憶えてたか? 引き籠もりが、こんなとこまで出てきたのは誉めてやるぜ。で、嫁さんは見つかりそうかい」
少々意地悪げな笑みで、スイはぬいぐるみに囁いた。
「は、離してください〜」
「離したら、てめえ逃げるだろうが」
あうう、とぬいぐるみが泣いている。図星なので、反論できないらしい。
「てめぇと話したいってヤツがいるんだ、逃げてんじゃねーよ。で、なんか話したいことがあったんじゃねーの? 藍雪」
「話というほどのものではないがな」
藍雪の声は憮然としたものだった。
なんと言うか、自分を見て逃げ出そうとしたのは明らかなので……やはり、気分が悪い。いや、理由はわかっているのだ、この固い表情が悪いと言われることはある。確かに、子供に好かれる質ではないかもしれないが……別に、好きでいつも固い表情なわけでもない。
笑えば恐がられないだろうか、とは思うが、しかしそういう質ではないのだ。
「そっちのあんたは、どうだい」
「私は」
アルディナクは腕を組む。
「そろそろ、離してあげてはいかがですか」
そこでそう口を挟んできたのは、最初にチャーリーの相談に乗っていた青年だった。ライオネル・ヴィーラーという金髪の青年は、真面目そうな穏やかな笑みを浮かべて言った。
「逃げねぇってんなら、まあ、離してやってもいいぜ」
「は、はいー、約束します……」
スイがようやくホールドを解くと、チャーリーは首のあたりを撫でている。
少しは顔がほぐれないかと手で頬を撫でつつ、藍雪は訊ねてみた。
「スイ、この者は嫁捜しをしているのか?」
「そうだよ、嫁っつーか子供が欲しいんだったよな」
チャーリーは大きな頭で頷いた。嫁というよりは子供、子供というよりは家族が欲しい、というところだろうか。
「……どうする? おまえが本気ならば、子供ぐらいは産んでやってもいいぞ」
スイがひゅぅと掠れた口笛で囃すと、アルディナクはそのオレンジの瞳で睨みつける。
「どうなんだ」
「コラ、返事しろよ」
嫁を探してるんじゃなかったのかとスイがぬいぐるみの頭をぼすんと小突くと、チャーリーはその勢いのままばふっとアルディナクに縋りついた。
「僕なんかでいいんですかっ」
しかしスイは苦笑を閃かせ、そのでかい図体をアルディナクから引き剥がす。
「ちぃと気が早ぇよ。おまえの嫁に来てくれようなんて酔狂な女がいて、舞い上がるのはわかるがな……」
「嫁になるとは、まだ言ってないぞ」
アルディナクに、その場にいた者の視線が集まる。当のチャーリーも、ぬいぐるみでもそうとわかる程きょとんとした顔で、アルディナクを見ていた。
「子供ぐらいは産んでやってもいいと言ったんだ」
「それは……結婚はしないで、ということですか?」
この中で一番まともそうなライオネルが、困惑の表情で訊ねる。
「それは、良くないのでは」
「……子供が欲しいだけなんだろう? ただ『結婚したい』というだけで、相手は誰でもいいってことだ。つまり、相手はどうでもいいということだ。『自分を』望んでいるわけでもない男のところに嫁に行く女はいないぞ」
言われてみればその通りで、チャーリーはがくりと膝を突いた。
天国から地獄へ、というところか。
「それはおまえが私を望まないなら、だがな。本当に私を望むのなら、素顔ぐらいは見せておけ」
チャーリーの頬を両手で挟み込んで覗き込むように、アルディナクは言う。
「でっでででもっ」
「正体がばれるのを怖れながら暮らして行くのは、辛いぞ。最初にさらしておいた方が、きっと楽だ」
「いっいややや、しししかしですねっ」
しばらく成り行きを見守っていた藍雪も、頷いた。この娘の言うことはもっともだと思う。
そして今度こそと思いながら、歩を進めた。多分、ちゃんと笑えているはずだ。
「この女子の言う通りだ。花嫁が欲しいのならば、本当の姿を見せるぐらいの勇気を持て」
……その割には、やっぱりチャーリーは怯えているような気がするが。何がまずいのだろう……
「おまえだって、どうせなら、おまえ自身を望んでもらいたいだろう? 仮の姿ではなしに」
「いやでもっ」
「大切なのは、容姿ではなく貴様の心だろう」
そうだ、心持ちだ。見た目ではないはずだ。大丈夫だ。
「そうは言ってもっ」
さあ元の姿にとたたみかける二人の顔の間に、スイが手を差し入れた。そしてチャーリーから軽く引き離す。
「落ち着け。こんなところで元に戻るってわけにいかんだろうが」
そうか? と藍雪は思った。酒のせいか一瞬のうちにはそれがどうしてなのか心に浮かばず、一人では恥ずかしいからかと思い浮かべる。
ならば。
「気にすることはない、なんなら俺も」
自分も一緒にであれば……と襟に手をかけたところで。
「酔っ払いは黙ってやがれっ!」
スイに木皿で後ろ頭を、思いっきりどつかれた。
「元のてめぇがイイなんつー物好きもいないとは限らねぇし、俺もてめぇの元の姿は見てみてぇが、ここじゃ酷だろうぜ。店の迷惑だろうしな」
痛みで少し頭が冴えて、そう言えばこんなところで元に戻ったら店が目茶苦茶になることに思い当たった。多分チャーリーも似たようなものだろう。
「だから河岸を変えようぜ。外ならいいだろ」
「スイさぁん〜!」
勘弁してくれとえぐえぐ泣きながら、チャーリーは今度はスイにすがりついている。大きさ以前に、相当容姿にコンプレックスがありそうだが……
「……別に、私は今すぐでなくてもいい。おまえ、私のことが恐いんだろう?」
アルディナクは微かに笑みを浮かべた。その手をぬいぐるみの頭に置いて。
「いえ、そんな……恐いなんて」
その、自分の姿を見せるのは恐いけれど、ともごもごチャーリーは口ごもる。
「これは……これで、決着がついたんでしょうか?」
そこで、ライオネルが首を傾げた。
すぐにではなくともアルディナクがチャーリーの嫁になるということで、と。
意外や意外、これは大団円なのか。
「いいんですけど……その姿のままで子供、作れるんですか?」
さてライオネルは最初の、チャーリーと二人で話していたときの問題に舞い戻るように、素朴な疑問を呈した。
素朴にして、男性としての尊厳に関わる問題だ。これがクリア出来ないのでは子供が欲しいチャーリーとしても困るはずだし、そして同族の女を異種族にさらわれる男たちの尊厳にも関わる。
スイは、藍雪に顔を向けた。
「どうなんだ?」
藍雪は殴られた痛みが抜けず、苦い顔をスイに向けたが、答えはする。
「異種族を連れ合いにする者は少ないが、そういう場合大きさは相手に合わせるだろうな」
変えられる方が変えられない方に合わせるのが、まあ道理だ。
「本当の姿はともかくとして、やはり人間のお嬢さんをお嫁さんにするのなら、人間の姿になった方がいいと思いますよ」
熊のぬいぐるみと夫婦というと、人の目もあるし……と、ライオネルはきわめて常識的な発言をする。当事者たる嫁の意向が『容姿はどうでもいい』ということなら、変えたところでやっぱり問題はないはずだ。
チャーリーは迷いながらも、その方が良いのならと頷いた。
「なんだよ、てめー人間にもなれるのか?」
「なったことはないですが……一応、なれるはずです」
だったら最初っから人間の姿になっていれば……という気はしたが、藍雪もそこまでは口にはしなかった。
やはり、河岸は変えることになった。
人前で化けたのでは化ける意味もないだろうと、店を出て裏手の井戸の前でチャーリーを囲む。
「い、いきます……! あの、その、あんまり見ないでいてもらえますか……?」
とはチャーリーは言ったが、言うことを聞いてくれた者はいなかった。変身シーンというのは、なかなか興味深いものだ。
「ええと……まあ、出来るなら美形の人間になった方がいいかと思いますよ」
ライオネルのアドバイスには、スイも頷いた。
「ま、そうだな。人間見た目じゃないって言っても見た目で判断されるこたぁ、やっぱあるし。俺もこの顔は、綺麗で好きだしな」
それも、わかりやすい一つの真理だ。
「わ、わかりました!」
さて、変身は一瞬ではなかったが、ゆっくりとでもなかった。一同の目の前で、熊のぬいぐるみが人の形に変わる。それは、熊のぬいぐるみより二回り程小さくなった。
主は横幅だが……縦も縮んでいる。
着ていたのはシャツだけだったので、そのシャツは、ぶかっと肩からずり落ちかけていた。
「……」
「……」
「……」
「……一つ聞いても良いですか? 何を参考にしましたか?」
ライオネルの問いに、チャーリーはスイを指さした。直前の発言が、どうやらチャーリーの最終判断に影響したらしい。
「どうして、こっちにしなかったんです!!」
ライオネルはこめかみを押さえて、藍雪を指す。
「俺が見本じゃマズいってのかっ!?」
スイはげしっとライオネルにケリを入れてから、
「まあ、藍雪を真似た方が確かに様になったかもしれねぇがよ」
と、気まずそうに、今やどっからどう見ても『美少女』なチャーリーを目を細めて見やる。波打つ白い豊かな髪に透けるような白い肌が病弱げな印象の……性別が変わってなければ、これで中身は男なわけで。
「な、なんかマズかったですか!? どっかおかしいところでも……手も二本だし足も二本だし」
目も二つだし、鼻もあるし、とぺたぺたとチャーリーは自分を触っている。鏡がないので、チャーリーにはできあがりが確認できていない。
「いや、そーゆー基本的な問題じゃないんだがな……ここは一つ、化け直すってことでどうだ」
この性格で、この容姿。このまま街に放ったら、三日もすれば金持ちの有閑マダムに飼われる元・熊のぬいぐるみが生まれそうな気がした。だがしかし。
「……同じ種族って変化のし直し、効かないんです」
「なんだと!?」
そうなのか!? と、スイが藍雪を振り返ったので、経験者藍雪は解説する。
「そうだな、歳はとっていくはずだが……ああ多分、年齢はその種族に換算したものになるはずだから、貴様随分と若かったのだな」
「若いって……てめぇ、ガキの癖にガキが欲しいなんて言ってたのかー!?」
今のチャーリーは外見を信じるなら、どう見てもローティーン。しかも最初の方だ。
「だ、だって年齢なんて気にしたことなかったんですーっ!!」
長く生きてるとそういうことはあるな、と藍雪だけは頷いた。
なんとなくチャーリーを見ていると、同族の世に出たことのない世間知らずを見ている気分だ。少し、里の子供より頭がトロいかもしれないが。
さてスイがチャーリーをどついている傍らで。当事者の花嫁アルディナクは、ものすごいスローペースで歳をとるはずの幼い婚約者と結婚する日は本当に来るのかと、そしてその時一体自分は何歳なのかと、遠くの空を尼さんのような気持ちで見上げていた。
まだこの花嫁騒動は、大団円とはいかないようである。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【SN01_0093/スイ・マーナオ/男/29歳/学者】
【SN01_0122/翠藍雪(つぅい・らんしゅえ)/男/518歳/族長】
【MT12_5679/アルディナク・アシュレイ/女/18歳/ヴィジョンコーラー】
【MT12_6310/ライオネル・ヴィーラー/男/18歳/グリフォンナイト】
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■ ライター通信 ■
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お待たせしました&ご注文ありがとうございました☆ 執筆いたしました黒金かるかんです。どうやらPLさん単位では、お初の方はいらっしゃらないようで……毎度ありがとうございます☆
はは……微妙に終わってないですねえ。機会があったら、またチャーリーをネタに軽いお話でも。巡り会うことがありましたら、またよろしくお願いいたします。
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