<聖獣界ソーン・白山羊亭冒険記>


<Minstre-L/D>Dear for You?

◆オープニング
「そういえば、もうそろそろバレンタインデーねぇ……」
 白山羊亭のルディアが思い出したかのように呟く。
「バレンタイン、ですかぁ……」
 その隣でエルフのファリアも、ルディアに並んで呟く。顔は何だか幸せそうだ。
「……ファリアちゃんも、好きな人居るの?」
「えへへ……はいですぅ♪」
 つい先日、大切な人が死んでしまい、暫くの間塞ぎ込んでいたファリアだが、やっと元気を取り戻したようだ。
「へぇ、良かったわねぇ? そういえば、ファリアちゃんはチョコ、作った事あるの?」
「はいですぅ♪ この前、お兄ちゃんに教えてもらった木の実、その木の実がとっても美味しいって話なんですぅ。それを使ってチョコを今年は作るですぅ♪」
 とっても幸せそうなファリア。
「へぇ……木の実かぁ、面白そうね、ね、その木の実、どこにあるの?」
「えーっとぉ、隣町の山にあるっておにいちゃんが言ってたですぅ。でも、隣町に行くのは不安だから、皆を誘って行くですよぅ♪」
 既にファリアは、一緒に行く人達を誘っていた。
 ただ、男性にはチョコの事は一切話してないけれども。
「へー、じゃ、戻ってきたら、皆で一緒にチョコ作ろうかしら、きっとマスターも貸してくれるわよ♪」
 マスターにウィンクを送るルディア。マスターは全部分かっている、かのように手を上げて。
「ああ、前日位は厨房を開放してあげるよ。 恋する女の子達にできることはこれくらいだからね」
「という事で決まりっ! ファリアちゃん、たっくさん木の実取って来てね? 私は材料たくさん準備しておくからねぇ」
「はいですぅ、分かりましたぁ♪」
 という訳で、ファリア達は美味しい木の実を捜しに街を出て行った。
 しかし、その影を後ろから。
「……美味しい木の実ねぇ……これは、何かに使えそうだわ、うふふ」 
 彼女の名前は、ルナ・フィロソフィア。
 黒山羊亭で体を売る娼婦の女性が、ファリア達の影を追いかけていた。

◆バレンタインチョコに掛ける女性の想い

「ふぅ、今日も白山羊亭で生演奏のバイトだな……そろそろ時間だし、向かわないとな」
 一人部屋でリュートを調整していた彼の名は、ナトリ・ウェザリー。容姿は10代後半といった所。
 今日はいつもの白山羊亭で、いつもの生演奏のバイトになっていた。
 生演奏は、日を決められているわけではないので、別に行かなくても良いのだが。
 彼は、仲間と共に音楽ユニット『DR47』を結成し、リュートの演奏をしていた。が、しかし今日は、他の二人が居ない。
「……ディアはどこに行ったんだろう。すぐ戻ってくるって言ってたのに。 まぁ、場所は知っているだろうし、先に行ってようかな」
 取りあえず準備を整え、部屋を出るナトリ。
 外にはたくさんの店が並び、バレンタインデーというイベントにかこつけて、チョコを売り出す出店が多数アルマ通りに並んでいた。
「バレンタインか……俺には無縁だなぁ」
 と呟きながら、ナトリは白山羊亭へと向かっていった。

 一方その頃、白山羊亭にはそのディアがいた。なにやらとても楽しそうにしている。
「美味しい木の実かぁ〜、ファリア〜、ディアお料理ってした事無いけど、大丈夫かなぁ〜? おっきいチョコ、リリーに作って上げれば、リリー喜んでくれるかなぁ〜?」
 半透明な羽根が印象的な、シフールのディアナ・ケヒトは、ファリアの周りをぱたぱたと飛びながら聞いてくる。既に旅に出る準備は万端という服装。
 そして、隣にいるファリアも、同じく冒険に出る服装である。
「きっと大丈夫ですよぉ♪ 私が教えてあげますしぃ、それにおっきいチョコ、きっとナトリさんも喜んでくれますよぉ〜」
「こんなに、こ〜んなに大きいチョコでも喜んでくれるかなぁ〜?」
 ディアナが飛んで、その大きさを示す。その大きさは、ディアナの身長と同じくらいの大きさを示す。
「大きいチョコですぅ、でもそんなに大きなチョコなら、きっとナトリさんも喜んでくれますよぉ♪」
 ファリアもとても嬉しそう。チョコに掛ける二人の思いは更に強くなるばかりだ。
「えへへへ……分かったぁ、みんなにも配りたいし、がんばってたくさんチョコ作ろうっと♪」
 ディアナの気持ちも、ファリアと同様に今幸せであった。

 そんなこんなで二人が話している所へと、ナトリが到着する。
「ん? ディア?」
 中から聞こえてくるディアナとファリアの嬉しそうな声に、ナトリの白山羊亭への足が止まる。そしてそのまま聞き耳を立てていると……。
「それじゃぁ、行ってきますぅ、ルディアさん、たくさん持って帰ってきますねぇ♪」
『はぁ〜い、いってらっしゃい、たくさん取ってきてね〜』
 ディアナとファリアが白山羊亭から出て行く声がした。
 ナトリは身を隠す。それに気づかぬままにファリアとディアナが白山羊亭から出て行った。
 ファリアも、ディアナの手にも、木の実取り用のカゴを持っていた。
「じゃぁ、行くですぅ♪ 街は近いからきっと大丈夫ですぅ♪」
 まるで遠足気分の二人の姿。その姿をナトリは見て。
「あれ……? ディアと、ファリアさんだね? ディアの姿は見間違うわけないし……」
 ナトリがそう考えていると、どんどん二人は歩いていく。
「うーん、まぁ面白そうだし、ディア達に見つからないようにこっそり付いていこうかな? 二人だけだとやっぱり心配だし」
 と言うと、二人の後をナトリは隠れて付いていく事にした。

 そして、エルザードの街の出口近く。
「……あれ? あれは……」
 ナトリの目の前に見えるのは、自分と同じくファリアとディアナを追いかける姿。
 ナトリはその姿に見覚えがあった。その姿は、黒山羊亭のルナ・フィロソフィアだとすぐに分かる。
「ルナさん……どうしたんだろう?  二人に用があるのかな? そうならそうと言えばいいのに……それとも、何か狙っているのかもね」
 最近、ルナについて演奏者仲間から良い噂は聞いていなかった。例えば体を売っているとか、呪文で恨んでいる人を呪っているなど。真偽は分からないが、疑われるような行動をしている事は確かである。
 そしてルナは、特にエルフ族の者を嫌っているという噂があった。そしてファリアはエルフ族である。
「ディア達に何かあったら大変だよね、でもまだ何もしてないし……もう暫く様子を見ようか」
 そう言って、ナトリはルナの更に後ろをついていく事になる。
 しかし、街の外に出て少し過ぎたところで、ナトリはルナの姿を見失ってしまった。
 山賊達来襲の混乱に乗じて、ルナがどこかへいってしまったのである。

◆幸せになる木の実

「今日も朝日が気持ちいいですぅ……」
 すっかりピクニック気分のファリアとディアナ。ファリアはディアナの事を気に掛けながら隣町への街道を進んでいた。
「ねぇ〜、その木の実って、食べた人がメロメロになるって本当なのぉ〜?」
 ファリアの頭の上にちょこんと乗っているディアナ。なにやらここが居心地良いようだ。
 しかし傍から見ればきっと、ファリアが一人で歩いているように見えてしまうだろう。
「えーっとぉ……私も食べた事はないからはっきりとはいえないんですけどぉ……お兄ちゃんの話では美味しいって言ってたんですぅ♪」
「お兄ちゃん? ……へぇ、ファリアさん、お兄ちゃんがいたんだねぇ〜」
「うん、一番大好きなお兄ちゃんですぅ〜♪」
 精神的に一回り大きくなったファリアは、お兄ちゃんであるリーフの事を悲観的に考えるのを止めていた。
 自分が悲しんでいても、お兄ちゃんは喜ばない。自分が元気で居る事が、一番の幸せであるだろうと信じて。
「そうなんだぁ〜、じゃ、絶対に取らないとね、頑張ろ〜♪」
 ファリアの頭の上で、元気よく手を上げるディアナ。にファリアもディアナにつられて、手を上げて応えた。

 街道は、最近は安全になったとはいえ、まだまだ山賊も出る事があり、手放しで安全とは言えない。そんなファリア達を狙う影が現れるのも当然である。
 二人を追いかけているナトリは、二人の姿を見失わないように気をつけながら、付かず離れずの距離を保ちつつ追いかけている。
 そんなディアナとファリアの所に、待ってましたとばかりに出てくる者達。
『待て待てまてぇぇいいっ!』
 街道の前方の小高い丘の上から、ファリア達に向けて能弁たれるのは、ここら一体を縄張りとしている山賊たちであった。
『そこの女、一人旅なんて危ないなぁ、もしかして俺達が来るのを待っていたのかぁ?』
 下品な声、女性を軽蔑したかのような言葉で近づいてくる山賊の面々。丘から駆け降りてくる。
「そ、そんな事ないですぅっ!」
 精一杯勇気を出して、頭で脅えているディアナを守らなければ……と山賊たちに立ち向かうファリアだが……語尾が震えてしまう。
 後ろに隠れていたナトリは。
「やっぱり出てきたね。 ……助けないと」
 ナトリは呪文の詠唱を始める。精霊魔法の一つ、スリープ。
 しかしそれに気づくわけもなく、山賊たちはじりじりとディアナとファリアの元へと近づく。そしてファリアの頭に乗っかっているディアナの姿も確認すると。
『何々、エルフの嬢ちゃんと、シフールの嬢ちゃんの二人か、こりゃいい、高く売りさばけるぜ、へへっ』
 間の距離、数メートル。ファリアもディアナも、二人だけで山賊と会うのは初めての為か、足がすくんで動けなくなっていた。
『さてと……頂くとするか、行くぜぇ!』
 山賊の中のリーダー格と思われる男が手を上げる。一斉に襲い掛かる山賊たち。
 その時突然、ナトリの魔法と共にそこら一体を暗闇が包む。
 何だ何だと騒ぐ山賊達。するとすぐにその暗闇は影だと分かる。そして。
「あ、こんにちは。ファリアさんのお友達ですか?」
 遥か天高くから、柔らかい女性の声が。
 その声の主はソウセイザー。全長57mの巨大な心を持ったロボットである。
 もちろん、突然声を掛けられた山賊たちは唖然とし、ある者はそのソウセイザーの巨大な体に驚き、気絶してしまう。
 そして、その唖然と取られている間に、ナトリのスリープも発動。ほとんどの者達が眠りについた。
 しかしスリープが発動したとは知らぬ、山賊のリーダー。精一杯慌てふためいた。
『な、なんだなんだっ! てめえわっ!!』
 対してソウセイザーは慌てずに、声を掛ける。
「ですから、ファリアさんのお友達ですけれども、何かファリアさんに御用ですか? どんな御用事かは知りませんけれど、ファリアさんを泣かせるような事をしたら……」
 再びにっこりと笑顔のソウセイザー。その笑顔に、有無を言わせぬ脅迫感を山賊に与える。
『し、したらなんだっていうんだ?』
「……ファリアさん達を、泣かすようなことをしたら……許しませんよ?」
 その声が真剣だった。暫くの間、山賊たちは動けず。そして……。
『お、覚えてろよーーーっ!!!』
 一目散に逃げていく山賊達。眠っている山賊達や、気絶している山賊達を、ソウセイザーは一人一人山賊が現れた丘の上へと運ぶ。
 全員運び終えると、ディアナはナトリに気が付く。もちろんファリアもその場にぺたんと座り込む。
「あ……ソウセイザーさんですぅ……ぅ、ぅえ〜〜ん」
「リリー……怖かったよぉ〜」
 二人して泣き始める。ナトリが二人の下に駆け寄って、ディアナを慰める。
「大丈夫だった? ディア、ファリアちゃん。 けがはないみたいだね……?」
「うぅ〜、怖かったよぉ……」
 泣くディアナを落ち着かせながら、ナトリは巨大な体躯のソウセイザーを見上げる。
「えっと、助けてくれてありがとう。ソウセイザーさん、かい? ファリアちゃんからよく話を聞いているけど、直接見るのは初めてだよ……」
 近くからでは、ソウセイザーの顔を見上げる事は出来ない。それほど大きな体である。
「いえ、たまたま通りがかっただけですから。でも今日は、ファリアさん達は、どこへ向かおうとしていたのですか?」
「えっとぉ……チョコの為に、木の実を取りに隣町の山に行こうとしていたんですぅ……でもぉ、こんな昼間から山賊が出ると思ってなくてぇ……」
 わんわんと泣き始めるファリアをいつもの通りに慰めるソウセイザー。既にソウセイザーの視点からは、隣町とその山は見えている。
「チョコですか、面白そうですね。 知り合いの子供達にも、プレゼントしてあげたいですし……あいにく一緒に作る事は出来ませんけれど、お手伝いできる所で、手伝ってあげます」
 微笑むソウセイザー。本当はチョコ作りを一緒に出来ないのが残念だが、顔には出さなかった。
「ありがとうございますぅ……木の実、ソウセイザーさんの為にも、たくさん取ってきますぅ……」
 という事で、ソウセイザーは三人の安全を見張りながら、街の近くまで送り届けたのだった。

 ファリア達がそんなこんなしている間、二人を追いかけていたルナが叫ぶ。
「な、何よあれっ! あの巨大なロボットはっ!」
 山賊たちと同様に慌てる。誰だって、身長57mのロボットが突然出てきては驚くだろう。
「……どうしようかしらぁ……あれじゃ、ファリアに何もできないわねぇ……」
 ルナは再び作戦を練り直すしかなかった。
 暫くの間、考えに考えて出たルナの答えは。
「……あんな大きな体をしていれば、きっと街の中では手が出せないはずねぇ……街に戻ってきたら、待ち伏せるってことにしようかしらぁ……」
 思い立ったらすぐ、ルナは行動に移した。

 そしてその後、ファリア達が木の実をカゴ一杯、そして手一杯に持つ。三人がソウセイザーの元へと戻る。
「何だか皆さん、木の実を取っている時は、凄く楽しそうでしたね?」
 ファリアから木の実を受取ながら、ソウセイザーは嬉しそうな声で話しかける。
「え、見えていたのぉ〜?」
「ええ、私、目がいいんです。ここからでも、街の人一人一人が何を買ったとか分かりますよ?」
 恐るべしその性能。それはさておき。
「えへへ……だって、リリーさんも、ディアさんも手伝ってくれたから、思ったよりもたくさん取れたんですぅ♪ たくさんの人にこれでチョコ、作って上げられるですぅ♪」
「ええ、がんばって作って下さいね?」
 そう言っている間にも、ソウセイザーはファリアより貰った木の実を使ってチョコを作る。少し時が経過して、街が再び見え始める場所で。
「では、私はここで失礼しますね? それでこれは、皆様へのプレゼントです」
 ファリア、ナトリ、ディアナ3人の前に、チョコがおかれる。
「いつもお世話になってます、そして、これからも宜しくお願いしますね? 暫くの間、ファリアさん達とは逢えませんけれど」
「え? ディアにもなのぉ〜?」
 確かに今日始めてあったばかりの、ナトリやディアナにもチョコを配るソウセイザー。
「ええ、いつもファリアさんがお世話になっていますから。これからも、ファリアさんと仲良くしてあげてくださいね?」
 まるで、ファリアのお姉さんのような気配りのソウセイザーであった。

 そして、ソウセイザーと別れ、ファリア達はエルザードの都へと戻る。そんな中で、ナトリは自分のチョコの包みに一枚の手紙が入っている事に気が付く。
 ナトリがその手紙を開くと、ソウセイザーからの伝言が書かれていた。
「……ルナさんが、ファリアさん達を狙っている?」
 ソウセイザーからの、ルナへの警告。
「黒山羊亭のルナさんか……確かに、この界隈の演奏者仲間では良い話を聴かないし、街を出ていく時にも見かけたな……」
「リリー、どうしたの?」
 考え事をするナトリを心配して、ディアナが聞いてくる。
「ん、ううんなんでもないよ。 さ、街に戻ろうよ」
 ナトリはルナを警戒しながら、街へと戻っていく。
 今、ルナが何かするかもしれないと知っているのは、ナトリだけだから。

◆チョコを作ろう!

 エルザードの街は、いつもの通りに賑わいを見せている。バレンタインデーも直前となり、色々な店が更に並んでいた。
「ふぅ、やっと帰ってきたですぅ〜……あとはルディアさんの所に戻るだけですぅ♪」
「疲れたぁ〜、木の実重いよぉ〜」
 ディアナの手にも、小さいカゴが握られていた。自分の分は自分で持つ、とディアナ自身が言ったのだが、さすがにカゴ一杯となると重い。
 段々とディアナは、ファリアから遅れ始める。
「ほら、あとちょっとだよ? 白山羊亭であとは作るだけだし、もう少しがんばろうよ」
 ディアナを励ますナトリ。ずっと昔からユニットを組んでいるからこそ、ディアナの事は手に取るように分かる。
「うぅ〜……分かったのぉ〜……」
 ナトリに言われては、弱音を吐くわけにも行かず、しぶしぶファリアを追いかけるディアナだった。

 そして、白山羊亭まで残りあと少しといった所の裏道で。
「うふふ、ファリアちゃん、その好み、私に下さらないかしらぁ?」
 ルナが三人の前に立ちふさがる。
「……やっぱり来たね、ルナさん。そしてこの木の実を狙っていたわけだね」
 事前に二人に話しておいたナトリは、二人の前に立つ。
「えぇ? なにやらその木の実、食べた人はメロメロになるっていう話じゃないのぉ。 そんなのは、ファリアが持っててもしょうがないでしょう? 私が有効利用してあげる、っていってるのよぉ」
 色っぽい声で言うルナ。
「あいにく、この木の実は俺達が取ってきた木の実だからね、美味しいところだけ持っていこうなんて反則だよ? ある場所は分かっているんだから、自分で取りに行けばいいんじゃない?」
「やーよ、めんどくさいもの」
 めんどくさいという理由で切り捨てるルナだった。
「そう……まぁ、渡すわけには行かないんだよ……【シャドウフィールド!】」
 事前に詠唱準備をしていた魔法、シャドウフィールドの魔法をルナに向けて放つ。
「な、何っ! ま、前が見えないわよぉっ!」
 シャドウフィールドの魔法は、ルナの視界を奪う。そしてナトリはディアナとファリアの手を取って。
「走るんだ、ディア、ファリナ!」
 と二人を連れて白山羊亭へと走り出す。
「き、きぃぃぃぃっ!! 許さない、許さないんだからぁぁっ!!!」
 シャドウフィールドの魔法が解けた後のルナは、その場で大声で叫んでいた。

『え〜っと、まずは解けたチョコの素を流し込むんだ。そして……』
 白山羊亭のマスターが、チョコを教えて欲しいと言う者達に教えていく。一人一人に親切丁寧に教えていく姿は、まるでどこかの料理学校の先生のようだ。
「ぅ〜、重いよぉ〜〜」
 ディアナは、型にチョコを流すだけでも一苦労。しかし他人が手伝おうとすると。
「私一人で出来るのっ、だから手伝ってくれなくても大丈夫なのぉ〜」
 と、ぷんぷん怒りながら手伝いを拒否していた。
 もちろんナトリも、ファリアも、そしてディアナも思い思いのチョコレートを作り上げる。
『これで完成だよ、皆さん、お疲れ様』
 マスターが全員へ微笑む。そしてそのままチョコレートを持った面々が出て行った。
 白山羊亭が静かになる。ファリアも、まず始めに渡したい人が居るといって白山羊亭を出て行った。
「ディア、ちょっといいかな?」
「え、うん、いいよぉ〜♪ ちょっとまっててねぇ〜」
 チョコレートを持ったナトリが、ディアナを外に誘い出す。そしてナトリが先に外に出ていると。
「バレンタインチョコ、ディア、一生懸命作ったんだ、リリーの為に〜♪」
 ディアナは、ナトリの頭の上にチョコを置く。ディアナの身長とほぼ同じ、約40cm位の結構大きなチョコレート。
「ありがとう、ディア。これ、俺からのプレゼント。いつも一緒に居てくれてありがとう、そしてこれからも宜しくね」
 ナトリの渡したチョコは、ディアナにも食べやすいように、一つ一つを小さくしたチョコレート、ディアナの為に作ったチョコレートだ。
「ありがとうなの♪ そして、これからも宜しくなの〜♪」
 ナトリの周りで嬉しそうに舞い踊るディアナの姿を見て、ナトリは思う。
(チョコをあげて良かった……喜んでくれて嬉しいよ)
 と、ディアナを微笑みながら見つめていた。

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】

MT13:竜創騎兵ドラグーン 天界への翼〜現代偏〜
 【 0829 / ナトリ・ウェザリー / 男 / 32歳 / 旅芸人 】
 【 1891 / ディアナ・ケヒト / 女 / 18歳 / ジュエルマジシャン 】

SN01:聖獣界ソーン
 【 0598 / ソウセイザー / 女 / 12歳 / 巨大変形学園ロボットの福祉活動員 】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
バレンタイン依頼に集まっていただいた、参加者の皆様、どうもありがとうございます。ライターの燕です。
バレンタインに間に合うように、がんばって書かせていただきました。
皆様にとって、このリプレイが少しでも心に残るプレゼントであれば幸いです。

>ソウセイザー様
 いつも御参加いただき、真にありがとうございます。
 今回の目的地は隣町でしたので、あまりソウセイザー様の力は借りてません、御了承下さい(汗)
 既にかなり、ファリアはソウセイザー様に懐いていますが……どうぞこれからもファリアを守ってあげてくださいね。
 ちなみに、最近のファリアの心境は、ソウセイザー様はお姉ちゃんになってきているようです。